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 少し前の話になるが、12月16日にドイツの卓球ブランド「アンドロ」からインフォメーションが届いた。それは「長年、アドバイザリースタッフだったクリスチャン・ズース選手(ドイツ)との契約終了」のお知らせだった。要は、今までスポンサーだった同選手との契約を打ち切る情報なのだが、この手のお知らせがメーカーから来ることは珍しい。ズースは05年に世界選手権でダブルス銀メダルを獲得し、ヨーロッパ選手権ではダブルスで優勝した元ドイツ代表。

 ヨーロッパには現在、卓球メーカーがイメージキャラクターにできる選手が少なくなっている。せいぜいティモ・ボル(バタフライ)とドミトリー・オフチャロフ(ドニック)くらいだ。以前は、ワルドナー、パーソン、セイブ、ガシアン、プリモラッツなどの看板選手が目白押しだったが、ヨーロッパ卓球の低迷に伴い、広告塔になる選手は激減しているのが現状だ。

 数少ないトップ選手、しかもヨーロッパ最大の卓球市場ドイツの選手だったズースは貴重な選手だった。ところが、この2シーズンほど故障でほとんどプレーができていないズースにとってのスポンサーからの最後通告となった。メーカーとしてもプレーができない選手にお金を支払うのは辛いことで、苦しい選択であっただろうことは想像できる。

 こういったプロ選手の行く末はどうなるのだろう。ドイツにおいては、プロ選手として卓球を仕事として活躍できる人は決して多くない。ブンデスリーガ1部リーグ10チームの中でもドイツ選手はわずか数名だ。それ以外は、ヨーロッパやアジアからの助っ人選手。1部リーグに所属する選手はプロフェッショナルとして卓球で生活はできるが、将来の保障は全くない。2部リーグの選手に至っては自活するのは難しい。

 しかも、こういったプロ選手はほとんどが日本で言う義務教育(中学まで)を終え、高校に行かずにプロになっているケースが多く。卓球をやめて学校教育を受けるにしてももう一度高校から教育を受けることになるので、大きな企業に再就職することは難しく、プロコーチになったり、卓球ショップなどの仕事に従事することが多いと聞く。
 まさに体ひとつで生きていくことになるが、成功すればそれなりのリッチな生活もできるが、リスクもあるプロ選手。
 彼らが、 選手を終えた後に、会社に残れる日本の企業スポーツの話をするとうらやましがるのも無理はない。
 かつては、ブンデスリーガでプレーしながら、歯医者の資格を取得した、弁護士になったという話も聞いたが、実際には学業とプロ選手の両立は難しい。
 28歳のズースは故障を治してプロ選手として復活できるのか、それとも第二の人生を歩むのか、未だその情報は入ってこない。
  • 故障で試合に出場していない元ドイツ代表のズース