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中国リポート

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 8月17日に行われた北京五輪・卓球競技の女子団体決勝で、中国に0-3で敗れ、銀メダル獲得となったシンガポール。中国から1点を奪うことはできなかったものの、世界ランキングのトップ10に入る選手を3人揃え、前評判どおりの実力を見せた。
 シンガポール女子が獲得した銀メダルは、シンガポールが1965年に独立して以来、五輪で獲得した初めてのメダル。1960年ローマ五輪の重量挙げライト級で陳浩亮が銀メダルを獲得しているが、この時はまだイギリス領シンガポールとしての参加だった。

 この慶事に、シンガポール全土は大いに沸いているようだ。この女子団体決勝と時を同じくして、シンガポールではリー・シェンロン首相による独立記念演説が行われていた(独立記念日は8月9日)。リー首相は「国民が女子団体決勝をテレビ観戦できるように」と、17日午後8時から行われる予定だった英語による演説のテレビ放送(生中継)を、18日夜に録画で放送することを決定。7時半から女子団体決勝が放送され、街中のテレビというテレビでその模様が伝えられた。国家の方針や政策について述べる、重要な行事の放送が延期されるのは、極めてまれなことだそうだ。

 演説の最中になんと携帯のメールで結果を知ったリー首相は、演説を一時中断。「我々のチームは敗れた、0-3です」と銀メダル獲得のニュースを伝え、「選手たちのプレーを誇りに思う。彼女たちにおめでとうを言うべきだ」と観衆に訴えた。演説の終わり近くには、シンガポール五輪選手団の陳英梁団長との電話が会場につながり、陳団長は「チームは金まであと一歩というところで中国に敗れました。しかし、我々の女子チームは最後まで精一杯戦った。見事なプレーでした」と語った。観衆からは大歓声が沸き上がったという。
 今年3月に世界選手権団体戦で準優勝し、帰国した際には空港で3人しか出迎える人がおらず、チームのメンバーをがっかりさせているが、今回は超・熱烈な歓迎を受けることになりそうだ。

 なお、シンガポールのリー首相はこの演説の際、シンガポールが「外国人の専門家や労働者を積極的に受け入れ、経済成長を達成した」と発言。同様にスポーツ界も、「海外からの移住選手がシンガポールチームをより強大にする」と述べ、海外からの選手の受け入れに肯定的な考えを示した。帰化選手の増加が問題になっている国際卓球界の潮流に逆行するような発言だが、これも人口400万人の都市国家ゆえか。しかもシンガポールは住民の75%を華人(中華系)が占める。他の国から見れば安易な強化に見える中国選手の流入も、シンガポールにとっては積極的な移民受け入れ政策の一環に過ぎないのだ。所変われば事情も変わる…、と素直に納得できない部分もあるが。

Photo上・中:団体決勝進出を決め、歓喜するシンガポール女子チーム
Photo下:この人の補強も大きい。日本リーグでもプレーした馮天薇