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石川佳純と平野美宇にはリオ五輪に忘れてきたものがある

 日本女子二人にはリオ五輪に忘れてきたものがある。だからこそ、石川佳純(全農)と平野美宇(日本生命)はどんなことをしてでも東京五輪のシングルスのコートに立ちたいと思っている。
 2016年のリオデジャネイロ。12年のロンドンで準決勝に進出していた石川はメダル候補と言われていた。ところが、シングルスの初戦で北朝鮮のカットマン、キム・ソンイに対し、前半強打を連発し、飛ばしていたが、途中で粘りきられ、6ゲーム目に足がつり、最終ゲームにもつれ込み、無念の敗北を喫した。団体でメダルを獲ったものの、石川にはシングルス敗退の無念さが残ったはずだ。
 平野はリオ五輪の時にはリザーブのPカードで、練習相手、ボール拾い、会場での応援と裏方に徹した。リオ五輪の翌年(2017年)の1月で全日本選手権で優勝を飾った後、インタビューで彼女はこう振り返っている。
「リオのオリンピックに出られなかったことは大きかった。かなり悔しかったし、絶対自分が一番で東京オリンピックに出たいと思いました」
「(リオに)行ってよかったと思います。でも、行った直後は『早く帰りたい』と思いました。正直リザーブで行くよりは5番とかで落ちていたほうが良かったと思いました。ただオリンピックの終わりのほうにも感じたんですけど、今になってみればやっぱり『行かせてもらって本当にありがたかった』と感謝しています」
 彼女が望んだ1番では行けないが、彼女が東京五輪に挑む理由は明白だ。

石川18大会、平野19大会に参戦し、その差は135点。過酷なレースのエンディング

 中国の鄭州で行われているITTFワールドツアー・グランドファイナル。この大会のシングルスには世界のトップ16人が参加する。文字通り、この1年間のワールドツアーの獲得ポイントの高い選手だけが参加できる大会だ。女子シングルスには10名の中国選手と4名の日本選手、あとはシンガポールとチャイニーズ・タイペイの選手がひとりずつというアジア独占の大会となっている。
 東京五輪のシングルス枠は2名のみ。伊藤美誠(スターツ)がすでに内定を確実にしており、残り1名を石川佳純(世界ランキング10位)と同11位の平野美宇が激しく争っている。両者の間のポイントはわずかに135点で、石川がリード。
 今回のグランドファイナルで、同じラウンドで両者が負けた場合は石川が日本選手として2番目の世界ランキングとなり、シングルス代表が決定する。平野が石川を超え、2番手に上がるためには石川よりも1回多く勝つこと。

 今日の夜、7時20分(日本時間8時20分)から石川は世界チャンピオンの劉詩ウェン(中国)と対戦して、平野は世界ランキング18位の王芸迪(中国)と8時10分(日本時間9時10分)に対戦する。
 石川は劉に0勝11敗で、直近では9月のアジア選手権で0-3のストレートで敗れている。平野は王に0勝1敗。10月のドイツオープンで平野は1-4で敗れている。
 石川は劉のライジングでとらえる両ハンドの超速ドライブをどれほどしのいで、フォアドライブの攻撃に持っていけるのか。一方の平野は、どれほどの平常心でコートに立ち、ハリケーンと呼ばれた両ハンドを王のコートに叩き込めるかが鍵だ。

 今日の試合で東京五輪代表のシングルスが決まるかもしれない(二人がともに勝てば明日以降に持ち込まれる)。これほど熾烈で過酷な代表レースは世界中で日本だけである。
 1年間のワールドツアーや大陸での試合の獲得ポイントの上位8大会のポイントの合算で世界ランキング決まる。その世界ランキングの上位2名がシングルスに出場できるというのが日本卓球協会が決めた選考基準だ。
 すでに今年に入って石川は18大会、平野は19大会に出場してきた。そのうえで、両者の差はわずか135点。そんな過酷なドラマのエンディングをこれから迎えることになる。 (今野)