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中国リポート

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 7月23日から8月2日まで、中国・天津では『2019 中体産業杯 全国卓球選手権』が開催される。会場は17年全中国運動会の舞台となった武清体育センターだ。

 4年に1度の全中国運動会に比べ、注目度が低くなりがちな全中国選手権だが、今年はちょっと様子が違う。大会前半に男女シングルスと混合ダブルス、後半に男女団体が進行するスケジュール。いわば「ミニ・オリンピック」として大会が行われるのだ。1952年から続く伝統ある大会で、男女ダブルスをスパッと開催種目から外すあたり、いかにも「合理的」な中国らしい。

 そして、五輪を想定した日程で行われる以上、トップ選手も欠場するわけにはいかない。近年にないほどワールドツアーに連続して出場し、T2ダイヤモンドが終わってようやくひと息つけるというところで、なんともハードなスケジュールだ。

 さて、前置きが長くなりました。この全中国選手権で、会場の武清体育センターを運営・管理する中体場館運営管理(天津)有限公司が、「撮影大賽」なる取り組みをしている。大会期間中、プロ・アマのカメラマンや撮影愛好家、つまりあらゆる人を対象に大会に関するベストショットを募集するというもの。選手の迫力あるプレーでもいいし、観客席のファンの熱い応援でもいい。作品には作者の名前と連絡先を付記してメールで応募。8月20日に入選作が発表される。

 ちなみに一等は奨金500元(約7850円)と、大会スポンサーである『MIHOU』のスキンケアセット、そして選手のサイン入りラケット。二等は奨金300元、三等は奨金100元にそれぞれスキンケアセットがついてくる。……奨金としては「ゼロがひとつ少ない?」くらいシブい金額だが、大会の良い記念にはなりそう。発表される入選作に、ちょっとだけ注目したい。
 5月末からスタートした、アジア・オセアニアを舞台にしたITTFワールドツアー。中国オープン(プラチナ)、香港オープン(レギュラー)、ジャパンオープン(プラチナ)、韓国オープン(レギュラー)、オーストラリアオープン(プラチナ)と一気に5大会を消化した。さらに今週末には、T2ダイヤモンドのマレーシア大会という重要な大会が控えている。

 そしてこの5連戦、特に後半戦で驚異的な活躍を見せたのが許シンだ。ジャパンオープン、韓国オープン、オーストラリアオープンと3大会連続優勝。先にマッチポイントを取られたオーストラリアオープン準決勝のフランチスカ(ドイツ)戦をはじめ、敗戦の瀬戸際まで追い詰められた試合もあったが、伝家の宝刀であるフォアのカウンタードライブの切れ味は最後まで健在だった。7月発表の世界ランキングでは、2015年2月以来の1位に返り咲いた。

 いつも辛口の劉国梁会長も、ジャパンオープンの閉幕後に「許シンは中国男子チームにあって、最も周囲を安心させてくれる万金油(万能薬)。東京五輪で金メダル独占を目指す中国にとって、欠くことのできない戦力だ」と賛辞を送っている。東京五輪での中国男子チームのエントリーは、馬龍と樊振東が団体とシングルス、許シンが団体と混合ダブルスの2種目出場が既定路線だが、樊振東の不調が長引くようだと、許シンのシングルス出場の可能性もゼロではない。

 この復活の理由について、許シンは『新浪体育』の取材に対し、意外なコメントを残している。「体力トレーニングはさらに増やしていく必要があるね。少なくとも人の2倍はやらなければ、非常に負荷のかかる試合の中で良い状態をキープすることはできない」(許シン)。彼は体力の衰えをテクニックでカバーするのではなく、体力トレーニングで高い身体能力を維持し、残る競技生活を完全燃焼しようとしている。

 中国チームは以前から、海外のトレーニングコーチやリハビリトレーナーを招聘し、集合訓練などに帯同させているが、2017年からはポーランド人のトレーニングコーチ、バルテク・ビブロウィクツ氏と契約。さらなるパワーアップを目指し、男女チームの「肉体改造」を継続的に行っている。ビブロウィクツ氏は昨シーズンの中国スーパーリーグで、山東魯能女子チームの優勝にもトレーナーとして貢献した。

