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中国リポート

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 9月30日、北京市のグランドハイアット北京で「中国五輪金メダリスト・チャリティーパーティ2008」が開催された。
 9月3日に広東省深セン市で国家卓球チームがチャリティオークションを行ったことは以前にお伝えしたが(中国リポート08/09/06「ラケット1本、落札額は1,800万円也」参照)、このようなスポーツ選手や歌手による慈善活動が、中国では本当に多いようだ。今回のチャリティーパーティには、卓球・バドミントン・水泳の飛込み・体操という、中国の誇る四大ドリームチームの選手たちが主に参加した。

 オークションのトップバッターとして登場した中国バドミントン界のビッグカップル、林丹と謝杏芳に続いて壇上に上がったのは、国家男女チーム監督の劉国梁と施之皓、張怡寧。三人が手にしていたのは、王励勤と馬琳、そして張怡寧は自分自身のサイン入りラケットだ。この中で張怡寧のラケットは、3万元(約45万円)からオークションがスタート。これだけでも信じられないプライスだが、オークションが始まるやいなや、あちこちから声が上がること15回。プライスは19万元(285万円)に達したところで声が止まった。
 ここでうまい助け舟を出したのが、パーティの司会を担当していた中国中央テレビ局のイケメンアナウンサー・魯健。ラケットにまつわる逸話が何かないかと張怡寧に質問すると、「このラケットは北京五輪の前後3カ月くらいに使っていたもの。シングルス準決勝のリ・ジャウェイ戦で使ったのもこれです(張怡寧)」。このひと言が決心させたのか、会場からなんと「40万!」という声が上がり、会場がどよめいた。日本円にして約600万円で落札したのは、香港から来たという張怡寧ファンの会社社長だ。

 ちなみにこのパーティには、飛込み競技の女王、そして中国スポーツ界のお騒がせ女王こと郭晶晶もサイン入りの水着を出品。まるで干物のように板に貼り付けられた水着は、30万元(約450万円)で落札された。張怡寧の人気が上回ったのが、張怡寧ファンの社長の熱意がまさったのか、とにもかくにもオークション女王の座は張怡寧が射止めた。
 この夜の最高落札額を記録したのは、23人の五輪金メダリストのサインが入った特別記念切手で、なんと100万元(約1500万円)。総額1918万元(約2億8,800万円)は、ほとんどが四川大地震の被災地へ送られ、学校の建設費に充てられるとのことだ。

Photo:団体表彰で郭躍とじゃれあう張怡寧。このペースでオークションが続くと、スペアラケットがなくなってしまいそうだ
 少し前のニュースになるが、北京五輪女子団体戦で、シンガポール独立以来初のメダルを獲得したシンガポール女子チームに対し、シンガポールオリンピック委員会(SNOC)は報奨金として75万シンガポールドル(約5,400万円)を授与。9月17日、シンガポールの観光名所である世界最大の観覧車「シンガポール・フライヤー」に隣接するホールで、授与式および祝賀パーティが開催された。

 シンガポールオリンピック委員会のテオ・チーヒエン会長から、75万シンガポールドルの大きなボードを受け取ったリ・ジャウェイ、王越古、馮天薇の3選手。このうち15万シンガポールドルはシンガポール卓球協会に持っていかれてしまい、ひとり当たりの報奨金は20万シンガポールドル(約1,440万円)となる。
 シンガポールには1995年からMAP(Multi-Million Dollar Award Program)という報奨金制度がある。団体戦の金メダルは報奨金150万シンガポールドル(約1億800万円)、シングルスの金メダルは100万シンガポールドル(約7200万円)というから、報奨金ではシンガポールが世界一と言われるのもうなずける。

 大金を手にした3選手だが、これまでにも東南アジアオリンピックなどで多くの報奨金を受けてきたリ・ジャウェイは、「賞金はみな同じお金。私にとってはメダルのほうが大事」とクールなコメント。王越古は、収入はすべて母親の管理に任せているそうだ。
 一方、この授与式の翌日、故郷である黒龍江省ハルビン市に帰省した馮天薇は、「このお金で母親に新しい家を買ってあげたい」と泣かせるコメント。15歳の時に父親を亡くした馮天薇は、これまで母親に収入のほとんどを渡し続けている。決して裕福ではない中で、彼女の母親は夫が病に倒れたあとも、体育学校の学費を必死で稼いでくれたそうだ。母親に少しでも多くのお金を送ることが、馮天薇のモチベーションのひとつになっているのだろう。「ロンドン五輪では必ずシングルスのメダルを獲る」と明言、まだまだ強くなりそうな22歳だ。

