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中国リポート

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■語文(国語)・小論文

 ロッテルダムでの世界卓球選手権で、中国はまたも全てのタイトルを独占した。この大会について、先生と学生が一緒に討論をした。

 学生Aの意見はこうだ。「素晴らしいことだよ、中国が金メダルを独占したんだから。地位も名誉も手に入れたっていうことだ。何といってもスポーツは実力の世界だからね」
 学生Bはこう言う。「もっと海外選手が中国選手に挑んでいくところが見たい。ひとつの国が強すぎる状態が続くと、スポーツの発展を阻害すると思う」
 学生Cのような意見もある。「中国は金メダルをひとつかふたつ、他の国に譲ったらどうかという人もいるけど、僕は賛成できないな。そういうやり方はスポーツの公平性にのっとっていないし、オリンピック精神にも背くものだ」

 議論を聞いていた先生は言った「君たちの言うことにはそれぞれ道理がある。それはスポーツの分野だけでなく、様々な分野に適用できるのではないかな」

 以上の文章から感じたことを、各自の観点に基づき、テーマを決めて800字以内で書きなさい。


 上は6月7~9日に中国で行われた全国大学統一入試で、北京市で出題された語文(国語)の問題である。800字以内で書く小論文の問題で、各省ごとにテーマは異なる。
 学生の誰かひとりの意見に賛同して文を書き進めても良いし、最後の先生の発言のとおり、学生たちの議論を他の分野に当てはめて論じても構わない。統一入試の問題にスポーツが登場するのは異例で、北京市では2002年に小論文の問題でサッカーのワールドカップが登場して以来、2回目だという。

 卓球が統一入試の問題に登場したことを知った、国家男子チームの劉国梁監督は次のようにコメントしている。「卓球にとってはとても良いことだし、その影響力の大きさを示していると思う。卓球に関する話題が社会的な関心を集め、スポーツとしての卓球の範疇(はんちゅう)をすでに超えているということだ」。強すぎるゆえに人気の低迷に悩む中国卓球界が、受験生にアンケートを取るために入試問題に忍び込ませたような内容だが、受験生の回答には貴重なヒントがあるかもしれない。ぜひ読んでみたいものだ。

 通称「高考(ガオカオ)」と呼ばれる全国大学統一入試。中国には各大学や専攻ごとの入学試験がなく、受験生全員がこの統一入試を受ける。人生を決める運命の二日間だ。受験生は志望校の合格ラインとなる得点を目指して猛勉強に励む。名門校が多い重点大学が2校、その他の大学が2校など、いくつかの大学を併願できるが、重点大学となると入学への道は限りなく険しい。都市部の大学では、地元の学生と地方の学生で合格ラインの点数に大きな差があったり、スポーツや芸術などの一芸が認められると合格ラインが下がることもある。今年は全国で933万人が受験、合格者数は670万人という、何ともスケールの大きな試験なのだ。

Photo:ロッテルダム大会で、4大会連続の5種目完全制覇となった中国。写真は混合ダブルス表彰(上)と女子シングルス表彰(下)。あなたなら、この問題にどのような回答を書きますか?
☆☆☆ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 女子第4節 6.8 ☆☆☆

[山東魯能・中電装備 3-1 北京控股集団]
○李暁霞 9、-5、11、6 丁寧
○金キョン娥 8、-6、4、12 盛丹丹
 彭陸洋/李茜 -4、-7、-8 丁寧/朱雨玲○
○李暁霞 8、8、8 盛丹丹
(北京広安体育館)

[八一冀中能源 3-1 山西大土河・華東理工]
 曹臻 -2、-12、9、-9 郭炎○
○李佳 9、5、13 饒静文
○曹臻/木子 2、2、8 帖雅娜/饒静文
○木子 -4、8、-4、11、9 郭炎
(江蘇州常州武進体育館)

[大同雲崗・金地鉱業 3-1 広州時代地産]
○武楊 11、7、-8、5 張瀟玉
 李暁丹 -4、-9、-4 劉詩ウェン○
○劉娟/李暁丹 5、9、9 石賀浄/徐潔
○武楊 -4、14、8、-4、9 劉詩ウェン
(大同大学体育館)

[大連新衡業・上方 3-1 内蒙古銀行]
○文佳 -9、12、6、8 馮亜蘭
 郭躍 -8、3、-9、-4 陳夢○
○文佳/常晨晨 7、7、-8、-6、8 陳夢/姚彦
○郭躍 9、-10、7、8 馮亜蘭
(遼寧大連海事大学体育館)