 もちろん、ストップからの台上パワードライブや4球目カウンターなど、許シンのプレーがより精度を増していることは言うまでもない。「ペンホルダーに一番大切なものは?」と聞かれれば、「脳子(頭の良さ)」と即答する男なのだ。

 筆者の頭に浮かぶ許シンのイメージは、いつも傷だらけだ。4種目のフルエントリーもある全中国運動会では、全力投球の団体戦を終えて個人戦に入ると、サポーターにテーピング、アイシングのオンパレード。17年大会では左肩、脇腹、右ひざと体中に故障を抱え、アイシングとテーピングでミイラ男のようになっていた(言い過ぎました)。集大成となる東京五輪の大舞台を迎えるまで、重大な故障に見舞われることがないよう祈りたい。
 昨日16日に終了したITTFワールドツアープラチナ・LIONジャパンオープン。5月末から中国、香港、そして日本で行われたワールドツアー3大会。中国チームは中国オープンとジャパンオープンには主力クラスをエントリー。合間の香港オープンは、主力クラスが札幌で調整合宿を行ったため、若手中心のエントリーとなった。

 毎年のことながら、世界選手権後のこの時期、世界代表の選手たちの状態はピーク時の50〜60%といったところ。その中で、ふたりのダークホースが飛び出した。香港オープンの女子シングルスを制した王芸迪(ワン・イーディ)と、ジャパンオープンで男子シングルス3位となった孫聞(スン・ウェン)。ともに遼寧省出身のふたりについて、少し紹介してみたい。

 すでに国際大会にも多く出場している王芸迪は、ダークホースと呼ぶのは失礼かもしれない。陳幸同と同じ1997年生まれで、陳夢・朱雨玲と王曼昱・孫穎莎に挟まれた世代だ。
 王芸迪の出身地は、馬龍や李暁霞、郭躍を輩出した「卓球の街」遼寧省鞍山市。しかし、小学校を卒業後に地元を離れ、江蘇省南通市にある中国卓球協会卓球学校に第一期生として入学し、13年全中国ジュニア選手権で3位に入って同校初の国家チームのメンバーとなった。15年世界ジュニアでは決勝で王曼昱に敗れて準優勝。その後、年下の王曼昱や孫穎莎が国際大会で頭角を現す中、17年全中国運動会ベスト4、18年全中国選手権団体優勝と主に国内大会で成績を残し、次第に国際大会にも派遣されるようになっている。

 打撃戦で一歩も退かない闘争心、左右に振られても体幹がブレないフィジカルの強さを備えている王芸迪。17年全中国運動会では雲南省に「転会(レンタル移籍)」して出場していたが、この大会での活躍がひとつの転機になったのではないか。あとは課題のカット打ちに加え、何かひとつ彼女にしかない武器が欲しい。

 一方、ジャパンオープンで吉村真晴、張本智和、李尚洙(韓国)、梁靖崑(中国)と強豪を連破した孫聞はまさにダークホース。181cmの堂々たる体躯からフォアのパワードライブを連発し、まさに「豪腕」というイメージだ。

 孫聞のプレーを初めて見たのも、17年全中国運動会。ジャパンオープンにも出場していた張煜東とのペアで男子複でベスト4に入ったが、中陣でフォアドライブを「ブン回す」姿に目を奪われた。「中国にもまだこんな大振りの選手がいるのか」「プレーが遅いし、シングルスでは厳しいだろうな」というのが当時の印象。ジャパンオープンでのプレーを見ると、バック系の技術がかなり進歩したように思える。

 孫聞は王楠や劉詩ウェンの出身地である遼寧省撫順市の出身。遼寧省で生まれ、ジュニア時代は湖北省代表としてプレーし、現在は江蘇省チームに所属。スーパーリーグでも江蘇中超電纜・利永に所属しており、昨シーズンは樊振東に2連勝するなど、チームの主力として活躍した。張本戦の後、「張本は気迫あふれるプレーをするから、彼との試合ではより気迫をみなぎらせて戦う必要があった」と語ったファイター。果たして二度目のチャンスは、与えられるだろうか?
  • 与えられたチャンスで結果を残した孫聞

  • 香港オープン優勝の王芸迪(写真提供:ITTF)

