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中国リポート

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 今年9月1日、ついにノングルー時代の幕が開いた。トップ選手のほぼ100%が使用していたスピードグルーは禁止となり、すでに1年前からノングルー時代を迎えた日本では、あの有機溶剤系の強烈な刺激臭も、はや追憶の彼方へと消えつつある。
 2008中国超級リーグでも、開幕直前にラケットコントロール(検査)に関する通知が出され、すべての試合でラケットの検査が行われている。9月24日に発布された「2008中国卓球クラブ超級リーグ ラケットコントロールの方法に関する通知」の内容を紹介しよう。

 まず、ラケットコントロールは超級リーグのすべての試合で、すべての選手に対して行われる。検査に使用されるのはITTF公認の検査機器「ENEZ(イーネッツ)」だ。各クラブは少なくとも1台の検査機器を配備することが求められる。
 ラケットコントロールが行われるのは、試合開始の30分前。選手全員のラケットが集められ、検査終了後、ラケットは試合責任者が保管する。第1試合を戦う選手は、ラケットを受け取ってそのままコートに入り、第2試合以降の選手は、検査を通過したラケットを受け取っても良いし、そのまま預けておいて、自分の出番の時に受け取っても良い。ただし、検査が終わってすぐにラケットを受け取った選手は、自分が出場する試合の前の試合(第4試合に出場なら第3試合)が始まると同時に、ラケットを再び検査に提出しなければならない。これはすり替えを防ぐためだが、実際にはラケットをそのまま預けておく選手がほとんどだろう。

 また、ラケットコントロールでトラブルが発生しないよう、選手たちは自主的に事前検査を行う。事前検査とラケットコントロールには、双方のチームから1名ずつ現場監督を派遣、事前検査は朝10時から行われる相互ミーティングの直後に行われる。その他にも、条文3-1には「ホーム・アウェーの選手とも、少なくとも1本のスペアラケット、および水溶性接着剤と何枚かのラバーを準備しておくことが望ましい(ラバーは事前に空気に触れさせておくこと)」という一文もあり、文章を見る限り、ノングルーへの取り組みはなかなかしっかりしている。

 ただし、もともと粘着性ラバーに十回、二十回とグルーイングをしていた中国選手たち。バック面ならまだしも、弾むからといってフォア面にいきなりドイツ系のテンションラバーを貼るわけにはいかない。検査機器に反応しない補助剤の使用、またラケットの平坦性を失わない程度に中央部分にだけ補助剤を塗り、厚さで検査にひっかからないようにするなど、抜け道もいろいろ模索されているようだ。「ENEZ」が補助剤に対して確実な検査機器でない以上、ルールでは禁止されているとはいえ、補助剤を使い続ける選手が後を絶たないだろう。
 中国はどのようにノングルーに対応していくのか。秋の欧州プロツアーシリーズでの中国選手の戦いぶりにも注目してみたい。

Photo:中国選手の中でも、すばやくノングルーに対応しているハオ帥。ノングルー後、初の国際大会であるパナソニック中国オープンで優勝、復活の兆しを見せている
☆☆☆ 08超級聯賽女子組 第4節 ☆☆☆

[北京時博国際 3-0 冀中能源]
○張怡寧 7、4、8 牛剣鋒
○丁寧 5、9、10 賈君
○丁寧/彭雪 10、12、8 白楊/牛剣鋒

[江蘇中超電纜 3-1 北京北大方正]
范瑛 -7、-9、11、7、-7 陳晴○
○姚彦 4、8、6 リ・ジャウェイ
○張瀟玉/王シュアン -10、-7、6、6、5 高曦/劉純
○姚彦 10、9、7 陳晴

[魯能・路安集団 3-0 大同雲崗・雁北賓館]
○馮天薇 -9、2、8、9 馮亜蘭
○李暁霞 8、4、9 姜華君
○李楠/彭陸洋 4、5、11 李暁丹/姜華君

[山西大土河華東理工 3-0 八一工商銀行]
○饒静文 -6、7、-12、8、7 曹臻
○郭炎 3、6、6 楊揚
○饒静文/劉娟 7、8、10 木子/文佳

[遼寧鞍鋼 3-1 広東珠江怡景湾]
○郭躍 9、-10、6、7 曹幸ニィ
 唐イェ序 -9、-8、-8 劉詩ウェン○
○常晨晨/唐イェ序 8、8、3 周芳芳/蔡賽
○郭躍 6、8、8 劉詩ウェン

