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中国リポート

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 1月14日、四川省綿陽市北川チャン族自治県に新しく完成した北川体育館で、こけら落としとして「長虹大師杯(マスターズカップ)中国卓球2010年総決賽」が行われた。地元綿陽市に本社を置く四川長虹電器がスポンサーとなったこの大会は、08年5月に発生した四川大地震の慰問試合として行われ、国家男女チームのトップ選手、男女各4名が参加。2,000人を超える観衆の前で優勝を争った。結果は以下のとおり。

★「長虹大師杯・中国卓球2010年総決賽」 1.14 中国・四川省北川体育館

※出場選手
男子:馬龍、王皓、馬琳、王励勤
女子:郭炎、劉詩ウェン、丁寧、曹臻

〈男子シングルス〉●準決勝
馬琳 W/L 王励勤
王皓 W/L 馬龍
●決勝 王皓 4-3 馬琳

〈女子シングルス〉●準決勝
郭炎 W/L 曹臻
劉詩ウェン W/L 丁寧
●決勝 郭炎 4-3 劉詩ウェン

 …公式な記録の発表がなく、かなり大雑把な記録でスミマセン。決勝では男子は右ペンドライブ同士、女子は右シェークドライブ型同士の激しいシーソーゲーム。華々しいラリー戦が展開され、男子は王皓、女子は郭炎が勝利した。
 優勝した王皓は風邪で体調が悪く、夜になると咳が止まらず、試合前日はよく眠れなかったというが、きっちり勝利を収めて改めて復調を印象づけた。さらに大会終了の2日後、16日にはスロベニアオープンに向けて出発する強行スケジュール。馬龍、王励勤、郭炎、劉詩ウェンらはスロベニアオープンをキャンセルし、トップ選手では王皓、張継科、馬琳、許シン、郭躍、李暁霞などが出場する。

 北川チャン族自治県は、2008年5月12日の四川大地震で最も被害が大きかった地域のひとつ。国家卓球チームからは大地震の発生後、多額の義捐金を被災地に送り、慰問試合を行うために多くの選手がこの地を訪れた。女子シングルスで優勝した郭炎は、「たった2年間でここまで復興して、新しい町並みができているなんて。本当に驚きました!」と目覚ましい復興への感想を述べている。
 日本でも1月17日、阪神・淡路大震災が発生から16年となり、様々な追悼行事が催された。ふたつの地震で被害を受けた方々に、謹んで追悼の意を表します。

Photo:地元ファンからも大きな声援を受けた郭炎が優勝
 1月10日、四川省男子卓球チームが、中国の大手家電メーカーである四川長虹電器股フェン有限公司と年間330万元(約4200万円)×3年間のスポンサー契約を結んだことを発表。1月14日に四川省綿陽市で調印式が行われた。今シーズンの超級リーグには「四川長虹電器」として参戦することになりそうだ。
 四川長虹電器は日本のパナソニック、アメリカのマイクロソフトとも業務提携を結び、カラーテレビのシェアでは中国国内でトップクラスの家電メーカー。07年3月から中国卓球協会ともスポンサー契約を結んでおり、中国選手のウェアを飾る「CHANG HONG」のロゴに見覚えのある方も多いはず。本社のある綿陽市が08年5月の四川大地震で大きな被害を受けたが、その後も業績は好調のようだ。ちなみに綿陽市は、昨年12月の世界ジュニア選手権で女子チャンピオンとなった朱雨玲の出身地でもある。

 2005~2009年まで、食品・酒造大手の四川全興と5年間のスポンサー契約を結んでいた四川省男子チーム。05・06年は9位とやや苦戦したものの、07年には助っ人として馬龍を獲得して3位と大健闘。08・09年もハオ帥が加入して5位と、安定した成績を残してきた。
 しかし、昨シーズンは四川全興とのスポンサー契約が切れ、新しいスポンサーの獲得が難航。四川郵政貯蓄銀行と四川先鋒汽車のダブルスポンサーでようやく話がまとまり、水谷隼選手(明治大・スヴェンソン)を獲得して超級リーグに臨んだものの、超級リーグに残留するのが精一杯だった。昨シーズン、江蘇熔盛重工という大型スポンサーを迎えた八一解放軍男子チームが2位に躍進したように、スポンサーとの複数年契約をバックに強化と育成を進めていくことが、超級リーグでも好成績のカギとなる。今シーズンの超級リーグも、地元選手である邱貽可と許鋭鋒がチームの中心となる四川省男子チーム。国内の中堅選手を獲得しても、降格圏からの脱出はかなり厳しいが、どこまで成績を伸ばせるか。