 3月8日、中国卓球協会は4月21〜28日にハンガリー・ブダペストで行われる世界選手権個人戦の中国代表メンバーを発表した。各種目へのエントリーは下記のとおり。

★世界選手権(個人戦)ブダペスト大会・中国選手のエントリー
●男子シングルス

馬龍、樊振東、許シン、林高遠、梁靖崑
●女子シングルス
丁寧、劉詩ウェン、陳夢、王曼昱、孫穎莎
●男子ダブルス
馬龍/王楚欽、梁靖崑/林高遠
●女子ダブルス
陳夢/朱雨玲、王曼昱/孫穎莎
●混合ダブルス
許シン/劉詩ウェン、樊振東/丁寧

 「4月18日まではエントリーの変更は可能」としているが、このメンバーで確定と見ていいだろう。男子シングルスのエントリーは予想どおり。5番目の選手には、「地表最強12人」(世界代表選考会)で2位となった梁靖崑が入り、2大会ぶりのシングルス代表となった。左ひざの故障からの復帰を目指す馬龍も代表入りを果たし、荘則棟(61・63・65年大会優勝)以来となる男子シングルス3連覇を目指す。

 一方、女子はサプライズがあった。現世界ランキング2位で、前回の世界選手権でも2位だった朱雨玲がシングルスの代表から外れ、20歳の王曼昱と18歳の孫穎莎がシングルスに出場する。世界ランキング2位の選手が世界選手権に出られないというのは、近年の中国のエントリーを振り返ってみても前例がない。

 「地表最強12人」で朱雨玲は6勝5敗の6位に終わったが、東京五輪時の年齢は選手としてのピークと言える25歳。朱雨玲を外すなら、東京五輪時には29歳となる劉詩ウェンを外してもおかしくないところだが、昨年のスウェーデンオープン決勝で、伊藤美誠選手に一蹴されたのが大きなマイナス要因か。もともと李隼監督が担当していた朱雨玲が、同じ四川省出身の邱貽可に担当コーチが変わったことで、両者の不仲説を伝えるマスコミの報道もあるが、それだけとも考えにくい。

 また、ダブルス3種目のエントリーも興味深い。近年は国際ペアを組み、それほど成績を重視していなかった混合ダブルスで、久々に「本気」のエントリー。国家チームの指導陣への賞罰制度でも、世界選手権の男女ダブルス優勝はポイントゼロで、混合ダブルス優勝には「2000点」というポイントが与えられる。混合ダブルスが種目に加わる東京五輪を見据えた方針転換だ。男女ダブルスは若手を中心に、混合ダブルスに出場しない選手でペアを作り、どの選手も最大でも2種目の出場。体力の消耗を防ぎ、男女シングルスと混合ダブルスで確実に優勝を狙う構えだ。
  • 4月のアジアカップには出場する朱雨玲だが、世界選手権ではまさかの単不出場

 3月3日に終了した世界選手権(個人戦)ブダペスト大会の中国代表選考会『地表最強12人』。中国の卓球雑誌『ピンパン世界』から、開会式の写真が届いた。選手たちはなんと宇宙服をイメージした衣装を着て登場。宇宙服というより、どちらかというと防護服に見えるが……。なかなか攻めた演出だ。

 100万元(約1670万円)という巨額の優勝賞金でも話題を集めた『地表最強12人』。しかし、ネットで販売されたチケットがあっという間に完売した17年の選考会に比べると、観客の入りはもうひとつだったようだ。

 前回はスリリングな3ゲームズマッチだったが、今回は5ゲームズマッチを平日を含む4日間に渡って行うスケジュール。そしてなんといっても、男子の花形選手である馬龍、そして張継科の不在が大きい。馬龍はチームには帯同しており、今月末のカタールオープンにもエントリー。少しずつ基礎練習やランニングにも取り組んでいるというが、どの程度までリカバリーできているか、注目が集まる。

 そして張継科は……、テレビのeスポーツの番組やバラエティ番組に出演するなど、すでに半分くらい「テレビタレント」になりつつある。2月16日の誕生日には、ファンクラブが青島の高層ビル53棟を「ジャック」して誕生日を祝う広告を流すなど、人気は相変わらず。中国男子の秦志戩監督も「まだコートに立つだけのモチベーションと勇気があれば、中国チームはいつでも彼の復帰を歓迎する」とコメントしているが、復帰への道のりは相当険しい。

