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中国リポート

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 7月14日、国家男子チームに続き、国家女子チームも集合訓練を行う河北省正定市でエキシビションマッチを開催した。純粋な部内対抗戦だった男子チームに比べ、女子チームの対戦相手は少々変わっている。試合結果は以下のとおりだ。

〈五輪代表チーム 5-0 最強「仮想敵」チーム〉
○王楠 -8、-7、7、7、9 木子
○李暁霞 -6、1、13、-10、8 曹臻
○郭躍 10、-10、6、-9、6 王シ(男子)
○張怡寧 6、-10、7、4 高欣(男子)
○張怡寧/王楠 3-2 胡冰涛/王シ(男子)

 五輪代表チームが対戦したのは、男女混成の最強「仮想敵」チーム。国家女子チームでトップクラスのシェーク異質速攻型である木子・曹臻に、3人の男子選手が加わった。同じくシェーク異質速攻型の高欣、そしてカット主戦型の王シ(喜+烈の下)と胡冰涛だ。シェーク異質速攻型の木子・曹臻・高欣は、シンガポールのリ・ジャウェイや王越古、韓国の唐イェ序、そして日本の福原愛の仮想選手。カット主戦型の胡冰涛と王シは韓国の金キョン娥・朴美英の仮想選手だろう。

 かつて「百花斉放」をスローガンに、多彩な戦型の選手を育てた中国。たとえば、1997年世界選手権マンチェスター大会の中国女子代表を見てみると、シェーク裏+粒高攻守型のトウ亜萍、シェーク異質速攻型の王晨、ペン表速攻型の楊影、カット主戦型の成紅霞、そして左右のシェークドライブ型である王楠と李菊。まるで戦型の見本市だ。それから11年、中国の五輪代表がいずれもシェークドライブ型で、異質速攻型やカット主戦型の選手を迎え撃つというのも、時代の移り変わりなのだろうか。

 さて、CCTV-5(中国中央テレビ局のチャンネル5。スポーツ専用チャンネルで、現在はCCTV-奥運と改称中)でも生中継された女子エキシビションマッチ。第1試合は王楠と木子(ムゥ・ズ)のベテラン・若手対決。木子は威力ある前三板(チェンサンバン/3球目攻撃)で主導権を握り、ゲームカウント2-0とリード。しかし、五輪アジア大陸予選と5月の荻村杯で唐イェ序の速攻に敗れている王楠、このまま大きな課題を残して敗れるわけにはいかない。徐々に集中力を高めてゲーム序盤からリードを奪い、木子を上回る積極的な3球目攻撃を連発して逆転勝ち。「逆転勝ちの女王」王楠、次第に試合勘を取り戻しつつあるようだ。

 第2試合は五輪代表の補欠である李暁霞と、威力ある速攻強打が持ち味の曹臻の対戦。若さと若さがぶつかりあう大激戦は、第4ゲーム10-8で迎えた李暁霞のマッチポイントを曹臻が4点連取でひっくり返し、最終ゲームへ。しかし、李暁霞は落ち着いた両ハンドドライブで曹臻のバックを攻略し、ゲームオール8本で勝利。五輪代表チームが激しい競り合いを制して、2-0と勝利に王手をかける。
〈後編に続く…〉

Photo上:「技術面が向上し、特にバックドライブに進歩が見られる」と施之皓監督が評した王楠
Photo下:曹臻、マッチポイントを2本しのいで善戦したが、惜敗
 7月11日、中国男子チームは集合訓練を行っている福建省厦門市の福隆体育センターでオリンピックを想定したエキシビションマッチを行った。片や、王励勤・王皓・馬琳の五輪代表チーム。片や、陳杞・馬龍・張超の若手代表チーム。いわば「現在」vs.「未来」の対戦となった。試合結果は以下のとおり。

五輪代表チーム 3-1 若手代表チーム
○王励勤 10、-4、8、-9、3 陳杞
 馬琳 -7、-7、-5 馬龍○
○馬琳/王皓 7、7、11 陳杞/張超
○王皓 5、7、6 馬龍
 王励勤 - 張超