 超級リーグ女子第4節、山東vs北京戦のトップで世界選手権ロッテルダム大会決勝を戦った丁寧と李暁霞が再戦。李暁霞が3-1で勝利し、4番でも盛丹丹を完封してチームの勝利を決めた。
 敗れた丁寧は試合後、「第3ゲーム8-10から11-10に逆転したのに、そのチャンスをつかめなかった。試合にも負けてしまって本当に悔しい。試合全体の流れも悪くしてしまった」とコメントしている。ロンドン五輪へのエントリー発表の直後に行われたこの試合。「あくまでロンドン五輪出場という目標は変えない。最初の(シングルスの)エントリーからは外れてしまったけど、これからも努力は続けていく」(丁寧)。

 福原愛(ANA)が出場しなかった広州時代地産は、大同雲崗・金地鉱業に惜敗。4番でエースの劉詩ウェンが、武楊にゲームオール9点で競り負けた。第4節を終えて2勝2敗の広州時代地産。勝った2試合はいずれも福原が勝利を挙げ、劉詩ウェンがシングルス2得点というパターン。ペアの固定できないダブルスがここまで4連敗というのがつらいところだ。

 劉詩ウェンを破った武楊のカットは流れるように華麗…という感じではないが、時に相手コートでのバウンドがイレギュラーするほど切れ味が鋭い。ロッテルダム大会の準々決勝でも、ストップしようとした李暁霞のラケットが何度も弾(はじ)かれていた。同じバック面表ソフトで使用用具もほとんど同じなのに、范瑛とは全くタイプが違う。ナックルカットを無理打ちすると自滅する范瑛は「流砂」、ブツ切りカットを打ち抜けずにペースに呑み込まれていく武楊は「底なし沼」という感じか。単にルックスから来るイメージでしょうか…。
 とにもかくにも、カットには抜群に強い劉詩ウェンに勝てる女子のチョッパーは、この武楊くらいだろう。

Photo上・中:北京戦トップで激突した李暁霞(上)と丁寧(下)
Photo下:シングルス2点起用で2勝を挙げ、期待に応えた武楊
(Photoはすべて11年世界選手権)
★★★ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 第4節 6.8 ★★★

[山東魯能・中電装備 3-1 江蘇金山環保・中超電纜]
 方博 -7、-6、-6 陳杞○
○張継科 -8、6、5、13 韓陽
○張超/方博 -11、11、2、-7、9 林晨/雷振華
○張継科 8、11、7 陳杞
(済南奥体センター体育館)

[八一熔盛重工 3-1 四川長虹]
○王皓 3、10、8 許鋭鋒
 閻安 7、9、-6、-8、-5 邱貽可○
○閻安 -7、9、-9、7、8 許鋭鋒/張ユク
○王皓 -14、-4、7、10、7 邱貽可
(湖南省懐化体育センター体育館)

[浙商銀行 3-1 錦州銀行・上海]
 馬琳 6、-9、-6、-5 王励勤○
○ハオ帥 7、-7、4、9 尚坤
○馬琳/徐輝 5、6、-3、11 尚坤/ジャイ一鳴
○ハオ帥 4、8、8 王励勤
(浙江省湖州体育館)

[寧波海天塑機 3-1 覇州海潤冠軍園]
 王建軍 -9、-6、-10 許シン○
○馬龍 -8、-6、6、6、6 崔慶磊
○呉ハオ/王建軍 -5、7、7、7 李平/崔慶磊
○馬龍 6、9、-8、3 許シン
(河北省灤県一中体育館)

 超級男子第4節、江蘇金山環保・中超電纜の韓陽が今シーズン初出場。現世界チャンピオンの張継科から1ゲームを先取し、善戦するも1-3で敗れた。江蘇はラストまで回せば、カットに強い雷振華と朱世赫の対戦で勝機は十分だったのだが、ダブルスで林晨/雷振華が第2ゲーム10-5から逆転されたのが痛かった。4番で陳杞を破ってチームの勝利を決めた張継科はこれでシングルス8連勝。開幕戦こそややもたついたものの、ロッテルダム大会の疲れも見せずに快進撃を続けている。

 開幕前の摘牌大会(ドラフト会議)で雷振華に151万元の巨費を投じ、獲得した江蘇金山環保・中超電纜。エースの陳杞に、張継科(90勝)や陳杞(86勝)を上回るリーグ通算97勝を挙げている雷振華、09年全中国運動会ベスト16の金義雄が加わり、プレーオフを狙える陣容が整いつつあったが、思わぬ誤算があった。3番手の詹健(中国→シンガポール)が、中国卓球協会の承認を得ないままシンガポールに移籍したとして、超級リーグでの出場停止の処分を受けてしまったのだ。貴重なポイントゲッターを失い、今シーズンもここまで4連敗。韓陽にとっても厳しいシーズンを迎えている。

