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中国リポート

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「昨年、男子ジュニアチームは世界ジュニア選手権とアジアジュニア選手権で、男子シングルスのタイトルを失っている。このことを我々は厳粛に受け止めるべきだ。
 我々、中国卓球チームは北京五輪で、外国選手に一度も敗れることなく男女団体のタイトルを獲得し、シングルスの金・銀・銅を独占した。しかし、歴史上の教訓は中国卓球界に語りかけている。進取の精神を忘れてはならない、現状に満足してはならないと。もし我々が現状認識を誤れば、80年代後半に訪れた低迷期が再び繰り返されることになるだろう」

 上は中国卓球協会の第3代会長に就任した蔡振華の、就任に当たっての言葉だ。蔡振華の最大の功績は、何と言っても90年代に低迷していた中国男子を、再び世界の王座へと導いたこと。改めてそのことを周囲に印象づけ、睨みを利かせる発言だ。
 続けて蔡振華は、超級リーグについても言及。「超級リーグは、期間を5月から8月に固定したい。国際卓球連盟にも賛同を得ている。そして将来的には、海外の強豪クラブを超級リーグに参戦させることも計画している」。現状でも超級リーグは世界最高峰のレベルにある国内リーグだが、さらに世界規模のリーグへの道を模索しているということか。かつて中国で行われた世界クラブ選手権は長続きしなかったが、蔡振華は果たして超級リーグにどのような未来図を描いているのだろうか。

 さらに蔡振華は、国際卓球連盟による世界規模での卓球の強化と普及に、積極的に協力していく意志を表明。「我々には卓球界の強国、そして大国として、国際卓球連盟による競技発展に協力していく義務がある」と力強く述べている。07年10月の城市運動会を訪れた際には「08年の北京五輪以降、我々は“狼(おおかみ)”を育てなければならない。以前は、海外にもレベルの高い選手がたくさんいたが、我々の継続的な努力によって、もはや“狼”は姿を消しつつある。競争があるというのは中国卓球界にとっては歓迎すべきこと。国際卓球界の発展のために、中国はより良い貢献ができるはずだ」とコメントした蔡振華(中国リポート2007/11/14『国家チームの虎の穴「訓練基地」後編』)。その眼は広く世界を見据えている。

Photo:中国体育界の「時の人」となっている蔡振華。彼のニュースが3本続きましたが、「国家チームの重点強化選手」「直通横浜・第2ステージ」など、なるべく早くリポートしていきます。
 2月27日、江蘇省太倉市で行われた全国卓球工作会議と、中国卓球協会の幹部交替会議が閉幕した。幹部交替会議では、9日前に中国バドミントン協会の主席(=会長)になったばかりの蔡振華が、中国卓球協会の第3代主席に就任。中国が五輪で金メダルを量産する2つの競技、卓球とバドミントンの協会主席を兼任する、初めての人物となった。新たに決定した中国卓球協会の首脳陣の顔ぶれは、以下のとおりだ(敬称略)。

 名誉主席:李瑞環
名誉副主席:徐寅生 李富栄
   主席:蔡振華
  副主席:劉風岩 于斌 李振国 李永波 陸元盛 姚振緒
      孫康林 張建新 蘇亜君 孫永言 陳一平 華洪興 
      張洪涛 陳紹基 朱玲 張西凌 江和平 邵華
招請副主席:李剛 張勇 李寧

 現主席の徐寅生、現副主席の李富栄は、ともに新たに創設された名誉副主席に就任。名誉主席の李瑞環は、かつて中国共産党のトップに位置する中央政治局の常務委員でもあった大物政治家だ(現在は引退)。副主席(副会長)はなんと18人いるが、ほとんどは名誉職。実務を担当するのはリストの最初の6人くらいで、卓球界の有名人では元国家女子チーム監督の陸元盛と、ITTF技術委員会主任の姚振緒がいる。劉風岩(国家体育総局卓球・バドミントン管理センター主任)と李永波(国家バドミントンチーム総監督)はバドミントン界からの選出。残りの12人は各省・市の体育界のトップ(体育局局長)のほか、陳一平は上海市卓球協会会長、江和平はCCTV(中国中央電視台)のスポーツ局局長だ。
 招請副主席は名誉顧問といったところで、中国卓球協会のスポンサーである中国聯合通信の李剛副総裁、四川長虹集団の張勇董事長、そしてスポーツブランド・李寧の李寧会長が名前を連ねる。