 五輪代表チームは一番のポイントとなるダブルスに馬琳/王皓を起用。対する若手代表チームは、エースの馬龍を2点起用するためか、ダブルスに陳杞/張超のペアを起用した。
 第1試合は今シーズン長く不調が伝えられる王励勤と、豪腕サウスポーの陳杞が激突。陳杞は第2・4ゲームを自慢の強打で奪ったが、最終ゲームは王励勤が5-0とスタートダッシュをかけて勝利を収めた。
 続く第2試合。馬龍は馬琳のバックサイドにボールを集めてプレッシャーをかけ、馬琳にゲームの主導権を渡さない。第1・2ゲームとも序盤は競り合い、あるいは馬琳がリードを奪うが、次第に馬龍の攻撃力が馬琳を圧倒。第3ゲーム、馬龍3-0のリードで馬琳がたまらずタイムアウトを取るが、この後も馬琳にミスが連続し、馬龍が3-0のストレートで馬琳を下した。

 第3試合のダブルスは王皓/馬琳のペンドラコンビが、ダブルスの名手・陳杞と張超のダブルスをコンビネーションの良さで上回る。張超は王皓や陳杞、ハオ帥と同世代で、彼らとともに「六小龍」と称されたホープだったが、やはり他の3人に比べるとやや力不足か。最後も張超のドライブが台をオーバーして五輪代表チームが勝利に王手をかける。
 第4試合は王皓vs.馬龍。王皓の方が圧倒的に分が良いとはいえ、今年6月の ITTFプロツアー・フォルクスワーゲンオープン韓国大会では、馬龍が4-1で王皓を下して優勝している。しかし、この試合は馬龍にとって全くのノーチャンス。王皓の裏面ドライブとパワードライブに圧倒され、第1ゲームは9-3、第3ゲームは7-3と中盤で離されてストレート負け。五輪でのリベンジに燃える王皓が馬龍を圧倒した。

 いよいよ最終段階に入ってきた集合訓練。北京五輪まで、あと23日だ。

Photo上:パワフル馬龍、馬琳をノックアウト
Photo下:完敗を喫した馬琳。ダブルスでのストレート勝ちでギリギリ及第点か
 7月6日、河北省・石家庄市の繁華街にある白楼賓館で、一組のカップルが結婚式を挙げた。新郎は河北省卓球チームの総監督である劉志強、新婦は同じ河北省の出身で、先日国家女子チームを引退した牛剣鋒だ。

 ともに国家チームにいた時代から、8年越しの恋を実らせたふたり。しかし、04年アテネ五輪複銅メダリスト、03年ITTFプロツアー・グランドファイナル優勝の牛剣鋒に対し、劉志強は国家女子チームの「男幇女(ナンバンニュウ)」、つまり男子トレーナーだった。河北省には国家女子チームがよく集合訓練を行う正定卓球訓練基地があるせいか、河北省男子チームの選手は、国家女子チームのトレーナーに指名されることが多いのだ。こんな言い方は劉志強に失礼だろうが、いわばお姫様と従者の恋か。結婚式でも、やはり人々の注目を集めたのは牛剣鋒だったようだ。

 元国家女子チーム監督の陸元盛や、牛剣鋒の担当コーチだった喬暁衛も式に出席。「卓球によって結ばれたふたりだが、牛剣鋒の成功は、その半分が劉志強の支えのおかげだ」とは陸元盛の祝辞。七夕には一日早い牽牛と織女(牛は新婦のほうだが…)の結婚式は、盛大なうちにその幕を閉じた。牛剣鋒は果たして、どのような第二の人生を歩むのだろうか。
 ちなみに中国は結婚しても夫婦別姓、子どもだけ父方の姓を名乗るのが一般的なので、牛さんは牛さんのままです。

Photo:祝・結婚の牛剣鋒。この選手もフリーハンドが独特でした
 今月6日に閉幕したテニスの4大大会の最高峰、「ウインブルドン」こと全英ローンテニス選手権。女子シングルス決勝はビーナスとセリーナのウイリアムズ姉妹対決となったが、主催者推薦から彗星のごとくベスト4まで勝ち上がったのが中国の鄭潔(ヂョン・ジエ)。世界ランキング1位のイワノビッチ(セルビア)ら強豪を破り、4大大会では中国人初のベスト4入りとなった。四川省成都市の出身である鄭が、獲得した賞金はすべて四川大地震への義援金に当てると表明したことも大きな話題となり、新たな国民的ヒロインの誕生を予感させる。
 鄭潔は公式プロフィールだと身長164cm。対戦したイワノビッチ(185cm)、バイディソワ(183cm)、S.ウイリアムズ(175cm)と比べると体格はかなり小柄。パワーテニスの元祖とも言えるS.ウイリアムズには敗れたが、両ハンドからピッチの早いストローク戦で欧州の強打者たちを次々と沈めた。16歳で四川省チーム入り、18歳で国家チーム入りと国内で育ってきた選手だけに、中国がテニスでもそれだけの選手育成力を秘めているのは驚きだ。