Photo上・中:表彰式の様子と、初めて五輪で掲揚されたシンガポール国旗(左端)
Photo下:真摯なプレーにも好感が持てる馮天薇

☆☆☆ 08中国超級リーグ・女子開幕戦 ☆☆☆
[北京時博国際 3-1 大同雲崗・雁北賓館]
○丁寧 9、7、5 姜華君
○張怡寧 5、4、5 馮亜蘭
 丁寧/彭雪 -9、-7、6、-12 馮亜蘭/李暁丹○
○張怡寧 8、-9、9、4 姜華君

[八一工商銀行 3-2 広東珠江怡景湾]
 文佳 -4、-10、-8 劉詩ウェン○
○曹臻 -8、8、10、-4、5 曹幸ニィ
○木子/文佳 6、-8、7、5 曹幸ニィ/周芳芳
 曹臻 -6、6、9、-9、-9 劉詩ウェン○
○木子 9、5、4 周芳芳

[山西大土河華東理工 3-0 北京北大方正]
○郭炎 8、4、7 陳晴
○帖雅娜 5、10、-3、4 リ・ジャウェイ
○饒静文/劉娟 7、9、11 陳晴/高曦 

[遼寧鞍鋼 3-1 江蘇中超電纜]
○郭躍 4、-6、-10、8、1 姚彦
 唐イェ序 -6、-7、-9 范瑛○
○唐イェ序/常晨晨 9、8、10 姚彦/王シュアン
○郭躍 5、7、-7、9 范瑛

[魯能・路安集団 3-1 冀中能源]
○李暁霞 3、6、5 牛剣鋒
 馮天薇 -6、-8、9、3、-7 賈君○
○彭陸洋/李楠 6、9、14 牛剣鋒/白楊
○李暁霞 3、2、10 賈君

 超級リーグの女子開幕戦は、大きな番狂わせはなく、ほぼ順当な結果。男子は五輪代表が苦戦したが、女子の張怡寧と郭躍はシングルスできっちり2点を挙げ、チームを勝利へ導いた。特に郭躍は王楠が抜けたシーズンの開幕戦だっただけに、プレッシャーも相当あったのではないだろうか。この試合には先月末に結婚式を挙げたばかりの王楠も観戦に訪れ、「(遼寧チームの)選手たちのプレーはとても良かったし、気合いが入っていた。特に郭躍はずいぶん成長してきました」と後輩たちにエールを送った。
 姜華君、リ・ジャウェイ、唐イェ序、馮天薇といった海外への移住選手たちは、いずれもシングルスで敗れている。世界ランキングでトップ10に入るクラスの選手たちが1勝も挙げられないとは、超級リーグ恐るべし、である。

 今季は第1ステージが全9節で行われるため、取りこぼしは許されない超級リーグ。各チームはまず優勝の可能性がある4位までに入り、1~4位のチームで行われる優勝決定ステージを目指すことになる。

Photo上:張怡寧、「張怡寧キラー」と言われた姜華君にきっちり勝利
Photo下:遼寧鞍鋼のニューリーダー、郭躍
 10月4日(土)に開幕した08中国超級リーグ。男子は今シーズン9チームに減ってしまったため、これから毎試合1チームずつお休みだ。9チームのまま開幕させてしまうあたり、「超級」リーグにしてはなんともアバウトだが…。では開幕戦は全試合のスコアをお伝えします!

★★★ 08中国超級リーグ・男子開幕戦 ★★★
※左側がホームチーム

[浙商銀行 3-2 魯能中超電纜]
○馬琳 7、11、5 唐鵬
 水谷 -9、-9、-10 張継科○
○水谷/張超 1、12、-4、5 柳洋/周シン
 馬琳 -5、-9、-7 張継科○
○張超 8、3、-9、10 周シン

[江蘇江南電纜 3-2 八一工商銀行]
 陳杞 -5、3、-5、-6 徐克○
 朱江 -8、-12、-7 王皓○
○林晨/單明杰 12、-9、7、5 李陟/楊暁夫
○陳杞 -5、3、8、-9、9 王皓
○林晨 5、9、7 李陟

