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中国リポート

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 王楠のプレースタイルは、なかなかひと言では表現しづらい。コース・打球点ともに厳しく、ミスのないバックハンド。抜群の切り替えの早さと崩れないボディバランス。打球点を自在に調節できる懐の深さも特徴的だった。その全面的なテクニックが、幾多の逆転勝ちを演出した強靭なメンタルによって発揮されていった。先代のトウ亜萍を「無敵の女王」とするならば、王楠は「不敗の女王」。ぬるりぬるりと接戦に持ち込み、とにかく最後には勝ってしまう全盛期の強さには、得体の知れないスケールの大きさを感じた。

 それにしても王楠、長い現役生活だった。王楠のいない卓球界を想像することは難しく、その喪失感はしばらく女子卓球界を包むかもしれない。そして同時に、中国女子の若手が本格的に国際舞台に登場してくるだろう。すでに世界トップクラスの李暁霞に加え、曹臻、彭陸洋、劉詩ブン、丁寧、饒静文とタレントは豊富。張怡寧の引退の時期が現時点では読みにくいが、中国女子もここ1~2年で世代交代が一気に進みそうだ。

 さて、まだ現役引退後の進路については明言していない王楠。一体どのような進路を歩むのか。考えられる選択肢は多数ある。
1. 夫である郭斌さんの仕事である不動産業で、新たな事業を始める
2. 自身の名を冠したスポーツブランドを立ち上げ、女社長の座に就く
3. 共産党全国代表大会に2大会連続で選ばれた実績をもとに政治家へ転身する
4. コーチ兼選手という路線を引き継いで、国家チームの指導者への道を歩む。

 …ちなみに本人曰く「専業主婦には絶対ならない」そうだ。どの道を進むにしても、この女傑はどうやら卓球界という枠には収まりそうにない。前述の『ピンパン世界』05年6月号のインタビューでは、卓球界の人脈を重視しながらも、「卓球の他にも実はいろいろなことに興味があるんですよ。ファッションやインテリア、料理とか。私は自分の能力を信じてますし、もし何かをやるとしても、きっとうまくいくと思いますよ」と述べている。

 来月末には、郭斌さんの故郷である山東省威海市で船上結婚式を挙げる王楠。入籍からはや2年、王楠にとっては待ち焦がれたウェディングドレスではないだろうか。

Photo上:ボーイフレンドの郭斌さんから、1万1本のバラのプレゼント(05年上海大会/画像提供『ピンパン世界』)。上海大会では失意の3回戦敗退だったが、北京五輪後にこの年甲状腺にガンが見つかり、切除する手術を受けていたことを明かした
Photo下:卓球王国01年5月号の表紙も飾ってくれました