 中国ではゴルフとともに、プレーすることがひとつのステータスとも言えるテニス。しかし1970年代まで、特に文化大革命のさなかにはテニスも「ブルジョアのスポーツ」として禁止されていた。中国テニス協会が国際テニス連盟に加盟したのは1981年になってからだ。卓球が中国を代表するスポーツとなる一方で、いわばその親であるテニスは長く不遇の時代を送り、世界への道を閉ざされていた。鄭潔がウインブルドンで活躍した数日間は、中国の建国以来初めて、テニスが卓球を上回った瞬間だったのかもしれない。
 これまでは五輪でもトップ選手が参加しなかったテニスだが、北京五輪にはスイス選手団の旗手を務めるロジャー・フェデラー(世界ランキング1位)をはじめ、トップランカーが軒並み参戦。かつてないハイレベルな戦いが予想される。ちなみにテニスが五輪の正式競技に加わったのも、卓球と同じく1988年ソウル五輪から。かつては卓球もテニスも、プロとアマチュアの区別が明確でないことから、五輪競技に加わることができなかったのだとか。

 中国リポート、アップの間隔が長く空いてしまい、誠に申し訳ありません。しかも久々の内容が「テニス」。…筆者は中学生時代からウインブルドンの熱烈なファンであります。

Photo:中国卓球界イチのテニス好きといえばこの人、蔡振華。昨年11月に上海で行われたマスターズカップも観戦に訪れた 
 6月21日午前9時、北京五輪まであと50日となったことを記念して、北京体育館で「外交官卓球大会2008」を開催。会場には20以上の大使館から60名を超える選手が参加した。大会の主催者は、意外にもモルディブの駐中国大使館。駐中国大使であるラティフ氏が、「北京五輪の円満な成功」と「各国の駐中国大使館の友好促進」のために大会を企画したのだ。
 午前中に男女シングルスと混合ダブルス、午後には団体戦が行われたこの外交官卓球大会。男子シングルスでは前述のラティフ氏が、巧みなラケットさばきを披露して優勝。女子シングルスはポーランド大使館の職員、団体戦ではインドネシア大使館が優勝した。

 今大会の発起人であり、シングルスでは見事栄冠を勝ち取ったモルディブのラティフ大使。実は以前、モルディブ国家卓球チームに在籍していた異色の経歴の持ち主。文化大革命のまっただ中である1973年に、卓球の大会で中国を訪れたこともあるそうだ。
 インド洋に浮かぶ小さな島国・モルディブは、日本では新婚旅行の行き先としても人気のあるリゾート地。南国のイメージにはちょっとそぐわないが、場所をとらずに手軽に楽しめる卓球は人気があり、ホテルやリゾートの砂浜に卓球台が置いてあることも珍しくないという。もちろん国際卓球連盟にもちゃんと加盟しており、世界選手権団体戦・広州大会には男女チームともに出場。男子が95位、女子が76位という成績を残している。
 貴州省遵義市で行われた中国卓球クラブリーグ・甲Aリーグ第2ステージ。女子の1stトーナメント、2ndトーナメント決勝の結果は以下のようになった。

□女子第2ステージ・1stトーナメント決勝
[山東元華 3-1 深セン柳絮飛]
○陳夢 -8、12、-6、10、9 柳絮飛
 顧玉ティン -7、7、10、7 羅ユエ○
○顧玉ティン/李聖ジエ 10、7、4 羅ユエ/熊欣芸
 ○李聖ジエ 10、6、-10、6 柳絮飛

