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中国リポート

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◎遼寧省出身の主な男子選手
[瀋陽市]李鵬・王俊・王会元・于沈潼・馬琳・譚瑞午・韓陽(日本)・雷振華・周斌
[鞍山市]張超・馬龍・尹航
[撫順市]徐輝・王建軍・呉家驥(ウ・ジアジィ/ドミニカ共和国)・孫聞・徐海東
[錦州市]翟一鳴


 中国でも指折りの「人材輩出省」である遼寧省。男子の馬琳、馬龍、女子の胡玉蘭、王楠、郭躍、李暁霞、劉詩ウェンと7人の五輪・世界チャンピオンの出身地で、そのうち馬龍、郭躍、李暁霞の3人が鞍山市の出身だ。「鉄鋼の街」として知られる鞍山市は、もともと手軽に楽しめるスポーツとして卓球が人気だった。その街を「卓球の街」にした立役者のひとりが、白清漢という人物だ。

 1961年の世界選手権北京大会での中国チームの健闘に感銘を受けた白清漢は、卓球台もない小学校で「地面に卓球台を描いて子どもたちに打たせる」ところから指導をスタート。3人の子どもたちも選手を経て指導者となり、長男の白暁東は妻の石海梅とともに馬龍、李暁霞、郭躍、王越古、石磊(石賀浄)らの「啓蒙教練(初期のコーチ)」として、「金メダル夫妻」の異名を取った。白清漢は孫の白石・白鶴もプレーヤーとして活躍し、「白家三代」で卓球界に名を馳せている。

 また、馬龍・郭躍・李暁霞が生まれた1988年には、国家体育総局が鞍山市を卓球の強化・普及を進める重点都市に選出。遼寧省チームよりも立派な卓球のトレーニングセンターが建設され、強化に役立ったことも大きい。

 2013年、この鞍山市で第12回全中国運動会・卓球競技が開催。ライバルの張継科の後塵を拝していた馬龍が、男子シングルスで初優勝を果たし、ここから「絶対王者」への道を歩んでいった。選手として育ったのは、13歳の時に入学した北京市の什刹海体育運動学校だが、故郷・鞍山に錦を飾ったことが選手としての大きな転機だった。
 フォアのパワードライブが印象的な馬龍だが、遼寧省チーム時代に指導していた王俊(77年世界団体優勝メンバー)によれば、意外にも「ボールセンスに優れた選手だったが、チームに入った頃はバックハンドが強く、フォアハンドはあまり得意ではなかった」という。チームの誰よりも真面目に練習するその姿勢が、フォアの剛剣を磨き上げたのだ。

 もうひとりの「馬」、馬龍より8歳年上の馬琳は省都・瀋陽市の出身。遼寧省ジュニアチームの一員だったが、13歳の時にチームメイトの譚瑞午(後にクロアチアに国籍を変更)とともに広東・仙頭市卓球学校に引き抜かれた。劉国正(01年世界男子団体優勝)や張ユク(元香港代表)もこの時に仙頭市卓球学校に入学したひとりだ。その直後に14歳で全国青少年選手権で優勝し、国家チーム入り。プレーヤーとしての経歴は山あり谷ありで、世界選手権では三度決勝に進出していずれも敗れているが、08年北京五輪金メダリストの称号は燦然と輝く。

 1980年代に活躍した選手では、左シェーク異質攻撃型の王会元がいる。フォアのパワードライブと多彩な回転を操るバック表ソフトのテクニックを駆使し、シングルスでは83年世界選手権の3位が最高成績だが、その実力は今も高く評価されている。国家チームを引退後、日本の龍谷大学に留学し、長く龍谷大学卓球部監督を務めている。

 89年世界選手権3位、馬文革と組んだペアで92年バルセロナ五輪ベスト8の于沈潼は左ペン表速攻型。24歳で国家チームを引退し、こちらは日本リーグの住金物流(当時)でプレー。奥さんの趙多多(日本名:東童多英子)は日本に帰化し、96年アトランタ五輪に日本代表として出場したが、于沈潼は後に中国に戻り、遼寧省男子チームの監督を務めた。男子チーム監督の座は、2014年に李暁霞の夫であるジャイ一鳴に引き継がれ、女子チーム監督に就任したのは08年北京五輪日本代表の韓陽。中国から来日した卓球選手・コーチには、遼寧省出身の人が非常に多いのだ。載せ切れなかった皆さん、スミマセン。

◎遼寧省男子明星隊 MEN’S LIAONING ALL STARS
先鋒 張超
次鋒 于沈潼
中堅 王会元
副将 馬琳
大将 馬龍


・遼寧省出身の男子選手のオールスターメンバーは、多彩なプレースタイルが揃った。一撃のパワードライブが武器の「角刈りアニキ」、張超は団体戦に強かったナイスガイ。張超・馬琳が広東省チーム、馬龍が北京市チームに移籍し、地元を離れてしまったが、各省のオールスターチームと比べても顔ぶれは豪華。時空を超えて対抗戦をやれば、有力な優勝候補になるだろう。
  • 実力は間違いなく世界王者クラス、左シェーク異質の王会元

  • 左ペン表速攻の于沈潼は、日本リーグでもプレーした

  • 08年北京五輪のゴールドメダリスト、馬琳は瀋陽市出身

  • 馬琳と広東・仙頭市卓球学校でチームメイトになった譚瑞午

  • 08年北京五輪に日本代表として出場した韓陽は、現在は遼寧省チーム女子監督

  • 2013年全中国運動会で、故郷に錦を飾った馬龍

  • 右ペンドライブの徐輝、中国スーパーリーグでは地元の錦州銀行でプレー

  • 2018年世界ジュニア王者の徐海東(右)。左のオバさまは…地元の方です