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中国リポート

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◎遼寧省出身の女子選手(再掲載)
[瀋陽市]張瑞・于夢雨(ユ・モンユ/シンガポール)・侯美玲(フー・メレク/トルコ)・周シントン・周一涵(ジョウ・イーハン/シンガポール)・陳幸同
[鞍山市]王越古(シンガポール)・韓莹(ハン・イン/ドイツ)・單暁娜(シャン・シャオナ/ドイツ)・李暁霞・郭躍・常晨晨・石磊(石賀浄/韓国)・曹麗思・王芸迪
[撫順市]王楠・湯媛媛(張莉梓/日本)・木子・劉詩ウェン
[丹東市]文佳
[錦州市]胡玉蘭・李佳・李佳イ   
[本渓市]朱香雲


 数多の女子世界チャンピオンを輩出してきた遼寧省。その2回目では、地元を離れて成功した選手たちにスポットライトを当ててみたい。

 2012年ロンドン五輪金メダリスト、13年世界選手権優勝の李暁霞は鞍山市の出身。7歳で卓球を始めてたちまち虜(とりこ)となり、母親の姜艶さんは李暁霞の練習のため、家に卓球台を買い込んだ。その後、何度か遼寧省ジュニアチームの集合訓練にも呼ばれた李暁霞だが、同い年の郭躍に比べると俊敏性のない地味なプレーに映り、ジュニアチームに残ることはできなかった。

 李暁霞はその後、「啓蒙教練(初期のコーチ)」である石雪梅に連れられて参加した山東省での大会で、山東省チームのコーチに才能を見出され、10歳にして山東省へ移籍してプロ選手の道を歩み始めた。あまりに選手層が厚いため、優秀な人材が次々に流出し、結果的には人材の「空洞化」を招いてしまったというのが、「王者の揺籃」遼寧省のもうひとつの側面でもある。

 李暁霞はその後、02年全中国選手権を14歳で制して国家1軍チーム入り。世界選手権では07・11年と女子シングルス決勝で悔しい敗戦を喫したが、12年ロンドン五輪で初出場・初優勝。13年には世界選手権と地元・鞍山市での全中国運動会を制し、いわゆる「全満貫」を達成した。「李暁霞時代」は決して長くはなかったが、バックサイドを厳しく切るバックドライブから、回り込んで両サイドへ一撃のフォアドライブで打ち抜くコンビネーションは抜群。長身を利した、李暁霞ならではの「勝利の方程式」だった。

 遼寧省を去ったもうひとりの世界女王は、劉詩ウェン。出身は王楠と同じく、古くから炭鉱の街として知られた撫順市。母親の王麗風さんはかつて遼寧省チームでプレーした卓球選手で、娘が5歳の時には卓球を始めさせた。劉詩ウェンを教えていたのは、かつて王楠も指導した「啓蒙教練」の張晶清コーチ。後に張コーチは広東省広州市で指導するようになり、王麗風さんはわずか7歳の娘を張コーチに託し、撫順市から遠く離れた広州市へ送り込んだ。

 最初はホームシックにかかって毎日泣いていたという劉詩ウェンだが、次第にその天賦の才を発揮して、05年に国家1軍チーム入り。世界選手権では09年横浜大会から3位・3位・2位・2位・3位と頂点を目前に足踏みが続いたが、19年世界選手権で初優勝を飾り、10年越しの悲願達成となった。現在は右ひじの故障が長引き、マカオでの集合訓練中に行われている部内対抗戦も3回連続で欠場するなど、その状態が懸念されているが、有終の美を飾ることはできるだろうか。

 その他の選手では、海外への移籍組の多さが目を引く。シンガポール女子チームの主力となった王越古・于夢雨(ユ・モンユ)・周一涵(ジョウ・イーハン)、ドイツ女子チームのツインエースである韓莹(ハン・イン)・單暁娜(シャン・シャオナ)など、帰化選手が主軸の強豪国を支えてきたのは遼寧省出身の選手たちだ。福原愛さんの専属コーチとなり、強い絆で結ばれた湯媛媛コーチ(日本名・張莉梓)も遼寧省出身。福原さんも小学生時代から遼寧省チームで練習を行って世界のトップ選手に成長し、後に中国スーパーリーグの遼寧本鋼とも契約した。

◎遼寧省女子明星隊 WOMEN’S LIAONING ALL STARS
先鋒 郭躍
次鋒 胡玉蘭
中堅 劉詩ウェン
副将 李暁霞
大将 王楠


・「出身地主義」で編成しているこのオールスターチーム。なんと遼寧省女子は5人全員がシングルスの世界チャンピオン。まさに空前絶後の「女王軍団」だ。カミソリ左腕の郭躍、オールラウンダーの胡玉蘭、史上最速と言われる両ハンド速攻の劉詩ウェンに重量級ドライブの李暁霞、そして両ハンドの圧倒的な安定性を誇った王楠。個性あふれるスタープレーヤーが顔を揃えた。
  • 13年世界選手権で優勝、「パリの女王」となった李暁霞

  • 劉詩ウェンは19年世界選手権で悲願の初V。故障の回復が待たれる

  • 非常に勝負強かった王越古。日本リーグの十六銀行でもプレーした

  • 16年リオ五輪で日本の前に立ちはだかり、ドイツに銀メダルをもたらしたハン・イン

  • こちらはちょっと懐かしい顔。トルコに帰化したフー・メレク