□女子第2ステージ・2ndトーナメント決勝
[山東魯能黄隊 3-2 山東魯能紅隊]
 張聡聡 -4、9、-8、-9 呂慧○
○侯琳 9、-6、9、9 肖萌
○侯琳/林紅 9、8、-11、5 肖萌/田ブンイ
 林紅 -10、-7、4、6、-3 呉慧○
○張聡聡 -8、9、7、4 田ブンイ

 第2ステージ優勝は1stトーナメントを制した山東元華。決勝では深セン柳絮飛の監督兼選手である柳絮飛から2点を奪った。エースの陳夢は先日お伝えしたU-17中国卓球オールスター戦でも優勝した期待のホープだ。2ndトーナメントで優勝した山東魯能黄隊(3軍チーム)は第2ステージ4位。第1ステージの重慶大会では15位と大きく出遅れたが、日本リーグのサンリツに所属する侯琳、06年アジアジュニア選手権カデット2位のチョッパー・張聡聡がチームを引っ張った。

 第1ステージの重慶大会で優勝を僅差で逃し、この遵義大会での成績が注目されていた昨シーズンの超級リーグ9位・重慶康徳はまさかの7位に沈んだ。1stトーナメント、2ndトーナメントともに、北京拍里奥のエース朱虹(右カット主戦型)に2点取りを喫して準々決勝敗退。第1・2ステージの総合成績では2位につけているが、断トツの優勝候補と思われていただけに予想外の苦戦。重慶康徳に連勝した北京拍里奥も決勝進出は果たせず、総合成績は4位とやや苦しい。
 第2ステージを終えての総合成績1位は山東魯能紅隊。以下5位まで重慶康徳、深セン柳絮飛、北京拍里奥、山東元華という順番になっている。第3ステージの連雲港大会は、9月23~27日まで江蘇省連雲港市で行われる。超級リーグへ自動昇格できる総合1位、そして入れ替え戦へ出場できる総合2位となるのは、果たしてどのチームか?

Photo:2ndトーナメント決勝でラストを締めた張聡聡(山東魯能黄隊)
 今月4~8日まで、貴州省遵義市で中国卓球クラブリーグ・甲Aリーグ(超級のひとつ下のリーグ)の第2ステージが行われた。少し古いニュースで恐縮だが、その結果を男女別にお伝えしよう。
※[中国リポート08/04/03-メンバーに注目! 甲Aリーグ男子編]参照
 参戦する16チームでトーナメント戦を2回行い、総合得点で順位を決定した甲Aリーグ第2ステージ。まず男子の1stトーナメント、2ndトーナメント決勝の結果は以下のとおりだ。

■男子第2ステージ・1stトーナメント決勝
[河南?河金都大酒店 3-2 山東魯能紅隊]
○胡彬 5、-6、10、-8、7 陳浩
 ジャン健 -8、9、-9、2、-5 朱舟○
○ジャン健/周雨 9、5、8 李良夫/陳浩
○周雨 7、-7、-4、4、11 朱舟
※ジャン健のジャンは瞻の右側

■男子第2ステージ・2ndトーナメント決勝
[湖南広電金鷹 3-1 山東魯能紅隊]
 金革鋒 -7、5、-7、-7 陳浩○
○趙暢 -8、5、5、9 朱舟
○金革鋒/劉吉康 4、12、-20、7 李良夫/陳浩
○趙陽 6、9、4 陳浩

 …載せて良いのかと思うくらいマイナーな選手ばかりだ。日本である程度知名度があるのは、日本リーグではグランプリ大阪に所属しているジャン健ぐらいだろう。2回のトーナメントでいずれも決勝に進出した山東魯能紅隊は、超級リーグに所属する山東魯能の2軍チーム。昨年10月の城市運動会(U-21の全国大会)で、エースの朱舟はシングルス3位、2番手の陳浩は李暁霞と組んで混合ダブルス準優勝という成績を残している。

 この機会に、山東魯能というチームを少し紹介しよう。山東省の省都・済南市に本拠地を置く山東魯能は、巨大電力会社である山東魯能電力集団がスポンサーとしてバックアップする、中国有数の名門クラブだ。山東魯能電力集団はサッカーの超級リーグにも山東魯能泰山という強豪チームを抱えている。サッカークラブが1983年創立と25年の伝統を誇るのに対し、卓球クラブの創立は2000年と比較的新しいが、クラブ設立と同時に小中一貫の寄宿制学校「山東魯能卓球学校」を設立、現在では世界中から若手選手が留学してくる。卓球学校の総監督は中国男子チームコーチとして孔令輝、劉国梁らを育てた任国強。長く国家女子チームのコーチを務め、喬紅や王楠の担当コーチだった曾伝強もクラブの名誉顧問に名を連ねる。

