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中国リポート

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 10月5〜12日に黒龍江省ハルピン市で行われた全中国選手権。もう間もなく、中国卓球協会HPに記録がアップされるので、詳細な記録は今しばらくお待ちください。

 この全中国選手権の最終日、話題を集めたのが張継科だ。その前日、10月11日に行われた男子団体準決勝で再び右肩を傷めた。5月の世界選手権蘇州大会でも悪化させた古傷。チームドクターの治療を受けた張継科だが、決勝は欠場を余儀なくされ、山東省は上海市に0ー3で完敗した。
 大会の前半に行われた男子シングルスで決勝に進出し、許シンに1ー4で敗れて準優勝だった張継科。決勝後、許シンがCCTV(中国中央電視台)のインタビューに答え、張継科をかばうようにコメントしている「今日の試合は、彼のコンディションがあまり良くなかった。でも、コートでの気迫はまた以前の状態を取り戻しつつあると思う。継科に対して疑問の声を投げかける人は多いけど、彼の頑張りは観客にも強い印象を残したはずだ」。

 しかし、リオ五輪を前に張継科の立場は苦しくなりつつある。全中国選手権の閉幕後、劉国梁総監督は北京テレビのスポーツ番組『天天体育』のインタビューに対し、中国男子のリオ五輪への選考レースに言及。「最も厳しい状況にあるのは張継科だ」と語っている。
 「彼は蘇州大会で方博に敗れた後も、多くの試合で敗れた。ただ敗れただけでなく、総合的に見てレベルが低下しているのを感じる。リオ五輪まで1年を切ったこの時期に、低調な時期を迎えるというのは、それだけ困難も大きい。この苦境をまだはね返す力があるかどうか、見極めていきたい」(劉国梁)。

 厳しい言葉を口にしつつも、張継科のここ一番での勝負強さに対して、劉国梁総監督は厚い信頼を寄せている。しかし、故障だけは怖い。体への負担が増したプラボールで、これからハードな集合訓練をこなし、万全の状態でリオ五輪を迎えられるかどうか。
 馬龍・張継科・許シン・樊振東の4人のうち、2人がシングルスと団体代表、1人が団体のみの代表、そして1人がリザーブ。難しい選考だ。このうち誰かひとりが五輪に出られないとは……。リオ五輪の中国代表メンバーの発表は、来年3月上旬に行われる世界選手権団体戦の後になるという。
  • アジア選手権で張禹珍に敗れた後の張継科

 少し前の大会になるが、9月18〜24日に遼寧省鞍山市で『2015年“体彩杯”全国青年卓球選手権』が開催された。
 2011年にスタートした全国青年選手権は、男女団体・男女シングルスの4種目での開催。今回の鞍山大会の場合、1997年1月1日〜2004年12月31日の期間に生まれた選手、つまり10〜18歳の選手に出場資格がある。この大会に先立って、8月21〜27日には全国少年選手権(10〜15歳の選手が出場)が開催され、今月19〜26日には福建省福州市で全国青年運動会・卓球競技も開催予定。前回(第7回)まで城市運動会と呼ばれていた、14〜18歳のスポーツ選手による4年に1度の総合体育大会だ。

 全国青年選手権の男子シングルス優勝は、昨年の世界ジュニア3位の劉丁碩。張継科や方博と同じ山東魯能の所属だが、今シーズンのスーパーリーグでは天津博士能にレンタル移籍。単複で通算10勝13敗と堂々たる成績を残し、梁靖崑にも2連勝している。プレースタイルとしてはあまり目立った特長はないが、レシーブからチキータで押し込み、連続フォアドライブで攻める馬力のあるプレーヤー。

 女子シングルスを制したのは、2013〜15年アジアジュニア3連覇の記録を持つ陳幸同。遼寧省瀋陽市の出身で、上背はないものの、パワーとテクニック、メンタルの強さを兼ね備えたオールラウンダー。今大会では決勝トーナメント2回戦から、4試合連続でゲームオールの試合を制する勝負強さを見せ、何卓佳、陳可、そして決勝で王曼昱と同じ世界ジュニア代表の3人を全て倒した。王曼昱とはこれから熾烈なライバル関係を築いていくだろう。

