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中国リポート

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 12月16日に開幕が予定され、短期集中のセントラル方式で開催される予定になっていた中国卓球クラブスーパーリーグ。開幕の予定日になっても開催地すら発表されていなかったが、12月21〜29日に広東省広州市長隆で行われることが明らかになった。試合方式は東京五輪と同じ、1番ダブルス・2〜5番シングルスの団体戦(すべて5ゲームズマッチ)。21〜26日に総当たりのリーグ戦が行われ、4位以上のチームが27〜29日にプレーオフを行い、優勝を争う。新型コロナウイルス感染症の対策として、無観客の「バブル方式」で開催される。

 出場するのは男女各9チーム。特筆すべき点は、WTTマカオに出場していた海外の協会に所属する6選手、男子の林昀儒(チャイニーズタイペイ)、女子の田志希(韓国)、杜凱琹(香港)、鄭怡静(チャイニーズタイペイ)、A.ディアス(プエルトリコ)、リリー・チャン(アメリカ)がスーパーリーグに出場すること。林昀儒は山東魏橋の一員として出場するが、女子の5選手は「ITTFワールド・プロフェッショナルズ(ITTF世界職業隊)」を結成し、スーパーリーグを戦う。

 6選手は11月25〜29日に行われたWTTマカオが終了した後、四川省成都市の訓練基地で中国チームと集合訓練を行っており、隔離期間を取らずにスーパーリーグに出場できる。ITTFのスティーブ・デイントンCEOによれば、ITTFワールド・プロフェッショナルズの結成は当初は計画されておらず、選手たちが中国に到着した後に中国卓球協会との協議によって生まれたアイデアだという。

 中国卓球協会の劉国梁会長は、「ITTFワールド・プロフェッショナルの結成は、中国スーパーリーグをよりオープンなものにしていくためのアプローチであり、リーグを新しいステージへ導く可能性がある」とコメント。一時は中国系選手以外の登録を認めない方針を打ち出していた中国スーパーリーグだが、今シーズンは日本選手にも出場できるかどうか、クラブ側から打診があったと聞く。ITTFワールド・プロフェッショナルの結成も含め、「超」がつくほど特例の状況下で開催されるスーパーリーグだが、今後はどのような方向に向かっていくのか。
  • A.ディアスのオールラウンドプレーは、スーパーリーグで通用するか

  • ダブルス巧者の田志希を軸にペアを組むことになりそうだ

 先月の11月26日、中国卓球協会は突然ひとつの通知を発した。「中国卓球協会による中国卓球クラブスーパーリーグの主催協会の公募に関する公告」。12月16〜27日、中国卓球クラブスーパーリーグを集中開催するので、主催を希望する協会は12月4日までに書類をメールで提出せよ、というのがその内容だ。開催期間の12日間で総当たりのリーグ戦(第1ステージ)を行い、上位4チームによるトーナメント戦(第2ステージ)で優勝を争う。

 2019年2月に2018-2019シーズンが閉幕した後、2019-2020シーズンは「東京オリンピックに備えるため」という理由で開催中止。そして2020-2021シーズンも新たな情報はほとんどなかったスーパーリーグ。開催予定日の20日前から主催協会を募るというのも、日本では考えられない話だが……。開催地として4つの都市が立候補するも、開幕前日の今日15日になっても開催地に関する発表や報道は皆無。「開幕は月末に延期される」という報道もあり、その全容は中国のメディアでさえ把握できていない。ちなみに2018-2019シーズンの各クラブの顔ぶれは、下記のとおりだ。

〈男子〉 ※カッコ内の数字は2018-2019シーズンの順位
(1)天津卓球(2)上海中星(3)山東魯能、八一南昌
(5)深圳宝安明金海(6)山東魏橋・向尚運動(7)覇州海潤
(8)安徽朗坤(9)江蘇中超電纜・利永(10)四川長虹

〈女子〉
(1)山東魯能(2)深圳大学(3)八一南昌、山東斉魯交通
(5)鴻安牛業(6)山西大土河・華東理工(7)北京首鋼
(8)黒龍江中州電纜永剛(9)四川穹窿先鋒(10)武漢安心百分百

 これらのクラブのうち、母体の人民解放軍が主要なスポーツの強化を停止した八一南昌は、スーパーリーグを離脱することが決定的。男子チームのエースである樊振東は、四川省チーム(今季のスポンサーは不明)へ移籍した。また、女子の山東斉魯交通でプレーしていた朱雨玲も、本来の所属である四川省チームに移籍する。