 なお、四川省男子チームとの契約調印式に先立ち、四川大地震の慰問大会として王皓、王励勤、郭炎ら中国のトップ選手が参加した「長虹大師杯(マスターズカップ)中国卓球2010総決賽」が開催。こちらの大会の模様もお伝えします。

Photo上:ウェアに入った長虹のロゴ
Photo下:邱貽可、今年も試練のシーズンになりそうだ
 1月7~9日まで、北京市の国家体育総局トレーニングセンターで行われた男子「直通鹿特丹」第1ステージ。出場した16名が4名ずつの予選リーグを行い、上位2名が準々決勝に進むという「ワールドカップ方式」で行われた。「総当たりのリーグ戦は選手たちの消耗が激しく、故障する選手が出てくる可能性もある。これからプロツアー5大会が控えていることも考慮して、試合数が多くなりすぎないようにした」(劉国梁監督)。ラケット検査や試合前のコールも国際大会と同様に行われ、結果は以下のとおりとなった。

★男子「直通鹿特丹」第1ステージ 1.7~9

●予選リーグ ※勝/負
A:1. 張継科(3/0)/2. 陳杞(2/1)/3. 雷振華(1/2)/4. ジャイ一鳴(0/3)
[張継科 4-0 陳杞][張継科 4-3 雷振華][陳杞 4-3 雷振華]
B:1. 王皓(3/0)/2. 閻安(2/1)/3. 王励勤(1/2)/4. 李平(0/3)
[王皓 4-2 閻安][王皓 4-0 王励勤][閻安 4-1 王励勤]
C:1. 馬龍(3/0)/2. 張超(1/2)/3. 周雨(1/2)/4. 馬琳(1/2)
[馬龍 4-2 馬琳][馬琳 4-3 張超][周雨 4-1 馬琳]
D:1. ハオ帥(3/0)/2. 許シン(2/1)/3. 方博(1/2)/4. 邱貽可(0/3)
[ハオ帥 4-1 許シン][許シン 4-2 方博][方博 4-3 邱貽可]

●準々決勝
張継科 -9、7、-6、7、9、6 張超
ハオ帥 7、10、8、9 閻安
陳杞 2、2、12、11 馬龍
王皓 -11、-10、8、8、8、6 許シン
●準決勝
張継科 12、8、5、7 ハオ帥
王皓 2、-3、-3、6、5、9 陳杞
●決勝 王皓 7、-6、5、10、7 張継科

★順位決定戦後の最終順位
1. 王皓/2. 張継科/3. 陳杞/4. ハオ帥/5. 張超/6. 許シン/7. 馬龍/8. 閻安
9. 李平/10. 王励勤/11. 馬琳/12. 邱貽可/13. 方博/14. 周雨/15. 雷振華/16. ジャイ一鳴

 王皓が若手の挑戦を退け、中国男子の代表第1号となった。準々決勝で、馬龍が陳杞に予想外のストレート負けを喫したことで、当たりが楽になった部分はあるが、要所を抑える勝ちっぷりを見せた。「新年に良いスタートを切れて満足している。今は試合の流れを自分でコントロールできているし、その部分では周りより優位に立っていると思う。もうスランプからは抜け出した。より遠く、高い目標に向かっていけるよ」(出典『上海青年報』)と王皓は笑顔でコメント。その眼が出場を決めたロッテルダム大会ではなく、来年のロンドン五輪を向いていることは明らかだ。
 一方、劉国梁監督はコメントの中で「王皓は総合的な技術、戦術では世界のトップにある」としながらも、「彼にとってより重要なのは、より緻密かつ大胆に相手に立ち向かっていくこと。この部分で馬琳クラスになれば、間違いなく選手としてのピークを迎えられるだろう」(出典『華奥星空』)と指摘している。準々決勝で許シンに2ゲーム先取され、準決勝で陳杞に1-2とリードされた戦いぶりについて、「サウスポーに対する課題がまだ潜んでいるな」とチクリとやることも忘れなかった。

