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欧州リポート

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 3月30日まで、ドイツ・ハンブルクのハンブルクスポーツホールで行われたドイツ選手権。男女シングルスとも番狂わせが続出する波乱の大会となった。

 男子シングルスで最も注目されたのが、世界選手権広州大会をひざの故障で欠場したボルのプレー。順当に準決勝まで進出したが、ここで元中国籍選手のヤン・レイ(楊磊)に3-4でまさかの敗戦。他の団体メンバーもズースが五輪予選出場のために欠場、シュテガーが広州大会で太ももを傷めて欠場、オフチャロフはベテランのヒールシャーにストレート負けを喫するなど、ドイツ男子チームの主力メンバーが決勝に進めなかった。
 男子シングルス決勝は、ベテランのボージック(左シェークドライブ型)とヤン・レイの対戦。03年ヨーロッパ選手権2位の実績を持つボージックがゲームオールの激戦を制し、99年大会以来9年ぶりの優勝を果たした。決勝で敗れたヤンは、予選リーグからの出場にも関わらず本選でロスコフ、ボルを連破。戦型は右中国式ペンドライブ型で、昨シーズンはなんとブンデスリーガ3部でプレーしていたというから驚く。決勝でもボージックから第6ゲーム10-9でマッチポイントを奪ったが、惜しくも逆転されて大魚を逃した。

 女子シングルスは優勝候補の呉佳多、シュトルーゼがインフルエンザで大会を棄権。バーテルは男子のズース同様、五輪予選出場のため欠場。決勝はボージックとハイン-ホフマンのベテラン対決となり、ハイン-ホフマンが4-3で競り勝って優勝を決めた。
 男女シングルス/ダブルスの上位の記録は以下のとおり。混合ダブルスは今大会より競技種目から外れている。

〈男子シングルス〉●準決勝
ヤン・レイ -9、9、-3、10、5、-6、7 ボル
ボージック 9、-9、5、7、13 ヒールシャー
●決勝 ボージック 7、-4、-8、9、-7、10、5 ヤン・レイ

〈女子シングルス〉●準決勝
ハイン-ホフマン 12、10、-9、9、8 シェルド
ボージック 7、3、-9、-10、-9、9、6 シルベライセン
●決勝 ハイン-ホフマン 6、-6、8、8、-5、-8、4 ボージック

〈男子ダブルス〉●決勝
バウム/オフチャロフ 3、-9、9、-7、7、-8、11 ロスコフ/ステーレ
〈女子ダブルス〉●決勝
ボルメイヤー/シェルド 9、-6、8、7、-9、-9、12 ハイン-ホフマン/A.ゾルヤ

Photo:女子シングルス優勝のハイン-ホフマン。お洒落なウェアとヘアスタイルで、会場ではいつも目を引く存在だ
 本日開幕する北京五輪ヨーロッパ大陸予選。先日お伝えした男子に続き、女子の主な出場メンバーを紹介。予選などのシステムは男女共通となっている。

※WR=ワールドランキング(08年3月ITTF発表)
[ドイツ]バーテル(WR87)
[フランス]シェン・イファン(WR61)・グルンディッシュ(WR98)・デッサン(WR340)
[ハンガリー]ポータ(WR48)・ロバス(WR75)
[オーストリア]リ・チャンビン(WR55)・ハイン(WR195)
[イタリア]タン・ウェンリン(WR59)・ステファノバ(WR67)・ネグリソリ(WR112)
[オランダ]リー・ジエ(WR56)・ティミナ(WR115)
[スペイン]朱芳(WR82)・ドボラク(WR110)
[ルーマニア]サマラ(WR71)・イリチ(WR300)
[ポーランド]シュ・ジエ(WR85)・パルティカ(WR163)
[クロアチア]パオビッチ(WR63)・バイダ(WR93)
[チェコ]シュトルビコバ(WR85)・バチェノフスカ(WR99)・ペンカボバ(WR257)
[スウェーデン]エクホルム(WR95)・ヨンソン(WR183)・ペターソン(WR378)
[ロシア]ガニナ(WR57)・コチヒナ(WR69)・ファディーバ(WR116)
[ベラルーシ]Vi.パブロビッチ(WR43)・コストロミナ(WR76)・Ve.パブロビッチ(WR78)

 有力選手は確実に予選を突破しそうだが、世界選手権広州大会で活躍したサマラ(ルーマニア)、グルンディッシュ(フランス)、エクホルム(スウェーデン)には、アジア勢にも対抗できる爆発力がある。予選突破は楽ではないが、北京五輪を盛り上げるためにもしっかり勝ち抜いてほしいところだ。ポーランドの隻腕(せきわん)サウスポー、パルティカは2004年アテネバラリンピック・クラス10の金メダリスト。五輪出場ということになれば、パラリンピック出場選手としては史上初ではないか。