 開幕してみなければ、どのようなクラブが参戦するのかさえわからないスーパーリーグ。今シーズンの集中開催も、「スポンサーの手前、2シーズン連続で中止するわけにもいかない」というのが本音だろう。一方で、選手にとってスーパーリーグは大金を稼ぐことができる主戦場。年俸に加え、少しでも試合をして出場給や勝利給を稼ぎたいはずだ。

 中国卓球協会の劉国梁会長がWTT(ワールド・テーブル・テニス)の評議会議長に就任したことで、国際大会とどのように歩調を合わせていくかも気になるところ。いずれにせよ、蔡振華(中国卓球協会・前会長)が打ち出した「スーパーリーグをNBA(米プロバスケットボール)のようなリーグに」という熱いスローガンは、遠い過去のものになりつつある。

※写真提供:レミー・グロス(写真は20年ITTFファイナル)
  • 八一のエース樊振東は四川省チームに移籍。スーパーリーグ創設時から参戦していた八一の消滅は寂しい

 12月1〜9日、18歳以下の選手による全国大会『2020年全国青年卓球選手権』が広西壮族自治区・百色市で開催された。男女団体、男女シングルス、混合ダブルスの5種目で優勝が争われた。初日には体力テストも行われたこの大会、各種目の上位チーム/選手は下記のとおり。

◎2020年全国青年卓球選手権・結果
〈男子団体〉

★優勝:上海市 準優勝:湖北省
3位:北京燕京啤酒(北京市)、山東魯能
〈女子団体〉
★優勝:広東省 準優勝:上海市
3位:四川省、浙江省
〈男子シングルス〉
★優勝:林詩棟(海南省) 準優勝:孫正(上海市)
3位:向鵬(浙江省)、王廷宇(山西省)
ベスト8:謝聡凡(湖南省)、熊夢陽(湖北省)、王晨策(甘粛省)、陳亜軒(江蘇ZGL)
〈女子シングルス〉
★優勝:蒯曼(江蘇ZGL) 準優勝:韓菲児(山西省)
3位:梁家怡(山西省)、黄穎琦(広東省)
ベスト8:李雅可(北京燕京啤酒)、范妹涵(湖北省)、徐奕(山東魯能)、劉佳琪(江蘇ZGL)
〈混合ダブルス〉
★優勝:向鵬/蒯曼 準優勝:梁国棟/王添芸
3位:熊夢陽/李雨琪、韓欽沅/隋笑然

 男子団体を制したのは、ジュニア代表として国際大会にも出場している左シェークドライブ型の宋卓衡、男子シングルスで2位になった右シェークドライブ型の孫正というツインエースを擁する上海市。ともに堂々たる体躯を誇る大型選手だ。宋卓衡は江蘇省の出身だが、陳チィや單明杰を指導し、許シンの才能を見出した湯志賢コーチにスカウトされ、上海・中国卓球学院の一員となった。準優勝の湖北省は、カデットの年代から中国代表としてワールドジュニアサーキットにも出場する熊夢陽、陶育暢がチームを引っ張った。

 女子団体優勝の広東省は、意外にもこれが初優勝。女子団体決勝では、トップで黄穎琦が陳イ(火+習)とのエース対決を制して2点を奪い、優勝に大きく貢献した。黄穎琦は2017年に国家2軍チームに入り、ワールドツアーなどの国際大会にも派遣されてきた。18年ドイツオープンでは16歳にして加藤美優を4−3で破った実績を持つ。

 男子シングルス優勝の林詩棟は、「東洋のハワイ」と讃えられる海南省から現れた期待の新人。今年7月、国家1・2軍チームが海南省陵水市で集合訓練を行った際、中国卓球協会の劉国梁会長がその才能を評価し、特別に集合訓練に参加させたことで話題になった。今大会では準決勝で、19年世界ジュニアチャンピオンで優勝候補筆頭の向鵬を4−2で破り、決勝では孫正に4−0で完勝。晴れて国家2軍チームのメンバーとなり、「劉国梁の眼にくるいはなかった」と報道されている。丸っこい体型で、サービスとバックハンドがうまい両ハンド攻撃型だ。

