●用具のこだわり by ゆう

【用具のこだわり】鎮西学院のカットマン・福田瑛二選手

2016/01/11

長崎・鎮西学院高のカットマン福田瑛二選手。
ゆったりとしたカットは、強烈な下回転とナックルを織り交ぜる。
1回戦では全中3位の手塚(明徳義塾中)をフルゲームジュースで下した。

ラケットは松下浩二(ST)
フォアラバーはV>15エキストラ(MAX)
バックラバーはフェイントロング3(超極薄)

彼の用具はベンチに入った坪口道和監督が説明してくれた
「長崎は寒くて湿気がない。東京に来てから気温が高く、湿気が多くてラバーが弾み、滑っている感じがある。でも全体的には良いラバーだと思いますよ。
 このラバーは以前使っていたV>01スティフよりも引っかかるし、飛ぶから気をつけろと言っていた。タイミングを早くしてボールをゆっくり抑えなくてはだめ。カットマンとしては弾みすぎだと思うが、攻撃もするからいいかなと。今日はカットが全然入っていなかったです。だからバックの粒で全部まわらせました」

そして福田選手は
「緊張した時に振れてないからミスしてしまうんです。今日もそうでした。でも緊張していないときはナックルと下回転の変化が本当に出しやすいんです。前のV>01スティフより回転はかけやすいです
 粒高は以前はカールp-4を使っていたけど、今のにして使いやすくなりました。
 またラケットは高校になって今のに変えました。前は朱世赫を使っていたけど、高校に入り、相手のボールの威力があがって抑えられなくなってしまった。安定性を高めないとと思ってラケットを変えたら良くなりました」

監督と選手のコメントだが、
このように選手の用具について細かくわかっている監督は非常に珍しい。
自身も湿気を気にする表ソフトを使い、トップ選手として戦った経験があるからこそ、選手の用具には敏感なのだろう。
  • カットで相手を翻弄

  • 坪口監督は選手時代から用具に敏感だ

【用具のこだわり】左ペンホルダーの両ハンド・田熊光里

2016/01/11

女子ジュニア1回戦を突破した田熊光里選手(青藍泰斗高)。
彼女は左ペンホルダー裏裏ドライブ。広角な打法と、打球点の早い攻撃前陣ドライブを操り、連続攻撃で相手をたたみかける。

ラケットはラプータ(角丸型)
表面ラバーはテナジー05(特厚)
裏面ラバーはヴェガヨーロッパ(2.0㎜)

「小学生の時からずっと使っているラケットだからすごく慣れていて変えられない。グリップの削りが同じにならないので、変えるのが怖いですね。
 ラバーは先生が選んでくれています。フォアはヴェガジャパンを使っていたけど、去年のインターハイ前にテナジー05に変えました。回転がかかるからボールが相手のコートでストンと落ちてくれる。ヴェガは少し直線的だったので、もっと回転がかかればいいなと思って変えてくれました。
 変えたら周りから前よりボールが速いと言われるようになりましたよ」

ラプータとは粒高用の弾みの弱いラケットだ。しかしラバーの進化により、ラケットはコントロール重視のものにしてもよいかもしれない。
ラケットで操作して、ラバーで飛ばす。
これが彼女のラケットだ。

【用具のこだわり】最年長・大栗寛の用具とは!?

2016/01/11

今大会、最年長の大栗寛選手に用具を聞きました。

大栗さんと言えば、ペンホルダー。しかし、数年前までは中国式を使っていたが、最近は日ペンに戻ってきているようです。

ラケット:長城(角丸/廃番)
表面ラバー:スピネイト(特厚)
裏面ラバー:アンチパワー(薄)

「長城は廃番品です。4本持っていて、2本は硬式用、2本はラージ用にしています。スピードグルーがなくなってから日ペンに戻しました。中国式ペンは弾いてくれないんです。飛ばなくて、弾かなくて、悩んでいたときに昔のラケットをいろいろ試してみたら長城が一番弾んだんです。2本持っていて、もう2本はかきあつめました。
 スピネイトは昨年3月の東京選手権が終わってから変えました。30代の柳沢邦治くんがスピネイトを使っていて、使ってみようかなと試したら良かったんです。プラボールになってボールが抜けなくなったんで、スピードが遅いとラリーで盛り返されてしまう。スピネイトはセルボールの時より速くなりましたよ。
 表ソフトを選ぶ条件は回転です。サービスやツッツキで切れないとダメですね。回転があって、スピードが速いものが良い。スピネイトはそれがいいですね。
 裏面のアンチはレシーブやしのぎ用です。フォアに飛ばされてバックを攻められた時にカットすれば時間稼ぎできる。一時期、裏ソフトを貼って裏面打法もやっていましたが、昔からやっている人はいいですが、今からだと難しい。ピッチが遅くなるからショートのほうがいいです。ちぐはぐなプレーになってしまう。
 あとアンチは相手の回転がわからない時に役に立ちます。あとは重量調整です。何か貼らないとラケットが軽すぎるので、アンチを貼っています」

この年でも表ソフトは発売されれば試すという大栗。
飽くなき探求心、勝利へのこだわり。そしてプレーとともに用具を楽しむ姿は実に清々しい。

【用具のこだわり】定番に食い込める用具は出てくるのか!?