 また、意外なところではトルコもヨーロッパ大陸予選に出場している。EU加盟を国家的目標に掲げているトルコだが、ヨーロッパ選手権には1970年から出場するなど、古くからヨーロッパ卓球界の一員なのだ。近年では女子のメレク・フー(候美玲/WR208)、男子のセム・ゼン(WR162)やジャン・ペンフェイ(WR351)など中国系選手が多く流入している。セム・ゼンは中国名:鄭長弓、中国の元ジュニア代表で、03年アジアジュニア選手権優勝、03年世界ジュニア選手権3位などの実績の持ち主だ。男子の五輪予選でも思わぬ波乱を演出するかもしれない。

Photo:抜群の身体能力を誇るポーランドのパルティカ。ハードなスケジュールとなる欧州予選を勝ち抜けるか
 4月2~6日まで、フランス・ナントで行われる北京五輪ヨーロッパ大陸予選。
 男子の主な参加選手は以下のとおりだ。

●男子 ※WR=ワールドランキング
[ドイツ]ズース(WR38)
[フランス]エロワ(WR41)・シーラ(WR58)・レグー(WR62)
[オランダ]ケーン(WR47)
[ベルギー]J.セイブ(WR21)・ヴォスト(WR244)
[オーストリア]陳衛星(WR36)・ガルドス(WR51)
[チェコ]コルベル(WR32)・パベルカ(WR115)・クラセク(WR116)
[ポーランド]ブラシュチック(WR42)・ワン・ツォンイ(WR80)・ゴラク(WR102)
[ルーマニア]クリサン(WR30)・フィリモン(WR57)・チオティ(WR101)
[セルビア]カラカセビッチ(WR48)・グルイッチ(WR70)・ペテ(WR233)
[クロアチア]譚瑞午(WR45)・トシッチ(WR92)
[スロバキア]カイナット(WR94)・ピスティー(WR107)・セレダ(WR108)
[デンマーク]ツグウェル(WR69)・ステーネボリ(WR381)
[スウェーデン]ルンクイスト(WR52)・イェレル(WR93)
[ポルトガル]モンテイロ(WR59)・アポローニャ(WR111)・フレイタス(WR132)
[ギリシャ]イオニス(WR63)

 ヨーロッパ大陸予選の試合方式は、まず16の予選グループに分かれて試合を行い、上位2名が第1ステージに進出。第1ステージでは8名の選手が4つのグループに分かれ、ノックアウト方式のトーナメントで勝ち抜いた4名が最初の五輪出場権を獲得する。
 続いて第2ステージでも、ふたたび7名の選手が4つのグループに分かれ、トーナメントの勝者4名が五輪出場権獲得。最後の第3ステージで残りの24名の選手がトーナメントおよび順位決定戦を行って、最後の出場権獲得者3名と次点の選手が決定する。トーナメント方式で行われるため、若手が思わぬ波乱を演出するかもしれない。通過できるのは全部で11名だ。

下Photo:88年ソウル五輪から6大会連続での五輪出場を目指すJ.セイブ。五輪では96年アトランタ五輪のベスト8が最高成績 
 3月17日、イギリス・ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで『ダンロップ・マスターズ』が開催される。
 出場選手はJ.セイブ(ベルギー)、クレアンガ(ギリシャ)、陳衛星(オーストリア)といった世界のトップ選手に加え、イングランド期待の若手であるポール・ドリンコールとダリウス・ナイト。さらに出場が予定されていたボル(ドイツ)の欠場に伴い、卓球界のキング・ワルドナー(スウェーデン)が参戦することになった。
 現在42歳の厄年(?)、国際大会からは退いたものの、ドイツ・ブンデスリーガのフルダ・マーバーツェルで僚友のパーソンとともにプレーしているワルドナー。クラシック音楽の殿堂として名声を博してきたホールで、卓球界最高のエンターテイナーが華麗なプレーを見せてくれるのだから、ロンドンの卓球ファンは幸せだ。

 会場となるロイヤル・アルバートホールは1871年に完成した名建築で、これまで多くの逸話に彩られている。今をさかのぼること45年前、1963年にこのホールで行われた皇室主催のコンサートには、かのビートルズが出演。ジョン・レノンはラストナンバーを前に、ずらりと並んだ上流階級の観客と、安い席にいる自分たちのファンに向かってこう言ったそうだ。「安い席の人は手拍子を。…その他のお方は宝石をジャラジャラ鳴らせば結構ですよ」。 3月17日、もちろんイギリスの観客たちは盛大な手拍子を送るだろう。

