朝食のときの仲村さんとの話には、もうひとつ面白いものがあった。それは昨日、石川が女子シングルスで勝った相手、チェコのシュトルビコバのことだ。彼女は天才だということだ。女子であのボールタッチは天才で、中国は練習でできるようになっているが、彼女は自然にできている、中国にもあんな天才はいないという。それは一緒に試合を見ていた松下浩二さんも言っていたそうだ。
ところが彼女は、ちょっとリードすると遊ぶプレーを入れてしまう、6-3でリードしていても、6-6にしてから本気だそうと自分が楽しいプレーをしてしまう。それで後から勝とうとしても結局は勝てず、世界ランクは低いのだという。仲村さんは自分がまさにそういう選手だったからよくわかるという。
仲村さんや松下さんはもともと彼女を知っていたわけではなく、初めて試合を見てそう思ったという。実は私は石川の試合中、隣の星野さんがまったく同じことを言っているのを聞いていた。「あんな才能ある女子選手見たことない。手を抜かないでやったら石川さんに勝ち目ないよ。でも彼女は絶対手を抜く。抜かないで試合をすることができないのね。キンちゃん(仲村さんのこと)と同じだよ」と言っていた。
私はそんなこと見ていてまったくわからなかったと言うと、仲村さんは「一般の人にはわからないようですけど、我々からしたら明らかです」と言っていた。俺は一般の人なのだなあ。
こんな話をテレビで解説したら絶対面白いと思った。もっとも、放送できないことも言いそうでハイリスクだが。星野さんが彼女の試合を見ながら書いたメモを見ればそのリスクがお分かりいただけることと思う。