 その他の試合では、馬琳をダブルスに下げ、ハオ帥を2点起用した浙商銀行が錦州銀行・上海に勝利。ハオ帥は4番で分の悪い王励勤にストレートで完勝した。昨シーズン最下位の錦州銀行と合同チームを組んだ上海だが、1番手の雷振華と2番手の徐輝が移籍してしまい、残りが3番手のジャイ一鳴だけでは厳しい。前節の江蘇戦で初勝利を挙げているが、今季は苦しいシーズンが続きそうだ。

Photo上:世界チャンピオンの張継科に善戦した韓陽
Photo中:江蘇が巻き返せるかどうかは、この雷振華次第か
Photo下:王励勤をストレートで破ったハオ帥
(Photo上は10年日本リーグBT、中・下は09年全中国運動会)
 6月7日、北京の国家体育総局卓球バドミントン管理センターで、ロンドン五輪のシングルスにエントリーする男女各2名が発表。管理センターの劉風岩主任、国家男子チームの劉国梁監督、女子チームの施之皓監督らが出席した。発表された4名の選手は以下のとおりだ。(WR=11年6月分の世界ランキング)

〈男子〉王皓(WR1)、張継科(WR2)
〈女子〉李暁霞(WR1)、郭炎(WR2)


 ……サプライズはどこにもない。ロンドン五輪への推薦出場枠の獲得が伝えられた、国家男女チームのランキング上位2名である。なぜわざわざ記者会見を開く必要があったのか。劉国梁監督の次のコメントを読んでいただきたい。

「ITTFが世界ランキングの上位2名というから、上位2名を登録したまでだよ。実際には、これは1回目のエントリーに過ぎない。来年の5月10日(世界最終予選前のエントリーの最終期限)までなら、もし『特殊な状況』になれば、選手の交替は可能だ。
 皆さんもご存じのとおり、スポーツの世界にはいろいろと予想のつかないことがあるものだ。今回のエントリーを見て、選手たちが油断などしないと信じているし、エントリーから外れた選手も諦めないでほしい。まだ(来年5月まで)1年近くあるんだからね。その間に思いもよらないことが起こる可能性は、十分にあるよ」(劉国梁)


 相変わらず劉国梁節が全開。選手たちにやんわりと釘を刺すような表現が、随所に散りばめられている。ごく当たり前のエントリーに、ここまで勿体(もったい)をつけられるのも凄い。世界チャンピオンとなった丁寧がシングルスのエントリーから外れた女子チームも、施之皓監督が「これはあくまで最初のエントリー。丁寧を含めた他の選手たちにもチャンスはある」と述べている。

 中国は1988年のソウル五輪の際、当時世界ランキング1位で、ランキング推薦での五輪出場が可能だった何智麗(現:小山ちれ)をエントリーから外し、ランキングの低かった20歳の若手・陳静を起用。陳静が初代五輪女王に輝いた。この時はエントリーした選手を中国の中でチェンジすることができたが、今回の場合はどうなのか。大陸予選や世界最終予選の通過者のキャンセルなら、次点の選手に繰り上がりになるが、推薦出場枠を獲得した選手のキャンセルは記憶にない。

 なお、団体戦の三番手となる選手起用に関しては、両監督とも「全く未定」とコメント。劉国梁監督は「来年3月の世界団体選手権が重要な判断基準」と述べているが、それでは4月19~22日に香港で行われるアジア大陸予選のエントリーに間に合わない。どうにも虚々実々な記者会見だが、結局は規定のとおりに落ち着くのかもしれない。

Photo:王皓と張継科にも、決して油断をさせない劉国梁監督
★★★ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 男子第3節 6.5 ★★★

[四川長虹 3-0 寧波海天塑機]
○邱貽可 5、3、10 水谷
○許鋭鋒 -5、-9、10、5、7 馬龍
○許鋭鋒/張ユク 7、6、-8、3 呉ハオ/王建軍
(湖南省懐化体育センター体育館)

[八一熔盛重工 3-0 浙商銀行]
○王皓 8、8、4 張一博
○閻安 -4、8、-7、7、6 馬琳
○閻安/周雨 9、-7、6、-6、7 ハオ帥/徐輝
(浙江省桐廬体育館)

