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 熊本・熊本市総合体育館で行われていた第53回全日本社会人選手権は、8日に男女シングルス決勝を迎え、男子は大矢英俊(ファースト)、女子は野村萌(デンソー)がともに初優勝を飾った。

 大矢は準々決勝で有延大夢(リコー)、準決勝で平野友樹(協和キリン)を破って決勝に勝ち上がった。クセのある球質のチキータから、非常に早い打球点をとらえる連続バックハンドで主導権を握り、相手がフォアに回せばショートスイングのカウンターを見舞う。
 今年4月からファースト所属となり、コーチを本業にしている大矢。「練習量は東京アート時代の5分の1くらい。……陰ながら練習はしてましたけど笑。今大会は、試合前の入り方として『負けて当たり前だろう』という思いしかなかった。そういう思いで大会に臨んだのは初めてでした」(大矢)。苦しい場面ほど、開き直ったかのように積極的なプレーを連発した。

 決勝の対戦相手は、春までチームメイトだった吉田海偉(東京アート)。38歳の吉田と31歳の大矢による「サーティ対決」。今大会で猛威を振るったロングサービスを武器に、吉田がゲームを先行し、ゲームカウント3ー2と王手をかける。しかし、「試合前から吉田さんのロングサービスを待っていて、短く来た時は前にスッと入ろうと思っていた。開き直ってから、それが思い切ってできるようになった」という大矢が最終ゲームに持ち込み、4ー0、6ー4、8ー6のリードから8ー8に追いつかれながらも振り切った。

 敗れたとはいえ、2位の吉田は「14年ぶりの優勝か」と思わせるほど充実したプレーを見せた。プッシュと横回転ショートを操りながら、年齢を感じさせないパワードライブ連打は豪快そのもの。「久しぶりにこんな良い試合ができました。去年は社会人予選に出て予選落ちして、恥ずかしくて、卓球を辞めようかなといろいろ考えました。でもアートに残って良かった。前期の日本リーグと全日本実業団で勝てて自信がつきました」(吉田)。

 一方、昨年のインターハイ女王・野村の優勝はサプライズだ。「大会前はランク入りを目標にしていました。社会人でもう一度日本一になるという目標を持って実業団に入ったので、まさか1年目で優勝できるなんて思っていませんでした」。表彰後の囲み取材では初々しい笑顔を見せた。決勝では愛知・卓伸クラブの先輩である安藤みなみ(十六銀行)を4ー1で下した。

 準決勝で野村に敗れた昨年度女王の平侑里香(サンリツ)、決勝で敗れた安藤はともに「プレーしていて押されている感覚があった」とコメントしている。その大きな要因のひとつが、相手のフォアサイドにも思い切って出すロングサービス。決勝の5ゲーム目、10ー6でのチャンピオンシップポイントでも、安藤のフォアにロングサービスを出し、安藤のレシーブスマッシュがミスとなった。

 「安藤さんからは今までたぶん1ゲームも取れていない。試合前は1ゲーム取るのが目標でした」(野村)。会場では地元・慶誠高卒の安藤への声援が大きかったが、最後まで堂々と戦い抜いた18歳。盛夏のひまわりのように、まだまだ伸び盛りだ。