 超級リーグではこれまで男子チームが2002年、女子チームが2005年に優勝。男子チームのエースは昨年の全中国選手権3位の張継科。女子チームには07年ITTFプロツアー・グランドファイナル優勝の李暁霞というスーパーエースがおり、07年世界選手権ベスト8の彭陸洋も伸び盛り。今回の甲A男子リーグ6位の黄隊(3軍)には、先日のU-17オールスター優勝の方博、準優勝の宋鴻遠がいる。女子チームは今シーズンの超級リーグでも有力な優勝候補だろう。

Photo:山東魯能男子チームのエース・張継科。まだメンタル面が頼りないが、バックハンドの強さが光る
 厦門に飛び立った男子チームと別れ、今年もバスで河北省正定市の国家卓球訓練基地へと向かった国家女子チーム、総勢32名。男子は厦門、女子は正定というのがここ5年ほどの集合訓練のお決まりコースだ。

 日本のジュニアナショナルチームや、高校の強豪チームの合宿地としてもよく利用される正定訓練基地。91年の竣工だが、一昨年から全面的な施設の建設や改修が行われている。選手の宿舎として利用されるホテルも新築され、国家旅遊(観光)局指定で最高クラスの五つ星に相当するというから驚きだ。最も若手選手は全員が双人間(ツインルーム)で、単人間(シングルルーム)を使えるのは王楠と張怡寧だけ。現世界チャンプの郭躍も、まだ劉詩ウェンとのツインルームなのだとか。若手選手にとっては、シングルルームの主(ぬし)になることが、ひとつのモチベーションにもなる。

 35日間の集合訓練は11~12日をひとつのクールとして3つに分けられ、練習やトレーニングのプログラムが組まれる。集合訓練の主役はもちろん五輪代表の張怡寧・王楠・郭躍だ。「主要な対戦相手はシンガポール、日本、中国香港、そして韓国」と語る施之皓監督。異質速攻のリ・ジャウェイや王越古、唐イェ序、異質攻守の福原愛と福岡春菜、カット主戦型の金キョン娥と朴美英などを想定して、「陪練(トレーナー)」として男子2軍チームからカットマンや異質速攻型の選手を帯同させ、同じ女子1軍チームの陳晴(ペン粒高異質攻守型)、饒静文(シェーク異質速攻型)、范瑛(シェークカット主戦型)も陪練を務める。

 なにしろ92年バルセロナ五輪以来、五輪では一度も金メダルを逃していない中国女子。卓球競技で中国選手以外に五輪のタイトルを掴んだのは、88年ソウル五輪女子複優勝の梁英子/玄静和(韓国)しかいないのだ。正定での集合訓練にも1軍チームコーチの喬紅(92・96年五輪複優勝)、孔令輝(96年五輪複・00年五輪単優勝)、2軍チームコーチの閻森(00年五輪複優勝)、そして五輪代表の王楠(00年五輪単複・04年五輪複優勝)、張怡寧(04年五輪単複優勝)と5人の五輪金メダリストが含まれている。

 国家女子チームの集合訓練は7月26日に終了、その日のうちに北京へと戻る。男女チームとも集合訓練の終了後、エキシビションマッチの開催が予定されている。8月1~4日に行われる北京大学体育館での調整訓練が終われば、歴史的な五輪の開幕はもう目の前だ。

Photo上:五つ星のシングルルームに陣取る王楠、五輪で単複を制して五つ目の金メダル獲得なるか
Photo下:故障も多い現五輪女王・張怡寧。慎重な調整メニューが組まれるだろう
 6月21日早朝、中国国家チームは北京オリンピック前の最後の集合訓練に向け、男子チームが福建省厦門、女子チームは河北省正定へと飛び立った。36日間に及ぶ長期合宿のスタートだ。