 ワンサイドのゲームが多かった08超級リーグ女子第4節、遼寧鞍鋼が4連勝で首位をがっちりキープした。エース郭躍は故郷・鞍山市の鞍鋼体育館で行われたこの試合で、シングルスでの連勝を8に伸ばしている。トップの曹幸ニィ戦の第4ゲームで左肘を台にぶつけ、流血するアクシデントがあったが、応急処置を受けてこの試合を3-1で制すると、続く4番でも好調・劉詩ウェンに完勝。国家チームではともに孔令輝コーチの指導を受けるふたりだが、現時点ではやはり姉弟子(?)である郭躍に軍配が上がるようだ。

 その他の試合では、北京時博国際が冀中能源を一蹴して連敗を2でストップ。丁寧が単複で2点取り、疲労のたまっている張怡寧をしっかりアシストした。次節では、今シーズン北京から移籍した郭炎のいる山西大土河華東理工と対戦する。その山西大土河華東理工は、八一工商銀行にストレート勝ちして、八一の4連勝を阻止。前節で張怡寧に勝った楊揚は、郭炎の前に沈黙した。魯能・路安集団は馮天薇がシングルスで初勝利を挙げ、最下位の大同雲崗・雁北賓館を下した。

Photo:次節で古巣と対戦する郭炎、張怡寧との対戦は実現するか 
★★★ 08超級聯賽男子組 第4節 ★★★ ※八一工商銀行は試合なし

[四川全興 3-2 浙商銀行]
 邱貽可 -10、3、-6、9、-4 水谷○
 ハオ帥 9、-1、5、-8、-8 馬琳○
○ハオ帥/李静 8、-10、2、8 水谷/張超
○邱貽可 7、8、9 馬琳
○李静 -10、7、10、-3、6 張超

[寧波北侖海天 3-1 江蘇江南電纜]
 呉尚垠 -11、-10、-6 陳杞○
○馬龍 4、6、6 林晨
○呉ハオ/呉尚垠 9、、8 林晨/單明杰
○馬龍 9、2、8 陳杞

[魯能中超電纜 3-1 錦州銀行]
○張継科 5、8、-9、7 徐輝
 唐鵬 -9、10、-9、-9 雷振華○
○柳洋/周シン 6、-7、10、6 徐輝/ジャク一鳴
○張継科 8、-3、12、-9、4 雷振華

[上海冠生園 3-0 海寧皮革城鵬翔]
○王励勤 7、7、10 陳剣
○高礼澤 8、-10、11、8 李平
○許シン/張洋 6、8、10 陳剣/沙陳武

 浙商銀行の水谷隼(明治大/スヴェンソン)が、四川全興戦のトップで邱貽可を破り、超級リーグのシングルス初勝利を挙げた。邱貽可はこれまで王励勤(上海冠生園)らを破り、シングルス4連勝中だっただけに、価値ある勝利、そして記念すべき1勝だ。超級リーグのシングルスで勝利を挙げたのは、小西杏、松下浩二、福原愛に続いて4人目となる。
 しかし、水谷は3番では開幕戦で勝利した張超とのダブルスで敗れ、チームも2-0のリードから逆転負け。4番で邱貽可に完敗した馬琳は、2番のハオ帥との激戦で体力を消耗していたようだ。今シーズンのキーマッチとなる一戦は四川全興に軍配が上がり、四川全興は開幕から無傷の4連勝となった。