 男子団体は山東省、女子団体は河北省が優勝。山東省は劉丁碩と魏世皓という、今シーズンのスーパーリーグでダブルスも組んだツインエースを軸に、決勝では王楚欽(14年世界ジュニアベスト8)を擁する北京市に3ー2で競り勝った。女子団体を制した河北省は、決勝でダークホースの雲南省に快勝。その原動力のひとりが、全国少年選手権を制した2000年生まれの右シェークドライブ型・孫穎莎(スン・インシャ)。将来性を買われ、今年9月に国家2軍チーム入りを果たした彼女は、今大会の女子シングルスでも3位に入るなど、要注目の逸材だ。

 ちなみに全国青年選手権では、大会に先立って全選手に骨年齢の計測が義務づけられている。年齢のサバを呼んで、実年齢より低い年代の大会に出場しようとする選手が後を絶たないからだ。大会要項に「ちゃんと規定の時間までに検査を受けないと、我々は責任はとりませんよ」と書いてあるのが面白い。
  • ジュニアにしてはやや渋めのルックス、劉丁碩

  • 女子単優勝の陳幸同は、スーパーリーグでも単複合わせて15勝の活躍

 これまでずっと、中国スーパーリーグのことを「超級リーグ」と表記してきた中国リポート担当。「このほうが中国らしいか」という曖昧な理由で、超級という言葉を用いてきたのですが、「超級聯賽の聯賽(リーグ)だけ翻訳するのも妙か」という、これまた曖昧な感覚により、本誌12月号の特集記事は「徹底研究! 中国スーパーリーグ!」と題してお送りします。中国リポートでも、スペースの都合などがない限りは、基本的に「スーパーリーグ」という表記を使いたいと思います。ご了承ください。

 さて、閉幕から1カ月が経とうとしているスーパーリーグ。全中国ジュニア選手権に、先日終わったばかりの全中国選手権と、結果をお伝えする大会が目白押しだが、スーパーリーグ・プレーオフを取材して「これ流行ってるな〜」と感じた技術がひとつある。せっかくなのでご紹介しましょう。

 男女問わず使われていたそのテクニックは、フォア〜ミドル前に来たショートサービスに対する、フォアの左横回転ツッツキ。以前から使われていたが、今回のプレーオフでは特に目を引いた。相手のサービスが上回転系やナックルでも、左横回転を入れて、ショートスイングでガツンと切る。ツッツキというより「台上カット」という印象を受ける。
 馬龍クラスの選手がやると、スイングスピードが速いために、インパクトの直後にボールがフッと止まって見える。そこから相手のフォアサイドへ、低く沈みながら飛んでいく。このテクニックの長所は、相手の3球目攻撃のコースを限定できること。低く切って入れることができれば、相手はフォアストレートへの攻撃は非常に難しくなる。フォアクロスも一発の強打は厳しいため、打球点を落として弧線の低いループドライブを狙うしかなく、これを4球目のカウンタードライブで狙っていく。打球直前まで、ストップとの違いがわかりにくいのもメリットだ。

 チキータの研究が進む中、フォア前へのサービスをチキータで狙い打って、バックサイドまで戻って連続攻撃をするのは相当難しくなっている。バックサイドだけでなく、フォアサイドに早い打球点で返された時も、フォアハンドで威力ある4球目攻撃をするのは難しい。特に馬龍や方博のようなフォアハンド主体の選手は、フォア前はストップやこの左横回転ツッツキが増えているようだ。2枚ずつで少し見にくいですが、下の連続写真をご確認ください(※クリックで拡大)。
  • 1:樊振東のフォア前へのサービスに対し……

  • 2:フォアで打球体勢に入る馬龍

  • 3:非常に小さなスイング、ややボールの右横をとらえるイメージで打球

  • 4:回転量の多いボールが樊振東のフォアへ

  • 5:樊振東は打球点を落としたループの体勢

  • 6:予想以上の変化に、打球は大きく外れた

 まだまだ面白い写真はたくさんありますが、ここらで超級写真館ファイナルです。

 1段目左写真は、大会初日の許シンに続き、大会2日目に「指圧マットマッチ」にかり出された朱雨玲。許シンの時はマットが1枚だったのに、なんと2枚に増量。動いた時にマットがズレてしまい、「てへへ」という感じの朱雨玲。この指圧マットマッチ、プレーオフに出られなかった選手に対する「罰ゲーム」なのだと勝手に解釈しました。
 ちなみに朱雨玲、1段目右写真のように、観客席ではスーパーマンのTシャツを着用。このTシャツ、確か許シンもお気に入りのはず……。選手たちの立ち位置が、見えてきましたね(?)。

