スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 07年世界選手権優勝の郭躍(中国)が、広東省深セン(土+川)市にある深セン大学が新設するスポーツ訓練コースへ入学した。深セン大学は1983年に創立された公立の総合大学。スポーツ訓練コースには郭躍をはじめ、24名の全国トップクラスのスポーツ選手が入学。中国の大学の新学期は、この9月からスタートしているが、郭躍は全中国運動会に向けた調整のため、まだ深センを訪れてはいないようだ。
 深セン大学が新たにスポーツ訓練コースを設置したのは、2011年に深センで開催される学生スポーツの祭典、第26回ユニバーシアードを視野に入れてのこと。中国は通常。男子が上海交通大、女子が華東理工大などから選手を派遣、女子の劉娟や戴寧陽は「ユニバーシアード専用選手」のようになっているのだが、地元開催となると話は別だ。中国が初めてユニバーシアードを開催した2001年北京大会では、王励勤・劉国正・張怡寧・牛剣鋒といった強力なメンバーを送り込み、7種目を完全制覇している。ちなみに男子シングルス優勝は王励勤、女子シングルス優勝は張怡寧と牛剣鋒を連破した帖雅娜で、帖雅娜はその翌年に香港へ移籍している。

 なぜ郭躍は、厳しい入学試験を受けることもなく、大学生になることができたのか? それは中国では優秀なスポーツ選手や、スポーツを引退した元選手の入学試験が免除されているためだ。中国国家体育総局も2008年6月、「2008年優秀運動員免試進入高等学校学習工作的通知(優秀なスポーツ選手の大学入学および学習における、試験免除に関する通知」を発し、世界大会や全国大会で一定の成績を収めたスポーツ選手は、大学入学試験を免除するよう通知している。ちなみに中国の「高等学校」は日本の大学に当たり、日本の高等学校は中国では「高級中学(高中)」と言う。

 卓球界でも国家1軍チームのメンバーやOB・OGだと、大学の入学試験はほとんど免除。そのため、現役生活の後期や引退した後、北京大学や清華大学、上海交通大学など、名だたる名門大学に進む選手も多い。しかし、清華大学を卒業してイギリスへ渡り、ついにケンブリッジ大学の博士号まで取得してしまったトウ亜萍のような才媛は特例中の特例。今年6月には上海交通大学が劉国正(01年世界選手権団体優勝)を始めとする5人のスポーツ選手に対し、規定で定める単位数を取得できなかったということで退学という処分を下した。しかも劉国正は上海交通大に在籍しながら、06年に河北師範大で学士を取得し、退学の通知を受けた時には北京体育大学の修士課程で勉強に励んでいたという。一流選手たちを広告塔として利用しようとする大学もあり、より名の通る肩書きを求める選手たちとの双方の思惑の中で、学籍を置くだけの名ばかりの学生が増えることになる。

 郭躍も中国女子チームの主力選手である以上、勉強のために深セン大学に通う時間はまずない。しかも郭躍の母体は深セン市から2,000km以上離れた遼寧省だ。純正・学生選手のみのメンバーで挑む日本からしてみれば釈然としないが、ユニバーシアード深セン大会の中国代表チームは、世界選手権クラスの豪華メンバーが揃うことになるかもしれない。

Photo:小学生時代は学校でもトップクラスの成績だった郭躍