2016/01/08

 今年は用具事情がどう変わってくるだろうか。
用具担当としては、全日本を前に試合結果と同じくらい気になっていることである。これは用具好きな読者もそうだが、メーカーが最も気にすることだろう。自社の用具がどれだけ上位に食い込めるのか、タイトルを獲得するのかということは重要なことだ。

メーカーの契約選手であれば、選手とともに用具の宣伝ができ、ヒットにつながることもある。昨年度は神巧也選手が男子シングルスで準優勝し、ヤサカの『ラクザX』は全日本後に爆発的なヒットとなった。全日本はマーケティングを大きく左右させる。

先日、ヤマト卓球の仲村錦治郎さんと話をした時に、
「ラバー作るより、育てるほうが大変」という話を聞いた。
良いラバーの開発はできても、定番に育てる力が必要になるということだ。特に日本人は安定を好むので、定番が好きな傾向にある。そして同じラバーを貼りたがる。ずっと使ってもらえる、長く愛される用具に育てるのは大変なのだ。

コンビニによく行く人ならわかると思うが、コンビニは1週間に1度新製品が入荷する。お弁当やお菓子、カップラーメンなど、すぐに新製品が登場する。しかし、定着して常にお店に置かれる製品はごく一部だ。ラバーも08年以降、『テナジー』や『ヴェガ』くらいしか定番になれていない。発売後すぐに売れるラバーは多いが、売れ続けるラバーはごくわずかなのだ。

長く続いている全日本テナジー独占状態に今年は新しい風が吹くのだろうか。すでに丹羽孝希選手が『V>15エキストラ』での出場を決めて大きな注目を集めているが、一気に全日本優勝ラバーに押し上げることができるだろうか。

卓球王国以外では決して掲載されることがない男女シングルスベスト16、男女ジュニアベスト8の用具とともに、今年の用具事情は、全日本から始まる。
  • ラクザXのヒットは、神の活躍が火をつけた

  • 丹羽はV>15をチャンピオンラバーにできるのか

【用具のこだわり】丹羽孝希、電撃契約!その用具考とは……

2016/01/05

2016年、いきなり激震が走っている。
丹羽孝希(明治大)がタマス(バタフライ)からヤマト卓球へ契約を変更した。すでに用具もすべて変更し、全日本にも新用具で挑むことが決定している。

丹羽の新用具はこれだ!
カルテットAFC(FL)
V>15エキストラ(MAX)
V>15エキストラ(MAX)

そこで丹羽の用具を担当した開発の仲村錦治郎さんに話を聞いた。

仲村「丹羽選手のプレーの特徴は前陣とカウンターです。その部分では『V>15エキストラ』はすごく満足してくれています。丹羽選手も『相手のボールに対して負けないからカウンターに不安がない』とコメントしてくれました。しかし、問題は安定性です。以前使っていたラバーに比べて『V>15エキストラ』は弾むので、オーバーミスが多くなってしまいました。
 そこでラケットで調整しようと試みたんです。丹羽選手にVICTASのラケットを全部送り、試してもらいました。トップ選手はラケットとラバーの相性に敏感なので、時間はかかりましたが、その中から『カルテットAFC』を選びました。

 『カルテットAFC』は、特殊素材が4枚入っています。アラミドカーボン2枚、フリースカーボン2枚の組み合わせです。通常、特殊素材が4枚も入っていると重量が重くなってしまいますが、板厚を5.5㎜に抑えることで、重くなりすぎないようにしています。
 ラケットにはルールがあって、ブレードの85%は木材で作らないといけないんです。つまり、特殊素材は最高15%までです。板厚が薄い『カルテットAFC』は14.2〜14.5%くらいのギリギリ。その代わり、球持ちが良くて反発力も高いという絶妙なバランスのラケットができあがりました。
 一般的にトップ選手は一番弾む『カルテットVFC』を好むのですが、丹羽選手はラバーが弾むことと、前陣でのプレーが多いことから2番目に弾む『カルテットAFC』を選びました。全体のバランスが取れて丹羽選手も満足してくれています。以前に比べて威力が高くなったので、抜けるボールが増えてきましたよ。

 実は丹羽選手の契約には条件がありました。選手にとって用具は命です。丹羽選手も『ラケットとラバーが合わないと契約はできません』と言っていて、それが絶対条件でした。そこを乗り越えて丹羽選手が選び、使ってくれて契約できたことは弊社としても自信になります」

新たな用具で挑む丹羽にとって、全日本はVICTASプレーヤーとしての出発点になる。
丹羽のプレー、そして用具にも注目だ!