 2段目左写真は、表彰式前の選手紹介で選手たちが一礼していく中、前に出て「オラァ!」とガッツポーズを決めた馮亜蘭。この人、プレーもパフォーマンスもプロ向き。2段目右写真の奥、手を広げた巨人は、ベンチに入っていなかったのに目立ち過ぎです。北京市チーム総監督、日本リーグのサンリツ(男子チーム)でもプレーしていた張雷さんですね。

 3段目は地元の卓球ショップ「小魚兒ピンパン世界」で出会った少年たち。左写真中央の陳書路くんが一番好きな選手は水谷隼選手で、「同じ左利きだし、プレーがかっこいいから」とのこと。確かに今、中国男子はサウスポーがちょっと弱いかも。この「小魚兒ピンパン世界」、代表の余勇さんが10年前にオープンさせたショップで、店内では右写真のような本格的な卓球教室も。

 4段目は重慶の中心街で見かけた物売りの女性。こんな、小さな造花や草の髪飾りをあちこちで売っていました。「誰がつけるんだ、こんなの」と思っていたら、いました。右写真はホテルの前で、ファンたちに「草を生やされている」丁寧。その丁寧もまた、決勝を終えて着替え、ホテルから出てきた時の格好が……(写真一番下)。このサービス精神、脱帽です!
  • がに股っぷりがいい味出してます

  • クールなのはコートの中だけ?

  • 馮亜蘭はなかなかのパフォーマー

  • 張雷総監督、うれしそうでした

  • 左端の徐皓㬢くんは馬龍、右端の劉思伶くんは張継科ファン

  • 超・本格的な多球練習

  • 触角のようなナゾの髪かざり

  • ファンにもみくちゃにされる女王

  • 丁寧、まさかのドラミちゃんTシャツ

 わずか3日間、6試合の戦いとは思えないほど濃密だった超級リーグプレーオフ。今大会の詳細は、10月発売の卓球王国12月号でお伝えします。プレーオフの結果だけではありません。超級リーグの歴史や下部リーグを含めたリーグの構造、抱える問題点や過去に参戦した選手の声など、盛りだくさんの永久保存版「超級リーグガイド」です。お楽しみに!

 さて、どうも本誌では紹介できそうにない、しかしこのまま見過ごすにはもったいない人物や写真が、もう少しあります。今しばしおつきあいください。

 今大会の観客の中で、人一倍目立っていたのが、武漢安心百分百を応援していた写真上段左の赤坊主さん。三国志の関羽が使うような、お手製とおぼしき巨大な青竜刀(?)を振り回し、武漢の選手たちに熱い声援を送りました。見るからに近づきたくない感じですが、写真撮影にも気軽に応じていたので、悪い人ではない模様。おそらく家に帰ると恐妻家でしょう。
 準決勝の山東戦では、山東の応援団の中に「フゥハァハハァハ〜〜」と不気味な笑い声を発するオジさんも登場。「ダァッ!ダァッ!」と青竜刀を振り下ろす赤坊主の気合い、「フゥハハ〜〜」という謎の笑い声が左右の観客席を飛び交い、まるで「呪術合戦」。ちゃんと試合を見ているのでしょうか。

 今日の北京対武漢戦でも、赤坊主さんはもちろん来場。しかし、不幸なことにチケットの席が北京チーム応援団&丁寧親衛隊と同じブロック。北京応援団の目の前で「武楊!加油!」などと連呼した結果、案の定ケンカが勃発。あまりの喧噪に、ついには武楊が試合を中断する始末。もはや応援団ではありません。

 結局、赤坊主のおじさんは特例なのか、反対側の観客席に移動。途中からすっかりおとなしくなってしまいました。来年もまた会えるかな?
  • 観客参加のクイズに答える赤坊主さん。積極的です

  • 青竜刀を振り下ろします。周囲は完全に「触らぬ神にたたりなし」

  • 「写真撮るの? いいよ!」くらいのノリでした

  • 山東応援団の「フゥハハ〜」おじさん。こちらもなかなかワルいです

  • 「お引き取りください」と移動を余儀なくされた赤坊主さん

 超級リーグプレーオフ・男子決勝は寧波海天塑機素機が制した!