[錦州銀行・上海 3-0 江蘇金山環保・中超電纜]
○王励勤 5、5、2 雷振華
○尚坤 -6、8、9、-4、6 陳杞
○尚坤/ジャイ一鳴 5、6、9 林晨/雷振華
(江蘇省宜興市体育館)

[山東魯能・中電装備 3-1 覇州海潤冠軍園]
 方博 -8、-5、-7 許シン○
○張継科 7、3、-7、5 崔慶磊
○張超/方博 7、1、6 李平/崔慶磊
○張継科 9、9、-7、9 許シン
(河北省灤県一中体育館)

☆☆☆ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 女子第3節 6.5 ☆☆☆

[広州時代地産 3-1 内蒙古銀行]
○劉詩ウェン 7、9、6 顧玉ティン
○福原 -2、4、8、-9、8 馮亜蘭
 福原/張瀟玉 -9、-5、-7 顧玉ティン/陳夢○
○劉詩ウェン 6、7、-10、7 馮亜蘭
(広州黄埔区体育センター)

[山西大土河・華東理工 3-1 北京控股集団]
 饒静文 9、7、-6、-5、-8 丁寧○
○郭炎 7、5、6 盛丹丹
○帖雅娜/饒静文 5、4、4 彭雪/リ・ジャウェイ
○郭炎 7、8、8 丁寧
(北京広安体育館)

[大連新衡業・上方 3-0 山東魯能・中電装備]
○文佳 -6、8、7、5 李暁霞
○郭躍 4、9、7 顧若辰
○文佳 4、-8、-6、10、9 彭陸洋/李茜
(済南奥体センター体育館)

[八一冀中能源 3-2 大同雲崗・金地鉱業]
○曹臻 8、-7、-9、6、9 武楊
 木子 -9、-6、2、5、-10 李暁丹○
○曹臻/李佳 8、4、7 劉娟/李暁丹
 木子 -2、-7、11、8、-7 武楊○
○楊楊 11、8、5 王シュアン
(江蘇呉江体育館)

 またまたアップが遅くなってスミマセン。超級リーグ第3節、長くなりますが男女まとめて掲載します。

 出場した日本選手3名のうち、寧波海天塑機の水谷隼(明治大・スヴェンソン)と浙商銀行の張一博(東京アート)はともに敗れた。昨年所属した四川チームと対戦した水谷は、トップで邱貽可に20分足らずでストレート負け。スポット参戦での体調管理と調整の難しさを解決できないまま、帰国の途に着いた。「(水谷は)なんと言ったらいいのか……、まだベストの状態ではないという感じだね。超級リーグで勝つのは年々難しくなっている。これから彼(水谷)が出場しないので、うちのチームは一試合ずつ必死で戦っていくしかない」(寧波海天塑機・劉真理代表)。
 また、この試合の2番では寧波のエース馬龍が、許鋭鋒にゲームカウント2-0から逆転負けしている。「自分が馬龍に勝てるなんて、実際思ってもみなかった」と試合後に正直な感想を述べた許鋭鋒。腰の故障がぶり返しているという馬龍だが、寧波の劉国棟監督は「大事な場面でメンタルが乱れてしまった、また馬龍の悪い癖が出た!」と怒りのコメントを残した。

 一方、福原愛(ANA)は内蒙古銀行戦で馮亜蘭を破り、開幕からシングルス2連勝。張瀟玉とのダブルスでは敗れたが、相手チームの馮亜蘭からの勝利はまさに値千金。「福原のプレーはすばらしかったし、戦術も一貫していた。確実に昨シーズンより良いプレーができているよ」と広州時代地産の楊華杰監督も賞賛している。ロンドン五輪の推薦出場枠も獲得した福原、今シーズンは思い切り暴れてほしい。

Photo上:水谷をストレートで破った邱貽可
Photo中:第1節は馬龍、この第3節は王皓と当たりが厳しい張一博
Photo下:福原と広州チームの楊華杰監督
 中国囲碁界を代表する棋士に、聶衛平(ニエ・ウェイピン/じょう・えいへい)という人がいる。1952年生まれで、幼くして囲碁に才能を発揮し、現代中国のプロ棋士第1号となった人物だ。囲碁界の日中対抗戦「日中スーパー囲碁」では11連勝を記録し、中国囲碁協会から「棋聖」の称号を与えられた。