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 宇宙服姿で登場した丁寧

  • ヘルメットをしていると、もはや誰が誰だか……

  • 選手たちの表情は、少々微妙

  • 開会式は15分ほどで終了したとのこと

 世界選手権(個人戦)ハンガリー大会の中国代表選考会『地表最強12人』、女子は10勝1敗の陳夢が1位、続いて丁寧と8勝3敗で並んだ孫穎莎が、直接対決の勝敗で2位となり、ともに代表権を獲得した。

☆女子最終成績
1   陳夢    10勝1敗   勝ち点21
2   孫穎莎    8勝3敗   勝ち点19
3   丁寧     8勝3敗   勝ち点19
4   王曼昱    7勝4敗   勝ち点18
5   劉詩ウェン  6勝5敗   勝ち点17
6   朱雨玲    6勝5敗   勝ち点17
7   王芸迪    6勝5敗   勝ち点17
8   陳幸同    5勝6敗   勝ち点16
9   武楊     4勝7敗   勝ち点15
10  孫銘陽    4勝7敗   勝ち点15
11  何卓佳    1勝10敗  勝ち点12
12  顧玉ティン  1勝10敗  勝ち点12

 陳夢は第4戦の王曼昱戦で、ゲームカウント0−2のビハインドから追いつき、最終ゲームも14−12の激戦の末に勝利。第9戦では同世代のライバル朱雨玲に3−1で勝利するなど、第9戦で丁寧に敗れた1敗のみで選考会を終えた。第一次選考会から出場の孫穎莎は、まさに「下剋上」での代表権獲得だ。

 一方、丁寧は大会2日目に王曼昱と孫穎莎に敗れながら、劉詩ウェンや陳夢、朱雨玲など主力選手を破って貫禄を見せたが、代表権にはあと一歩届かなかった。しかし、ブダペスト大会での代表入りは間違いないだろう。長年担当コーチだった陳彬から郭炎(07年世界選手権2位)に担当コーチが代わり、北京市チームの先輩との二人三脚で、現役生活の集大成となる東京五輪へ向かおうとしている。

 2位で代表権を獲得した孫穎莎は、シングルスへの出場はまだ未確定。しかし、中国女子の世界選手権個人戦のシングルス代表5名は、少々人選が難しくなった。残るシングルスの代表枠は4つで、丁寧・王曼昱・劉詩ウェン・朱雨玲・孫穎莎の4人のうち、誰かひとりが脱落することになる。五輪前年というタイミングで世代交代は進めにくいが、劉詩ウェンがシングルスで代表を外れる可能性もある。

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 大器・陳夢、ついに目覚めの時を迎えたか?

 2月28日〜3月3日に行われた、世界選手権(個人戦)ハンガリー大会の中国代表選考会『地表最強12人』。4日間の戦いを終え、まず男子の最終結果は下記のとおりとなった。

★男子最終成績
1   樊振東   11勝0敗   勝ち点22
2   梁靖崑    8勝3敗   勝ち点19
3   薛飛     6勝5敗   勝ち点17
4   方博     5勝6敗   勝ち点16
5   許シン    5勝6敗   勝ち点16
6   于子洋    5勝6敗   勝ち点16
7   周愷     5勝6敗   勝ち点16
8   閻安     5勝6敗   勝ち点16
9   林高遠    5勝6敗   勝ち点16
10  徐晨皓    4勝7敗   勝ち点15
11  王楚欽    4勝7敗   勝ち点15
12  趙子豪    3勝8敗   勝ち点14

 樊振東が11戦全勝、次いで2位の梁靖崑が世界選手権個人戦の代表権を獲得した。……実は2位にも代表権が与えられることを把握しておらず、記事にも入れていませんでした。スミマセン。シングルスの出場権は1位の樊振東のみで、2位の梁靖崑は種目は未確定です。

