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中国リポート

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 前代未聞と言うほかない。卓球界を震撼させている、ITTFワールドツアー・中国オープンでの中国男子チームの「集団ボイコット」事件。
 昨日、張継科が男子シングルス1回戦の吉田雅己戦で、第1ゲーム7ー10で試合を棄権。こちらは「臀部の故障」という理由であり、近年は故障がちということもあってそれほど違和感はなかった。しかし、大会第4日目の6月23日、男子シングルス2回戦に出場予定だった馬龍、樊振東、許シンの3名が、試合時間になってもコートに現れず。こちらは明らかに異常事態だった。馬龍の対戦相手は大島祐哉、許シンの対戦相手は張本智和。馬龍対大島は一昨年の中国オープンでゲームオールの激戦を展開したカードであり、許シン対張本は世界選手権個人戦・準々決勝のリベンジマッチ。興味が持たれる一戦だっただけに残念でならない。

 国家男子チームの秦志ジェン監督や馬琳コーチ、そして馬龍、許シン、樊振東という選手たちは、男子シングルス2回戦に先立ち、自身の微博(マイクロブログ)のアカウントにこんな書き込みをしている。「這一刻我們無心恋戦……只因想念您、劉国梁!(もう今は戦い続けることなんてできない……ただあなたのことを想っているよ、劉国梁!)」。劉国梁の似顔絵と、書き込みをした本人と劉国梁のツーショットも同時に投稿されていた。組織的なボイコットであることを示唆するものだったが、現在、そのほとんどは削除されている。

 中国オープンの開幕に先駆けて、劉国梁が総監督を退任して中国卓球協会の副会長に就任することが発表された。指導の現場から離れる一方で、19番目の副会長職に実務的な権限はほとんどない。この人事に対する現場からの反発が集団ボイコットを招いた形だが、中国のスポーツを統括する機関である国家体育総局、その内部での権力争いが背景にあることも十分に考えられる。中国卓球協会の蔡振華会長が副局長の要職にあるが、劉国梁をかばい切れなかったということなのか。

 王楠(99・01・03年世界女子チャンピオン)の夫である郭斌さんは、今回の劉国梁監督の人事に際して、国家男女1・2軍チームの選手たちが微博に書き込むことなどが禁止されたと明かしている。「本当に最悪だ!発言を禁止するなんて一体何を怖れているんだ? そんなことをさせた上層部は辞任させるべきだ」とその怒りは収まらない。

 一方、国家体育総局は、今回の集団ボイコットについて、速やかに以下のようなコメントを発表している。

「6月23日、成都で行われている2017ITTFワールドツアー・中国オープンにおいて、中国卓球チームのコーチ2名、選手3名が勝手に試合を棄権し、社会に対して大きな悪影響を及ぼした。

国家体育総局のスポークスパーソンは表明する。重要な国際大会において断りもなく勝手にコートを去り、スポーツ選手としての職業道徳からかけ離れた行動を取り、国家の栄誉と利益を顧みることなく、観客と対戦相手を尊重していない。このような行為は大いなる誤りであり、断固として反対するものである。

我々はスポーツチームに対して要求する。選手たちはいかなる時も愛国主義、そして集団の利益を第一とし、しっかりとした思想を持ち、厳格な規律が求められる。それはスポーツのレベルと同様に重要なものである。国家体育総局はすでに中国卓球協会に対して、事実関係の確認と厳正なる処分を命じている」

 もうしばらくは情勢を見守るしかないが、指導陣や選手に対して処分が下ることは避けられないだろう。ITTF(国際卓球連盟)のバイカート会長は「3人の世界のベストプレーヤーが、このようなビッグイベントで試合を棄権したことについて、ITTFは非常に失望している」と述べているが、こちらも何らかの処分が下されることになるのか。世界選手権個人戦の興奮冷めやらぬ中、地元開催のワールドツアーで発生した非常事態。中国オープンの会場では、時に「劉国梁!劉国梁!」というファンからの声援が響き渡った。