 …なぜ急に囲碁の人物が中国リポートに登場したのか?
 実は世界選手権ロッテルダム大会後に、この聶衛平がブログに書きつけた文章が、ちょっとした話題を呼んでいるからだ。「棋聖」というにはあまりに過激、かつ痛快なその文章を少し紹介してみたい(一部を抜粋)。

「卓球の観客席の黒幕」

 私はひとりのスポーツファンとして、国内で最も有名な某テレビ局(注:CCTV)のチャンネル5(スポーツチャンネル)をよく観ている。しかし、目に入ってくるものは、たいていふたりの選手とひとつの球がピンピンポンポン、またそれが際限なく長い。ピンポン球の行ったり来たりを延々と何時間も流している。どこが面白いのか、どこに芸術性があるのか、まったく理解できない…。

 生放送に録画に再放送、さらに大会の大小を問わず、リーグ戦から選手権に至るまで、卓球の放送時間が長いのは一目瞭然だ。果てには国家チームの代表選考会まで、中継車を飛ばして生中継する始末だ! そんなやり方が通用するなら、囲碁の練習の対局も、国家の貴重な予算を費やして生放送してくれるのか?

 この前やっていた、卓球の世界選手権とかいうものを何回か観たが、9千人は入りそうな体育館に観客は9人だけだった。一番多いときでも90人、観客席の上のほうはぐるりと黒い幕で覆われていたのだ。
なんでこんなインチキをするのか? 黒幕の後ろにいるのは一体誰なんだ??


 …早い話が、棋聖は彼の愛する囲碁がCCTV(中国中央電視台)でほとんど放送されず、卓球ばかり放送されているのが我慢ならないのだ。ちなみに観客が9人というのは、よほど大会の序盤だったか、客席の片側にしか観客を入れなかった試合を誤解したようだ。大会終盤は少なくとも5千人以上は入っていた。

 このブログが発端となり、中国では「卓球がその人気に比べて放送時間が長すぎるのではないか」という論争が起こった。聶衛平の弟子の常昊氏は「チャンネル5は卓球チャンネルに改称すればいい」と発言。CCTVのスポーツ局主任が、中国卓球協会の副会長のひとりである江和平氏だったため、「卓球をえこひいきしているのでは?」と報道するマスコミもあった。
 もちろん江和平氏はこの論調に反論。「卓球の放送時間が長いのは、単純に視聴率が高いから。中超(サッカーの超級リーグ)は視聴率が高くても0.3%、囲碁は0.12%でしかない。ロッテルダム大会男子決勝の王皓vs張継科戦は視聴率が2.18%だった」と述べている。中国は各地方局の放送を衛星で受信できるため、チャンネル数が非常に多く、王皓vs張継科戦の2.18%は視聴率としてはかなり高い。中国全土で2700万人が見た計算になるという。

 卓球が今でも国民的な人気スポーツなら、棋聖から思わぬ論争をけしかけられることもないはず。卓球にかつての人気がないことを証明する論争でもある。
 それにしても、日本の卓球ファンにしてみればうらやましい話。今はネットでも様々な試合が観られるようになったが、以前は年に1回の全日本選手権の放映を、どれほど心待ちにしていたことか…。

Photo上:ロッテルダム大会男子決勝の様子
Photo下:大会第2日目、メインアリーナの3階席に張られた黒幕。この裏側には…、観客席があります
☆☆☆ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 女子第2節 6.1 ☆☆☆

[山東魯能・中電装備 3-1 広州時代地産]
○李暁霞 9、8、8 石賀浄
 顧若辰 -3、-10、8、-6 劉詩ウェン○
○彭陸洋/李茜 -5、9、1、10 石賀浄/周芳芳
○李暁霞 11、1、-8、-10、9 劉詩ウェン
(広州黄埔区体育センター)

[内蒙古銀行 3-2 大同雲崗・金地鉱業]
 馮亜蘭 7、-9、-13、-8 李暁丹○
○姚彦 5、4、-11、-7、8 武楊
 陳夢/姚彦 -7、9、-7、-6 劉娟/李暁丹○
○馮亜蘭 -10、10、4、3 武楊
○陳夢 8、12、9 王シュアン
(北京邱徳拔体育館)

[八一冀中能源 3-2 北京控股集団]
 楊楊 -5、12、-6、5、-4 丁寧○
○木子 6、10、-8、-9、5 鄭詩暢
○李佳/劉曦 8、-7、7、12 彭雪/リ・ジャウェイ
 木子 -3、-5、-10 丁寧○
○李佳 8、-8、9、11 朱雨玲
(北京広安体育館)