 女子シングルス優勝は、19年世界ジュニアベスト8の左シェークドライブ型・蒯曼。まだ16歳だが、19年世界ジュニアでは女子団体決勝2番で出澤杏佳を破り、シングルスでも2回戦で木原美悠を4−2で撃破。ラリーでのリズム感が良く、常に冷静にプレーを進める。国家チームの選手同士でペアを組んだ混合ダブルスでも、向鵬とのペアで優勝して2冠を達成。名門・江蘇省女子チームの期待のホープだ。
  • 女子シングルスで優勝した蒯曼(写真は19年世界ジュニア)

 少し前のニュースで恐縮ですが、11月1〜8日、遼寧省・鞍山オリンピックセンターで『2020全国少年卓球選手権』が開催された。出場資格があるのは、2005年1月1日〜2009年12月31日の間に生まれた選手たちで、いわば「U-15(15歳以下)」の全中国選手権。行われたのは男女団体、男女シングルス、混合ダブルスの5種目だ。中国全土から監督・コーチ・選手合わせて455名が参加し、7日以内にPCR検査を受けて陰性であることが大会参加の条件とされた。

 今大会のユニークな点は、男女シングルスのベスト32が決定した時点で「30m走」「3000m走」「縄跳び(45秒間での二重跳びの回数)」「立ち幅跳び」という4種目の体力測定を行い、体力測定の成績とシングルスの成績を合わせて総合成績を決定すること。男女シングルスのチャンピオンは国家2軍チームのメンバーとなり、ベスト8の選手には全国青年選手権(U-18)の出場権が与えられるが、次のステージに進む前に身体能力の測定によって、選手たちの将来性をひとつの「振るい」にかけた形だ。

 8日間の日程を終え、男子団体は北京市第六十六中の選手で構成された中国中学生体育協会チームが優勝。女子は北京燕京啤酒チームが優勝した。北京燕京啤酒は北京っ子が愛する地元のビール会社だが、北京市チームのスポンサーとはいえ、15歳以下の大会のチーム名としては少々微妙なところ。

 男子シングルスを制したのは、江蘇省チーム時代に陳チィ(王+己/04年アテネ五輪男子複金メダリスト)の指導を受けた右シェークドライブ型・陳垣宇(チェン・ユエンユ/江蘇ZGL)。徐奕(シュ・イー/山東魯能)と組んだ混合ダブルスでも優勝し、2冠を達成した。

 女子シングルス優勝の覃予萱(タン・ユゥシュアン/北京燕京啤酒)も14歳の右シェークドライブ型で、広西チワン族自治区の南寧市出身だが、現在は北京市チームに所属している。陳垣宇は2019年12月にすでに国家2軍チーム入りを果たしており、覃予萱は大会後に国家2軍チームへの招集が発表されている。センスと身体能力を兼ね備えたジュニアの有望株が、これからどのような活躍を見せるか。少々覚えにくいが、名前だけは覚えておいても良さそうだ。
  • 大会が開催された鞍山オリンピックセンター

●河北省出身の主な男子選手
石家荘市 劉イ(火×4)・王臻(ユージーン・ワン/カナダ)
唐山市 郗恩庭・李景光・梁靖崑
保定市 王志良・王浩・崔慶磊・范勝鵬
秦皇島市 程靖チィ
辛集市 宋海偉(吉田海偉/日本)・高寧(ガオ・ニン/シンガポール)

 大変長らくのご無沙汰をしてしまいました、中国卓球人国記。今回は河北省の男子編。首都・北京市と天津市、ふたつの直轄市を取り囲むように位置している。中国の卓球の歴史を語るうえでは、決して外せない省のひとつだ。

 1960年代から70年代にかけて、河北省出身の男子選手は北京市や上海市の選手とともに、中国チームの主力を担った。最初に世界に飛び出したのは右シェークカット型の王志良。1963年の世界選手権プラハ大会で、右ペンカット型の張燮林とのカットペアで優勝。男子ダブルスで中国初のチャンピオンとなった名選手だ。今年の9月15日に80歳で逝去している。

 続いて、中国が3大会ぶりに世界選手権に出場した1971年名古屋大会では、郗恩庭と李景光が代表入りを果たす。郗恩庭はこの名古屋大会で男子シングルス3位に入った後、73年サラエボ大会の前に徐寅生のアドバイスによって裏ソフトに転向。強烈な変化サービスとプッシュ、3球目フォアドライブを武器に世界チャンピオンとなった。サラエボ大会・男子シングルス決勝のヨハンソン(スウェーデン)戦では、最終ゲームの15ー15からネットイン1本とエッジ3本をねじ込んだという逸話も残る。昨年(2019年)の10月27日、胸部大動脈瘤の破裂により、惜しまれながら73歳で逝去した。

