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世界ジュニア選手権大会

 あまりに強烈だった昨夜の日中決戦、日本対中国のジュニア男子団体準決勝。試合後のミーティングで、田㔟邦史監督は選手たちに語りかけた。「最後の最後、競った場面で自分の得意な技術で勝負にいく。その姿勢は見えるけれど、それなら絶対に入れないといけない。あるいは相手をよく観察して、相手の嫌なこと、苦手なことをやるか。『最後の1点』の取り方を考えてほしい」。

 ラスト戸上隼輔対向鵬に声援を送る日本と中国のベンチ。「落ち着け! 落ち着け!」「迷うな!」「自信を持て!」。極限の精神状態に追い込まれた両選手に、日中両国のベンチから発せられる言葉は不思議なほど合致していた。そこで迎えた9ー9、10ー10の場面で、最後の1点の得点率が明暗を分けた。

 中国選手は基本的に、競った場面ではリスクは犯さずに「相手が嫌がるプレー」をやってくる。伸びるショートサービスや、同じモーションからのロングサービスで日本勢のミスを誘い、バックハンドでも威力より緩急とコースを重視。傍(はた)から見れば特別なことはやってこないが、なかなかミスをしてくれない。

 もともと中国卓球は、得意なプレーで相手を打ち破る「必勝」ではなく、「不敗」にその本質がある。「6割のパワーで、8割入るボールを打つ。それが中国卓球の基本」。元五輪複金メダリストの偉関晴光さんから何度も聞いた言葉だ。日本から2点を奪った徐英彬は、若い頃の馬龍を彷彿とさせる絞り込まれた体躯だが、そのパワーを開放してフルスイングする場面は滅多に見ない。パワーの上限値を上げていくことで、6割のパワーでも優位に立てる質の高いボールを、相手がミスするまで何本でも打つ。

 日本と中国、ジュニア男子シングルスで再び相まみえることがあれば、最後の1点をどのように奪うのか。その選択は選手のプレースタイルによるが、自分の得意な技術で勝負するのもひとつの選択肢だし、相手が苦手なところがあれば、自分の苦手な部分でもあえてそこにぶつけるのもアリ。卓球は対人競技、どのプレーが最も合理的かどうかを見定めることが重要だ。