[大連新衡業・上方 3-2 山西大土河・華東理工]
 文佳 -6、-5、-6 郭炎○
○郭躍 9、-10、10、-7、9 帖雅娜
○文佳/常晨晨 10、-7、7、7 帖雅娜/饒静文
 郭躍 8、-9、-6、-8 郭炎○
○常晨晨 5、6、9 范瑛
(呂梁大土河体育館)

 超級リーグ女子第2節、福原愛(ANA)が所属する広州時代地産は山東魯能・中電装備に敗れ、ホームでの開幕戦を白星で飾ることはできなかった。福原に代わって石賀浄(韓国)が単複で起用され、2失点。4番で劉詩ウェンが李暁霞に2ゲーム先取されてから追いつき、最終ゲームも7-3でリードしたが、惜しくも逆転を許した。「3番のダブルスで序盤のリードを守れなかったのが痛かった。劉詩ウェン、福原、石磊(石賀浄)は本来のプレーができていると思う」(広州・楊華杰監督)。

 第1節で李暁丹に完敗した世界チャンピオン・丁寧は、左腕を傷めながらも八一戦でシングルス2得点を挙げた。しかし、チームは八一冀中能源に競り負け、2連敗。ラストで日本リーグの日本生命でも活躍する李佳が、14歳年下の朱雨玲に競り勝った。超級リーグでプレーする中国籍選手の中では最年長の李佳。ダブルスでの強さと豊富な経験で、若手主体の八一にとっては欠かせない戦力になっている。

 内蒙古銀行は大同雲崗・金地鉱業を破り、開幕戦の山東魯能・中電装備に続いて優勝候補を連破。トップで馮亜蘭が敗れ、2番姚彦が武楊に2-0から猛烈な反撃を浴びてゲームオールとされたが、流れを引き戻した。175cmの長身を誇る姚彦、強靱なフットワークでパワードライブを連発する馮亜蘭、未完の大器・陳夢となかなかスケールの大きいチーム。昨シーズンはファンの期待を裏切ってしまったが、今シーズンは最高のスタートを切った。
 超級リーグ第3節は6月5日に開催。この内蒙古銀行が、福原の所属する広州時代地産と激突する。

Photo上:石賀浄は単複で2失点。世界選手権でもキム・ジョン(北朝鮮)に2回戦で敗れ、五輪への推薦出場を逃した
Photo下:姚彦の王国編集部でのコードネームは「ももひこ」。姚は「もも」とは読みませんが…
(Photo上は11年世界選手権、下は09年全中国運動会) 
★★★ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 男子第2節 6.1 ★★★

[浙商銀行 3-2 寧波海天塑機]
○馬琳 -3、7、4、2 水谷
 張一博 -9、-2、-9 馬龍○
○ハオ帥/徐輝 4、-3、7、10 水谷/王建軍
 馬琳 -5、-4、-2 馬龍○
○ハオ帥 -10、-8、8、5、9 王建軍
(浙江寧波北侖訓練基地)

[八一熔盛重工 3-2 江蘇金山環保・中超電纜]
○王皓 1、9、7 雷振華
○閻安 -3、8、-8、4、9 陳杞
 閻安/周雨 -7、-6、8、7、-10 林晨/雷振華○
 王皓 -7、5、-8、6、-7 陳杞○
○周雨 6、9、8 林晨
(江蘇泰州市体育館)

[山東魯能・中電装備 3-1 錦州銀行・上海]
○張継科 10、7、6 尚坤
 方博 6、-13、-1、6、-7 王励勤○
○方博/張超 7、4、5 ジャイ一鳴/高礼澤
○張継科 9、6、8 王励勤
(遼寧錦州万通卓球館)

[覇州海潤冠軍園 3-1 四川長虹]
 崔慶磊 -8、3、-6、6、-6 邱貽可○
○許シン 9、7、5 許鋭鋒
○李平/崔慶磊 10、9、-10、7 張ユク/許鋭鋒
○許シン -8、7、7、5 邱貽可
(四川綿陽九州体育館)

 超級リーグ男子第2節、寧波海天塑機の水谷隼(明治大・スヴェンソン)と浙商銀行の張一博(東京アート)が今シーズン初出場。両選手とも、初陣を勝利で飾ることはできなかった。
 水谷は2月のUAEオープンで勝利していた馬琳から1ゲームを先取したものの、第2ゲーム以降は勝機をつかめず。ダブルスにも王建軍とのペアで起用され、ハオ帥/徐輝との「左シェーク・右ペン」ペア対決は接戦の末に競り負けた。ともにダブルス巧者とはいえ、ぶっつけ本番に近い形でのダブルス起用はさすがに難しかったか。水谷の超級リーグでの通算成績は、これでシングルス5勝11敗、ダブルス7勝11敗となった。

