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 1冊は献本され、あとの2冊は購入して親しい人に贈呈した。
 『ピンポン外交の陰にいたスパイ』(柏書房)という400ページに及ぶノンフィクションだ。実に面白い。スパイとタイトルに入っていても、サスペンス物のフィクションではない。

 アメリカ在住のニコラス・グリフィンというジャーナリストが2008年北京五輪で卓球の試合観戦が執筆のきっかけの一つになった。そこから5年かけてアメリカ、中国、イギリスの取材の旅が始まる。
 本書の前半は、国際卓球連盟の創始者として有名なアイボア・モンタギューが共産主義者であり、ソ連のスパイだったという衝撃の事実を描き、中盤では中国の文化大革命に翻弄される選手たち、後半は1971年の世界選手権名古屋大会のピンポン外交の裏側とその後の顛末を描いている大作だ。
 50年代の日本選手も登場するが、興味深いのは卓球と政治との絡み合いであり、それが今でも語り継がれる「ピンポン外交」に発展していく流れである。
 思えば、1961年には当時建国間もない、国連にも加盟していない中華人民共和国(中国)の北京で世界選手権が開催されるに至った経緯は誰も知らなかったが、その陰には当時のモンタギュー会長の力が大きい。なぜならなば・・・・という点だろう。
 
 卓球を知らない人が読んでも面白いが、世界の卓球の歴史、中国卓球史に興味を持っている人ならばグイグイ引き込まれる面白さだ。 (続く)(今野)

  • 『ピンポン外交の陰にいたスパイ』(柏書房)2600円+税