 一方、李景光は団体戦で活躍。特に日本チームの前に鬼神のごとく立ちはだかった、堂々たる体躯の左ペン表ソフト攻守型。71年名古屋大会の男子団体決勝では、河野満、長谷川信彦、伊藤繁雄の3人を連破し、チームは5ー2で勝利。3大会ぶりの男子団体優勝の立役者となった。73年サラエボ大会の男子団体決勝リーグでも日本と対戦し、4ー4ラストで高島規郎と対戦。最終ゲーム20ー14から20ー19まで挽回されながらも、高島が倒れ込みながら打った勝負を懸けたスマッシュをブロックで返球し、観客を熱狂させた。
 
 文化大革命での2大会の欠場の後、世代交代を迎えた中国男子の「守護神」として活躍した李景光。しかし、現役引退後は20年以上も統合失調症に苦しみ、生涯独身だった彼の面倒を見たのは姉ひとりだけ。2000年6月に北京市内で投身自殺によって亡くなるという、悲劇的な最期を迎えている。

 王志良・郗恩庭・李景光らによる「第一次黄金期」を迎えた後、低迷期に入った河北省男子。次に世界選手権の代表メンバーに入ったのはカットの王浩(ワン・ハオ)だ。1991年4月の世界選手権千葉大会で史上最低の男子団体7位に沈んだ中国が、新たな指揮官・蔡振華を迎えて臨んだ91年11月のチームワールドカップ。蔡振華が呼び寄せた秘密兵器は、故障の連続で国家チームを離れ、ドイツ・ブンデスリーガでプレーしていた王浩だった。そして決勝のスウェーデン戦では、馬文革・王涛・王浩の3人が出場して3ー0で完勝。中国復活への布石となった。2年後の93年世界選手権イエテボリ大会では、決勝のスウェーデン戦で2点を献上してリベンジを喫してしまうのだが……。ちなみに王皓と発音が同じなので、年齢が上にも関わらず中国では「王皓じゃないほうの王浩」と呼ばれたりもする。

 そして今、河北省出身の選手として初のシングルスの世界チャンピオンを狙うのは、世界ランキング8位の梁靖崑だ。19年世界選手権個人戦では、準々決勝で丹羽孝希との熱戦を4ー3で制し、初のメダル獲得。逆三角形の体躯から放つ両ハンドドライブはパワフルで、ジュニア時代のような精神面の不安定さもなくなってきた。馬龍・許シンの引退後、樊振東や林高遠、王楚欽とともに国家チームの主力を担うことになる。

 最後に、河北省出身の男子選手は、選手やコーチとして海を渡った人物も少なくない。2004・05年度全日本選手権2連覇の吉田海偉(中国名:宋海偉)は辛集市の出身。ペン表で卓球を始めたが、89年世界選手権・男子団体決勝で中国がスウェーデンに完敗したのを契機にペン裏ソフトドライブ型に変身。金擇洙(韓国)に憧れ、フットワークを生かしたドライブ連打のスタイルを築いた。そして卓球王国本誌で『脱・自滅のフットワーク』を監修している、「体の使い方のスペシャリスト」中澤鋭さん(中国名:王鋭)も河北省出身。省チーム時代の練習はまだフォアハンド重視、フットワーク重視。「400mのトラックを午前10キロ、午後10キロ走ることもあった。疲れ果てて、晩ごはんを食べる前に寝てしまったこともあります」というほど、ハードに鍛えられたそうだ。

●河北省男子明星隊 MEN’S HEBEI ALL STARS
先鋒 王浩
次鋒 王志良
中堅 梁靖崑
副将 李景光 
大将 郗恩庭

・先鋒と次鋒に鉄壁のカットを揃え、中堅はシェークドライブ型の梁靖崑。副将と大将には、左ペン表の李景光と右ペン裏の郗恩庭という「ツインタワー」を揃えた大型チーム。戦型もバリエーションに富んでおり、他の省と比べても決して見劣りしない戦力を備えている。オールスターズには入らなかったが、個人的にはセンス抜群のぽっちゃりシェークドライブ、カナダの王臻も好きな選手だ。
  • 張燮林とのカットペアで優勝した王志良