ヨーロッパチャンピオンズリーグ 女子決勝第1試合
3/07 [クロッパッハ 3-1 ヘーレン]
※左側のチームがホーム

 ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)女子決勝第1戦が3月7日に行われた。予選グループで同組だったクロッパッハ(ドイツ)とヘーレン(オランダ)の予選での対戦成績1勝1敗、それも2試合とも3-2という白熱した試合だっただけに、この決勝でも激しい戦いになることが予想されていた。

 大事な初戦を制したのはクロッパッハ。朱芳(中国)の2点獲りが光った。トップで王晨(アメリカ)を一蹴した試合も圧巻の内容だったが、2-1で回ってきた4番では予選で2敗を喫している倪夏蓮をゲームオールで下し勝利を決めるという、大舞台でも動じない勝負強さを発揮した。敗れたヘーレンはリー・ジャオの1点だけにとどまったが、主力3人が老巧な中国帰化選手というチームだけに第2戦では必ず修正してくるはず。決勝戦にふさわしい好内容が期待できそうだ。


3/07 [クロッパッハ 3-1 ヘーレン]
WIN朱芳 5、9、5 王晨
WIN呉佳多 8、9、7 倪夏蓮
トート 10、-9、-4、10、-7 リー・ジャオWIN
WIN朱芳 -8、-9、6、6、9 倪夏蓮

ヨーロッパチャンピオンズリーグ 男子準決勝第1試合
3/07 [デュッセルドルフ 1-3 シャルロワ
3/07 [ニーダー・オーストリア 2-3 カジャグラナダ
※左側のチームがホーム


 ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)男子準決勝第1試合が3月7日に行われた。ディフェンディングチャンピオンのシャルロワ(ベルギー)はドイツ・ブンデスリーガの雄・デュッセルドルフと対戦。今季限りで退団が決まっているサムソノフ(ベラルーシ)が2点を挙げる活躍で3-1で勝利した。デュッセルドルフは1番手で起用したオフチャロフが、スミルノフ(ロシア)に敗れたのが痛かった。オフチャロフは世界選手権広州大会・予選の日本戦であっけなく2点落とすなどやや不調が続いているのかもしれない。

 ニーダー・オーストリア対カジャグラナダはラストまでもつれる大激戦の末、カジャグラナダが勝利をもぎ取った。勝利の立役者はなんといっても何志文(スペイン)。トップでは04年アテネ五輪金メダリストの柳承敏(韓国)を、ラストでは03年世界選手権パリ大会優勝のシュラガー(オーストリア)を破る離れ業を見せたのだ。ニーダー・オーストリアはエースの柳承敏が2点落としてはさすがにツライ。五輪金メダリストも世界選手権の疲れが抜けきっていなかったか。

 準決勝第2試合は4月11日と12日に行われる予定。決勝進出チームが決まる。


3/08 [デュッセルドルフ 1-3 シャルロワ
オフチャロフ 5、-6、-10、-8 スミルノフWIN
コルベル -12、-4、-4 サムソノフWIN
WINズース 13、5、7 J.セイブ
オフチャロフ -10、-7、-8 サムソノフWIN

3/08 [ニーダー・オーストリア 2-3 カジャグラナダ
柳承敏 8、9、-8、-5、-7 何志文WIN
WINシュラガー -9、11、-8、2、7 シャン・ミンジー
陳衛星 9、-14、7、8 プリモラッツ
柳承敏 8、-8、-8、5、-3 シャン・ミンジー
シュラガー -4、-9、10、-12 何志文WIN
 ヨーロッパ選手権3度の優勝を誇り、ヨーロッパの第一人者として長く活躍しているサムソノフ(ベラルーシ)が、今季限りでシャルロワ(ベルギー)を退団し、来季はカジャグラナダ(スペイン)へ移籍することを明らかにした。

 3月7日に行われた、ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)準決勝のデュッセルドルフ戦を前にインタビューに答えたサムソノフ。「非常に満足したシーズンをおくっている」と早くも今季を振り返りながら、直前に迫ったデュッセルドルフ戦に関しては「忘れがたいものになるだろう」との意気込み。そして移籍することに関しては「いくつか理由はあるが、新たな挑戦が必要なんだ」と答えた。

