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中国リポート

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 これまで五輪・卓球競技のシングルスで、連覇を達成した選手というのはふたりしかいない。92・96年大会優勝のトウ亜萍と、04・08年大会の張怡寧。3連覇した選手はひとりもいない。2012年のロンドン五輪時に張怡寧が現役で、代表に選ばれていたら3連覇のチャンスがあるが、もし達成できたとしたら前人未到の偉業と言えるだろう。
 ところが、今月6日に開幕した北京パラリンピックで、なんと3連覇はおろか、6連覇に挑戦した選手がいる。その選手の名前は張小玲(チャン・シャオリン)。立位クラス8のプレーヤーである張は現在51歳で、北京残奥会(パラリンピックは中国語で「残疾人奥運会」略して残奥会)中国選手団の最年長。19歳の時に仕事中に右脚を負傷したのがもとで義足となりながら、これまで13回義足を取り替えたというほどの猛練習を積み、右ペンホルダー表ソフトの強力な速攻を身につけた。

 なにしろこの張小玲女士、88年ソウルパラリンピックでシングルスと団体戦で優勝したのを皮切りに、04年アテネパラリンピックまで団体とシングルスで5連覇。シングルスでは8つのクラス分けがなされているとはいえ、5大会で一度も負けることなく、10個の金メダルを獲得してきたというのだから、全く空いた口がふさがらないほどの強さ。どうも中国という国は、時として偉大な女傑を生むお国柄のようだ。

 しかし、卓球競技第4日目、午前10時45分スタートの女子クラス8準決勝。今大会は団体にエントリーせず、シングルス一本に絞ってきた偉大な女王に、ついに敗戦の瞬間がやってきた。スウェーデンの28歳・アブラハムソンに対し、第1ゲームをものの3分とかからずに11-1で奪ったものの、ゲームカウント2-1とリードしてからやや守りに入り、アブラハムソンの攻撃力にゲームオール9本で屈した。中国国内ではすぐに「今回のパラリンピックで最大の番狂わせ」という報道が流れた。
 百戦錬磨の張小玲にしても、地元開催のプレッシャーがわずかにプレーを狂わせたのだろう。2012年のロンドンパラリンピックに出場できるかは微妙なところ。常に変わらぬ圧倒的な存在感で、中国ではワルドナーと並び「常緑樹」と称されてきた張小玲。「これまで引退を考えたことは一度もない」と言うが、4年後に向けて闘志を保ち続けることができるか。