 その他の試合では、上海冠生園が海寧皮革城鵬翔を下して今季初勝利。海寧皮革城鵬翔はエースの李平が4連敗と振るわず、チームも4連敗。最下位への道を突き進んでいる。寧波北侖海天は馬龍が完璧なプレーで2得点。寧波北侖海天の劉国棟監督も「馬龍は中国のドラゴンだ。この2年のうちに、彼は周りをあっと言わせるような成績を挙げるだろう」と手放しで誉め讃えた。
 これで第1ステージ全9節のうち、4節が終了。ここまでの男子シングルスの個人成績を見てみると、馬龍が6勝0敗、張継科が7勝1敗、邱貽可が5勝1敗と若くてパワーのあるシェークドライブ型が成績を伸ばしている。五輪代表組が調整不足で伸び悩んでいることを差し引いても、若手の躍進の裏には、少なからずノングルーが影響しているようだ。

Photo:記念すべき初勝利、水谷隼(写真は08北京五輪)
Photo:水谷にとっては恐るべきライバル、馬龍(写真は07プロツアーファイナル)
 2008年世界団体選手権広州大会、北京五輪でシンガポール女子チームを銀メダルに導いた名将・劉国棟(リウ・グオトン)監督が、任期となる今年いっぱいで監督の座を退く見通しとなった。シンガポールの中華系メディアなどが伝えた。

 劉国棟監督は現中国男子チームの劉国梁監督の実兄。2006年にシンガポールと今年12月31日までの契約(総監督および女子監督)を結び、現在シンガポール卓球協会と再契約に向けた話し合いが進んでいるが、金銭面と監督に与えられる権限について、両者の折り合いがついていないようだ。「私は自分が尊重されていないのを感じ、完全に話し合う余地はないと思った。金額が問題なのではない、私のことを認めてくれているかどうかが大事」(劉国棟監督)。

 『体壇周報』によると、北京五輪の男子シングルスで、男子チームのエースであるガオ・ニンの試合にベンチコーチが入らず、ガオ・ニンは3回戦で敗れた。この件に関して、シンガポール卓球総会の李美花会長が「調査が必要」と発言、「劉国棟総監督と李斌漢マネージャーが引責辞任か」というニュースも流れ、このことが劉国棟監督の不信感を深めた可能性もある。
 劉国棟監督には北京五輪終了後、ヨーロッパ、アジア、南アメリカなどから監督就任のオファーが相次いでおり、相当高額な年棒も提示されているようだ。「シンガポールとの新しい契約では、監督がチームを管理する権限が大幅に縮小されていた。これが私が契約延長を望まない主な原因だ。もし私に十分に力を発揮させてくれるチームがあるならば、どんなチームであろうと、ロンドン五輪でメダルを獲らせる自信がある」(劉国棟監督)。

 留任の可能性はゼロではないとしながらも、劉国棟監督がシンガポールチームを去る公算が大きくなった。北京五輪のシンデレラガール・馮天薇などは劉国棟監督が鍛えた選手で、彼女自身も「劉監督がいなければ今の私はなかった」と発言しているが、監督が去ったあとはどのような判断を下すのか。

Photo:猛特訓で馮天薇(写真右)を鍛え上げた劉国棟監督(同左)。ふたりの未来は…?
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 昨日、幣紙の17判に掲載した「李厚霖とリ・ジャウェイ、9月末に北京で結婚」の記事で、李厚霖氏の結婚に関する報道は本人に確認を取ったものではありません。李厚霖氏のこれを否定する声明が発表されたあと、当社ではその真偽を調査し、この記事の内容が真実ではないことが実証されました。幣紙は真実を伝えるという報道の原則と、「実事求是(事実に基づいて真実を求める)」の精神に基づき、幣紙記者による取材上のミスがリ・ジャウェイ、李厚霖両氏に精神的損害を与え、多大なご迷惑をおかけしたことに心からお詫びするとともに、多くの読者の方々に心から遺憾の意を表します。

成都晩報社 2008年10月8日

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 これは中国・四川省の新聞社である成都晩報社が10月8日に発した謝罪文だ。9月末、シンガポール女子チームのエース、リ・ジャウェイは故郷の北京でひとりの男性と婚約した。今年1月にシンガポールバドミントン男子チームのエース、スシロと婚約を解消してまだ8カ月余りだが、相手の名前は明らかにされていなかった。そこを成都晩報社がいきなり「リ・ジャウェイ結婚! 夫はあの李厚霖!」とスッパ抜いたわけだ。
 ところがこのスクープ記事、なんと完全な誤報。リ・ジャウェイ曰く「一体どこからそんな話が出てきたのかと、凄くビックリしました。婚約したのは事実ですが、李厚霖氏とは一度も会ったことはありません」。李厚霖氏からも「会ったことすらない!」と否定され、上述の謝罪文へと至った。

