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中国リポート

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 卓球のトップ選手には、いわゆる「合い口」というものが結構ある。世界ランキングのトップ10に入るような選手であっても、この選手はこの選手にどうしても勝てない、ということが少なくない。
 たとえば男子の柳承敏(韓国)は、王皓(中国)に対して圧倒的に分が悪い。唯一の勝利がアテネ五輪の決勝戦だったのは皮肉だが、それ以外に国際試合ではほとんど勝ったことがない。また、世界最高峰のカットプレーを見せる韓国女子のエース・金キュン娥も、世界ランキング1位の張怡寧に対しては完全にノーチャンス。張怡寧のボールがパワフルなのを差し引いても、金キュン娥は張怡寧の前では、完全に戦意を喪失してしまう。張怡寧はまさに「金キュン娥キラー」である。
 
 ところが、そんな無類の強さを誇る張怡寧にも、天敵がいることをご存じだろうか? その名は中国香港の姜華君(ジァン・ホァジュン)。現在世界ランキング11位、フォア面裏ソフト・バック面表ソフトのシェーク速攻型。06年クウェートオープン、07年クロアチアオープン、そして先週行われたフォルクスワーゲン荻村杯と、張怡寧にITTFプロツアーで3度勝利している。

 姜華君は1984年、中国・山東省生まれで、96年に12歳で青島市チーム入り。98年に国家2軍チーム、そして2000年に現在日本生命で活躍する李佳らとともに国家1軍チームに昇格した。
 中国チームでは、ひとりのコーチが数人の選手の担当コーチになる。たとえば女子チームのコーチになったばかりの孔令輝は、郭躍・劉詩ブン・姚彦・木子の4人を担当。馬琳と王皓はともに呉敬平コーチの指導を受けている。1軍チームに入った姜華君の担当コーチは、張怡寧と同じ李隼コーチ。元日本代表・羽佳純子選手の実兄だ。こうして張怡寧と同門だったことが、姜華君が張怡寧を苦にしないひとつの理由だろう。実際、当時から張怡寧には分が良かったようだ。
 2001年から中国代表に抜擢され、2003年のアジアカップで準優勝するなど、好成績を収めていた姜華君だが、2005年10月の全中国運動会を最後に中国香港チームに移籍。翌06年のクウェートオープンでは2回戦で張怡寧、準決勝で郭炎、決勝で郭躍を下してプロツアー初優勝。今年に入ってからもチリオープンとフォルクスワーゲンオープン韓国大会で連続優勝し、完全に世界のトップクラスに定着した感がある。

 彼女の技術的な特徴は、なんといっても前陣で弾き打つ、バック表ソフトの連続攻撃。バック表のシェーク速攻型としては、世界で最も高い完成度を誇っている。威力があるのはもちろんだが、安定性も抜群でほとんどミスをしない。試合を見ていても、非常にインパクトのある技術である。荻村杯での張怡寧戦では、このバック連打を張怡寧のバックからミドルに集めて張怡寧の足を止め、要所で厳しいコースを突いた。張怡寧はバック対バックのラリーで押され、フォアに回したボールをフォア強打で狙い打たれて敗れた。

 まさに女王のアキレス腱とも言うべき存在の姜華君。中国香港チームということで、ビッグゲームで中国と真剣勝負ができるかどうか微妙だが、しばらく世界の舞台で暴れる選手になりそうだ。
 トレードマークはまゆ毛の上でピシッと揃えた前髪。ちなみに「姜」という姓は中国ではそう珍しくないが、読みづらいということで、卓球王国では「生姜(しょうが)」というありがたいニックネームで呼ばれている…。