  • 73年世界チャンピオンの郗恩庭。写真は2018年4月の日中交流大会で来日した際のもの

  • 長身のカット型・王浩はドイツのブンデスリーガでプレー

  • 豪腕・梁靖崑は郗恩庭に続き、河北省が生んだふたり目の世界王者になれるか

  • 39歳になった今も現役バリバリでプレーする吉田海偉

 10月20日、中国共産党中央軍事委員会・訓練管理部に属する軍事体育訓練センターは、「調整改革動員部署大会」を北京市で挙行。人民解放軍に属するプロスポーツチーム「八一体育工作大隊」を全面的に改革し、軍事色の強い幾つかのスポーツを除く、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、体操、そして卓球などの競技スポーツチームを解散させることを宣言した。

 人民解放軍の建軍記念日である「八一(8月1日)」を冠した「八一体育工作大隊」は1951年9月に創設され、数多くの競技スポーツで世界チャンピオンを輩出。「金メダリストの揺籃」とも言われてきた。

 現在、卓球の人民解放軍チーム(正式名称は「解放軍八一体育工作大隊・ピンパン球中隊」)には、男子の樊振東・周雨・周愷・徐晨皓・薛飛、女子の陳可・劉㬢らが所属。王皓(09年世界チャンピオン)や王涛(96年五輪銀メダリスト)らが指導陣に名を連ね、中国卓球協会の劉国梁会長も解放軍チームの出身だ。さらに歴史をたどれば、男子の李振恃・范長茂・施之皓、女子の童玲・戴麗麗・沈剣萍・孫晋など、数多くの名選手を輩出している。

 CBA(中国プロバスケットボールリーグ男子)の創設から6シーズン連続優勝を果たした名門・八一ロケッツをはじめ、解放軍チームは中国国内のプロリーグから相次いで脱退。卓球のスーパーリーグでも、2018-2019シーズン男子3位・女子4位の八一南昌(名称は参戦当時)がリーグを脱退することは決定的だ。そもそもスーパーリーグが、2シーズン続けて休止状態に陥っているのだが……。

 中国のスポーツ界にとって、ひとつの転換点になるであろう解放軍チームの改革。10月上旬に行われた全中国選手権で、解放軍所属の選手たちがすべて個人登録で出場していたのも、今回の一件が背景にあったようだ。樊振東をはじめとする所属選手たちの、今後の所属先はどうなるのか。続報があれば、またお伝えします。
  • 09年全中国運動会・男子団体優勝の解放軍チーム。中央に王皓、左端に山東省から一時移籍の張継科がいる

  • 14年ユース五輪表彰、男子シングルス優勝の樊振東の初々しい敬礼

 10月1〜10日、山東省威海市の南海オリンピックセンターで行われた『2020 宝能杯 全中国選手権』。男女団体、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスの7種目が行われた。(主な記録はページ下部を参照)

 まず男女団体は、広東省と河北省が優勝。広東省は決勝の北京戦、1・2番で馬龍・王楚欽に敗れて0ー2と追い詰められたが、3番張超の勝利で流れを引き戻して奇跡的な逆転勝ち。すでに35歳の張超だが、熱い闘志と団体戦で見せる強さは未だ健在。まさに団体戦のムードメーカーだ。男子団体での広東省チームの優勝は2010年大会以来で、決勝の解放軍戦に出場したのは馬琳・張超・林高遠というメンバーだった。

 女子団体では河北省が、白楊・牛剣鋒らを擁した2000年大会以来、実に20年ぶりの優勝。小さな大エース・孫穎莎が確実に2点を取り、右シェークバック表ソフト攻守型の何卓佳がポイントゲッターとなった。何卓佳は決勝2番で、安定したバックドライブを軸に異質型にはめっぽう強い陳夢から金星。何卓佳の徹底した粘りとバック表ソフトの変化、要所でのネットインに陳夢が根負けしたような試合展開だった。かなり目方が増えた印象のある(失礼)何卓佳だが、持ち味の粘り強さは2014年に上海で行われた世界ジュニアで、初めて見た時から変わらない。「日本人好みなプレーヤーだな」と感じたのを覚えている。

 団体に続いて行われたダブルス3種目では、まず混合ダブルスで王楚欽/王曼昱の「王・王」ペアが優勝。決勝では優勝候補筆頭の許シン/孫穎莎を4ー1で下した。男子ダブルスは馬龍/許シン、女子ダブルスは陳夢/王曼昱が実力通りの優勝を飾っている。男子ダブルスでは、前回の男子シングルスチャンピオン、侯英超が14歳年下の馬特とカットペアを組み、3位に入賞している。