 初戦から最大のライバルである林高遠と激突し、ゲームカウント2−0から2−2に追いつかれる苦しい一戦を制した樊振東は、連勝街道を突っ走り、2位の梁靖崑にも3−0で完勝。「試合前に優勝どうこうは考えなかった。順位に関係なく、すべての試合でベストのプレーをすることを心がけた」(出典:『北京日報』)と語り、低迷を指摘する声を払拭した。優勝賞金は100万元(約1670万円)という巨額なものだ。

 全体の結果を見ると、樊振東がひとり飛び抜けている他は「どんぐりの背比べ」という状態。林高遠が5勝6敗、ダークホースと目された王楚欽が4勝7敗というのは、首脳陣にとっては期待外れの成績だ。ベテラン許シンも勝ち星が伸びず、往年のフットワークもさすがに衰えは隠せない。馬龍不在の中、中国男子の屋台骨は近年になく揺らいでいるように感じられる。

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 11戦全勝、文句なしの成績で選考会1位通過の樊振東

  • 左から女子1位の陳夢、劉国梁会長、樊振東

  • 樊振東は2位の梁靖崑にもストレートで完勝

 昨日発表された、中国国家チームの新たな指導体制。興味深いのは、同時に発表された「賞罰制度」だ。監督とヘッドコーチの相互責任制によるこの賞罰制度は、中国チームが出場する国際大会にグレードに応じてポイントを割り振り、一定のラインを超えれば報奨があり、最低ラインを下回ると処罰を受けるという厳しいもの。各大会へのポイントの配分は下記のとおり。

〈第一級〉
世界選手権(男女シングルス優勝:4000点/混合ダブルス優勝:2000点)
チームワールドカップ(男女団体優勝:2500点)
アジア選手権(男女団体優勝:2500点)
〈第二級〉
男子・女子ワールドカップ(男女シングルス優勝:1000点)
アジア選手権(男女シングルス優勝:1000点/混合ダブルス優勝:1000点)
アジアカップ(男女シングルス優勝:1000点)
〈第三級〉
中国オープン(男女シングルス優勝:500点/混合ダブルス優勝:500点)
ジャパンオープン(男女シングルス優勝:500点/混合ダブルス優勝:500点)
ITTFワールドツアー・グランドファイナル(男女シングルス優勝:500点/混合ダブルス優勝:500点)

 2年に1度開催される世界選手権とアジア選手権は、ポイントが2年間有効になる。ポイント対象の9つの大会での合計得点が14000点を上回ると報奨を受けるが、逆に12000点を下回ってしまうと、監督はヘッドコーチへ、ヘッドコーチはコーチへと降格。コーチ陣全体にも給与の部分カットなどの処罰があり、男女チームどちらかが基準を満たさない場合は連帯責任になるという。優勝以外はポイントがつかないというのは、なかなか厳しい。

 ちなみに2018年の中国チームを例に取ると、男子チームは14500点、女子チームは14000点。どちらもノルマをクリアしている。近年の中国チームの成績を考えれば、第一級の3大会でのポイントは「基礎点」のようなもの。日本は男女チームとも総合得点が3000点であることを考えると、まだ両チームの差は小さくない。

 それでも、中国もビッグゲームでのシングルスや団体のタイトルをひとつ失えば、このノルマを達成するのは難しくなり、コーチ陣にも大きなプレッシャーがかかる。そして中国にとって、最大の脅威となるのは間違いなく日本だ。
  • 数値による目標設定は、いかにも劉国梁会長らしいやり方だ(写真提供:ピンパン世界)

 2月25日、中国卓球協会は報道各社を集めてメディアブリーフィングを行い、2020年東京五輪を見据えた戦略と、新たな国家チームの指導体制を発表した。コーチ陣の顔ぶれは下記のとおり。

★男子1軍チーム
主教練(監督):秦志戩
組長(ヘッドコーチ):劉国正
教練(コーチ):王皓、陳チィ(王+己)、劉志強、劉恒、張洋
★男子2軍チーム
組長(ヘッドコーチ):陳振江
教練(コーチ):有于洋、王建軍

☆女子1軍チーム
主教練(監督):李隼
組長(ヘッドコーチ):馬琳
教練(コーチ):肖戦、黄海誠、郭炎、邱貽可、馬俊峰
☆女子2軍チーム
組長(ヘッドコーチ):閻森
教練(コーチ):李大成、朱文韜、王翔