 〈寧波海天塑機 3ー2 八一大商〉
 林高遠 ー8、ー8、ー9 樊振東○
○馬龍 ー9、8、7、6 周雨
○閻安/林高遠 9、8 周雨/周愷
 馬龍 4、ー7、ー6、7、3ー7 樊振東○
○閻安 5、ー3、7ー2 徐晨皓

 前半は両チームのエースがきっちり2点取り。樊振東はチキータ封じのロングサービスと、ブッツリ切れたフォア前への下回転サービスで林高遠のミスを誘い、第2ゲームは10ー8からチキータを決めるなど、要所はチキータで締めた。
 馬龍は周雨に対し、第1ゲーム9ー6から逆転されたが、2ゲーム目以降はストップからのチャンスボールをパワードライブ、相手に軽打させてカウンターと、台上での技術力の差を見せつけてチャンスを作った。馬龍は第3ゲーム、10ー6でバックの横下回転ショートをミスして「ア〜〜ッ!」と叫んだ直後、レシーブから回り込み、強烈なバックストレートへのパワードライブ。観客を驚嘆させた。

 ダブルスは閻安が緩急をうまく使い、中国代表としての経験の差を見せた形。八一の周・周ペアは、周愷は相変わらず堅実なプレーを見せたが、相変わらず周雨にミスが多い。結果論になるが、一時期は中国代表に定着しかけた周雨の伸び悩みが、八一の最大のウイークポイントになった。4番で馬龍が敗れても、ラスト閻安がきっちり締めた寧波に対し、八一はプレーの波が大きい周雨をラストには使えなかった。エースが負けたら勝てない八一と、エースが負けても勝てる寧波。その違いが、勝敗を分けた。

 馬龍と樊振東のエース対決は予想どおりの接戦。最終ゲーム、6ー0でマッチポイントを取った樊振東、6ー1になったところでなんとベンチがタイムアウト。6ー3まで挽回されたが、7ー3で樊振東が締めた。樊振東の怖いところは、相手が「いった!」と思ったボール、あるいはバック対バックでチャンスを作ろうと強く攻めたボールを待ち受け、カウンターできること。だから相手が逆を突かれて膝をついたり、見るからにショックを受ける場面が多い。1点で2点分、3点分のダメージがあるのだ。

 ラストは前夜のヒーロー、徐晨皓とシングルス初出場の閻安。徐晨皓も今日は出足から動きが良く、フォアドライブで攻めたが、台上を含めた全面的な技術力の差は歴然。長身の徐晨皓、前後の動きが遅れるのを見て台上を的確に攻めた閻安、最後はフォアドライブの連打を決め、ベンチにガッツポーズ。背中に入った自分の名前を指さし、「どうだ!」と観客に見せつけた!
  • 樊振東に惜敗したものの、優勝に大きく貢献した馬龍

  • 周雨は台上で崩され、馬龍の豪打を浴びた

  • 馬龍に勝った瞬間の樊振東。第1ステージ最高勝率はダテではなかった

  • 閻安は徐晨皓に経験の差を見せた

  • 馬龍が優勝カップ「龍杯」を高々と掲げる!

 超級リーグの女子プレーオフ決勝が行われ、北京首鋼が3ー1で武漢安心百分百に勝利。2009年シーズン以来、実に6年ぶりに王座に返り咲いた。結果は下記のとおり。

〈北京首鋼 3ー1 武漢安心百分百〉
○馮亜蘭 5、ー9、6、8 武楊
○丁寧 9、ー9、11、15 劉高陽
 馮亜蘭/文佳 ー9、7、3ー7 劉高陽/李暁丹○
○丁寧 10、4、6 武楊

 勝負の大きなポイントはトップ。武楊で確実に1点を取りに来た武漢に対し、北京は馮亜蘭で勝負。馮亜蘭の低く沈み込んだ体勢から放つパワードライブ、特にフォアストレート、バッククロスへのパワードライブの威力はすさまじく、あの武楊がノータッチを何本も取られた。相手の低いサービスやよく切れたカットに対しては、ループドライブや正確なツッツキを合わせて凡ミスが少なく、荒々しくはあっても粗さはなかった。