 そして男女シングルス。先に決勝が行われた女子シングルスは、決勝で陳夢が孫穎莎にストレート勝ちして初優勝。団体決勝では何卓佳に屈した陳夢だが、女子シングルス決勝でのバックドライブの威力と安定性は抜群だった。バック対バックで確実に優位に立ち、巧みな緩急とコース変更で孫穎莎をねじ伏せた。
 3ゲーム目、孫穎莎が9ー8とリードした場面で、攻撃型同士の対戦では異例の促進ルールに入るひと幕もあったが、孫穎莎が10ー8でゲームポイントを握ったこのゲームを陳夢が逆転すると、4ゲーム目は出足から大きくリード。丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲が欠場する中、先輩の意地で孫穎莎の快進撃を止めてみせた。

 大会最終日に行われた男子シングルスは、決勝で馬龍と樊振東が激突。ゲームオールの大激戦の末、樊振東が勝利して4年ぶり3回目の優勝を飾った。両者一歩も引かない、両ハンドの激しい打撃戦の中、樊振東は最終ゲーム7ー4から7ー7と追いつかれたところで、馬龍のフォアを2本続けてバックハンドで抜く。サイドを切る厳しいフォア攻めを見せておいて、9ー7からきっちりバック対バックのラリーを制した。
 「リードされた時も決してあきらめなかった。自分が技術だけでなく、戦術面でも常にクリアな状態で戦うことができてうれしい」(樊振東)。

★「2020 宝能杯 全中国選手権」 主な上位の結果

〈男子団体〉●準々決勝

北京燕京啤酒 3ー1 遼寧省   山東省 3ー0 天津市
広東省 3ー1 黒龍江省     湖北省 3ー0 湖南省
●準決勝
〈北京燕京啤酒 3ー0 山東省〉

○馬龍 7、7、8 于子洋
○王楚欽 4、8、ー9、ー7、8 方博
○劉夜泊 ー8、9、ー5、4、10 劉丁碩
〈広東省 3ー1 湖北省〉
○林高遠 11、7、6 薛飛
○周啓豪 5、8、ー9、7 馬特
 張超 ー7、ー7、ー8 習勝○
○林高遠 5、9、4 馬特
●決勝
〈広東省 3ー2 北京燕京啤酒〉

 周啓豪 7、ー8、ー6、ー3 馬龍○
 林高遠 ー10、13、ー7、ー12 王楚欽○
○張超 8、8、ー8、7 劉夜泊
○林高遠 ー6、6、9、ー12、8 馬龍
○周啓豪 7、10、ー9、9 王楚欽

〈女子団体〉●準々決勝
山東省 3ー1 湖北省    江蘇ZGL 3ー2 天津市
四川省 3ー2 黒龍江省   河北省 3ー1 北京燕京啤酒
●準決勝
〈山東省 3ー1 江蘇ZGL〉

○顧玉ティン ー8、6、ー3、8、5 劉斐
○陳夢 9、4、5 石洵瑶
 王暁彤 ー7、ー7、ー5 銭天一○
○陳夢 8、6、7 劉斐
〈河北省 3ー2 四川省〉
 何卓佳 ー8、ー5、ー9 朱雨玲○
○孫穎莎 11、6、11 楊惠菁
 臧小桐 ー3、ー10、ー5 范思琦○
○孫穎莎 7、ー12、1、8 朱雨玲
○何卓佳 6、7、10 楊惠菁
●決勝
〈河北省 3ー0 山東省〉

○孫穎莎 3、ー10、5、6 顧玉ティン
○何卓佳 6、4、ー10、15 陳夢
○臧小桐 11、4、5 王暁彤

〈男子シングルス〉●3回戦
梁靖崑(河北省) 6、7、ー4、8、5 方博(山東省)
林高遠(広東省) 1、8、14、6 侯英超(陝西省) 
張煜東(江蘇ZGL) 4、ー5、ー7、8、9、11 徐晨皓(個人)
●準々決勝
樊振東(個人) 8、9、7、4 趙子豪(上海地産集団)
梁靖崑 ー12、7、10、8、ー6、9 林高遠
馬龍(北京燕京啤酒) 3、5、10、9 張煜東
王楚欽(北京燕京啤酒) 6、8、4、ー8、6 許シン(上海地産集団)
●準決勝
樊振東 ー5、11、8、12、4 梁靖崑
馬龍 6、ー7、7、10、ー6、6 王楚欽
●決勝 樊振東 5、ー12、ー3、5、ー6、9、7 馬龍