 男子チームが集合訓練を行う厦門(アモイ)市は福建省の南東部で、台湾の対岸にある港湾都市。これまで主に男子チームによって、2003年から計6回の集合訓練が行われ、その後のビッグゲームで中国がことごとく好成績を収めていることから、国家チームの「福地(フゥディ/縁起の良い土地)」と呼ばれている。あれほどの強さを誇る中国国家チームが、縁起の善し悪しを気にしなくても…と思うのだが、実際にはかなり気を使っているようだ。国家チームの訓練基地第1号である湖北省の黄石訓練基地は、建設の最大の目的だったソウル五輪で男子チームが不振に終わったため(シングルスではメダルを獲得できず)、その後積極的に利用されることはなかったと言われている。

 監督やコーチ陣、チームドクターやマッサーも含め、総勢40名を超える国家男子1軍チームのメンバー。22日には中国香港男子チームも合流し、現在1週間程度の合同合宿が行われている。中国香港には李静/高礼澤という黄金ペアがいるため、中国にとってはダブルスの「陪練(トレーナー)」という意味合いもある。
 さらに中国国内での報道によると、88年ソウル五輪女子単金メダリストの陳静もチームに帯同させるとのこと。陳静は2005年に華南師範大学でスポーツ心理学の博士号を取得しており、これまでにも国家チームのメンタルケアに当たってきた実績がある。悲願の優勝を狙う王励勤と馬琳、アテネ五輪の雪辱を期す王皓、そして至上命題である団体戦での優勝。その計り知れないほどのプレッシャーを軽減させるために、五輪女王の経験は何よりのものだろう。

 厦門での集合訓練は7月26日に終了する予定。宿舎となる厦門体育大酒店(厦門スポーツホテル)はこの2チーム以外に宿泊客を受け入れず、完全貸し切り体勢で集合訓練に臨む。五輪まで50日を切っているだけに、ケガや故障は禁物。コーチ陣にとっては細心の注意を払う集合訓練になりそうだ。

Photo上下:国家男子チームの竜虎、王励勤と馬琳。その調整ぶりはいかに
 6月14日、河南省焦作市で行われていた「2008“雲台山杯”U-17中国オールスター卓球マッチ」が閉幕。この大会は2000年に開始され、翌01年から焦作市で開催されている。河南省北部にある焦作市は、山水画のような絶景が楽しめる雲台山世界地質公園があり、年間1,000万人近い観光客が訪れる景勝地だ。

 中国全土から、好成績を収めている有望な若手選手・男女8名を選出して行われるU-17中国オールスター。男子U-17決勝は、山東魯能のチームメイトである方博(右シェークドライブ型)と宋鴻遠(左シェークドライブ型)の対戦。準決勝で閻安(北京市)をゲームオールデュースの激戦で破り、勢いに乗る方博が4-0のストレートで優勝を決めた。現在16歳の方博は国家男子2軍チームのメンバーで、4月18日に行われた国家女子1軍vs.国家男子2軍のエキシビションマッチでは郭躍と王楠を連破している。(中国リポート2008/4/21[王楠、郭躍ら男子2軍チームに完敗!]参照)。「方博の最大の弱点はフットワーク。体重がありすぎるから、いかに早く動けるかが今後の課題になるだろう」と国家男子2軍チームの李吃総監督が評したが、これから体を絞り、大人の卓球に入っていけるか。

 女子U-17は陳夢(山東魯能)と趙岩(江蘇省)の右シェークドライブ対決。07年アジアジュニア選手権カデット優勝の陳夢が優勝した。決勝を戦ったふたりはともにまだ14歳というから驚きだ。男女シングルスを所属選手が制した山東魯能は、中国トップクラスのクラブとして、その選手育成力を改めて見せつけた。

 ちなみに今回のU-17中国オールスターに出場した男女8選手のうち、男女とも7名がシェーク。ペンドライブ型が男女ひとりずついるが、中国の若手もやはりシェークが主流になっているようだ。男子で左シェークドライブ型が4人いるのも特徴的で、右シェークドライブ型は優勝した方博しかいない。また、女子は167cmの趙岩と劉斐を筆頭に、平均身長163cmと堂々たる体躯の選手が揃う。平均身長169cmとこの年代にしてもやや小粒な男子とは対象的で、「女子卓球の男性化」を進めるため、体格面も考慮されているようだ。

Photo:前回と同じ写真でスミマセン。男子U-17優勝の方博くんです