 中国卓球協会は1955年に創設。その2年前の1953年3月には、中華全国体育総会の卓球部門として、国際卓球連盟に加盟している。初代の陳先会長が1977年まで約25年、続いて徐寅生会長が今年2月まで約32年会長職に在り、創設から54年目でやっと3代目へのバトンタッチということになる。蔡振華もまだ若く、かなりの長期政権となることが予想される。
 蔡振華の会長就任会見の内容も、続けてお伝えします。

Photo上:蔡振華会長、これからどのような改革を実行していくのか
Photo下:文化大革命が集結し、世界選手権バーミンガム大会で河野満が優勝した1977年、第2代会長に就任した徐寅生。長い間、本当にお疲れさまでした!
 2月18日、中国バドミントン(羽毛球)協会の幹部交替会議が北京で行われた。同時に中国バドミントン協会創立50周年記念大会も開催。中国卓球協会は1955年に創立(ITTFへの加盟は1952年)され、今年で54年目を迎えるので、卓球協会のほうが少しだけ先輩ということになる。
 そして幹部交替会議では、国家体育総局の副局長である蔡振華が、新しく中国バドミントン協会の会長に就任することが全会一致で可決された。本来、幹部交替会議は4年に1回行われるのだが、北京五輪への影響を考慮して3年遅らせていたものだ。ちなみに、これまで11年間会長を務めてきたのも、卓球界の往年の名選手である李富栄(61・63・65年世界選手権2位)。バドミントン界のトップの座は、卓球界でバトンタッチされることになる。李富栄は名誉副主席の座に就く。

 現在、バドミントン界は国内でのクラブリーグ設立という重要課題を抱えている。蔡振華は「バドミントンのクラブリーグ設立に関しては、その他のリーグ(卓球やサッカーなど)を参考にして、決して焦ることなく、最善の制度を選択していくべきだ」と発言。卓球の超級リーグでの経験をもとに、バドミントンでもクラブリーグの設立に尽力する構えだ。今年10月の全中国運動会後に、初のバドミントンの国内リーグが行われる可能性が高いという。
 国家体育総局の下部組織である卓球・バドミントン管理センターで、一体となって管理されている卓球とバドミントン。卓球界から協会のトップが選出され、「バドミントン界に不満の声は上がらないのか?」という気にもなるが、卓球・バドミントン管理センターの主任で、北京五輪では卓球選手団の団長も務めた劉風岩はバドミントン界の出身。優秀な人材の登用で、双方の発展を目指すということか。

 蔡振華は、昨日26日から行われている中国卓球協会の幹部交替会議でも、現職の徐寅生会長に代わって中国卓球協会会長への就任が有力視されている。有力な対抗馬はおらず、「就任は決定的」という報道もある。すでに卓球界の枠を超え、中国体育界の有力幹部のひとりとなっている蔡振華。47歳と若いだけに、これからもまだまだ活躍の場が広がりそうだ。

Photo:精力的な活動を続ける蔡振華。そういえば以前、精力剤の広告にも出ていた…
 2000年シドニー五輪ベスト4の実績を持つシンガポール女子の名プレーヤー、ジン・ジュンホン(中国名:井浚泓)が、シンガポール女子チームのコーチに就任することが発表された。任期は今年3月1日から2年間となる。

 シンガポール代表として3回の五輪に出場したジン・ジュンホンは、1968年10月13日生まれで現在40歳。スイングスピードが早いフォアドライブの連続攻撃と、バック表ソフトの安定したブロックで、前陣での球さばきのうまさに定評があった。上海市女子チーム出身で、上海市チームに練習に来ていたシンガポール男子チームの黎仕漢と知り合い、91年末にシンガポールに渡って結婚。93年世界選手権イエテボリ大会では、女子シングルス3回戦で世界チャンピオンのトウ亜萍(中国)をゲームオールで破る大金星を挙げている。2000年シドニー五輪では、孫晋(中国)、耿麗娟(カナダ)らを破ってベスト4入り。準決勝・3位決定戦で敗れたものの、シンガポール初の五輪メダル獲得にあと一歩まで迫った。96・97・00年とシンガポールの最優秀女子スポーツ選手にも選ばれている。

 05年上海大会ではシンガポール女子チームのベンチに入り、昨年末のドイツオープン、ポーランドオープンでは退任が濃厚となっていた劉国棟監督に代わってチームを率いていたジン・ジュンホン。「コーチ就任は1カ月近く考えた上で決めたこと。周樹森監督に学んでコーチとしての実力を高めたい」と地元のマスコミに意気込みを語っている。