 「リ・ジャウェイの夫!」と報道された李厚霖氏は、“宝石王”の異名を取る恒信国際宝石機構の董事長。北京や上海、天津などの目抜き通りに巨大なジュエリーショップを構え、35歳にして巨万の富を築いたと言われている。05年12月に有名な女性司会者の李湘と盛大な結婚式を挙げながら、1年半で離婚。「ビジネスはダイヤ、マリッジはガラス」と皮肉を込めて報道したマスコミもあった。なかなかに噂の多い人物で、やはり多少は火種がないと煙も立たないのか…。
 もっとも、災難なのはその煙に巻かれたリ・ジャウェイ。リ・ジャウェイの本当のフィアンセは誰だ、と報道が過熱しそうなところで、例の王皓の酒乱事件にかき消されたこのニュース。リ・ジャウェイにしてみれば、矛先(ほこさき)が別に向けられてほっと一息、というところかもしれない。

Photo:8日の超級リーグ第2節では、李楠と李暁霞を連破したリ・ジャウェイ。結婚相手と誤解された李厚霖氏、その前妻である李湘さん、登場人物はみんな「李」さんでした
☆☆☆ 08超級聯賽女子組 第3節 ☆☆☆

[八一工商銀行 3-0 北京時博国際]
○曹臻 -11、4、9、10 丁寧
○楊揚 10、8、-7、9 張怡寧
○木子/文佳 -9、9、11、9 丁寧/彭雪

[山西大土河華東理工 3-1 大同雲崗・雁北賓館]
 郭炎 -9、8、-4、-6 馮亜蘭○
○饒静文 9、-4、9、7 姜華君
○饒静文/劉娟 8、11、7 馮亜蘭/李暁丹
○郭炎 -7、8、-9、8、8 姜華君

[広東珠江怡景湾 3-0 山東魯能]
○曹幸ニィ -12、3、9、-8、5 李暁霞
○劉詩ウェン 8、11、1 馮天薇
○周芳芳/蔡賽 9、-8、9、-8、8 彭陸洋/李楠

[冀中能源 3-2 江蘇中超電纜]
○牛剣鋒 3、-9、5、7 范瑛
 賈君 -12、10、-6、-6 姚彦○
○牛剣鋒/白楊 -4、7、-11、3、4 張瀟玉/王シュアン
 賈君 -4、7、-1、-8 范瑛○
○白楊 6、-4、8、-12、7 張瀟玉

[遼寧鞍鋼 3-2 北京北大方正]
○郭躍 -10、3、2、5 劉純
 唐イェ序 -9、-13、7、7、-10 リ・ジャウェイ○
 唐イェ序/常晨晨 -5、8、-7、-10 劉純/高曦○
○郭躍 -7、5、10、6 リ・ジャウェイ
○常晨晨 8、-6、7、3 高曦

 北京時博国際の張怡寧が、八一工商銀行の伏兵・楊揚にまさかの敗戦。第4ゲーム8-4のリードから逆転を許したのが響いた。07年世界ジュニアチャンピオンの楊揚は、比較的中陣でプレーする右シェークの両ハンドドライブ型。「超級リーグに絶対の強者はいない」と改めて印象づける一戦となった。
 八一工商銀行の戴麗麗監督は以下のようにコメント。「張怡寧はオリンピックが終わってからずっと計画的な練習をしていないし、まだベストの状態ではないと思っていました。加えてノングルーになったことで、うちの選手たちは勝つチャンスを狙っていた。彼女たちは張怡寧より、ノングルーに適応できる時間が少し長いわけですから。張怡寧が完全に適応してしまってからではノーチャンスです。楊揚には試合前に『変な迷信は捨てなさい。相手が張怡寧だから勝てないと思ったらダメ』と言いました(出典:中国体育報)」。

