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中国リポート

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 「直通莫斯科」ですでに3名の選手(許シン・張継科・馬龍)が代表権を獲得し、馬琳・王皓・王励勤の3名のうち、1名が世界団体選手権モスクワ大会の代表を外れることが確実となっている国家男子チーム。ITTF(国際卓球連盟)への最初のエントリーでは、王皓と王励勤がメンバーに選ばれている。エントリーは開幕の直前まで変更が可能なので、最終エントリーは定かではないが、北京五輪金メダリストの馬琳が厳しい立場にあることは間違いない。
 国家男子チームのメンタルサポートを行っている陳静(88年ソウル五輪女子金メダリスト)が、『羊城晩報』の紙面で次のようなコメントをしている。「(メンバーが発表された)その夜、馬琳が急に「動悸(どうき)がする」と言って、勉強を続けられなくなったのを覚えています。精神面の不安が体調の異変となって現れたのでしょう。(メンバーに名前がないことについて)受け入れる心構えはできていたとしても、やはり現実のものとなると、彼にとっては辛い出来事だったはずです」。97年の世界選手権マンチェスター大会で代表に抜擢されて以来、常に中国男子チームの中心選手だった馬琳。今回のように当落線上で感じる不安は、あまりない経験かもしれない。

 そして5月9日、北京五輪のメダリスト3名にとって、自力で出場権を獲得する最後のチャンスが訪れるようだ。集合訓練を行っている浙江省寧波市の寧波北侖海天体育館で、馬琳・王皓・王励勤の3名による、最後の代表決定戦が行われる。まず3名のうち2名が対戦(第1戦)し、この試合の敗者と残る1名が対戦(第2戦)。第1戦と第2戦の勝者による第3戦が、4人目の団体代表メンバー決定戦となる(5人目の代表はコーチ陣による推薦で決定)。一体誰が勝ち抜くのか、予想するのはなかなか難しい。同時にこの3人によって代表決定戦が行われるということは、ハオ帥や陳杞は完全に出場の望みを断たれたことになる。

 5月6日には国家男子チームの訓練基地を、国家体育総局の蔡振華副局長が訪問。代表メンバーたちの仕上がりを視察し、馬琳に対してはレシーブのワンポイントレッスンを行うなど、久々に指導者としての一面も見せている。夜には男子チームの部内対抗戦が行われ、馬琳・王皓・王励勤の3名が、張超・雷振華・閻安と対戦。結果は3-2で辛くも五輪代表チームの勝利。3番手の王励勤が閻安を破り、馬琳と王皓はともに1勝1敗だった。
 蔡振華はマスコミに対し、以下のようなコメントを発している。「感情的には残念な気持ちがあったとしても、世代交代は決して避けられない。今回のモスクワ大会でも、ベテランとの辛い別れがあり、若手は多くの試練を迎える。すべては国家男子チームが成長していく上での、正常な過程だ」。たゆまぬ技術革新と、着実な世代交代が中国卓球の繁栄を支えてきた。ファンにとっては名選手との別れは寂しいが、今回の代表権争いも長く繰り返されてきた世代交代のワンシーン。中国にとっては、むしろ歓迎すべき事態なのかもしれない。

Photo上:馬琳、ラストチャンスをものにすることができるか?
Photo下:蔡振華にとって、馬琳と王励勤は指導者時代に接した最後の世代だ