〈女子シングルス〉●3回戦
顧玉ティン(山東省) 10、4、7、9 張瑞(湖北省)
陳幸同(遼寧省) ー10、ー8、6、10、10、8 陳可(個人)
●準々決勝
陳夢(山東省) 10、ー9、9、6、5 銭天一(江蘇ZGL)
王曼昱(黒龍江省) 5、9、0、4 何卓佳(河北省)
顧玉ティン ー7、ー6、ー11、12、6、9、9 王芸迪(遼寧省)
孫穎莎(河北省) 9、3、7、ー10、ー6、9 陳幸同
●準決勝
陳夢 8、6、3、10 王曼昱
孫穎莎 6、2、6、3 顧玉ティン
●決勝 陳夢 2、7、10、9 孫穎莎

〈男子ダブルス〉●準決勝
馬龍/許シン(北京燕京啤酒/上海地産集団) ー8、5、8、6、7 馬特/侯英超(湖北省/陝西省)
林高遠/梁靖崑(広東省/個人) ー8、6、6、ー10、8、10 樊振東/王楚欽(個人/北京燕京啤酒)
●決勝 馬龍/許シン ー8、13、12、3、3 林高遠/梁靖崑

〈女子ダブルス〉●準決勝
陳夢/王曼昱(山東省/黒龍江省) 9、9、3、ー8、9 陳熠/蒯曼(上海地産集団/江蘇ZGL)
孫穎莎/王芸迪(河北省/遼寧省) 4、4、ー9、7、5 張薔/斉菲(江蘇ZGL/天津市)
●決勝 陳夢/王曼昱 ー11、10、5、ー5、ー5、9、6 孫穎莎/王芸迪

〈混合ダブルス〉●準決勝
許シン/孫穎莎(上海地産集団/河北省) 8、11、12、ー9、9 林高遠/孫銘陽(広東省/個人)
王楚欽/王曼昱(北京燕京啤酒/黒龍江省) 8、11、10、ー9、10 劉丁碩/銭天一(山東省/江蘇ZGL)
●決勝 王楚欽/王曼昱 11、9、ー6、1、5 許シン/孫穎莎
  • 樊振東は男子単3回目のV(写真は8月の「備戦東京」・提供『ピンパン世界』)

 10月1日、山東省威海市の南海新区オリンピックセンターで、2020全中国選手権が開幕した。

 現在、南海新区オリンピックセンターでは中国チームが集合訓練の真っ最中。国際大会の停止で試合経験を積むことができない国家チームの選手に実戦の場を提供するため、さらに11月に同会場で開催される男女ワールドカップのリハーサルとして、「いっそのこと全中国選手権をやってしまおう」という感じだ。9月15日に山東省体育局が開催に合意し、組織委員会を結成して2週間余りで開催にこぎつけるこのスピード感。日本ではちょっと考えられない。

 来年1月の全日本選手権は、新型コロナウイルス感染症の対策のためにダブルス3種目が中止となったが、全中国選手権は男女団体、男女シングルス/ダブルス、混合ダブルスの7種目をすべて開催する。
 男女団体は各24チームが出場。4チームごとの予選リーグを戦った後、決勝トーナメントで優勝を争う。男女とも解放軍チームは出場しておらず、樊振東をはじめとする解放軍の選手たちは、個人種目には個人名義で出場している。

 男子シングルスには馬龍、樊振東、許シン、林高遠、王楚欽など国家チームの主力メンバーが顔を揃え、147名が出場。一方、139名が出場する女子シングルスの出場選手リストには、集合訓練に参加していない丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲の名前はなく、陳夢・孫穎莎・王曼昱・陳幸同らが出場する。

 男子ダブルスのペアリングは所属チームの枠を超え、馬龍/許シン、樊振東/王楚欽、林高遠/梁靖崑という組み合わせ。女子ダブルスでは、陳夢は王曼昱とペアを組み、孫穎莎は王芸迪とのペア。孫穎莎のシングルス2点起用に陳夢/王曼昱の単複という、東京五輪団体戦のオーダーが見え隠れする。さらに混合ダブルスでは、孫穎莎は8月の『備戦東京』に続いて許シンとペアを組む。