[四川全興 3-1 上海冠生園]
 ハオ帥 -6、-5、9、-4 王励勤○
○邱貽可 -7、4、10、10 許シン
○ハオ帥/李静 -8、5、7、9 許シン/張洋
○邱貽可 6、10、9 王励勤

[錦州銀行 3-0 海寧皮革城鵬翔]
○雷振華 4、7、6 陳剣
○徐輝 6、-12、6、6 李平
○徐輝/ジャク一鳴 10、5、-10、4 陳剣/沙陳斌

 08超級リーグ男子開幕戦は、馬琳、王皓、王励勤という北京五輪の表彰台を独占した3人が、いずれもシングルスで破れる波乱の幕開けとなった。もっとも、五輪代表選手たちには五輪での疲労に加え、大会終了後にイベントが続き、練習量が確保できていないこと、またノングルーへの対応が他の選手より遅れているというハンディもある。この結果も必ずしも波乱とは言い切れない。

 王励勤の上海冠生園、王皓の八一工商銀行がエースの黒星とともに敗戦を喫したのに対し、浙商銀行は馬琳が敗れながらも、水谷と張超の踏ん張りで勝ち星を掴んだ。この一勝は優勝に向けての大きな一歩だ。その他勝利したチームでは、四川全興が新エースのハオ帥ではなく、邱貽可をシングルス2点起用。この采配がズバリと当たり、邱貽可が2勝を挙げて絶好のスタートを切った。超級リーグの暴れん坊は力が有り余っているのかもしれない。

 なお、昨季までは1チーム3人が出場するABC-XYZ方式で行われていた超級リーグだが、今季からはチームの1・2番手のA・B、もしくはX・Yのいずれかに、3~5番手の選手をひとり代替で出場させてもよいことになった。そのため、上記のオーダーでも魯能中超電纜や八一工商銀行は、4人でオーダーを組んでいる。08超級リーグ、第2節は10月8日に行われる。

Photo上・中・下:さすがにちょっと休みたい? 3人とも単1勝1敗の五輪代表トリオ
 9月28日、北京市西城区にある北京什刹海体育運動学校で、創設50周年の記念式典が盛大に開催された。
 これまでに7名の五輪金メダリストと33名の世界チャンピオンを輩出してきた什刹海体育運動学校は、1958年創立。中国の体育学校の中でも、最も早く創立された学校のひとつだ。優れた成績を残している卓球をはじめ、武術・バレーボール・体操・バドミントンなど10競技のトレーニングコースが開設され、海外からも多くの留学生を受け入れている。

 中国スポーツ界のオールスターズが集結した記念式典の司会を務めたのは、92年バルセロナ五輪複金メダリストの王涛。もちろん彼も什刹海の卒業生だ。張怡寧や郭炎、リ・ジャウェイといった卒業生たちも会場を訪れ、壇上で祝辞を述べた。その他にリュウ・ジャ(オーストリア)やウー・シュエ(ドミニカ共和国)が同校の出身であることは以前述べたが、なにしろ北京五輪の女子シングルスベスト8のうち、張怡寧、リ・ジャウェイ、ウー・シュエ、王晨と什刹海OGが4人もいる。

 「私を育ててくれたこの什刹海体育学校と、先生方に心からお礼を言いたいと思います。今の私があるのは皆さんのおかげです。これからもさらに多くの世界チャンピオンが育つことを願っています」と述べた張怡寧。北京五輪2冠王の称号を胸に、晴れやかな気持ちで母校の門をくぐったのではないだろうか。

Photo上:五輪団体表彰での張怡寧
Photo下:「今はシンガポール代表ですが、スポーツに国境はありません」と語ったリ・ジャウェイ
 大変遅くなりました! 女子超級リーグのチーム紹介、第3弾です。

■江蘇中超電纜(ジァンスゥ・ジョンチャオディエンラン/江蘇省)
監督:王永剛(ワン・ヨンガン)
コーチ:呂宏(ルゥ・ホン)
選手:范瑛(ファン・イン/WR23/08フォルクスワーゲン韓国オープン3位)
   姚彦(ヤオ・イェン/WR28/07世界選手権ベスト16)
   張瀟玉(チャン・シァオユ/07甲Aリーグ団体優勝メンバー)
   王シュアン(王+旋)(ワン・シュアン/07甲Aリーグ団体優勝メンバー)
   王ティン(女+亭)(ワン・ティン)