 ロッテルダム大会に出場できるか、注目を集めている馬琳と王励勤は予選リーグで敗退。ふたりは9~12位決定戦で相まみえ、王励勤が3-1で馬琳を破ったが、順位決定戦ではそれほど参考にならない。「彼ら(馬琳・王励勤)は“冬眠”しているようなもので、去年の王皓も同じような状態だった。5月くらいになって、ビッグゲームの時期を迎えれば、必ず調子は上向いてくるはずだ」(劉国梁)。風邪を引き込み、調子が上がらなかったという王励勤は、モスクワ大会で活躍した馬琳に比べ、より厳しい立場に置かれている。

Photo上:王皓、「直通鹿特丹」は代表一番乗り
Photo中:王励勤は予選リーグで閻安に完敗、「二王」は明暗を分けた
Photo下:「直通鹿特丹」第1ステージの終了翌日、35歳の誕生日を迎えた劉国梁監督
 ようやく男子「直通鹿特丹」第1ステージの結果をお伝えする…予定だった中国リポート。しかし、男子第1ステージの記録を見て、昨年12月28~31日に行われた国家男子チーム1・2軍入れ替えリーグ戦の結果が、メンバー構成に反映されていることに気づきました。…ということで女子に続き、男子1・2軍入れ替えリーグ戦の結果をお伝えします。

 男子の入れ替えリーグ戦は、1軍チームの下位9名+2軍チームの上位11名、計20名が4日間に渡って戦うハードなリーグ戦。上位6名までが1軍チームに残留もしくは昇格し、1位と2位の選手には「直通鹿特丹」第1ステージの出場権が与えられる。また、3~6位までの4名に、この入れ替えリーグ戦に出場していない1軍チームの李平・崔慶磊を合わせた6名で再びリーグ戦を行い、1位と2位の選手は同じく「直通鹿特丹」に出場できる。こうして決定した4名の選手と、国家1軍チームの上位12名の選手を合わせた16名で、「直通鹿特丹」第1ステージが行われた。入れ替えリーグ戦等の結果は以下のとおり。

★国家男子1・2軍チーム入れ替えリーグ戦 12.28~31
■1軍チームに昇格した選手 ※上位2名は「直通鹿特丹」に出場

1. 方博(右シェークドライブ型:国家1軍)
2. 周雨(左シェークドライブ型:国家2軍)
3. ジャイ一鳴(右シェークドライブ型:国家1軍)
4. 尚坤(左シェークドライブ型:国家1軍)
5. 尹航(右シェークドライブ型:国家2軍)
6. 程靖チィ(左シェークドライブ型:国家2軍)

↓ 以下の選手は1軍から2軍チームに降格
徐輝、劉イ(火×4)、呉ハオ、金義雄、許鋭鋒、劉吉康
→ 以下の選手は2軍チームに据え置き
呉家驥、劉亜楠、宋鴻遠、林高遠、ジャイ超、陳曦、夏易正、朱霖峰

★男子「直通鹿特丹」出場選手・選考リーグ戦 ※上位2名は「直通鹿特丹に出場」
出場選手:李平、崔慶磊、ジャイ一鳴、尚坤、尹航、程靖チィ
出場権獲得:李平、ジャイ一鳴

 …詳細な記録はないのですが、ご容赦ください。
 まず1・2軍チームの入れ替え戦では、10年世界ジュニア選手権3位の周雨、2軍チームのホープ尹航、08年世界ジュニア選手権代表の程靖チィが1軍昇格。長身で身体能力が高い左シェークドライブ型・周雨は、世界ジュニア代表組の4名の中で唯一の1軍チーム入り。尚坤と程靖チィを含め、3名の左シェークドライブ型が6位までにランクインした。しかし、同じ左シェークで世界ジュニア選手権の決勝で対戦した宋鴻遠と林高遠は、1軍チーム昇格を逃している。一方で1軍チームからは、右ペンドライブ型のベテラン徐輝、カット主戦型の劉イ、07年世界ジュニア2位の許鋭鋒らが降格。徐輝はすでに28歳で、国家チームからの引退も間近か。