 2番ではこれが超級リーグデビュー戦となる張一博が、寧波のエース馬龍と対戦。このふたりの対戦というと、張が完勝した昨年9月のワールドチームカップ・クラシックを思い浮かべる方も多いかもしれないが、今回は馬龍がストレートで完勝した。馬龍は4番でも馬琳に完勝し、試合は2-2のラストへ。寧波の王建軍がハオ帥から2ゲームを先取するも、ここからミスが増え、逆転を許した。優勝候補同士の大一番は、第1節で敗れていた浙商銀行に軍配。
 ラストに配した第1節から一転して、第2節では水谷をトップとダブルスに起用した劉国棟監督は、次のようにコメントしている。「まだシーズンは始まったばかり。試合を通じていくつかのオーダーを試してみたい。新しいオーダーをテストできたのは今回の収穫だ」。

 ちなみにこの試合の後、寧波海天塑機の地元紙である『寧波晩報』に、こんなタイトルの記事が載っていた。「日本男子チームのエース、“ノーパン”であることを暴露される」。日本ではすでに周知の事実だが、中国でも卓球ファンの知るところとなったようだ。
 寧波海天塑機は第3節で四川長虹と対戦。水谷にとっては昨シーズン所属した古巣との対戦となる。戦力的には寧波がかなり上。今シーズンの初勝利が期待される。

Photo上:水谷、馬琳から第1ゲームを先取したが…
Photo中:世界選手権ベスト32の張一博が超級リーグデビュー
Photo下:ラストで勝利し、八一を勝利へ導いた周雨
(Photo上・中は11年世界選手権、下は10年世界ジュニア選手権)
☆☆☆ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 女子第1節 5.29 ☆☆☆

[広州時代地産 3-1 山西大土河・華東理工]
○劉詩ウェン 7、9、8 饒静文
○福原愛 7、9、4 郭炎
 張瀟玉/周芳芳 -5、-9、6、-8 帖雅娜/饒静文○
○劉詩ウェン 6、11、11 郭炎
(呂梁大土河体育館)

[大同雲崗・金地鉱業 3-0 北京控股集団]
○武楊 -8、10、4、5 鄭詩暢
○李暁丹 6、10、6 丁寧
○劉娟/李暁丹 3、1、-8、9 リ・ジャウェイ/朱雨玲
(大同大学体育館)

[八一冀中能源 3-0 遼寧大連新衡業・上方]
○曹臻 11、7、-5、11 郭躍
○木子 9、-7、-7、6、11 文佳
○曹臻/李佳 10、-5、13、-7、6 李佳イ/常晨晨
(遼寧鞍山鞍鋼体育館)

[内蒙古銀行 3-1 山東魯能・中電装備]
○馮亜蘭 4、8、7 彭陸洋
○陳夢 8、7、-3、-7、9 李暁霞
 陳夢/姚彦 7、-1、15、-8、-8 彭陸洋/李茜○
○馮亜蘭 7、9、-9、10 李暁霞
(済南奥体センター体育館)

 超級リーグの女子開幕戦は、世界選手権ロッテルダム大会で上位を独占した代表選手たちが、軒並み敗れる波乱の幕開けとなった。
 ロッテルダム大会で新女王の称号を獲得した丁寧は、大同の李暁丹に完敗を喫した。昨シーズン2敗を喫している相手だったが、世界チャンピオンがストレート負けというのはあまりに意外な結果だ。
「丁寧は世界選手権で優勝したことで、試合での闘志がまだ足りていなかった。計画的な練習もしておらず、プレーも本調子とは言い難い。これからうまく調整していかなければならない」と北京の徐志崇監督。世界選手権で優勝して、2週間後の超級リーグでベストのプレーを求めるのは、20歳の丁寧には酷な話か。しかし、今シーズンも降格の危機と背中合わせの戦いが続く北京。丁寧も燃え尽き症候群に陥っている時間はない。

 世界選手権2位で、昨シーズンのプレーオフでは確実にシングルス2得点をたたき出した李暁霞も、内蒙古銀行の陳夢と馮亜蘭に敗れた。右シェークドライブ型の陳夢は、誰もがその才能を認める17歳のホープ。これ以上ない滑り出しで、今シーズンは大暴れの予感。また、新スポンサーを獲得した遼寧は、トップで郭躍が曹臻に敗れ、チームも完敗した。
「郭躍や文佳は今日飛行機で北京からやって来て、(空港のある)瀋陽から3時間以上かけて鞍山に入り、ミーティングと軽い食事をしてすぐ試合。郭躍などはもう半年近く実家には帰っていない。しかし、どんなに苦しくても我々遼寧チームは団結し、奮闘していきたい」(遼寧・宋良監督)