 江蘇省にある江蘇中超電纜有限公司がスポンサーのチーム。しかし、このチームの形態は少し複雑だ。昨シーズン、女子超級リーグでは江蘇麗華快餐が最下位となって自動降格、甲Aリーグで優勝した黒龍江省卓協が昇格を決めたが、この江蘇中超電纜はその2チームが合体した形になっている。
 昨シーズン、チームのエース范瑛は江蘇麗華快餐、張瀟玉・王シュアン・王ティンの3人は黒龍江省卓協に所属しており、チームの監督は黒龍江省卓協の監督だった王永剛。一時日本に帰化し、吉富永剛として全日本選手権3位にもなっているので、ご記憶の方も多いだろう。スポンサーとエースは江蘇省、その他の選手と監督は黒龍江省、何とも奇妙なチームではある。まずは確実なリーグ残留が目標になりそうだ。

■冀中能源(ジィチョンノンユェン/河北省)
監督:劉麗莉(リウ・リィリィ)
選手:牛剣鋒(ニウ・ジェンフォン/WR18/03年プロツアーファイナル優勝)
   白楊(バイ・ヤン/05世界選手権混合複準優勝)
   賈君(ジァ・ジュン/WR98/07フランスオープンベスト16)
   呉チォン(王+京)(ウ・チォン/08全中国ジュニアベスト16)

 昨シーズンまでのスポンサーだった石炭企業の金能集団が、同じく石炭企業の峰峰集団と合併して冀中能源集団となった。「冀(き)」は河北省の別称だ。
 このチームで昨年エース級の働きを見せたのが右シェーク攻撃型の賈君。ラリー戦での強さを生かし、張怡寧、郭躍、帖雅娜らを次々と破るセンセーショナルな活躍を見せた。内蒙古自治区の区都フフハトの出身で、国家リーグ随一の美人選手という評判も。国家代表からは引退した牛剣鋒も健在で、牛剣鋒/白楊のダブルスはかなり強い。5~6位あたりをがっちりキープしそうだが、今シーズンはもう少し上を狙いたいところだ。

■山西大土河華東理工(シャンシー ダァドゥハァ ホアトンリィゴン/山西省)
監督:臧玉瑛(ツァン・ユイン)
選手:郭炎(グオ・イェン/WR5/06ワールドカップ優勝)
   饒静文(ラオ・ジンウェン/WR52/07ユニバーシアード4冠王)
   劉娟(リウ・ジュアン/WR144/05全中国運動会複3位)
   ★帖雅娜(ティエ・ヤナ-中国香港/WR10/08ワールドカップ準優勝)

 チームの母体は上海の強豪大学である華東理工大学、山西省の石炭企業大手である山西大土河有限責任公司がスポンサーとなっている。昨年は華東理工大出身の帖雅娜がエースだったが、今年は北京時博国際から郭炎を獲得。右シェーク異質攻撃型で伸び盛りの饒静文、左ペンドライブ型でダブルスにも強い劉娟とメンバーが揃っており、オーダーも多彩に組むことができる。郭炎が好調をキープできれば3位以内に食い込んでくる可能性あり。昨季9勝10敗の饒静文がどれだけ勝ち星を稼げるかがカギになりそうだ。

■大同雲崗・雁北賓館(ダァドンユンガン・イェンベイピングァン/山西省)
監督:ト幇民(ボォ・バンミン)
選手:馮亜蘭(フェン・ヤァラン/06世界ジュニア優勝)
   李暁丹(リ・シャオダン/WR75/07・08アジアジュニア優勝)
   武楊(ウ・ヤン/WR92/06世界ジュニア3位)
   楊飛飛(ヤン・フェイフェイ/07城市運動会複ベスト8)
   ★姜華君(ジァン・ホアジュン-中国香港/WR8/07プロツアーファイナルベスト8)

 世界文化遺産に登録されている雲崗石窟(うんこうせっくつ)で有名な大同市にある、大型ホテル・雁北賓館がスポンサー。女子超級リーグには魯能・路安集団、山西大土河華東理工、大同雲崗・雁北賓館と山西省の企業がスポンサーのチームが3つあるが、山西省チームを母体にしているのはこの大同雲崗・雁北賓館。昨シーズン甲Aリーグで2位となり、入れ替え戦を制して悲願の超級リーグ昇格を果たした。他の2チームは山西省の企業がスポンサーになっているだけだが、結果的に今シーズンの女子超級リーグは山西省で試合が多く行われることになった。
 エースの馮亜蘭は湖北省出身の選手だが、右シェークドライブ型の李暁丹、右シェークカット型の武楊は山西省期待の選手たちだ。助っ人の姜華君がポイントゲッターになると有利に試合が運べるが、姜は昨季4勝14敗と大ブレーキ。今季は若手選手を引っ張って、汚名返上といきたいところ。チームの目標は一にも二にも残留、ということになる。

 中国超級リーグはいよいよ明後日、10月4日に開幕だ!