Photo:04年アテネ五輪でのジン・ジュンホン
 2月11~15日まで行われたITTFプロツアー・クウェートオープンの女子シングルスで、丁寧(ディン・ニン)がプロツアー初優勝を飾った。第1シードの張怡寧が姜華君(香港)に敗れたことで、やや対戦相手に恵まれた感もあるが、帖雅娜(香港)、李恩姫(韓国)、姜華君、そして決勝で郭躍と実力者を連破。しかも様々な戦型の選手を破っての価値ある優勝だ。
 丁寧は今月7日まで行われた「直通横浜」の第1ステージでも3位と大健闘しており、第2ステージで及第点の成績を残せば、横浜大会のシングルス代表に抜擢される可能性が高くなってきた。1990年6月20日生まれ、いわゆる「90後」世代の丁寧。このボーイッシュな中国女子のホープを少しご紹介しよう。

 丁寧の出身地は、大慶油田を擁し、石油の街として名を馳せた黒龍江省大慶市。父親はスピードスケートのプロ選手、母親はバスケットボールのプロ選手で、身体能力に恵まれているのも道理、というスポーツ一家の生まれなのだ。特に母親は黒龍江省バスケットボールチームでキャプテンまで務めた人物。丁寧の卓球への取り組み方に対しては非常に厳しい一方で、娘の練習のためには労力を惜しまなかったそうだ。
 地元の少年宮で卓球を始めた丁寧は、97年に7歳で大慶市体育学校に入学。1年後には同期の男子選手を全員打ち負かすようになる。母親は丁寧を黒龍江省チームに入れようとしたが、丁寧がまだ幼かったことから、省チームのコーチは「省チームに入るのは早すぎる」と断ってしまった。そのため、母親は丁寧を連れて北京市の什刹海体育学校を受験、ここで北京市女子チームの監督だった周樹森がその才能を見抜いた。年齢を理由に大魚を逃した黒龍江省チームに対し、周監督は丁寧の学費を全額免除し、しかもいきなり北京市女子チームの一員として迎え入れたのだ。

 9歳にして親元を離れた丁寧は、2000年に北京市チーム入り。周囲が驚くほどの成長の早さで2003年に国家2軍チーム、そして2005年1月に国家1軍チームに入った。この年の12月にはオーストリア・リンツで行われた世界ジュニア選手権に出場。北京市チームのチームメイトである曹麗思(08年世界ジュニア優勝)、彭雪らとともに団体優勝を果たし、シングルスでも別格の強さで優勝している。
 ちなみに丁寧といえば、中国選手には珍しい「下蹲式発球(しゃがみ込みサービス)」がトレードマークだが、これは北京市チームに入った時にまだ身長が低かったため、サービス練習に取り入れたもの。その後見る見るうちに身長が伸び、現在の公式プロフィールでは身長172cm。丁寧は膝に負担がかかるこのサービスを、大腿筋のトレーニングを積むことで、秘密兵器として磨き上げている。

 18歳という年齢ながら、すでにトップ選手の風格を感じさせる丁寧。クウェートオープン優勝後、カタールオープンでは朴美英(韓国)に2-4で敗退。カタールオープンで優勝していれば、横浜大会のシングルス出場権獲得が決まったのだが、さすがにそこまで順調にはいかなかった。プロツアーでの対戦成績などを見ると、カット主戦型に対してやや不安があるようだ。しかし、超級リーグで何度もチームのピンチを救ったメンタルの強さは太鼓判。横浜大会でどこまで成績を残せるのか、楽しみな選手だ。
 ちなみに中国語だと「丁寧」は「何度も繰り返し言い聞かせる」という意味になります…。

Photo上・中・下:丁寧のしゃがみ込みサービス。中国選手では、牛剣鋒などもしゃがみ込みサービスを使っていた
 2009中国超級リーグの日程および競技規定が発表された。
 昨シーズンは北京五輪の影響もあり、第1ステージは全9節でのスピード進行となったが、今年の超級リーグ第1ステージは全18節で開催。5月23日(土)に開幕戦が行われ、毎週水曜日と土曜日に試合を消化して、7月29日(水)に第1ステージが終了する。中2日、あるいは中3日で中国全土を飛び回るのだから、かなりタイトなスケジュールと言えるだろう。
 そして、昨シーズン初めて導入されたプレーオフ制が今シーズンも継続。男子は8月5~23日、女子は8月5~21日までプレーオフが行われ、優勝チームおよび最終順位が決定する。従来の超級リーグでは第1ステージに相当する全18節で順位を決定していたので、それにプレーオフ制を組み合わせた形だ。五輪が開催される年以外は、超級リーグもこの試合日程が定着していくのではないだろうか。