 また、「直通鹿特丹」の出場選手・選考リーグ戦では、李平とジャイ一鳴が4勝1敗で並び、方博・周雨に続いて「直通鹿特丹」の出場メンバーに名を連ねた。次回はいよいよ「直通鹿特丹」男子第1ステージの結果です!

Photo上:09年世界ジュニア4冠王の方博、入れ替えリーグ戦をきっちり勝ち抜いた
Photo下:「陳杞二世」周雨はルックスもちょっと陳杞に似ている?
 郭炎が代表獲得第1号となった「直通鹿特丹」。その陰で、国家女子2軍チームへ降格となる2名を決める戦いが、1月3~4日に行われていた。男子「直通鹿特丹」第1ステージの結果をお伝えする前に、まずはこちらの入れ替えリーグ戦の結果を紹介したい。女子「直通鹿特丹」の4つの予選グループで、下位2名が総当たりで17~24位の順位を決定するこの入れ替えリーグ戦。その結果は以下のとおりだ。

☆国家女子1・2軍チーム入れ替えリーグ戦(17~24位決定戦) 1.3~4

■最終順位 ※5ゲームズマッチで開催
17位:曹臻(6勝1敗)
18位:王シュアン(5勝2敗)
19位:姚彦(5勝2敗)
20位:朱雨玲(3勝4敗)
21位:趙岩(3勝4敗)
22位:顧玉ティン(2勝5敗)

↓以下の2名は国家2軍チームへ降格
23位:易芳賢(2勝5敗)
24位:李佳イ(火×4)(2勝5敗)

■主な対戦結果
[王シュアン  3-2 曹臻][王シュアン 3-2  姚彦]
[曹臻  3-2 王シュアン][曹臻   3-1   姚彦]
[李佳イ 3-2 王シュアン][易芳賢  3-1   趙岩]
[顧玉ティン 3-1 易芳賢][易芳賢  3-2  李佳イ]

 意外にも05年世界選手権ベスト16の曹臻、07年世界選手権ベスト16の姚彦もこの入れ替えリーグ戦に回った。さすがに曹臻は6勝、姚彦は5勝を挙げて1軍チームに踏みとどまったが、このままではロッテルダム大会出場の道はかなり険しい。プロツアーでデビュー戦から2大会連続優勝した曹臻は24歳、175cmの長身で「大器」と期待された姚彦は22歳、中国代表としては働き盛りの年齢だが、早くも世代交代の波に呑まれようとしている。

 そして、残酷な結末が待っていたのは22~24位の3名。顧玉ティン、易芳賢、李佳イの3名が2勝5敗で並び、勝率計算で顧玉ティンが22位となり、辛くも1軍チーム残留。易芳賢と李佳イが2軍チーム行きとなった。易芳賢は昨年1月の入れ替えリーグ戦で1軍昇格を決め、国際大会でも一定の成績を残していたのだが、1年で再び2軍チームに降格。世界ジュニア代表組4名の中で、ひとりだけ辛酸をなめる結果となった。もうひとりの李佳イはもともと2軍チームの所属で、朱雨玲と趙岩とともに2軍チームの優秀選手として「直通鹿特丹」に出場した選手。他の2名が1軍チームへの昇格を果たす中で、李佳イは易芳賢戦の2-2ラスト、6-1のリードから痛恨の逆転負けを喫して2軍チームへ逆戻りとなった。

Photo上:易芳賢、曹臻にもゲームオールまで食い下がったが…
Photo下:李佳イは24名中最下位で2軍チームへ逆戻り
 1月8日、第51回世界卓球選手権(個人戦)・ロッテルダム大会の代表選考会「直通鹿特丹」は、女子の第1ステージが終了。27歳のベテラン郭炎が決勝で郭躍を下し、国家男女チームを通じて、ロッテルダム大会の代表第1号となった。予選リーグおよび決勝トーナメントの結果は以下のとおり。

