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 明日土曜日に日本卓球協会の理事会が開かれるが、メイン・イシューは「新リーグがスタートするかどうか」に尽きる。
 今まで6年近くも検討されてきて、選手も卓球関係者もずいぶんと待たされた感がある。将来の卓球界を左右するような大きな議題として、「新リーグをスタートさせるのか」、その最終決断が下されるはずだ。

 心配なのは、出席する理事の人たちがどれだけこの新リーグ構想を理解しているかという点だ。理事の方たちはほとんどが50歳以上で、大学スポーツや企業スポーツで卓球をやってきた人であり、ヨーロッパのクラブリーグや、ヨーロッパの社会の中でのスポーツの有り様を理解してもらうのは難しいのではないか。
 また新リーグ=プロリーグ=プロ興行、という考え方に陥ってしまうと困る。実際には新リーグ構想は、プロリーグから地域密着型のクラブリーグに修正されているし、将来的にそれが全国津々浦々の卓球振興につながる。現在の日本で言えば、サッカーのJリーグや新しく設立されたバスケットボールのBリーグと方向性は近い。
 
 新リーグ構想はトップチームをピラミッドの頂点にして、全国各地のクラブチームがそこに参戦する。最初は数チームでも、そこから裾野を広げていく。全国各地で「おらがチーム」が拡大していけばいい。既存の企業スポーツ、学校スポーツがその中に入ってくるケースも出てくるだろう。

 サッカーのJリーグと違うのは、1980年代後半から、サッカーの日本リーグには観客が集まらず、ワールドカップに出場できないほど日本のレベルも低かった。そういうネガティブな環境の中で、Jリーグが誕生したいきさつがある。サッカー関係者は危機感を持っていたのだ。そこに川淵三郎という強烈なリーダーシップを発揮できる人がいたということだ。
 
 卓球での新リーグ構想の旗振り役は松下浩二である。元世界選手権メダリスト、プロ第1号選手として、当初、「トップ選手のプロリーグ」「強化のためのプロリーグ」とアピールしていたが、現在はプロという言葉にこだわらず、地域密着型の新リーグ構想にシフトしている。
 彼は川淵三郎氏ほどのリーダーシップを残念ながら発揮できていない。性格的にも敵を作ってまで激しく突き進むタイプでもない。しかし、今回は粘り強く関係者を説得している。

 ひとつ言えるのは、彼しかこの新リーグを進めることはできないという点だ。逆の言い方をすれば、彼と一緒に進めていこうという有志が少なすぎる。80年代のサッカー協会には、ドイツへのサッカー留学などを通してヨーロッパのクラブチームと日本の企業チームや学校スポーツとの違いの大きさを実感する有志がいた。その人たちがJリーグ創設に動いた。卓球ではヨーロッパでプレーした個々の選手は新リーグの必要性を理解しているのだが、協会関係者でそれを痛感している人が少ない。

 もし松下浩二がこの新リーグを作れなければ、日本の卓球界には永遠に地域密着型のリーグ組織は生まれないだろう。
 理事会が新リーグに関する枝葉末節の話ではなく、日本の卓球の将来構想を語られる場になることを祈っている。 (今野)