Photo上:03・05年世界混合複2位、左シェーク両面表ソフトの白楊。冀中能源に所属
Photo中:山西大土河華東理工に移籍した郭炎
Photo下:05年は4勝7敗、06年は14勝7敗、07年は4勝14敗。調子の波が激しい姜華君
 女子超級リーグのメンバー紹介、第2弾では北京北大方正、遼寧鞍鋼、八一工商銀行をご紹介。リ・ジャウェイが加入した北京北大方正、女王・王楠が抜けて唐イェ序を獲得した遼寧鞍鋼、昨年の世界ジュニア代表を揃えた八一工商銀行の3チームです。

■北京北大方正(ベイジン ベイダァファンジョン/北京市)
選手:陳晴(チェン・チン/WR45/06アジア競技大会複3位)
   劉純(リウ・チュン/04全中国選手権ベスト16)
   高曦(ガオ・シ/01プロツアーファイナル複3位)
   ★リ・ジャウェイ(シンガポール/WR6/08北京五輪4位)

 スポンサーの北大方正集団公司は、中国屈指の名門大学・北京大学が出資して設立、急成長を続ける大手IT企業。孫晋、姚彦、馮亜蘭といったメンバーで昨シーズン5位だったが、今シーズンはメンバーが総入れ替え。エースのペン粒高攻守型・陳晴は国内では慣れられており、劉純や高曦にも大きな期待はかけられない。地元北京市出身のリ・ジャウェイが孤軍奮闘するシーズンになりそうだが、降格の危険性はかなり高いと言わざるを得ない。

■遼寧鞍鋼(リャオニン アンガン/遼寧省)
監督:谷振江(グゥ・ヂェンジァン)
選手:郭躍(グオ・ユエ/WR2/07世界選手権優勝)
   常晨晨(チャン・チェンチェン/WR32/07ロシアオープン優勝)
   侯曉旭(ホウ・シャオシュ/07全国城市運動会複優勝)
   ★唐イェ序(タン・イェソ-韓国/WR19/08北京五輪ベスト32)

 長くチームの顔として活躍した王楠がついに引退。これで名実ともに郭躍がチームのエースとなったが、昨シーズン13勝2敗の王楠が抜けた穴は大きい。その王楠を今年3月の五輪アジア予選、5月の荻村杯で破っている唐イェ序(中国名:唐娜)を獲得したが、それほど勝ち星は伸びないのではないか。2番手の常晨晨もこれまでの超級リーグでの成績は今ひとつ。充実したメンバーに見えるのだが、優勝するにはややパンチが足りない感あり。

■八一工商銀行(パァイー ゴンシャンインハン/解放軍)
監督:戴麗麗(ダイ・リィリィ)
コーチ:侯蘂(ホウ・ルイ)
選手:曹臻(ツァオ・ヂェン/WR14/07世界選手権混合複3位)
   文佳(ウェン・ジァ/WR93/07世界ジュニア準優勝)
   楊揚(ヤン・ヤン/WR82/07世界ジュニア優勝)
   木子(ムゥ・ズ/WR86/07世界ジュニア3位)

 07世界ジュニア選手権の代表3名を揃え、エースの曹臻もまだ21歳。平均年齢19歳を切るという女子超級リーグで最も若いチーム。85・87年世界選手権3位、名人芸のバックショートを武器に世界で活躍した戴麗麗がチームの指導にあたる。優勝するほどの戦力はないが、勢いに乗ると怖い。上位チームにとってはやっかいな存在になりそうだ。