☆「直通鹿特丹」女子第1ステージ結果
■予選リーグ 12.30~31 ※2位までの選手が準々決勝へ進出


グループ1:1. 郭炎(4勝1敗)/2. 馮亜蘭(4勝1敗)/3. 饒静文(3勝2敗)/4. 楊揚(3勝2敗)/5. 曹臻(1勝4敗)/6. 朱雨玲(0勝5敗)
[郭炎 4-2 馮亜蘭][楊揚 4-1 郭炎][饒静文 4-2 曹臻]

グループ2:1. 劉詩ウェン(5勝0敗)/2. 武楊(4勝1敗)/3. 常晨晨(3勝2敗)/4. 曹麗思(2勝3敗)/5. 李佳イ(1勝4敗)/6. 姚彦(0勝5敗)
[劉詩ウェン 4-2 武楊][武楊 4-2 常晨晨][李佳イ 4-1 姚彦]

グループ3:1. 郭躍(4勝1敗)/2. 李暁霞(4勝1敗)/3. 陳夢(3勝2敗)/4. 李暁丹(2勝3敗)/5. 王シュアン(2勝3敗)/6. 易芳賢(0勝5敗)
[郭躍 4-3 李暁霞][陳夢 4-3 郭躍][郭躍 4-3 易芳賢]

グループ4:1. 丁寧(5勝0敗)/2. 范瑛(4勝1敗)/3. 文佳(3勝2敗)/4. 木子(2勝3敗)/5. 趙岩(2勝3敗)/6. 顧玉ティン(0勝5敗)
[丁寧 4-2 范瑛][趙岩 4-3 文佳][木子 4-3 顧玉ティン]

■決勝トーナメント 1.7~8
●準々決勝

郭躍 -9、7、10、9、8 范瑛
馮亜蘭 -12、7、-5、6、-9、3、6 劉詩ウェン
丁寧 9、-8、4、-7、6、-11、11 李暁霞
郭炎 -8、7、5、4、7 武楊
●準決勝
郭躍 9、-3、12、-8、5、9 馮亜蘭
郭炎 -8、7、-6、6、-6、6、5 丁寧
●決勝
郭炎 2、-6、6、6、-8、7 郭躍

 国家1軍チームの21名に、2軍チームの朱雨玲、趙岩、李佳イ(火×4)を加えた24名で行われた女子の「直通鹿特丹」第1ステージ。
 予選グループは大きな番狂わせはなく、ほぼ順当な勝ち上がり。しかし、準々決勝では元世界ランキング1位の劉詩ウェンと、アジア競技大会優勝の李暁霞が姿を消した。李暁霞は丁寧と一進一退の大激戦になり、最終ゲーム8-5のリードから8-10とされながら、11-10でマッチポイントを取り返したが、あと一歩及ばずにゲームオール13-11で惜敗。劉詩ウェンは馮亜蘭に足下をすくわれ、ベンチに入った孔令輝コーチは怒り心頭。「全部のプレーが受け身だ! 第7ゲームの前に言ったことをひとつも覚えてない!」と吐き捨て、劉詩ウェンを待たずにコートを後にした。劉詩ウェンは右肩の故障がかなり悪いようだが、モスクワ大会決勝で敗れて迷い込んだトンネルから、まだ抜け出すことができない。

 そして決勝は、準決勝でともに接戦を制した郭躍と郭炎の「二郭」対決。第1ゲームから5-1、10-2と一気にスタートダッシュをかけた郭炎が終始試合を優位にすすめ、郭躍を4-2で下して世界代表の切符を手にした。「以前は出足が悪くて失敗するケースがあったので、今回はその点には気をつけた。今回の勝利は世界選手権代表の資格を得たということに過ぎないけど、私にとっては自信になりました」(郭炎)。郭炎はこれで03年パリ大会から8大会連続8回目の世界選手権出場だ。
 決勝トーナメントは7試合すべてが出足の2ゲームで1-1のタイになるなど、中国女子のトップ選手としてのプライドが激しくせめぎ合った「直通鹿特丹」第1ステージ。この戦いを勝ち抜いた選手が、世界選手権で勝てないはずがない。