【用具のこだわり】男子S最年長・太嶋佑人

2016/01/04

用具のこだわり1回目は、一般男子シングルス最年長出場の選手を紹介します。
衰え知らずの35歳、熱血チョッパー・太嶋佑人選手(信号器材)です。

35歳で最年長なんですね・・・。年々全日本の低年齢化が進んでおります。
「た、太嶋さん。今年、全日本最年長ですよ!男子シングルス限定ですが・・・」とメールしたところ、
「恐れていたことが遂に起こってしまいましたね」とのご返信。
続いて「勝つことで目立てるように頑張ります!」と気合い十分です。

太嶋選手と言えば、かなりの用具マニアとしても有名です。
私も多くの選手を取材しましたが、カットマンにおいてここまで用具に研究熱心な人は見たことありません。会えば必ず用具が変わっている人・・・それが太嶋選手です。

そんな太嶋選手。全日本にはどんな用具で挑むのかが気になり、大会前に取材させていただきました。

ちなみに私の太嶋データでは
インナーシールド・ZLF(ST)
テナジー64(特厚)
ビュートリー(厚)が最新でしたが、

全日本には
インナーシールド・ZLF(ST)
ファスタークG-1(特厚)
モリストSP(中)
に変更! その理由を聞いた。

「テナジー64のあとに、05FXにして、今はファスタークG-1にしました。操作性、扱いやすさが良いところです。実はプラスチックボールになって、いろいろ悩んでいた時に、『卓球グッズ2015』の英田とやった「カットマンもスピンテンションを使えるのか!?」という試打企画で昔使っていたG-1を改めて使う機会がありました。
 以前は後陣からのドライブのかけかえしがやりづらくてG-1を諦めていましたが、プラスチックボールになってからはG-1のほうが良いんです! ボールをつかんで、台に収まる感じがして、以前よりも攻撃重視でもいけるようになりました。逆にテナジーだと飛んでいってしまい、操作性がなくなってしまったんです。

バックの表ソフトはビュートリーでしたが、ナックルが出にくくて、反発力も少なかったので、モリストSPに戻しました。モリストSPは切れたカット、ナックルカットの出し分けが非常にやりやすい。カットマンは相手に落とさせるだけではなく、オーバーさせるのも必要なので、出し分けのしやすさは重要です。

ラケットは変わらずにインナーシールドZLF。これが良い!というわけではないんですが、表ソフトの反発力に合わせているのが一番の理由です。インナーシールドZLFはすごく薄くて、ポコンと当てただけでは全然弾まない。でも表ソフトが弾むので、緩急をつけることができます。私の場合、弾みが良いカットラケットだと表の感覚が悪くなります」

プラスチックボールになり、以前に使っていた用具の印象が変わることもある。今、まさに悩んでいる人は、新しいものに手を出すだけではなく、以前の用具に立ち返っても良いかもしれない。
  • 円熟のカットオールラウンドプレーは必見

  • 5ミリ以下のブレードはよくしなる

  • プラになって再認識したG-1の良さ

  • ナックルカットは大きな武器

【用具のこだわり】全日本でもやります!

2015/12/25

9月26日〜10月3日の8日間、移動日含めて10日間のアジア選手権の取材。
しかもひとり・・・。

朝9時に会場に入り、遅い日は0時まで会場にいました。試合はずっとありますが、日本選手の試合までは、のんびりと写真を撮ったり取材をしたりしていました。

そこにひとりのパキスタン人が近づいてきた。
「16時半に試合があるから、オレの写真を撮ってくれ」と言う。
それは記念だけではなく、母国への報告資料のためで、自国のカメラマンがいない国の選手はカメラマン探しをしているのです。

「OK!でもその代わりキミのラケットを見せてよ」と言うと
「本当!? オレのラケットはすごいぜ!」と快諾。
取材させてもらうと、いろいろなこだわりを持って、とても面白い。
彼には彼なりのこだわりがあった。
アジア選手権では計7名の選手に話を聞き、自己満足のような『ミニ用具のこだわり』の記事をアップしていたが、これが意外にも好評だったようで、「全日本でもやりましょう」という運びになりました。


雑誌ではページの都合で多くの選手を紹介できません。そしてどうしてもベスト16以上のトップクラスの選手に偏ってしまいます。
しかし、全日本は出場しているだけでも各県のトップクラスなのです。
見過ごすことはもったいない。
広く、深く、多くの選手をできるだけ紹介します。
もちろん、「オレを取材してくれ!」という人も大歓迎です!

では全日本開幕まで、しばしお待ちください。