スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 9月29日、四川省成都市で行われた女子ワールドカップの開幕式に、あの男が出席した。中国卓球協会副会長の劉国梁。昨年6月に国家チーム総監督を退任してから、卓球関連では久々に公式の場に姿を現した。

 それに先立ち、9月27日に中国卓球協会は「スポーツ界の改革をさらに一歩推し進め、2020年東京五輪に向けた各分野の準備をスムーズに行っていくため」として、準備工作グループを立ち上げることを発表。グループ長に劉国梁、副グループ長に雷軍という中国卓球協会の副会長ふたりを任命した。グループのメンバーは国家体育総局・卓球バドミントン管理センターの柳屹副主任をはじめ、劉威・王励勤・張雷・秦志戩という顔ぶれだ。昨年6月の「ボイコット事件」にも加担した、前中国男子監督の秦志戩が名を連ねたのも、もうひとつのカムバック劇だと言える。

 「準備工作グループ」という組織名はいかにも回りくどいが、要は「劉国梁が現場のトップに戻ってくる」ということ。蔡振華と苟仲文の権力闘争に端を発した一連の「劉国梁騒動」は、蔡振華の国家体育総局副局長からの退任と、劉国梁の現場復帰によってひとつの「手打ち」を迎えた。

 劉国梁は早速、北京にある国家体育総局の卓球トレーニングセンターを訪問。男子チームの劉国正監督とミーティングを行い、チームの強化の状況を確認した。「このトレーニングセンターを訪れるのは1年3カ月ぶりだけど、以前と変わらず皆親切で、まるで家に帰ってきたようだ。長いバカンスのようなものだね。それを終えて、今帰ってきたばかりという感じだね」とコメントしている(出典:『新浪体育』)。自らの微博(マイクロブログ)には「チームとともに、東京五輪を戦う。あと666日だ」と書き込み、早くも意欲満々だ。

 選手の間でも復帰を望む声が大きかった劉国梁。ここ1年ほど、中国男子がワールドツアーなどで好成績を出していなかったのは、「成績を低迷させて、劉国梁を現場に復帰させたかったから」と囁(ささや)かれるほど。蔡振華がスポーツ界を離れた今、中国卓球協会会長の座も劉国梁へと引き継がれるのが既定路線だが、それについては今のところ報道はない。

 インターネットでも、中国の卓球ファンからは「『不懂球的胖子』が帰って来た!」と復帰を歓迎する声が相次いでいる。「不懂球的胖子」は「卓球を知らないデブ」という意味。16年リオ五輪の際、台湾のネットユーザーが「中国選手の後ろにいるあのデブは役員か? 卓球を知っているようには見えないぞ」と投稿したことから、中国でもこの愛称が広まった。その正体は、中国卓球界最強のカリスマにしてモチベーター。東京五輪での金メダル獲得を目指す日本にとっても、怖い男が帰ってきた。
  • 15年荻村杯でのインタビュー時の劉国梁。名言を連発し、王国取材班を圧倒した

  • 女子ワールドカップ開幕式での劉国梁。写真:レミー・グロス(ITTF)