 詳しい競技規定は後ほどお伝えするが、今シーズンの超級リーグには2シーズンぶりに「冠(かんむり)スポンサー」がついた。リーグの正式名称は「2009年361°中国卓球クラブ超級リーグ」だ。
 …なんとも不思議なスポンサー名だが、「361°」というのは中国・福建省のスポーツブランド「三六一度体育用品有限公司」のこと。バドミントンやバスケットボール、テニスなどのシューズやウェアを扱うスポーツブランドだ。超級リーグのウェアの公式サプライヤーである「安踏体育用品有限公司」、昨年ITTFプロツアー・カタールオープンなどの冠スポンサーや、北朝鮮卓球チームのウェアの公式サプライヤーになった「鴻星体育用品有限公司」と同じ福建省・晋江市にある。世界のスポーツシューズの約2割を生産する福建省の中でも、この晋江市は「靴の街」として有名なのだ。そして、この361°も2003年の創立以来、瞬く間に中国国内に販路を広げてきた。

 ちなみに361という数字の由来は、会社の公式ホームページでも全く説明がない。同社の総裁である丁伍号氏のインタビューの紹介によれば、円の一周の角度(360°)であり、「円満・パーフェクト」を象徴する360に1をプラスすることで、パーフェクトをも上回るのが「361」。そしてその「+1」がまた新たなスタートを象徴する…そうだ。もっとも、中国にはナイキのアパレル系ブランドである「NIKE360」があり、それを模倣したもの、という見方が一般的らしい。「+1」は中国の自尊心を表すものでもあるのだろう。

Photo上:ロゴが見えやすいようにと、メダルをどけてくれた(?)王楠
Photo下:ちょっと粗いですが、ロゴの拡大図。中国のスポーツブランドのロゴというのは、どうも主張がありません
★金キョン娥、超級リーグの重慶康徳に入団

 2月10日、超級リーグ女子の重慶康徳が韓国女子のエース・金キョン娥(世界ランキング9位)を獲得したと発表した。2007年のシーズンに甲Aリーグに降格し、1シーズンで超級リーグに返り咲いた重慶康徳は、海外からの選手補強を進めていた。関係者によると年棒は約50万元(約700万円)。 中国に対してはあまり強いイメージがない金キョン娥だが、ここ4年間の対戦成績でいくと、天敵・張怡寧と引退した王楠に大きく負け越している他は五分以上の成績を残している。ダブルスでの起用が難しいが、若手選手にとっては厄介な相手になりそうだ。

★孔令輝、ガールフレンドにプラダの新作バッグをプレゼント

 中国でも都市部では一般的になりつつある「情人節(バレンタインデー)」。欧米式に男性から女性へプレゼントを贈ることも珍しくない。国家女子チームのコーチである孔令輝は、近く結婚も噂されるガールフレンドの馬蘇にプラダの新作バッグをプレゼントした。 孔令輝はプロツアーのクウェートオープンとカタールオープン、女優である馬蘇は映画の撮影で、バレンタインデー当日は離ればなれ。バレンタインデーに先立ってのプレゼントとなったようだ。ちなみに馬蘇の誕生日は今日2月17日で、プラダのバッグはバレンタインデーと誕生日のプレゼントを兼ねているとのこと。

★全香港ランキング発表される

◆男子
1. 高礼澤(7358)/2. 李静(6685)/3. 張ユク(6561)/4. 江天一(2650)/5. 唐鵬(2088)/6. 謝嘉俊(1486)/7. 林挺(1324)/8. 趙頌煕(1226)/9. 黄鎮廷(1241)/10. 李冠毅(1194)
◇女子
1. 帖雅娜(12848)/2. 林菱(7876)/3. 張瑞(6428)/4. 于國詩(2580)/5. 姜華君(2484)/6. 呉穎嵐(1575)/7. 管夢圓(1484)/8. 李皓晴(1438)/9. 呉紅蓼(1251)/10. 呉嘉儀(1195)

 2月9日、09年1月の全香港ランキングが発表された。通常は月に一度更新される全香港ランキングだが、更新は08年9月以来4カ月ぶり。男女10位までのランキングは上記のとおり(カッコ内はランキングポイント)。男子は世界団体戦メンバーの5人がトップ5、8位に香港の天才少年と言われる趙頌煕が入っている。女子は帖雅娜が断トツでトップ。4位に純正・香港選手である于國詩、7位の管夢圓は以前中国リポート(08/04/17『名選手の娘さんが香港ジュニアV』)でもお伝えした管建華(87年世界3位)の娘さんだ。