 武漢も2番劉高陽が奮起。丁寧とのサウスポー対決で、バック対バックで一歩も退かず、さらにコースのわかりにくい3球目パワードライブで得点を重ねる。第3ゲーム8ー8という勝負所でも、3球目で強打ではなくループドライブで得点するなど、冷静かつクレバーだった。第4ゲームも丁寧からゲームポイントを奪ったが、あと一本が遠く、勝利に吠えた丁寧。これで北京が2ー0とリードし、勝負の大勢は決したか。

 武漢はダブルスを取り返したが、4番は丁寧対武楊。かつてはカット打ちを苦手とし、武楊にも敗れることがたびたびあった丁寧。しかし、今では強引な強打のミスがなくなり、回転量の多い連続ドライブで締め付けるように攻めながら、強打が難しいボールはまたループドライブで展開を作り直す。しゃがみ込みサービスからの3球目のドライブ速攻も決まり、勝負の主導権を譲らなかった。勝利の瞬間、両手を天高く掲げて咆哮した丁寧!

 北京チームの優勝は、北京時博国際というチーム名だった2009年のシーズン以来。この時はまだ張怡寧という大エースがいて、丁寧も2番手で伸び伸びやれた。しかし、張怡寧の引退後、チームは低迷期に入り、入れ替え戦に回ったことも。その苦しい時代を乗り越え、手にした優勝に、丁寧は表彰台で満面の笑顔を見せた。
  • 丁寧、歓喜の優勝!

  • チームメイトも笑顔、笑顔。ベンチの雰囲気も良かった北京

  • 馮亜蘭のパワードライブはものすごかった

  • 会見で悔し涙を流した劉高陽。丁寧戦は素晴らしいプレー

  • 優勝賞金50万元、約1千万円を手にした北京チーム

 金曜日にスタートした超級リーグのプレーオフ。金曜日の女子準決勝の2試合は、会場の入りは3〜4割ほど。1階のボックスシート、2階席、3階席に分かれているのだが、2階席が半分ほど入ったくらいで、3階席はほぼ無人だった。

 近くにある卓球ショップで会ったオジサマ、陳岱さんに「空席ばかりで寂しかったです」と言ったら、「重慶はトップレベルは弱いけど、草の根の卓球ファンはたくさんいるよ。昨日は平日だったから少なかったんだろう、今日(土曜日)はたくさんくるはず」とのこと。確かに、昨日13時半からの男子準決勝第1戦は、7〜8割は観客が入り、かなり盛り上がっていた。しかし、19時半スタートの第2戦はまた5割くらいか。試合終了が22時くらいになるのだから、小さい子どもは来にくい。

 それでも会場や、選手の宿舎である重慶ヒルトンの周囲には、サイン帳やサインラケットを手にした若い卓球ファンがたくさんいる。会場のスタッフ入り口の外には、いわゆる「出待ち」のファンもいる。ホテルのスタッフも、張継科や丁寧には興奮していたので、やはりスター選手なのだろう。

 選手の応援団では、丁寧の親衛隊「叮ダン(ディンダン)」が有名だが、今大会では初めて張継科の親衛隊にも遭遇。50人くらい来ていたので存在感があった。張継科までは残念ながら回らなかったものの、張継科と馬龍のトークショーでは「今、心の中にいる“女神”は誰ですか?」というファンからの質問(インターネットで公募)が。好きな女性とか芸能人とかを聞いたんでしょうが、張継科は観客席に手をさしのべて「今夜はね、ぼくの女神は彼女たちです!」なんてことを言っちゃうんですね。とんでもない悲鳴が上がっていました。まったくワルい男です。
  • 揃いのスカーフを手にした張継科親衛隊

  • ホテルのロビーで、北京首鋼のファンクラブから花束を受け取る丁寧

  • スター選手を出待ちの人々。丁寧ファンもいますね

  • ファンの勢いに押され、追い詰められてしまった李暁丹

  • こちらはおまけ、試合前の入場で「自撮り」をやらかした王博。手前で仲間が苦笑

  • 山東魏橋のチームメイトたちの視線が面白いです

 超級リーグプレーオフ・男子準決勝の第2戦、八一大商と山東魏橋創業の一戦は、2ー2ラストのゲームオールジュースにもつれ込む大激戦の末、八一が勝利。明日、寧波と相まみえる。

