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 昨日、3年ぶりの全日本チャンピオンに返り咲いた水谷隼選手のインタビューを行った。11月以来、じっくり話し合った。2時間を超えた。
 奇しくも、12月発売号の特集は水谷隼選手「水谷隼の逆襲」であり、1月発売号の特集は丹羽孝希選手「異才丹羽孝希の腕」だった。その二人のチャンピオンは、全日本選手権で明暗を分けた。
 水谷は王座に返り咲き、丹羽はタイトルを守れず、ベスト8にも入らなかった。この二人の天才のインタビューは対照的だ。

 丹羽は、プレー同様、話しぶりにも外連味(けれんみ)がない。迷いがなく、言葉をストレートに放つ。ストレートゆえにそれが自信のようにも見えるし、肝っ玉の太さを感じる。物事に動揺せず、細かいところは気にしない。言い方を変えれば「怖いもの知らず」の少年。極度に緊張や興奮をすることも少ないタイプで、大舞台での興奮度も低いものだ。
 しかし、超クールなこの19歳の心の奥に燃えるものがしまいこまれている。この奥の中にある熱い部分に点火されるのは多くはない。しかも、その点火スイッチを丹羽は制御できていない気がする。試合状況や緊張感や自分の調子などで急にスイッチが入るのではないか。

 一方、水谷は卓球の怖さを知る男だ。全日本決勝で負けた2回の決勝の悔しさを持続させ、負けることの怖さゆえにロシアリーグに挑戦した。怖さゆえに自分をストイックに管理するようになっている。11月の時よりさらに顔は締まっていた。
 怖さと不安を抱く水谷は他人と交わることなく自分が信じる正しい方向へ突き進んでいる。
 
 丹羽孝希の肝の太さ、度胸というメンタルの強さが、時に、あきらめてしまうという弱さにもつながっている気がする。
 水谷もメンタルが強いと言われるが、チャンピオンでありながら見えないものにおびえる弱さや不安が、この男を勝利に駆り立てていることも事実だ。
 二人の明暗は、負けることを恐れない19歳と、負けることを恐れる24歳の差になって表れたのかもしれない。
 帰ってきた王者のインタビューは2月21日発売号で紹介する。  (今野)