Photo上:郭炎、激戦を勝ち抜いてロッテルダムへの切符をゲット!
Photo下:予選リーグでライバル李暁霞を下した郭躍だが、決勝では勝機を見出せず
 出会いあれば別れあり。結婚で明けた2011年の中国リポート、続いては離婚のニュース。泥沼の様相を呈していた馬琳の離婚問題が、ようやく決着したようだ。
 2004年8月に女優の張寧益(チャン・ニンイ)と極秘裏に入籍していた馬琳。しかし、馬琳は遠征や集合訓練、張寧益は映画の撮影などで忙しく、私生活でのすれ違いから、08年12月には別居状態に。そして09年9月、馬琳は張寧益との離婚がすでに合意に達し、ふたりの財産分与を巡って、2カ月前に法院(裁判所)に提訴したことを明らかにした。

 この馬琳の離婚騒動については、中国でもスポーツ界のニュースというより芸能ニュースとして大きく取り上げられ、連日大きく報道されていた。情報の正確性に疑問もあり、中国リポートでは特に取り上げてこなかったが、両家の親族も加わってかなり過激な“舌戦”が展開されていた。「04年アテネ五輪での馬琳のダブルス金メダルは出来(でき)レースで、金メダルを取ることは事前に決まっていた」「馬琳はコーチの呉敬平に、賄賂として高級車のBMWを贈った」などの張寧益の発言に、たまらず中国卓球協会が会見を開くひと幕も。国家体育総局卓球・バドミントン管理センターの劉風岩主任は、「五輪での優勝者の内定などはありえない。また、BMWは五輪の金メダリストには特別価格で車を販売するので、その特別価格で馬琳が車を買って、呉敬平コーチが後で支払っただけのこと」と会見でコメントしている。

 財産分与の金額として、50万元(約625万円)を提示していた馬琳。しかし、裁判所に財産の総額を申告するよう命じられ、広東省、北京市などに5つの家や別荘、車3台、2000万元(約2億5千万円)の預金があるとも報じられた。そして結局、北京市大興区法院は馬琳に対し、500万元(約6250万円)を6月末日までに張寧益に支払うことを命じた。さらに北京市にあった800万元相当の別荘も張寧益の所有となり、財産分与では張寧益に軍配が上がった形だ。
 男子「直通鹿特丹(直通ロッテルダム)」の抽選の席上で取材に応じた馬琳は、「今はとにかく練習に集中できるのが一番うれしい。頭を悩ませることが何もなくなったのは、良いことだと思う」とコメント。離婚問題が終わりを告げたことに安堵の思いをのぞかせた。昨年は「直通莫斯科(直通モスクワ)」でつまずいた馬琳、まずは確実に世界選手権の代表切符を獲得したいところだ。

Photo:12月24日のクリスマスイブに、裁判所から判決が下った馬琳
 皆様、明けましておめでとうございます!
 2011年も卓球王国を宜しくお願い致します。

  2011年の一発目の中国リポート、「直通鹿特丹」をはじめ、お伝えしたいニュースが山積しておりますが、まずは新年らしくおめでたい話題から。

 1月2日、黒龍江省の省都・ハルピン市で、元国家男子チームで現トルコ男子チームのメンバーである鄭長弓と、元国家女子チームの張瀟玉が結婚式を挙げた。国家チームの選手たちは「直通鹿特丹」を控えて北京に留まっており、結婚式に出席することはできなかったが、同じハルピン市出身の孔令輝コーチや、国家女子チームのチームメイトだった郭躍・郭炎・范瑛、超級リーグでダブルスを組んだ王シュアン(王+旋)らがビデオレターでお祝いの言葉を述べた。
 花嫁の張瀟玉の出身地であるハルピン市は、最低気温が氷点下30℃まで下がり、「冰城(氷の街)」の別名がある酷寒の地。四川省男子チームの出身で、温暖なトルコに移住した鄭長弓には厳しい寒さだったはずだが、張瀟玉は国家女子チームで随一と謳(うた)われた美人選手。鄭長弓も新年から幸せいっぱいに違いない。