〈八一大商 3ー2 山東魏橋創業〉
 周愷 10、ー7、8、ー7、5ー7 梁靖昆○
○樊振東 5、5、5 周啓豪
 周雨/徐晨皓 10、ー3、4ー7 崔慶磊/周啓豪○
○樊振東 4、5、1 梁靖昆
○徐晨皓 ー10、6、9ー7 崔慶磊
※最終ゲームはすべて7点制/3番ダブルスと5番は3ゲームズマッチ

 この試合で強烈な印象を残したのは、圧倒的なスコアで2勝を挙げた樊振東。2番の周啓豪とは力の差があるにしても、4番の梁靖昆戦は好ゲームが期待されたのだが、梁靖昆は為す術なし。狙いすましたカウンターをさらに狙われ、強打やカウンターを警戒するとバックの横下回転ショートや柔らかいタッチのブロックで待ちを外される。
 梁靖昆は第3ゲーム、強引に強打にいくしかなくなったが、当然ミスが続出。1ー4でタイムアウトを取ったものの、完璧なクロスへのフォアカウンターを連発した樊振東の前に、ここから7点連取を喫した。試合後、クールな樊振東が珍しく観客席に手を振り、観客からは嵐の大歓声。完璧主義者の樊振東をして、今日の2試合は文句のつけようのない出来だったか。

 そして、八一の王皓監督は、ラストに周雨ではなく徐晨皓を起用。3番ダブルスでは、第3ゲーム4ー6の相手のマッチポイントでバックドライブをイージーミスするなど、メンタルに不安がのぞいた徐晨皓。崔慶磊との第1ゲーム、大量リードされる展開から10ー10に追い付きながら、10ー12で落とす。ベンチで表情をゆがめる王皓。観客席からは「王皓、加油!」の声援と失笑も。

 しかし、超級リーグで張継科を破ったこともある徐晨皓。このままでは終わらなかった。持ち味であるバックの強さを生かしながら、要所で崔慶磊のフォアをチキータで攻める。最終ゲーム、6ー5で徐晨皓がマッチポイント、ここでバックドライブの連打を決めきれず、逆に崔慶磊が7ー6でマッチポイント。しかし、ここも決まらず。最後は徐晨皓が8ー7からフォアクロスへ、カウンタードライブをねじ込み、決着!

 「あのプレッシャーの中で勝つことができたのだから、自分は進歩できていると思う」と試合後の徐晨皓。王皓監督、よくぞ彼をラストに起用したものだ。「去年のプレーオフでは山東魯能にラストで負けていた。最近、周雨はあまり状態が良くないので、徐晨皓を起用した」と試合後の会見。八一解放軍チームの王涛総監督も来場し、勝利した徐晨皓の肩を抱き、ねぎらっていた。
  • 「卓球の権化」と言いたくなる強さ、樊振東

  • 梁靖昆は試合後の会見でも、呆然の表情だった

  • 180cm・78kgの堂々たる体躯、徐晨皓

  • 王皓、アドバイスにも力がこもる

連打して申し訳ないですが、男子準決勝第2戦の前に、本誌には載せられないような写真をいくつかピックアップしましょう。プレー以外でも飽きさせません、さすがは超級リーグ。

まず上段左は、試合の合間や始まる前に、ステージでたびたび行われる謎のショー。左のお兄さんは歌手。右のお姉さんはこの後も時にチャイナドレスで、時にチアリーダーとして、衣装を替えながらたびたび登場。人は全部一緒です。
上段右は、観客のためのクイズコーナー。「超人ハルクの手袋をはめた、萌え萌えな女子のスター選手は誰でしょう?」というもの。顔にかぶせる画像、もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。答えは左にチラッと映っている丁寧。萌えません……。

中段は武楊コーナー。記者会見でマイクがかぶり、おヒゲの武楊になってしまいました。頑固親父か、明治の文豪のような趣あり。その右は、後ろでお姉さんたちがセクシーダンスを繰り広げる中、ストレッチをする武楊がコラボレートしてしまった奇跡の一枚。
下段は女子準決勝の練習前の風景。無秩序という名の秩序、人多すぎです…。

それではただ今から、再び男子準決勝第2戦が行われる重慶市体育館へ向かいます。樊振東の八一大商と、新鋭・梁靖昆率いる山東魏橋創業。勝利を手にするのはどちらか?