Photo上:超級リーグ初参戦となる金キョン娥
Photo下:孔令輝、結婚式は秒読み段階か?
 少し前の情報になるが、シンガポールからのニュースの中に興味深いものがあった。ある男性が、シンガポール卓球協会への寄付を募るためのチャリティマラソンに挑戦したというものだ。

 男性の名前はLim Nghee Huat(林義発)さん、55歳。…名前の読み方が正確に分からないので、親しみを込めてリムさんということにしよう。シンガポールのメディア企業・メディアコープでTVプロデューサーとして働いているリムさん、ビシッと分けた七三の髪型に度の強い眼鏡をかけ、いかにも真面目なサラリーマンという感じだ。ところがこのリムさん、なんと先月ブラジルのミナス・ジェライス州で開催された135マイル(217km)ウルトラマラソンに、アジアからの唯一の出場者として参戦。箱根駅伝の往復と同じという長距離、さらに平坦なコースは全行程の20kmに満たないという過酷な山岳コースを走り抜け、見事52時間47分でゴールした。

 そしてリムさんはこのウルトラマラソンを、「国際大会で優勝な成績を収め、国の誇りである」シンガポール卓球協会へのチャリティーとして行うことを計画。シンガポールの元首相であるゴー・チョクトン氏がスポンサーとなり、リムさんが1km走るごとに、10シンガポールドルがシンガポール卓球協会へ寄付された。リムさんは見事完走したため、総額20,000シンガポールドル(約120万円)以上が寄付されたことになる。この寄付に対し、シンガポール卓球協会のリー・ベーワ会長は感謝の意を表した上で、「もし可能なら、選手たちを彼と一緒に活動させたい。ランニングの必要性だけでなく、シンガポールのスポーツに対する認識を高めるためです」とコメントしている。シンガポール代表メンバーがマラソンに挑戦する日が来るのだろうか?
 実はリムさんは、これまで数多くのトライアスロンやウルトラマラソンを完走してきた「シンガポールの鉄人」。2005年にナンヤン工科大学への寄付を募るチャリティマラソンとして168kmを走破、2007年には世界で最も過酷と言われるデスバレー・ウルトラマラソンも完走している。次なる計画はタイ南部からシンガポールまでの1,000kmマラソンだそうだ。

リムさんのウルトラマラソン完走のニュースはこちら↓
 http://www.channelnewsasia.com/stories/singaporelocalnews/view/408027/1/.html
 国家男子1軍チームでは、「直通横浜」の期間中、選手たちの体重測定が行われた。
 春節(中国の旧正月)前の休暇前、選手たちはすでに体重を一度測定している。選手たちがそれぞれの故郷で春節を迎え、飲み過ぎ食べ過ぎで体重が増えていないかチェックするのが目的だ。体重が1キロ以上増えていた選手にはペナルティがあり、劉国梁監督曰く「有銭的、罰?万米;没銭的、就罰銭」、つまりお金のある選手にはランニング、お金のない選手には罰金が待っている。

 今年は10月に全中国運動会を控えており、故郷に戻っても省チームの練習に駆り出された選手が少なくない。しかし、集合訓練で絞り込まれた体だけに、春節のご馳走を食べてのんびりしていると、1キロくらい簡単に増えてしまうだろう。体重計を前に靴下やシャツを脱ぎ捨て、最後の抵抗を試みた者もいたそうだが、彼らが心の中で「監督、あんたはどうなんだ!」と叫んでいたかどうかは、定かではない。

 ちなみに国家男子チームの「Mr.ダイエット」と言えば馬琳。17歳で初出場した97年世界マンチェスター大会ではスリムだったが、膨らんだり萎(しぼ)んだりしながら徐々に体重が増加。04年アテネ五輪でワルドナーに敗れた直後、ついに呉敬平コーチから「ダイエット指令」が出てしまった。3カ月で12キロ落としたと呉コーチがインタビューで語っているが、よく頑張ったというか、ずいぶん蓄えていたというか…。引退した後が心配だ。