 そして、山西大土河・華東理工戦で2番シングルスに出場した福原愛(広州時代地産)は、郭炎に完勝して最高のスタートを切った。昨シーズンはシングルス1勝4敗だったが、この1勝は大きな自信になりそう。ロンドン五輪の推薦出場枠を獲得した今、超級リーグで中国選手との実戦経験を積んでいきたい。

Photo上:丁寧、今シーズンは世界チャンプという肩書きとの戦いでもある
Photo中:李暁霞にゲームオール9点で勝利した陳夢
Photo下:今まで何度も名勝負を繰り広げた郭炎を、ストレートで下した福原
(写真上・下は11年世界選手権、中は09年全中国運動会)

※写真を少しだけ大きくしてみました…
★★★ 2011中国卓球クラブ超級リーグ 男子第1節 5.29 ★★★

[覇州海潤冠軍園 3-1 浙商銀行]
○許シン -9、5、8、-9、7 ハオ帥
 崔慶磊 6、8、-7、-3、-8 馬琳○
○崔慶磊/李平 -12、7、-6、10、9 ハオ帥/徐輝
○許シン 5、-10、4、10 馬琳
(浙江職教センター体育館)

[寧波海天塑機 3-1 江蘇金山環保・中超電纜]
○馬龍 -6、7、-5、13、7 陳杞
 王建軍 -9、6、-8、-8 雷振華○
○呉ハオ/王建軍 7、-7、4、2 陳杞/金義雄
○馬龍 5、4、5 雷振華
(水谷 - 林晨)
(浙江寧波北侖訓練基地)

[八一熔盛重工 3-0 錦州銀行・上海]
○王皓 8、13、7 尚坤
○閻安 -5、3、-7、7、7 王励勤
○閻安/周雨 -9、-12、11、9、5 ジャイ一鳴/高礼澤
(江蘇南通体育会展センター)

[山東魯能・中電装備 3-1 四川長虹]
○張継科 -11、7、-11、8、7 張ユク
○方博 -8、8、9、9 邱貽可
 方博/張超 9、-8、-3、-17 張ユク/許鋭鋒○
○張継科 10、3、-2、9 邱貽可
(済南奥体センター体育館)

 中国卓球クラブ超級リーグの2011年シーズンが開幕!
 ティモ・ボル(ドイツ)の加入でも話題を呼んでいる優勝候補の浙商銀行が、ホームで昨シーズン6位の覇州海潤冠軍園に敗れた。ロッテルダム大会ではベスト16と振るわなかった覇州のエース許シンが、ハオ帥と馬琳を連破する活躍を見せている。09年シーズンから超級リーグに参戦している覇州海潤冠軍園、参戦1年目に寄せ集めチームで超級リーグ残留を果たしたことが大きく、昨シーズンから許シンをエースに迎えて降格圏内からは脱した感がある。パワーのある右シェークドライブ型・崔慶磊がひと皮むければ、プレーオフ進出も夢ではない。

 その他の3試合はいずれも上位チームが勝利。寧波海天塑機の水谷隼(明治大・スヴェンソン)はラストまで回らず、出場機会がなかった。相手は左シェークドライブ型の林晨、ラストまで回っても確実に勝っていたはずだ。第2節は、明日6月1日にホームで浙商銀行と激突する。今シーズンのデビュー戦となるか。
 ロッテルダム大会優勝の張継科は、苦しみながらも四川長虹戦で2点を挙げ、エースの重責を果たした。地元の済南市に戻ってからずっと下痢が続き、体調不良だったとのこと。「トップの張ユク戦はかなりキツかった。超級リーグは選手のレベルに大きな差はないので、しっかり勝つことができてうれしい。世界選手権で優勝したことで、超級リーグでもみんな全力で向かってくると思う。しっかり準備をして試合に臨みたい」(張継科/出典『華奥星空』)。山東の助っ人選手・朱世赫(韓国)も、もうすぐチームに合流する予定だ。

Photo上:許シンは開幕戦で2得点の活躍
Photo中:王励勤を破り、またも大物食いを見せた閻安
Photo下:ホームでの凱旋試合で、勝利の立役者となった張継科