 今年で32歳になるサムソノフ。97年世界選手権マンチェスター大会では準優勝するなど早くから世界で頭角を現し、以降も安定したプレーぶりで上位に食い込むものの、なかなか世界タイトルには手が届いていない。来季は“安定”した環境を捨て、攻めの姿勢で世界を狙う。
 広州の世界選手権の会場で、ヨーロッパのメディアの人たちから情報収集。
 まず来季のドイツのブンデスリーガは大きく変わること。試合のシステムが今まで1部リーグは4人で行い、シングルスが8試合、ダブルスが2試合だった。引き分けがあるというヨーロッパ特有の試合方式だったのが、3人による1複4単の3点先取方式となる。これはテレビを意識したものだ。2部以下は従来通り。1部でプレーできる選手数が減ることになり、ドイツで活躍する日本選手にも影響する。
 選手のクラブとの契約は相当に進んでいるが、ここでロシアがプロリーグを設立し、相当なロシアンマネーがヨーロッパの卓球を動かそうとしている。たとえばロスコフやオフチャロフに法外な契約金がオファーされた云々という話は後を絶たないらしい。
 またサムソノフがシャルロワ(ベルギー)からスペインリーグに移る話、オフチャロフがデュッセルドルフからシャルロワに移籍、などの情報が今ヨーロッパを駆けめぐっている。
 ドイツ・ブンデスリーガのフルダ・マーバーツェルに所属しているパーソン(スウェーデン)が来季はハンガリーのブダペストでプレーする可能性が出てきた。

 ハンガリーチャンピオンチームのブダペストだが、今季のECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)では予選グループ3位で惜しくも予選敗退。ECL制覇の夢は来季へと持ち越されることとなったが、今季主力として試合に出場したハンガリーのパジーとズウィックルの他チーム移籍が濃厚で、来季のメンバー集めに苦慮。そこで、ECLでのプレーを希望しているパーソンに白羽の矢が立った。
 ご存知、パーソンは91年世界選手権千葉大会のチャンピオン。また、4回の世界選手権団体優勝を誇り、特に00年クアラルンプール大会決勝では孔令輝と劉国梁を破り優勝の立役者となった。そんなワルドナーと並ぶスウェーデンのスターだが、今年で42歳になる大ベテランに残された現役生活はそんなに長くない。そこで彼がモチベーション維持のために選んだ新たな戦いの舞台がECLというわけだ。

 現在、ブダペストはパーソンと交渉しながら、契約金を工面するためのスポンサー探しに奔走している。パーソンにはフランスやイタリアからもオファーが来ているため、微妙なところではあるが、いずれにしても来季のパーソンはECLでプレーすることになりそうだ。

2/15 [プリューダーハオゼン 6-2 ユーリッヒ]
2/16 [フルダ・マーバーツェル 6-1 グレンツァオ]
2/16 [フリッケンハオゼン 6-0 ブレーメン]
※左側のチームがホーム


 世界選手権前最後のドイツ・ブンデスリーガの試合が2月15~16日に行われ、3試合ともホームチームが勝利した。

 高木和卓(ユーリッヒ)は15日のプリューダーハオゼン戦に出場。シングルスでは勝ち星を挙げることはできなかったが、ダブルスでは勝利した。実は、このロスコフとのダブルスが絶好調で現在6連勝中。ブンデスリーガのダブルスランキングでも2位につけている。すっかりベテランになったロスコフだが、89年世界選手権複優勝・92年バルセロナ五輪複銀メダルの実績を持つダブルス巧者ぶりは健在か。なお、チームは2-6で敗れた。

 岸川聖也は16日のフリッケンハオゼン戦に出場。岸川は単複で2敗、チームも0-6のストレート負けだった。

 これでブンデスリーガはひとまずお休み。次の試合は世界選手権閉幕後になる。

日本人選手の成績
●高木和卓
2/15 対プリューダーハオゼン
ロスコフ/高木和 -7、9、-8、7、10 カラカセビッチ/モリーン
高木和 -6、-9、-10 カラカセビッチ
高木和 -6、5、8、-11、-12 スベンソン
通算成績
シングルス:8勝14敗
ダブルス:10勝3敗

●岸川聖也
2/16 対フリッケンハオゼン
ケーン/岸川 6、-6、-10、7、-9 馬文革/バウム
岸川 -3、-4、8、-9 馬文革
通算成績
シングルス:14勝13敗
ダブルス:8勝5敗

現在の順位(2月16日終了時)
1位:デュッセルドルフ(10勝2敗1分)
2位:フリッケンハオゼン(8勝2敗3分)
3位:オクセンハオゼン(6勝1敗7分)
4位:グレンツァオ(8勝5敗1分)
5位:フルダ・マーバーツェル(7勝6敗1分)
6位:ヴュルツブルグ(4勝5敗5分)
7位:ブレーメン(5勝9敗)
8位:ユーリッヒ(3勝7敗3分)
9位:プリューダーハオゼン(2勝8敗3分)
10位:ゲナン(1勝9敗4分)