門ラバーの革命児だ

またもや卓球市場を牽引する
『ヴェガ イントロ』の3200 円の衝撃

 初中級者に圧倒的な支持を得ているXIOM(エクシオン)の『ヴェガシリーズ』。高い性能を持ちながら、低価格というコストパフォーマンスの高さが人気の理由だ。
 日本では『ヴェガ ヨーロッパ』が一番売れており、軟らかくて使いやすいと評判も良い。スピン系テンションラバーの入門版として、コントロール系や高弾性ラバーから移行する選手も多い。

 『ヴェガシリーズ』は幅広く商品展開をしているが、実は入門者用のエントリーラバーはなかった。卓球を始める人たちにとってはリーズナブルであっても、『ヴェガ』は「2 枚目」のラバーの位置にいるイメージだ。
 卓球人口のボリュームゾーンは、春に部活を始める中学生。「卓球を始めたばかりの人に最初から『ヴェガ』を使ってほしい」という願いを込めてXIOM は新しい『ヴェガ』の開発に着手した。
 17 年1 月に発売された『ヴェガ イントロ』。導入という意味を持つ『イントロ』という名前を冠したスターターラバーだ。このラバーが売れている。それは低価格でありながら、かなりの高性能な仕上げになっているからだ。
 「長年、日本では入門者用として定番のラバーが選ばれてきました。しかし、ボールがプラスチックになり、入門者用のラバーも進化する必要があると思います」と語るのはXIOM の金俊洙さん。
 弾みと回転は「本当に高弾性?」と疑うほどの高性能で、スポンジ硬度もトップ選手仕様の硬さに設定している。まさに規格外の入門者用ラバーである『ヴェガ イントロ』はユーザーに受け入れられるのか?

ヴェガ イントロ

ヴェガ イントロ
価格:¥3,200+税
種類:高弾性裏ソフトラバー
スポンジ硬度:47.5度
厚さ:MAX・2.0・1.8mm

『ヴェガ イントロ』の性能は規格外。
初級者は使いこなせるのだろうか

 入門者用の用具は実は価格が重要。ラバーは消耗品であり、まだ技術力がないため、「安いもので良い」とされているからだ。『ヴェガ イントロ』の価格は3200円(+ 税)。性能を加味するとかなりコストパフォーマンスが高いラバーだ。この価格設定の裏には、あるライバルラバーの存在があったようだ。
 「現在発売されている『ヴェガシリーズ』は初中級者の男子、そしてレディースの選手に人気です。『イントロ』はもっと前の段階、卓球を始めてすぐの選手に使ってもらいたいラバーです。
 ラバーがどんどん進化しても、入門者の用具は定番が売れています。特に『マーク V 』 (ヤサカ)は素晴らしいセールスです。『マーク V 』 と同じ価格設定にして、そこを崩すのが目標ですが、約半世紀続く『マーク V 』 の伝統にはかなわないのでしょう。
だから私たちは価格だけではなく、ラバーの性能で勝負したい」(金俊洙さん)。
 知名度では圧倒的不利の状況だが、性能を追求することで『ヴェガ イントロ』は卓球界のボリュームゾーンを崩しにかかる。

ヴェガイントロがラバー市場で
ターゲットにする怪物ラバー

マーク V

マーク V(ファイブ)
メーカー:ヤサカ
種類:高弾性高摩擦裏ソフト
厚さ:特厚・厚・中厚・中・薄・極薄
スポンジ硬度:40 〜45 度
価格:3,200 円(+ 税)

1969 年に発売され、再来年には発売50 周年を迎えるラバー、それが『マーク V 』 だ。累計1100 万枚以上の販売枚数で、現在も年間10 万枚ほど売れており、卓球王国WEB で集計している用具ランキングでも2 年以上トップ5 をキープしている。かつてはベンクソン(スウェーデン)やガシアン(フランス)が使い、世界チャンピオンが使用した高性能なラバーだったが、今はエントリーラバーとして愛されている。

初中級者用ラバーなのに
スポンジ硬度が、「47.5 度」の驚き

 入門者用のエントリーラバーはスポンジが軟らかいものがほとんどだ。しかし『ヴェガ イントロ』のスポンジ硬度は47.5 度。これは同社の『ヴェガ プロ』『オメガ V ツアー DF』などの中~上級者用ラバーと同じ硬さになっている。初級者が硬いスポンジでコントロールできるのだろうか。その狙いは何だろう?
 「プラスチックボールに変わり、硬いラバーのほうがフィットするようになっています。特に最近のABS 素材を使っている硬いプラスチックボールの場合、軟らかいスポンジでは食い込みすぎてコントロール性能が低下してしまいます。ボールが変われば、ラバーも変わる。それは入門者用でも同じです」(金俊洙さん)。
 プラボールになり、世界的にもラバーはどんどん硬くなってきている。日本の女子選手に中国製粘着性ラバーが流行したり、バック側を硬いラバーに変更する選手も多い。しかし、それはトップ選手での話だが、初級者にも当てはまるのだろうか。

初級者10 名が試打。「高反発」の意見
コントロールは大丈夫か。10 人中7 人が
「ぜひ使いたい」と答えた

 普段から入門用のコントロール系ラバーや高弾性ラバーを使っている初級者は『ヴェガ イントロ』にどのような評価を下すのだろうか。卓球歴1 ~2 年の中学生(協力:荏原第六中学)10 人に試打をしてもらった。
 軽打やドライブなど、基本技術での試打を行ったが、試打をした10 人全員が最初の印象で「弾みが良い」と回答した。ラケットには生徒が使っているラバーと同じ厚さの「中」に相当する1.8mm を貼っている。
 「すごく弾みました。軽くスイングしてもスピードが出ます」(『ハモンド』使用者)。「ラバーの弾力性が違うのがわかります。スピードがすごく出て、いつもに比べてかなり弾みます」(『マーク V 』 使用者)など、反発力の高さに驚いていた。一方で「弾みすぎてオーバーミスが多かった」(『スレイバー』使用者)など、コントロール性能に不安を持つ選手もいた。

試打アンケート

●上のグラフで示すように全員が弾みが良いと答えているが、そのうちの6 人が「そのかわりにオーバーミスが多い」とコメントしている。中には「小さな力でも弾むので、力の調節が難しいけど、逆に考えれば、小さな力でもスピードが出てくれる。力加減を覚えて使いこなしたい」という意見もあった。最初はオーバーミスが多いが、徐々に慣れていくだろう。

 試打を行った最後に「ヴェガ イントロ」を使いたいと思った人に挙手してもらうと、10 人中7 人が「ぜひ使いたい」と答えた。理由の多くが高い弾みとスピンの「高性能」に魅力を感じたからだという。

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第2 回に続く
文=佐藤祐・今野昇