 オリンピックの卓球競技では常に経験を重視し、ベテランを重用してきた中国。しかし、今大会のエントリーを見ていると、孫穎莎の五輪代表入りの可能性は高いと言わざるを得ない。中国女子代表の3名全員が五輪初出場というのも考えにくいが……。4年に1度のオリンピックが、思わぬ形で1年延期されたことで、選手たちの運命は大きく変わろうとしている。
  • 昨年10月のチームワールドカップでの丁寧/劉詩ウェン。この時は五輪代表も既定路線だったが…

  • 自らの手で五輪代表を手繰り寄せようとしている、小さな豪腕・孫穎莎

 9月17日、中国卓球協会の訓練基地(トレーニングセンター)および青少年培訓基地(青少年育成トレーニングセンター)が、山東省威海市の南海新区オリンピックセンター内に誕生した。オープニングセレモニーには中国卓球協会の劉国梁会長をはじめ、国家チームのコーチ陣や選手が揃って出席した。

 オリンピックも開催できる規格のメインホールにトレーニングセンター、ジュニア選手用のトレーニングセンターとホテルが一体となったこの訓練基地。このような卓球専門の訓練基地は中国全土にあり、第1号である湖北省黄石市の訓練基地(1987年完成)をはじめ、河北省石家荘市正定県、黒龍江省大慶市、広東省仙頭市、福建省厦門市、浙江省寧波市、江蘇省通州市、四川省成都市など枚挙にいとまがない。国際大会は沿岸部の海洋性気候の都市で行われることが多いため、中国でも海沿いの都市に建設されることが多い。

 オープニングセレモニーに出席した国家チームの選手たちは、そのまま訓練基地での集合訓練に入る。以前の中国リポートでは、10月まで海南省で集合訓練を続けるとお伝えしていたが、この威海の訓練基地に移動し、現地で行われる11月8〜10日の女子ワールドカップ、11月13〜15日の男子ワールドカップに備えるという。都市の中心部ではなく、沿岸部の新興開発区にある訓練基地なら、出場選手や関係者が外部の人間と接触しない「バブル」での大会開催もよりスムーズになる。残念ながらメディアの取材はNGだ。

 海外選手は中国への入国後に1週間の隔離期間が設けられるなど、出場に際して様々な障害を乗り越えなければならない。一方、中国選手は集合訓練を行いながら悠々と大会を迎えることができる。公平とはいえない状況だが、中国でなければワールドカップクラスの国際大会を実施するのは難しいというのも、また事実だろう。
  • 新たな訓練基地を「世界的に見ても最高水準のトレーニングセンター」と評した劉国梁会長

 9月15日、1963年世界選手権プラハ大会の男子ダブルスチャンピオンで、中国女子チームの監督も務めた王志良が80歳で逝去した。

 王志良は河北省保定市の出身で、1958年に天津市チームの一員となり、同年に国家チーム入り。当時としては珍しいシェークカット型の選手で、63年世界選手権ではペンカット型の張燮林とダブルスを組んで優勝。中国男子で世界選手権・個人戦のタイトルを獲得したシェークカット型を探してみると、この王志良と77年バーミンガム大会男子複優勝の梁戈亮(李振恃とのペア)がいるが、梁戈亮は一時攻撃型にも転向したオールラウンダー。純粋なシェークカット型は王志良だけだと言えるかもしれない。

 ちなみに70年代以降の中国選手が用いた、両面に同色(黒)のラバーを貼って反転させて出す「同色反転サービス」は、王志良が考案したと言われている。現役引退後は指導者の道に進み、1971年世界選手権名古屋大会では中国女子チームの監督として来日。女子団体では地元・日本にタイトルを譲ったが、女子シングルス・ダブルス・混合ダブルスの3種目で中国がタイトルを獲得。女子シングルス優勝は林慧卿、女子ダブルス優勝は林慧卿/鄭敏之といずれもシェークカット型の選手で、混合ダブルスを制したのは元ダブルスパートナーの張燮林と林慧卿のペアだった。

 中国女子チームの監督を退任した後は、文化大革命による混乱を避けて香港に移住し、多くの選手を指導した王志良。中国リポートの『中国卓球人国記』で、ちょうど河北省男子編を書いていたところで思わぬ訃報に触れた。謹んで哀悼の意を表します。
  • 63年世界男子複王者の王志良。写真は61年大会のコンソレーションマッチで優勝した時のもの