 男子1軍チームの監督には、昨年6月の中国オープンでのボイコット騒動で監督職を解かれた秦志戩が復帰。劉国正がヘッドコーチとなった。女子1軍チームは李隼が引き続き監督を務め、馬琳がヘッドコーチに就任。丁寧の担当コーチだった陳彬や、女性コーチの張琴などがコーチ陣から外れたが、本人の申し出によるものだと報道されている。8年に渡って丁寧を指導してきた陳彬は健康に不安を抱えていたようだ。

 男女とも王皓、陳チィ、馬琳、邱貽可など、中国卓球協会の劉国梁会長が男子チーム監督だった時代に指導した「劉国梁チルドレン」たちが多く入閣。現場復帰を果たした劉国梁会長による強化体制が本格的にスタートする。国家チームの主要なコーチ陣による「指導部」、張怡寧・王楠・李暁霞など往年のレジェンドプレーヤーが知恵を授ける「参謀部」なども組織され、2020年東京五輪に向けて総力戦で臨む構えだ。
  • 17年全中国運動会で、選手のプレーをチェックする秦志戩。ちょっと怖いですね…

  • 18年世界選手権団体戦で、熱いアドバイスを送る李隼(右端)

 2月28日〜3月3日、中国・深センで行われる世界卓球選手権個人戦(4月21〜28日/ハンガリー・ブダペスト)の中国代表選考会『地表最強12人』。
 男女ともチームの重点強化選手6人に、第一次選考会を通過した6人を加えた12人が出場。男女各1枚の世界代表の切符を争うこの代表選考会に、16年リオ五輪男子金メダリストの馬龍が出場しないことが明らかになった。発表された選考会のスケジュールでは、すでに第一次選考会7位で補欠となっていた閻安(13年世界選手権ベスト8)が繰り上がりで出場メンバーに加わっている。

 昨年後半、ITTFワールドツアー4大会や男子ワールドカップを相次いでキャンセルし、今年に入ってからも1月のハンガリーオープンにエントリーしながら出場をキャンセルした馬龍。左膝の故障からの回復に、予想以上に時間がかかっているようだ。『北京日報』では、所属先である北京市チームの張雷総監督のコメントが伝えられている。
 「彼の膝の故障は非常に重いものであり、手首や腰にも故障を抱えている。彼の故障も心配だが、回復後に以前の競技レベルまで戻れるかどうかも非常に心配している」。

 今回行われる『地表最強12人』は、中国卓球協会と中国の大手ポータルサイトである『騰訊(テンセント)』がタッグを組み、ショーアップされた中で行われる大会。代表選考会でありながら、優勝賞金100万元(約1650万円)、賞金総額500万元(約8200万円)という驚くべきものだ。一方で、決定する代表枠はひとつだけで、選考会というより卓球の認知度を高めるためのエキシビションという要素が強い。馬龍は『地表最強12人』に出られなくても、故障が回復すれば代表入りを果たすだろう。ただし、30歳という年齢でかつての競技レベルを取り戻すのは容易ではない。

 16年リオ五輪に出場した馬龍・許シンに樊振東(17年世界選手権準優勝)を加えた3名が、東京五輪の代表メンバーになる可能性が濃厚だった中国男子。しかし、馬龍が4月の世界選手権個人戦にも出場できなかった場合、2年前の世界選手権個人戦での優勝や、昨年3月のドイツオープン優勝などで得た世界ランキングのポイントがごっそり消失。現在12位の世界ランキングが100位近くまで下降してしまう。五輪でのチームランキングを考えるとトップ10圏内まで戻したいところだが、それには相当なエネルギーを要し、再び故障のリスクも高まる。

 現在世界ランキング3位の林高遠の五輪代表入りも現実味を帯びてくるが、昨年12月のITTFワールドツアー・グランドファイナル決勝で張本智和に完敗するなど、ビッグゲームでのメンタルのコントロールには大いに不安が残る。代表メンバー3人のうち、許シン・林高遠と左腕がふたりになってしまうのも、団体戦のオーダーを考えると柔軟性を欠く。中国男子としては、まずは馬龍の治療とリハビリが最優先、というところだろう。
  • 昨年のジャパンオープンでの馬龍のプレー。王者のカムバックを願う