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 シンガポールでの「ITTF(国際卓球連盟)はスポーツマスター(Sportsmaster・創設者フランク・ジー)と新たなプロフェッショナル・プラットフォームを確立する契約を締結」の会見に立ち会い、どこか具体的な事業構想が見えないまま、釈然としない気持ちを抱きながら、その夜にT2 APAC(通称T2)の関係者と食事をした。会見でITTFが語った「T2によるダイヤモンドイベント」とは何だろう……。

 T2関係者との話では、会見では語られなかった卓球イベントの将来像が見えてきた。予想はしていたが、2年前にフランク・ジー社長の「シーマスター」(本社上海)がITTFワールドツアーの冠スポンサーになっているが、それはT2を意識したものだった。フランク・ジーはT2の創設者でもある。
 もともと数年前にフランク・ジー社長と会った時に、彼はすでにスタジオを使った卓球エンターテインメントを考えており、トップ選手を集めるためにITTFとの協力が必要と考え、数億円と言われるスポンサーマネーでITTFとの関係を築いたのだ。

 彼はワールドツアーのメインスポンサーになることを目的とし、満足する男ではなかった。自身も大ファンである卓球というスポーツを現代風に、若者たちさえも惹きつけるようなスポーツにしたかった。ワールドツアーのスポンサーはあくまでも手段だ。

 昨年、スタートさせたT2は内容的には大成功だった。ただ、リターン(収益)がなかったのが最大の誤算。そこでT2は方針を転換した。今のままでは一発屋、ただお金を使っただけのものになる。ITTFと組み、よりスポンサーをつけやすくして、公式イベントにして、卓球ファンや一般の人に大会を認知してもらう。さらにT2が考案したいくつかの新ルールを基本ルールに組み込ませることも可能になるだろう。

 まず2019年からT2をシングルスイベントとして、ワールドツアーの中に組み込む。現在、最高レベルのツアーがプラチナ。さらにその上の「ダイヤモンド」として、何戦か行い、最高レベルの賞金大会にして、世界ランキングも与える。現在のツアーには100名を超す選手が参戦できるが、「ダイヤモンド」では20数名程度に絞り込む。
 高い賞金に世界ランキングがつくとなれば、トップ選手は否応なしに参戦する。そこではT2による「ダイヤモンド・ルール」(仮称)を適用する。特に来年は五輪前なのでトップ選手にとっては、この大会に選ばれれば、賞金と世界ランキングを手にできるチャンスとなる。参加できる選手をどのように選んでいくのかが次の課題だろう。
 この新イベントは現存のワールドツアー、ブンデスリーガ、Tリーグなどのプロリーグのスケジュールにも大きく影響を与えることは必至だ。

 T2(もしくはスポーツマスター)としても今までのように多大な出費と少ないリターンではなく、少なめの出費(それでも数億円規模か)で、リターンのある大会を構築して、卓球を変革できるのならば願ったり叶ったりだろう。

 T2が単発で終わりそうになった時に、フランク・ジー社長はワールドツアーのスポンサーを含め、卓球から撤退することも可能だったはずだ。しかし、彼は形を変え、ITTFとの共同作業を仕掛けてきた。すでに10億円を超えるお金を卓球につぎ込んできて、その知恵袋には切れ者のジェフ・チューT2 CEOもいる。
 時に革命的な変化というのは、協会・連盟という公的機関ではなく、T2のような民間レベルの知恵と財力がものを言うのかもしれない。「これ以上、仕事を増やさないで」というのが公的機関の常だが、収益性のあるイベントを打ち続けるのが民間パワーなのだ。
 T2は第2フェーズに入るための準備を着々と進めている。 (今野)
  • シーマスターのフランク・ジー社長

  • T2のジェフ・チューCEO