 現在、国際大会には「Cem Zeng(ジェム・ツォン)」として出場している鄭長弓(ジョン・チャンゴン)は、1985年10月21日生まれの25歳。フットワークを活かして切れ味鋭いフォアドライブを連発する左シェークドライブ型だ。
 2003年にアジアジュニア選手権で優勝し、第1回世界ジュニア選手権では男子団体優勝、混合ダブルスで李暁霞と組んだペアで優勝、男子シングルスも3位。この時の団体のチームメイトに張継科がいた。「中国の将来の主力候補か?」と鄭長弓の名前を覚えている方もいるのではないだろうか。中国国内でも将来を嘱望される選手だったが、トルコに移住し、サッカーでも名門として知られるフェネルバフチェSKの卓球チームでプレー。08年北京五輪にもトルコ代表として出場した。世界最終予選でワン・ツォンイ(ポーランド)、コルベル(チェコ)らを破っての出場だったが、北京五輪では1回戦でカラカセビッチ(セルビア)とのサウスポー対決に敗れている。

 一方の張瀟玉は1986年3月29日生まれの24歳。堅固なバックショートを武器に戦う、女子では数少ない右ペンホルダー両面裏ソフトドライブ型。国家女子チームを引退後、昨シーズンの超級リーグでは江蘇中超電纜のメンバーとして出場し、リ・ジャウェイや曹臻を破って健在をアピールした。しかし、江蘇中超電纜は超級リーグ最下位で甲Aリーグに降格。張瀟玉もこの結婚によって、昨シーズン限りでラケットを置く可能性もある。どうかお幸せに!

Photo:新郎の鄭長弓(上)と花嫁の張瀟玉(下)
 明日12月30日、北京市の国家体育総局トレーニングセンターで、来年5月8日に開幕する第51回世界卓球選手権(個人戦)ロッテルダム大会の選考会「直通鹿特丹」が早くもスタートする。
 2006年からスタートし、08年の広州大会(団体戦)以外は毎年行われているこの「直通~」シリーズ。これまでの「不莱梅(ブレーメン)」「薩格勒布(ザグレブ)」「「莫斯科(モスクワ)」と比べると、「鹿特丹(ロッテルダム)」というのは字面もなかなか良く、力強い。強壮効果のある漢方薬のようだ(?)。「鹿特丹」を中国語でそのまま発音すると、「ルーテーダン」という感じでしょうか。

 今回が第一次選考会となる女子の「直通鹿特丹」は、12月30~31日に第1ラウンドとして予選リーグを開催。国家1軍チームの21名に2軍チームの上位選手3名を加え、24名を1グループ6名ずつのリーグに分けて実施する。この予選リーグの上位2名までが、来年1月7~8日に行われる第2ラウンドに進み、この第2ラウンドの優勝者がロッテルダム大会の出場権獲得第1号となる。
 そして今回の「直通鹿特丹」では、国家女子1軍チームと2軍チームの入れ替え戦も同時に開催される。第2ラウンドに進む各グループの上位2名とは対照的に、各グループの下位2名は、1月3日に行われるトーナメント戦に出場。下位2名が国家2軍チームへ自動降格となる。トップ集団は出場権獲得を目指して競わせ、中堅や下位の若手には2軍落ちの恐怖をちらつかせて、こちらも必死で戦わせる。結果的に番狂わせが起こりやすくなり、よりハードな代表選考会になるわけだ。

 モスクワ大会で世界選手権の団体のタイトルを失った中国女子にとって、世界選手権ロッテルダム大会はやはり負けられない大会。施之皓監督は12月23日に行われた「2010国家卓球チームコーチ報告会およびコーチ選考会」で、次のようにコメントしている。