Photo上:リ・ジャウェイは常にシングルス2点起用か
Photo下:現世界女王・郭躍。エースとしての戦いの中で、課題となるメンタルを強化したい
 間違いなく世界最高レベルの国内リーグである中国卓球クラブ超級リーグ。特に女子のレベルは非常に高く、10チームのうち5チームは世界団体選手権で優勝する戦力があり、残り5チームはベスト4に入る戦力がある。また超級リーグで五分の成績を残した選手は世界ランキングのトップ20に入る実力があり、20勝以上を挙げた選手はトップ5に入る実力があるだろう。
 昨シーズンは張怡寧と郭炎のいる北京首創が2連覇。しかし、今年は郭炎が北京首創を離れ、また遼寧鞍鋼の王楠が引退するなど、戦力図にかなりの変化があった。今年のチーム構成を見ていこう。


■魯能・路安集団(ルゥノン・ルゥアンジィトゥアン/山東省)
監督:唐誠(タン・チョン)
選手:李暁霞(リィ・シャオシア/WR3/07プロツアーファイナル優勝)
   彭陸洋(パン・ルゥヤン/WR39/07世界選手権ベスト8)
   李楠(リ・ナン/99世界選手権3位)
   ★馮天薇(フォン・ティエンウェイ/WR9/08北京五輪ベスト8)

 トップ選手を数多く輩出している山東魯能を、山西省の巨大石炭会社である路安集団がバックアップ。路安の路には実際はさんずいが付くが、中国リポートでは「路」で代用する。
 スーパーエースの李暁霞、長身の右シェークドライブ型・彭陸洋はともに山東魯能卓球クラブの出身。左ペンドライブ型で元世界3位の李楠は昨シーズン9勝を挙げ、若手にはまだまだ強い。加えて、今シーズンは伸び盛りの馮天薇がチームに加入。05年全中国運動会複優勝の李暁霞/彭陸洋を単複で起用し、馮天薇をシングルス2点起用するオーダーも組めるようになった。戦力的にも穴がなく、優勝候補の筆頭はこのチームだ。

■広東珠江怡景湾(グァントン ジュジィアンイージンワン/広東省)
監督:楊華杰(ヤン・ホアジエ)
選手:劉詩ウェン(リウ・シウェン/WR24/07世界選手権複ベスト8)
   曹幸ニィ(女+尼)(ツァオ・シンニィ/05全中国運動会ベスト16)
   麦楽楽(マイ・ラーラー/05全中国運動会ベスト8)
   周芳芳(ジョウ・ファンファン/03ベトナムオープン混合複3位)
   蔡賽(ツァイ・サイ)
   周沫(ジョウ・モォ)

 昨シーズン23勝8敗、張怡寧、郭躍、李暁霞らを連破した小さな大エース・劉詩ウェンがチームを引っ張る。2番手の右ペンドライブ型・曹幸ニィは30歳の大ベテランだが、昨シーズンは11勝4敗と文句のない成績。3番手の麦楽楽、4番手の周芳芳も侮れない実力の持ち主で、チームとしての総合力は高い。毎シーズン安定感のある戦いぶりを見せており、若いエースをチーム全体でもり立てていけば、思わぬダークホースになる可能性も。

■北京時博国際(ベイジン シィポォグオジィ/北京市)
監督:周樹森(ジョウ・シュセン)
コーチ:徐志崇(シュ・ジチョン)
選手:張怡寧(チャン・イニン/WR1/08北京五輪金メダリスト)
   丁寧(ディン・ニン/WR33/08パナソニック中国オープン3位)
   彭雪(パン・シュエ/05世界ジュニア準優勝)
   劉凱倫(リウ・カイルン/05世界ジュニア団体優勝メンバー)

 06・07年シーズンで2連覇を達成したディフェンディング・チャンピオンチーム。スポンサーの北京時博体育賽事有限公司は、スポーツ大会の運営や施設管理などを行っている。
 今シーズンは2番手だった郭炎がチームを離れ、戦力は大幅にダウン。不動のエースである張怡寧も、五輪後は故障のため大会を相次いでキャンセルしており、状態はあまり良くないようだ。3連覇は非常に厳しい状況だが、勝負度胸の良い2番手の丁寧が一気に伸びれば、チャンスはゼロではない。また逆に、張怡寧が故障で欠場する試合が多くなれば、一気に7、8位くらいまで落ちてしまう可能性もある。

Photo上:昨シーズン16勝3敗、勝率では超級リーグ1位だった李暁霞
Photo中:国際大会での起用はまだ少ない劉詩ウェン、ここからが正念場
Photo下:郭炎がチームを離れ、張怡寧には苦しいシーズンになりそうだ
 男子超級リーグのメンバー紹介、第3弾です!

