カーボンラケットとしては異例の
球持ちの良さ。
時代を先取りした超バランス素材

馬林カーボン

 ヤサカが馬琳との契約にあたって、本人使用モデルとして開発した『馬林カーボン』。もちろん、馬琳本人も開発に関わっている。気むずかしい性格で有名な馬琳。当然ながら用具選びにもこだわり、妥協を見せないのだが、そんな彼が多くの試作品の中から選んだのが、この合板なのである。

 馬琳のプレーというと、3球目の強烈なフォアドライブの印象が強い。そのため、ラケットもパワフルなものを使用しているような錯覚に陥るが……

馬琳が最も重視したのは
コントロール」だった。

 以前に馬琳が愛用していた5枚合板(現在は廃番の『ガシアンエキストラ』)も、スウェーデン製5枚合板らしい球持ちとコントロールが特徴だが、その特徴を損なわない範囲で、カーボンにより若干のパワーアップを図ったのが、この『馬林カーボン』なのである。

側面図

 『馬林カーボン』の最大のミソである合板構成を見てみよう。
サイド写真を見てもわかるとおり、カーボンが表面から3枚目(上板と添芯のさらに内側)に配置。特殊素材(木材以外の繊維素材)を、上板のすぐ下ではなく、内側に配置する、いわゆる「インナー」タイプの設計だ。
 またカーボン自体もかなり薄い。そのためカーボンの硬さ・弾みの良さを全面的に押し出さず、木材モデルに近い球持ちが生かされている。板厚も5.7mmとスリムで、打球時のしなりを持たせている。

 このような合板構成を、スウェーデンのすぐれた合板技術によって製品化した『馬林カーボン』は、結果的にカーボンラケットとしては最も球持ちの良い部類のブレードに仕上がり、世界No.1の台上技術を誇った馬琳を満足させたのだ。

 「板厚がスリムなインナー素材タイプ」というと、近年では人気の合板構成として、各社からリリースされている。しかし、『馬林カーボン』はそのタイプの人気に火が付く以前の2005年にリリースされた。先見性のある設計だったと言って良いだろう。

馬琳(マ・リン)

 シェークのFL・ST、そして中国式ペンと、3種類のグリップが発売された『馬林カーボン』だが、やはりペンの馬琳が実際に使用したということで、中国式は両面に裏ソフトを貼るプレーに適した設計になっている。

 板厚が5.7mmとスリムなので、両面にラバーを貼っても握りやすい。また平均重量は、カーボンラケットとしては軽めの85gであり、重量に悩む両面ペンの選手にとっては扱いやすい軽さだ。

 ブレードサイズはスウェーデン製の中国式ペンとしてはオーソドックスな長さ163mm×幅150mm。しっかりと面が広いためスイートスポットが広く、また長さもあるのでフルスイングした時には威力を発揮する。馬琳のようなパワーがない選手にとっては、あまり面が大きいと操作性の悪さにつながる可能性があるが、ラケット本体が重くないので、中級者でも扱える範囲だ。

「ペン両面向きの性能」

これも『馬林カーボン』の大きな特長と言えるだろう。


 以上見てきた設計面・性能面からも、このラケットの人気の理由がわかると思うが、第3回ではベストセラーとなった要因を、改めてまとめてみることにする。

第3 回に続く

文=高部大幹