 また、優勝候補筆頭の山東魯能は、トップで李暁霞が広東珠江怡景湾のベテラン・曹幸ニィに敗れたのが響き、まさかのストレート負け。この1次リーグだけでは優勝は決まらないが、戦線はまさに混沌。順位がまったく読めない状況になってきた。そんな中で、ここまで唯一の3連勝が遼寧鞍鋼。王楠の抜けた穴を埋めるには、助っ人の唐イェ序はやや役不足のようだが、エース郭躍がシングルス6連勝と完璧。グイグイとチームを引っ張っている。短期決戦の今シーズン、エースの好不調が戦況を大きく左右しそうだ。

Photo上:張怡寧を破った楊揚。07年世界ジュニア表彰でのキュートな笑顔
Photo下:広東珠江怡景湾の精神的支柱である曹幸ニィ。16歳まで全日制の学校に進み、1日3時間しか練習しなかったという異色の選手。
★★★ 08超級聯賽男子組 第3節 ★★★ ※海寧皮革城鵬翔は試合なし

[寧波北侖海天 3-1 上海冠生園]
 呉尚垠 -7、-8、-9 王励勤○
○馬龍 -8、3、5、6 高礼澤
○呉尚垠/呉ハオ 5、-9、8、10 高礼澤/張洋
○馬龍 8、-6、7、10 王励勤

[浙商銀行 3-1 錦州銀行]
○馬琳 -8、5、9、-6、11 徐輝
 張超 -8、-3、-7 雷振華○
○張超 -8、11、3、5 徐輝/ジャク一鳴
○馬琳 -4、7、-9、7、9 雷振華

[山東魯能 3-1 江蘇江南電纜]
○柳洋 -4、9、11、-6、8 陳杞
○張継科 9、5、4 林晨
 柳洋/周シン 10、-4、-8、-9 林晨/單明杰○
○張継科 -7、8、7、5 陳杞

[四川全興 3-0 八一工商銀行]
○邱貽可 8、9、-9、-9、6 徐克
○ハオ帥 8、-5、8、-9、8 王皓
○ハオ帥/李静 10、7、-6、11 徐克/楊暁夫

 四川全興がホームで八一工商銀行をストレートで破り、男子超級リーグで唯一の3連勝。2番でハオ帥が王皓を破った時点で、試合の大勢は決まった。
 やや憔悴した表情で試合会場に現れたという王皓、試合後には「もちろん良いプレーがしたかったけど、いくつかの原因で影響を受け、プレッシャーを感じてしまいました。プレーにも問題が生じてしまった」とコメント。当然、記者からも「泥酔事件でプレーに影響はありましたか?」という質問があったが、「その件に関しては、もう監督が答えているでしょう…(出典:ともに城市快報)」と言葉少な。足早に試合会場をあとにした。
 それでも、やはり五輪金メダリストのネームバリューは抜群なのか、会場には1万人近い観客が詰めかけ、体育館の周りは王皓の登場を待つファンで黒山の人だかり。対照的に、四川全興のハオ帥や邱貽可には、サインを求める人もほとんどいなかったとのこと。

 八一工商銀行の王涛監督は、クラブとして王皓に処罰は下すが、超級リーグへの出場には影響はないとのこと。戦力的にも王皓のワンマンチームであり、エースを欠場させるわけにはいかないのだろう。国家チームの劉国梁監督も「ある報道では、王皓が『俺は世界チャンピオンの王皓だぞ、おまえを殴ったからどうだっていうんだ!』と叫んだというが、そんなことはあり得ない。王皓のことを知っている人間は、そんなに乱暴な性格ではないことを皆よく知っているはずだ。彼はとても内気な性格だ」とコメントしている。内気な人間が酒を飲んで豹変するのも良くあることだが…、果たしていかなる処分が下されるのか。

 その他の試合では、上海冠生園のエース王励勤が、寧波北侖海天の馬龍に1-3で敗退。王励勤がシングルス2点を取らないと苦しいチームだが、2試合連続で相手チームに決勝点を献上。江蘇江南電纜の陳杞も、トップでオーダーを外してきた山東魯能の柳洋に敗れ、チームも初黒星。相変わらずのムラの多さを露呈してしまった。