■江蘇江南電纜(ジァンスゥ ジァンナンディエンラン/江蘇省)
監督:楊川寧(ヤン・チュアンニン)
コーチ:趙剛(ジャオ・ガン)
選手:陳杞(チェン・チィ/WR6/04アテネ五輪複金メダリスト)
   單明杰(シャン・ミンジエ/WR91/07ロシアオープン複ベスト16)
   林晨(リン・チェン/05アジアジュニア優勝)
   朱江(ジュ・ジァン/04全中国選手権混合複3位)

 スポンサーの無錫江南電纜はケーブルのメーカーで、電纜(日本語では「でんらん」)とはケーブルのこと。左シェークドライブ型で、地元江蘇省出身の陳杞がスーパーエース。しかし、陳杞は昨シーズン11勝13敗で首脳陣の期待を完全に裏切り、2番手以降がレベルが下がるため、得意のダブルスに起用するのも難しい状況。日本リーグのグランプリでプレーした朱江、左シェークドライブ型の林晨がともにシングルス5勝5敗と健闘し、リーグ残留を果たしたが、このチームもまずは8位以内に入って、確実にリーグ残留を決めたいところだ。

■上海冠生園(シャンハイ グァンションユェン/上海市)
監督:王家麟(ワン・ジァリン)
コーチ:馮ジェ(吉吉/フォン・ジェ)
選手:王励勤(ワン・リチン/WR4/07世界選手権優勝)
   許シン(日+斤)(シュ・シン/WR150/08パナソニック中国オープン3位)
   張洋(チャン・ヤン/03アジアカップ3位)
   高欣(ガオ・シン/07ユニバーシアード優勝)
   ★高礼澤(コ・ライチャク-香港/WR21/08北京五輪ベスト8)

 古豪・上海チームが4シーズンぶりに超級リーグに復帰、老舗食品・菓子メーカーの冠生園集団公司がスポンサーとなった。エース王励勤はこの冠生園のイメージキャラクターも務めている。2番手の許シンはテクニシャンタイプの左ペンドライブ型、昨シーズンは17歳ながら12勝13敗の堂々たる成績で、リーグの最優秀新人賞を獲得している。単複に渋い働きを見せる助っ人の高礼澤、07ユニバーシアード優勝の高欣と層の厚さもまずまずで、序盤で勢いに乗れば優勝戦線を賑わせる存在になりそう。

 ■魯能中超電纜(ルゥノン ジョンチャオディエンラン/山東省)
監督:谷青成(グゥ・チンチェン)
選手:柳洋(リウ・ヤン/04全中国選手権団体2位)
   張継科(チャン・ジィカ/WR49/08カタールオープン3位)
   郭刻歴(グオ・クゥリィ/01全中国運動会ベスト8)
   周シン(金×3)(ジョウ・シン/07全国城市運動会複優勝)
   ★唐鵬(タン・パン/WR32/07アジア選手権ベスト8)

 昨シーズンは戦力的に不利と言われながら、序盤戦で勝ち星を重ね、上位争いに絡む健闘を見せた。中盤から連敗街道にハマってしまったが、エース張継科の成長は頼もしい。もっとも、2番手以下の選手が勝ち星を稼ぐのは難しく、降格に最も近いチームであることに変わりはない。男子のシェーク異質速攻型としては世界トップクラスの唐鵬が、どこまで張継科をサポートできるか。

★昨シーズンは禁止されていた外国選手のスポット参戦が解禁され、ヨーロッパ選手の参戦も予想された今シーズンの超級リーグ。しかし、ボル、クリサン、サムソノフ、荘智淵、柳承敏、朱世赫と多くの外国選手が参戦した06年のシーズンに比べ、純粋に外国選手と呼べるのは水谷隼と呉尚垠くらいで、やや寂しい顔ぶれなのは残念。続いて女子チームのメンバーをご紹介します。

Photo上:今シーズンはエースらしいプレーを見せたい陳杞
Photo中:王励勤、相手チームのエースとの対決で勝負強さを発揮できるか
Photo下:張継科はメンタルの弱さを克服したい
 男子超級リーグのチーム紹介、第2弾。四川全興、八一工商銀行、錦州銀行、海寧皮革城鵬翔の4チームをご紹介します。