「08年北京五輪と09年横浜大会でタイトルを独占したことで、我々は歓喜に浸り、中国女子が依然として、技術的にも心理的にも圧倒的な優位を保っていると思い込んでしまった。その優位に基づいて、少し努力すればどんな問題も乗り越えられるという驕(おご)りが生まれ、結局進むべき方向を見失ってしまった。『驕兵必敗(おごった兵隊は必ず敗れる)』、これがモスクワ大会での失敗を招いた根源だ。
 神話は常に破られるということ、優位などすでに存在しないこと。我々はそれを痛感すると同時に、闘志を奮い立たせている」


 中国リポート、2010年は今回で打ち止めとさせて頂きます。ちなみに今年のリポート回数は146回でした。長く間が空く時もありましたが、来年もなるべく多くリポートしていきたいと思います。2011年も卓球界にとって良い年となりますように!

Photo上:モスクワ大会での敗戦の理由を率直に語った施之皓監督
Photo下:昨年の「直通莫斯科」第1ステージで優勝した郭躍
(写真はともに2010年モスクワ大会)
 今年も12月23日に行われた「2010国家卓球チームコーチ報告会およびコーチ選考会」。二期目(2008~2012年)の折り返し地点となる2010年を終えた国家男子チームの劉国梁監督が、今年1年を総括した。
 モスクワ大会決勝で痛恨の敗戦を喫した女子チームに対し、トップで馬龍が破れながらもタイトルを死守した国家男子チーム。劉国梁監督は「モスクワ大会決勝ではトップで敗戦を喫し、大きなプレッシャーに直面しながら、逆境を跳ね返して勝利した。チームがあのような、生死を分ける一戦の洗礼を受けたことは、ロンドン五輪を目指す上で大きな意義がある」とコメントしている。

 そのモスクワ大会で男子チームの精神的支柱として、大きな役割を果たしたのは馬琳だった。「選手としての総合力では、馬琳が今でもチームで最強の選手であることを、成績がはっきり証明している」と、毒舌で知られる劉国梁監督も賞賛。北京五輪後はタイトルに恵まれていない馬琳だが、呉敬平コーチが報告会で興味深いコメントを残している。「今まさに馬琳は、新しい発展の段階を迎えており、技術的にも伸びる余地は十分ある。私たちふたりは共通の認識を持つに至りました。全力でロンドン五輪の出場権を取りにいくこと、そのために最高水準の努力を自らに課していくことです」。
 担当コーチの口から飛び出した、驚きの“現役続行宣言”。中国の卓球雑誌『ピンパン世界』が選ぶ「2010・年度人物(プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)」にも選ばれた馬琳。「直通モスクワ」で第1ステージから初戦敗退が続き、「ついに引退の時か」と噂された馬琳だが、老虎はどっこい死んではいなかった。ロンドン五輪へ続く道に茂る茨(いばら)を振り払うには、まずは来年5月の世界選手権ロッテルダム大会で、最低でも表彰台には立っておきたい。

 また、馬琳と同じく上半期の不調を脱し、男子ワールドカップ優勝、アジア競技大会2位などの成績を残した王皓について、劉国梁監督は「王皓は二度のスランプを乗り越え、ついに復活の時を迎えつつある。プレーに対する自信を深め、精神的にも安定感が増し、戦術面でも明らかな進歩がみられる」とコメント。コーチ陣にとっては、精神的に不安定になった王皓に対する指導経験も、貴重な財産になったという。
 アジア競技大会でタイトルを獲得した馬龍については、劉国梁監督は「本当に山あり谷あり、指導は困難を極めたし、本当に成長したとは言いがたい」と手厳しい。「馬龍は内向的な性格で、周囲の人間やその意見を受け入れるのが苦手。自信も足りないし、自分をさらけ出していない」。実力的には申し分ない馬龍だが、劉国梁監督は他のスポーツのトップ選手に負けない存在感を持つ、真のスター選手への脱皮を願っているのだろう。

 国家男子チームは、年明けの1月7日から、早くも世界選手権ロッテルダム大会の第一次選考会、「直通鹿特丹(直通ロッテルダム)」がスタートする。

Photo上:劉国梁監督、ベテランの労をねぎらいながら、若手には厳しいコメント
Photo下:激動の1年を乗り切った馬琳