Photo上:王皓、超級リーグへの出場は問題なし
Photo下:最近は王励勤には分が良い馬龍
 10月9日の深夜11時過ぎ、北京市中心部の西城区にある大型ビル、騰達大厦でひとりの若い男がガードマンと揉み合いになった。男はしたたかに酔っており、駐車場の花壇で立ち小便をしていたのを、ガードマンに止められたのだ。4~5人のガードマンや駐車場の管理人まで現れ、ちょっとした騒ぎになったが、男は通報を受けた警察官によって近くにある甘家口派出所まで連行された。
 その夜のうちに男はガードマンたちに謝罪し、大きな事件にはならずに済んだが、「悪事千里を走る」のことわざどおり、男の名前は中国全土を駆け巡った。8月の北京五輪で団体金メダル、シングルス銀メダルを獲得したばかりの王皓だ。

 ガードマンたちと揉み合いになった際に「有名な王皓だぞ!」「俺は世界チャンピオンだ!」「おまえを殴ったから何だっていうんだ!」と怒鳴ったり、ガードマンを4回蹴飛ばしたとも報道されている。中国のマスコミは誤報や誇大表現が多いので、すべてを鵜呑みにするわけにはいかないが、泥酔して暴れたことは確かなようだ。裏面打法の教祖のご乱行、決して伝えたいニュースではない。

 現在は超級リーグのシーズン中のため、国家チームの選手たちはそれぞれの所属する省チームに戻り、国家チームとしての管理下にはない。国家チームのマネージャーである黄ピャオ氏も「各クラブの選手への管理強化を望むとともに、国家チームはクラブの処罰を尊重する」と発言している。王皓の場合は所属が人民解放軍=軍隊のため、母体の処罰を尊重するということだろう。しかし、今後国家チームからも処罰が下される可能性はありそうだ。
 八一解放軍チームの王涛総監督によれば、王皓の処分は近いうちに決定され、超級リーグには出場させるとのこと。当初は王皓の申し出で2,000元(約3万円)をガードマンに賠償することになっていたのが、翌日になって相手側が賠償額を1万元(約15万円)につり上げてきたことが王涛を怒らせているようだが、すべて身から出たサビだろう。

 中国では全スポーツ選手の模範たる卓球選手、しかも人民解放軍の軍人である王皓。酒の上での失敗とはいえ、この汚名を返上するのは並大抵ではない。

Photo:北京五輪シングルス表彰で敬礼する王皓。軍人が酒に飲まれては…
☆☆☆ 08超級聯賽女子組 第2節 ☆☆☆
[江蘇中超電纜 3-2 北京時博国際]
 姚彦 7、-6、-8、-4 張怡寧○
○范瑛 9、6、9 丁寧
○張瀟玉/王シュアン 4、7、8 彭雪/丁寧
 范瑛 -8、-9、-4 張怡寧○
○張瀟玉 -11、-6、4、8、5 彭雪

[遼寧鞍鋼 3-2 冀中能源]
○郭躍 4、-9、3、3 牛剣鋒
 唐イェ序 -9、-7、-8 賈君○
 唐イェ序/常晨晨 10、-7、-7、10、-7 牛剣鋒/白楊○
○郭躍 6、3、4 賈君
○常晨晨 -4、7、-9、9、7 白楊

[北京北大方正 3-1 魯能・路安集団]
○リ・ジャウェイ -6、-2、9、9、13 李楠
 劉純 -7、-9、-3 李暁霞○
○劉純/高曦 9、-3、11、10 彭陸洋/李楠
○リ・ジャウェイ 5、-3、11、10 李暁霞

[八一工商銀行 3-1 大同雲崗・雁北賓館]
○曹臻 7、7、6 武楊
 木子 5、-11、-9、5、-5 姜華君○
○木子/文佳 5、8、3 李暁丹/楊飛飛
○曹臻 9、14、-9、-9、9 姜華君

[広東珠江怡景湾 3-1 山西大土河華東理工]
 曹幸ニィ -6、-10、9、-8 郭炎○
○劉詩ウェン 8、12、-6、4 帖雅娜
○周芳芳/蔡賽 -9、4、2、7 饒静文/劉娟
○劉詩ウェン 5、8、8 郭炎

