1997年1月の卓球王国創刊号。いろいろな意味で衝撃のデビューだった。雑誌の作り方も従来の専門誌とは一線を画した。
創刊号では、12月の全日本選手権のカラー詳報が報道ページのメインだった。その中で、今野編集長が男女のシングルスの総評を書いた。
女子シングルスでは元世界チャンピオンの小山ちれ選手が圧勝。壁のようなブロックと正確な両ハンドで他を寄せ付けない内容だった。
しかし、彼女の試合ぶりでチャンピオンらしからぬ行為があった。それは、相手のミスした時やサービスミスなどでも「ナイスボール」を連呼していたことだ。
2013年12月号で本誌は「フェアプレーとは何だ」というテーマを取り上げたが、まさにチャンピオンにふさわしくない試合態度に見えた。それはこの大会の時だけではなかった。誰かが注意すべきだったが、相手は何せ「女王」様だ。
そして今野は総評でこう書いた。
「その強さは素晴らしいの一語に尽きるのだが、自ら奮い立たせるためとはいえ、相手のミスに対して『ナイスボール』と連呼する試合ぶりに、観客の一部には首をかしげる人もいた。チャンピオンの影響力の大きさを考えると、卓球の強さだけでなく、試合におけるマナーもチャンピオンにふさわしいものであってほしいと願う」
それまでの専門誌では、選手をほめることはあっても、「注意を与え、喚起させる指摘はしない」という不文律のようなものがあったために、創刊されたあとにいろいろな人に「ああいうことを書いて、選手や母体に文句を言われたなかった?」と聞かれた。
そして、「あの事件」はそれから2カ月後の3月。世界選手権前の日本代表宮崎合宿の時に起こったのだ。
<続く>