卓球王国 2024年4月22日 発売
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インタビュー

キッカケは誕生日プレゼントの『コルベル』? 草野華余子のどうしたって止められない卓球愛

●好きな選手は「言い出したらキリがない」

 仕事が忙しくてもTリーグ、WTTなどの国際大会はすべて欠かさずにチェック。自らプレーし、卓球を知っていくことで観戦の楽しさも増し、そこで得た気づきを自分のプレーにつなげていけるのも、卓球のおもしろさだと語る。応援している選手について聞くと、その口ぶりはさらに熱を増す。

 「最初に好きになったのは伊藤美誠選手。女子選手らしからぬ力強さと女子選手らしいスピード感を両立している選手って、世界でもなかなかいないと思うんです。それで女子選手の卓球にハマったんですけど、自分でプレーするようになって少し変わりましたね。私は女性の中ではがっしりしているというか、筋肉質で、身長もそこそこある。それで男子のプレーを参考にしようと思って、Tリーグの試合を観にいくようになりました。

 今、どこまでも追いかけているのは張本智和選手。どの選手も張本選手のことを研究して、昔みたいにセンスと勢いだけじゃ勝てなくなった中で、すごく努力されていると感じます。琉球アスティーダの有延大夢選手のプレーも好きですね。フォアが強い選手も好きですけど、バックの強打を決め球にしている選手が好きなんです。私もバックのほうが得意なので、同じタイプの選手は応援したくなりますね。

 安藤みなみ選手もアジア選手権で大活躍されたのを見て、折れないメンタルというか、劣勢でも表情を変えない試合運びがカッコいいなと思いました。丹羽孝希選手の華やかなプレーにも惹かれますし、『どんなプレーをするんだろう』ってワクワクするし……言い出したらキリがないですね(笑)」

 

●卓球は「人がプレーにすごく出るスポーツ」

また、トップ選手たちのアスリートとしての姿や生き様に刺激を受けることも多い。その視線は日本選手のみならず海外選手にも向けられ、「劉詩ウェン選手の山あり谷ありの卓球人生は応援したくなる」「馬龍選手も故障をたくさん経験しながら、それを乗り越えて最強の座を守り続けている、1球に対する執念がスゴいと尊敬してます」と、見事な卓球ファンぶりだ。

 「プレースタイルって、選手それぞれの生き方、考え方とシンクロしてるなって思うんですよ。私は綺麗なボールを強く打ち込んで勝ちたい、『まっすぐ』なタイプなので、それも性格とシンクロしてるかなと。打ちたい気持ちが強すぎて、『前に出過ぎ』ってよく言われるんですけど(笑)。でも、人がプレーにすごく出るスポーツだと思います」

 ここ最近は多忙ゆえ、ラケットを握る機会が少なくなっているそうだが、全日本選手権は会場に足を運んで観戦した。昨年の春に本格的に卓球にのめり込んでから、初の全日本。長い歴史と伝統を誇る、国内最高峰のビッグゲームに流れる空気感が身に染みた。

 「大会期間中は現地でも、配信でも観られるだけ試合を観ていました。東京体育館は『聖地』って言われていますが、それを直に感じることができて感動しました。過去の全日本も映像で観ていたんですけど、こんなものを生で観ることができるんだとワクワクさせてもらいました。Tリーグも何度か現地で観戦させてもらいましたが、全日本はそれとも違った空気感というか、緊張感がありましたね。『この選手がベスト16で終わり!?』っていう結果も多くて、それだけの特別なプレッシャーがあるんだろうなと感じました」

 今回の全日本で印象に残ったのは、3位に入賞した吉村真晴の戦いぶり。骨折から復帰し、勝利にこだわる鬼気迫るプレーに胸を打たれた。また、フルゲームまでもつれた女子準決勝の早田ひな対加藤美優も「準決勝でこんな試合を見せられたら、決勝を観るパワーがなくなるんじゃないか」と感じるほどに見入っていたという。

 

●卓球を語るプレッシャー。それでも感じるワクワク、ドキドキ

 テレビやラジオ、自身のSNSで熱烈な卓球愛を語るうち、近頃では卓球関係の仕事も舞い込むようになってきた。そのおかげもあり、卓球を始めた当初は「(卓球は)音楽に支障がない程度に」と言っていた所属事務所も、近頃は「やれるだけ卓球やってよし」という方針に変わったという。

  卓球を始めて1年も経たないうちに身の回りで起こる変化に驚きながらも、「人生って、没頭して本気でやれば半年で変わるんですね」と幸せそうに笑う。しかし、各媒体で卓球を語ることにはプレッシャーも感じる。

 「ファン歴1年にも満たない私が卓球を語るのは『僭越ながら』っていう気持ちです。正直、卓球に関するインタビューは音楽に関するインタビューの100倍くらい緊張します。『失礼なこと言ってないだろうか』『間違ったことをしゃべってしまうんじゃないか』とか。

 いろいろな考え方もあるだろうし、30年、40年と卓球を愛して、続けてこられた方々もいる中で、私の話したことについて『そうじゃないよ』って思われることもあるはずなんです。だからこそ、もっと見聞を広げないといけないなと感じます」

 そう語るものの、音楽というバックグラウンドがあり、そしてアーティストとしての目線からとらえる「卓球」は、こちらからすると卓球界の常識にとらわれない新鮮さを感じる。だからこそ、卓球の魅力を発見し、伝えていくフロントマンとしての活躍に期待は尽きない。

 「音楽業界に入りたての頃と同じくらい、卓球を通じてワクワク、ドキドキすることがあって、いち卓球愛好家がこんな思いをさせてもらって大丈夫なのかな、本当にありがたいなって日々思っています」

 多忙な生活の中でも音楽に、卓球に、没頭して向き合える幸せ。深まるばかりの卓球への愛は、もう止まらない。

 

【PROFILE】

草野華余子(くさの・かよこ)

“ただのオタクですが、勇気を出してロックやってます”

大阪府出身・東京都在住、シンガーソングライターそして作詞作曲家。3歳の頃からピアノと声楽を始め、5歳で作曲を始める。18歳の関西大学進学を機にバンド活動、2007年よりソロ活動を開始。自身のアーティスト活動の他、数多くのアーティストやアニメ作品への楽曲を提供し、2019年リリースのLiSA「紅蓮華」の作曲を手掛け、注目を集める。明るいキャラクター、トーク力で近頃はテレビ、ラジオでも活躍中。今年の春から卓球に熱中し始め、現在は2カ所の卓球スクールに通うバリバリのプレーヤー。

 

【最後に…】

※ありがたいことに、毎月弊誌を購読してくださっている草野さん。最後に手前味噌で恐縮なのだが、弊誌についても話をうかかがった。その言葉に恥じぬよう、曲がりがちな背筋を伸ばして編集部一同がんばります!

 「先月号(2022年3月号)は最初の特集(水谷隼大特集)で泣きました。水谷選手のインタビューだったり、名言集だったり、今までそれだけの熱量を持って取材してきたからこそ、これだけの特集ができるんだと思います。それで『ヤバいな、卓球王国』って感じました(笑)

 今、紙媒体の卓球メディアって、卓球王国だけじゃないですか。私自身、本もすごく好きで、誌面で見ることができるのが良い。音源もCDで買いたいほうで、形として残っていくことにも魅力を感じます」(草野さん)

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