 超級女子第2節は波乱の連続。北京時博国際が江蘇中超電纜、魯能・路安集団が北京北大方正と、いずれも格下と見られたチームに敗れた。山西大土河華東理工も、広東珠江怡景湾のエース劉詩ウェンに2点を奪われて敗れている。劉詩ウェンに対しては、広東珠江怡景湾の楊華杰総監督も「劉詩ウェンは以前、リードした時に守りに入ることが良くあったが、今では相手への対応力に精神面の安定感、どれを取ってもはっきりと成長の跡が見られる」と教え子を賞賛した。

 男子同様、女子も2戦全勝としたのは遼寧鞍鋼と八一工商銀行のみ。戦況は早くも混沌としてきた。張怡寧が2点取りながら他の3点を若手が落とした北京時博国際。「負けるとしたらこのパターンしかない」というパターンに早くもハマッてしまったが、むしろサプライズは魯能・路安集団の敗戦。北京北大方正のエース、リ・ジャウェイがトップの李楠戦で2ゲーム落としたところから大爆発。李暁霞でさえその猛打を防ぐことはできなかった。助っ人として完璧な働きを見せたリ・ジャウェイだが、実は彼女は今、超級リーグどころではない報道合戦に巻き込まれている。それは決してリ・ジャウェイに非のあることではないのだが…、その件に関してはまた後日のリポートをお待ちください。

Photo上:リ・ジャウェイ、大爆発
Photo下:昨季の超級リーグでブレイクした劉詩ウェン。今季も出足から4連勝
★★★ 08超級聯賽男子組 第2節 ★★★ ※上海冠生園は試合なし

[山東魯能 3-2 寧波北侖海天]
 唐鵬 -6、-9、9、-8 馬龍○
○張継科 12、3、2 呉尚垠
○柳洋/周シン 9、4、9 呉尚垠/呉ハオ
 張継科 -8、-6、-6 馬龍○
○柳洋 -5、3、7、8 呉ハオ

[四川全興 3-0 海寧皮革城鵬翔]
○邱貽可 -2、7、2、6 陳剣
○ハオ帥 8、5、7 李平
○邱貽可/李静 4、9、-5、5 李平/沙陳武

[江蘇江南電纜 3-1 浙商銀行]
○陳杞 5、3、10 ヤン・ツー
 林晨 -8、-7、8、-8 馬琳○
○林晨/單明杰 6、5、7 張超/ヤン・ツー
○陳杞 -13、11、-11、8、7 馬琳

[八一工商銀行 3-1 錦州銀行]
 徐克 -4、-8、-7 雷振華○
○王皓 7、5、11 徐輝
○徐克/楊暁夫 12、-4、8、8 徐輝/ジャク一鳴
○王皓 -4、2、6、10 雷振華

 超級リーグ男子は思わぬ番狂わせ。優勝候補筆頭と目される浙商銀行が江蘇江南電纜に1-3で敗退。第2節にして全勝は四川全興と江蘇江南電纜の2チームだけになってしまった。
 浙商銀行の最大の誤算は、3番手の水谷が全日学出場で欠場したため、ヤン・ツーと張超で組んだダブルスの不調。同じく左右のシェークドライブ型のペアである林晨/單明杰にサービス・レシーブから先手を取られ、良いところなく敗れた。逆に林晨/單明杰は楊川寧監督が「うちのダブルスがあれほどのプレーをするとは、正直予想外だった」というほどの好調ぶり。4番陳杞も最後まで「キレない」戦いぶりで馬琳との激戦を制した。

 リーグ全体を見渡すと、陳杞、馬龍、張継科らの充実ぶりが目立つ。五輪代表メンバーとともに集合訓練を重ねながら、五輪本番や五輪後のイベントでの疲労がない彼らが活躍するのは不思議なことではない。また、四川全興の暴れん坊・邱貽可が3連勝と好スタート。出場停止と罰金に彩られた華やかな(?)経歴の持ち主が、ついに本気になったのか? 2012年ロンドン五輪を目指すことも十分可能ではあるが…。 

Photo上・下:トラブルメーカーの両巨頭、好発進。陳杞(上)と邱貽可