スマホ版に
戻る

トピックス

トップニューストピックス
「ブースター自由化」という表現は語弊があるかもしれない。
 国際卓球連盟(ITTF)の執行委員会とアスリート委員会が5月1日の年次総会に提案するものは・・・

2.4.7 ラケット(ラバーを含む)は人体に危険で不健康なものと考えられる、いかなる物理的、化学的、もしくは他の加工なしで使われることとする。

 この文言だけ見れば、できあがった製品に対しての「後加工」の禁止は変わらない。しかし、
「ブースターを塗って物理的、化学的に変化しない後加工はOK」
とも読み取れる。物理的とは、塗った後にラバーが膨らみ、厚さ制限を超えたり、ラバー表面がボコボコと波打ち、平坦さを失っているケースだ。化学的な変化というのは、現時点ではVOC(揮発性有機化合物)検査で本来入ってはいけない化合物が混入されているかどうか。

 そもそも昨年の秋以来、ITTFの執行委員会の話し合いでは、「抜き打ちのラケットコントロールでラバーをはがして、ラケットやラバーをチェックする」という提案が出されていた。つまり、これは過去にある選手がラケットの打球面の部分を少し削り、その部分にブースターを塗り込むことで反発を強める行為を禁止するためのものだった。
 抜き打ちでラバーをはがしたり、上位選手のラバーをはがして、ラバーの厚みやラケット本体の加工をチェックするという抑止力としてのルールが実現すると思っていた矢先に、いきなり「ブースター解禁」とも受け止められる提案が執行委員会とアスリート委員会から出されるとは、関係者にとっては寝耳に水だった。

 この提案が通った場合、卓球市場や卓球メーカーに与える影響は計り知れないほど大きい。
 まず卓球メーカーは「ブースター」を製造し、売るのだろうか。
 「ブースターを塗って物理的、化学的に変化しない後加工はOK」と受け止めるならば、人体に無害で、ラバーそのものの姿形を変えないという前提で、ブースターを製造するメーカーも出てきそうだ。
 ただし、本来、後加工禁止を打ち出してきたITTFが文言として「ブースター解禁」を打ち出すとは思えない。玉虫色の決着になりそうだ。

 先の全日本選手権でも「あの打球音は(ブースター)を塗っている音だ」「選手本人は知らなくても、コーチが塗ったものを渡している」という様な話はそこかしこで聞かれた。また、卓球王国にも「ブースターがまん延している。なんとか卓球王国でこの不正を正すような特集をしてくれ」という読者からの声が届いていたのも事実だ。

 お互いが疑いの目を向けながら試合をするのは健全とは言えない。さりとて、昔のスピードグルーの時のようにまるで試合前の儀式として公然と「ラバーに仕込む」光景も見たくない。
 長年、「ブースター反対」を打ち出してきた日本卓球協会はどういう方針を打ち出し、ITTFの年次総会で「ブースターを助長するルールに反対」と表明するのだろうか。
 この「ブースターの問題は」は将来の卓球界や卓球市場を動かす大きなテーマだ。 5月1日の総会では,一番注目されるべき議案となった。 (今野)
 
  • 中国で販売されている現時点での「違法ブースター」