■四川全興(スーチュアン チュアンシン/四川省)
監督:陳宏宇(チェン・ホンユ)
選手:ハオ(赤+おおざと)帥(ハオ・シュアイ/WR20/07世界選手権ベスト8)
   邱貽可(チウ・イカ/WR37/03世界選手権ベスト8)
   許鋭鋒(シュ・ルイフォン/WR197/07世界ジュニア準優勝)
   ★李静(リ・チン-香港/WR11/06アジア競技大会3位)

 浙商銀行から移籍したハオ帥がチームの新エース。ハオ帥は超級リーグでは毎年好成績を残しており、馬琳や王皓とも互角の勝負ができる。パナソニック中国オープンでも優勝しており、五輪の疲労が蓄積しているトップ3より状態は良さそう。2番手の李静も単複での起用が可能で、昨シーズン所属していた寧波北侖海天で優勝を経験しているのは頼もしいところだ。3番手の邱貽可、4番手で伸び盛りの許鋭鋒のプレー次第では、悲願の初優勝も十分に射程圏内と見た。

■八一工商銀行(パァイー ゴンシャンインハン/解放軍)
監督:王涛(ワン・タオ/92バルセロナ五輪複金メダリスト)
選手:王皓(ワン・ハオ/WR1/08北京五輪シングルス銀メダリスト)
   徐克(シュ・カ/06世界ジュニア準優勝)
   李陟(リ・ジィ/04全中国選手権ベスト8)
   楊暁夫(ヤン・シャオフ/04アジアカップ4位)

 軍隊である八一解放軍を、世界最大級の銀行である中国工商銀行がバックアップしているチーム。現世界ランキング1位の王皓が今シーズンは母体に復帰した。2番手の徐克は06年世界ジュニアで松平健太と決勝を争っているので、記憶している方も多いはずだ。全体としては、まだ王皓のワンマンチームという印象が強いが、王皓の2点+誰かが1点をもぎ取るという、総力戦でシーズンを戦うことになりそう。徐克は将来トップ選手になるとしたら、そろそろ頭角を現してくるはずだが…。

■錦州銀行(ジンジョウ インハン/遼寧省)
監督:于沈童(ユ・シェントン/89世界選手権3位)
選手:雷振華(レイ・ジェンホア/WR52/06クロアチアオープンベスト8)
   徐輝(シュ・ホイ/WR86/04アジアカップ2位)
   ジャイ(曜の右側)一鳴(ジャイ・イーミン/06世界大学選手権混合複3位)
   周斌(ジョウ・ビン/06シンガポールオープン3位)

 トップ選手たちの移籍のニュースも関係なし、まさに「我が道を行く」という感じなのが錦州銀行。選手の移籍が頻繁になってきた超級リーグにあって、遼寧省出身の選手のみで構成され、実質的には遼寧省男子チームである。今シーズン、スポンサーは変わったものの、監督と選手は昨シーズンと同じ。雷振華と徐輝のツインエースでポイントを稼ぐ戦い方も、ここ数シーズン変わっていない。右シェークドライブ型の雷振華はパワーもあり、昨シーズンも王励勤や馬琳を破っている。優勝候補というほどの戦力はないが、リーグ中堅の位置をがっちりキープするいぶし銀のチームだ。

■海寧皮革城鵬翔(ハイニン ピィグチェンポンシアン/浙江省)
監督:項曉(シァン・シャオ)
コーチ:楮建偉(チュー・ジェンウェイ)
選手:李平(リ・ピン/WR38/07ロシアオープン準優勝)
   侯英超(ホウ・インチャオ/WR27/06プロツアーファイナル3位)
   陳剣(チェン・ジェン/05全中国運動会ベスト16)
   沙陳斌(シャ・チェンビン/04全中国選手権団体ベスト8)
   金恩華(ジン・エンホア/05年全中国運動会ベスト8)

 実力派のベテラン選手が顔を揃えるが、「寄せ集め集団」という印象も否めないこのチーム。エース李平はヨーロッパスタイルの右シェークドライブ型で、昨年のロシアオープンではサムソノフ(ベラルーシ)や李静(中国香港)を破っているが、エース同士の対戦ではやはり苦しい。カット主戦型の侯英超は国内では通用せず、日本リーグの日産自動車でプレーする金恩華も、昨シーズンは1勝4敗と勝ち星が伸びなかった。超級リーグ残留が現実的な目標か。

Photo上:超級リーグでの活躍で、首脳陣にアピールしたいハオ帥
Photo中:王皓は解放軍の名誉をかけて戦う
Photo下:男子超級リーグでは唯一のカットマン・侯英超