Photo:引退後、あっという間に顔の輪郭まで変わってしまった劉国梁監督。日本のペン表ファンのためにも、少しダイエットしてほしいが…
☆「直通横浜」女子第1ステージ最終成績 S=シェーク/D=ドライブ
1.  郭躍(左S裏裏D/18勝2敗)
2.  張怡寧(右S裏裏D/17勝3敗)
3.  丁寧(左S裏裏D/16勝4敗)
4.  劉詩ウェン(右S裏裏D/15勝5敗)
5.  李暁丹(右S裏裏D/14勝6敗)
6.  姚彦(右S裏裏D/12勝8敗)
7.  李暁霞(右S裏裏D/12勝8敗)
8.  木子(右S裏表前陣/11勝9敗)
9.  郭炎(右S裏裏D/10勝10敗)
10.  常晨晨(左S裏裏D/10勝10敗)
11.  彭陸洋(右S裏裏D/9勝11敗)
12.  饒静文(右S裏表速攻/9勝11敗)
13.  范瑛(右S裏表カット/8勝12敗)
14.  曹臻(右S裏表速攻/8勝12敗)
15.  文佳(左S裏裏D/8勝12敗)
16.  王シュアン(右S裏表速攻/8勝12敗)
17.  楊揚(右S裏裏D/8勝12敗)
18.  周芳芳(右S裏裏D/5勝15敗)
19.  曹麗思(右S表裏速攻/5勝15敗)
20.  聶維(右S裏表速攻/4勝16敗)
21.  馮亜蘭(右S裏裏D/3勝17敗)
※11点制5ゲームズマッチで開催

 2月7日に終了した「直通横浜」女子第1ステージの結果は、上記のとおりとなった。
 リスキーな「四分制」を採用した男子よりも、番狂わせが多かったのは興味深い。現世界女王の郭躍、現五輪女王のワンツー・フィニッシュは順当だが、3位に18歳の丁寧、4位に17歳の劉詩ウェン、5位に18歳の李暁丹と10代トリオがベスト5に躍進。世界選手権団体メンバーの李暁霞は7位、故障を抱えた郭炎は9位に沈んだ。10位の常晨晨、11位の彭陸洋、14位の曹臻らは、5年ほど前には将来の中国女子の主力になると言われていた選手たちだが、王楠や張怡寧の壁を越えられないまま、世代交替の波に襲われている。そして17位の楊揚以下の5選手は第1ステージでの足切りが決定。この5選手の中には3人の世界ジュニアチャンピオン(馮亜蘭・楊揚・曹麗思)が含まれているのだが…。
 ちなみに直通横浜の女子第1ステージに出場した21選手の平均年齢は20.8歳。最年長は張怡寧の27歳、最年少は劉詩ウェンと曹麗思の17歳だった(中国選手のプロフィールの誕生日はあまり当てにならないが)。李楠、陳晴らが国家チームを引退したため、21人の中にペンホルダーの選手はひとりもおらず、上位はシェークドライブ型の選手が独占した。ただひとりのカット主戦型である范瑛が、張怡寧を3-2で破って気を吐いたことを付け加えておこう。

 それにしても、世界ランキング3位の李暁霞が7位に終わったのは一体どうしたことか。担当コーチの李隼は「李暁霞にはかなりプレッシャーをかけていったし、一試合一試合が世界選手権だと思ってプレーするように言った。しかし、彼女の悪い癖がまた出てしまったようだ。試合中に頭が空っぽになり、自分がどうプレーしたら良いか分からなくなってしまうんだ」とコメント。李暁霞には、07年フォルクスワーゲン中国オープンで金沢咲希(日本生命)に敗れたり、昨年12月のプロツアーグランドファイナルで金キョン娥(韓国)に敗れたりと、予想外の敗戦を喫することがしばしばある。こういった取りこぼしを国家チームの首脳陣は最も嫌う。 

 昨日11日にスタートしたITTFプロツアー・クウェートオープン、続けて開催されるカタールオープンには、1~6位の郭躍・張怡寧・丁寧・劉詩ウェン・姚彦、そして郭炎が派遣される。5位の李暁丹は今回の「直通横浜」で最大の「黒馬(ダークホース)」と報道されたが、エントリーの変更が難しいため、郭炎が出場するようだ。7位の李暁霞ではなく、9位の郭炎に決まったのは、「郭炎は故障を抱えて最後まで奮闘したから」というのが表向きな理由だが、李暁霞に対するひとつの試練なのだろう。王楠が引退し、巡ってきたチャンスをなかなか生かせない李暁霞、第2ステージで巻き返しはなるか。

Photo上:先月21歳になったばかりの李暁霞、苦闘が続く
Photo下:張怡寧をも破った18歳の李暁丹。李暁「霞」と李暁「丹」は明暗を分けた