卓球のノジマTリーグの実行委員会が16日に開かれ、関係者への取材で、今月22日の同リーグ理事会で松下浩二チェアマンが退任することがわかった。
松下チェアマンはすでに退任の挨拶回りを行っており、後任は7月上旬の社員総会で決定するが、星野一朗・日本卓球協会専務理事が兼任するとの情報もあり、もしそうなるとTリーグは協会が主導で今後、進んでいくことになる。
卓球のTリーグは2年前、2018年10月にスタート。日本のプロ第一号の卓球選手である松下浩二氏がチェアマンとして「日本の卓球界の発展のため、プロ選手、プロ的興行の環境を作り、日本が世界の頂点に立つために必要なリーグ。このリーグで日本を元気にする」というスローガンを掲げ、スタート。リーグ構想から10年、松下氏は日本卓球リーグとの共存を模索したり、参加チームの募集、協賛スポンサーの獲得などで奔走した。
地域のクラブ、企業スポーツと合体させながら、チーム数は男女4チームずつと少ないながらも、世界最高峰のレベルを示すリーグになり、ヨーロッパやアジアから世界レベルの選手が日本に集結した。
2017年3月の「一般社団法人Tリーグ」の設立には日本卓球協会の強力なサポートもあり、協会の理事会などでも議論が交わされ、独立性を維持しながらも日本の卓球界のために必要な新組織として認知され、翌年10月にリーグが始まり、将来的なホーム&アウェイの競技方式の前に、全国各地で興行を行い、好評を博していた。トップに置かれたダブルスでの3ゲームスマッチ方式、シングルスでの最終ゲーム6-6からの方式、試合が2-2になった時の5番のヴィクトリーマッチ(11本1ゲーム勝負)などの斬新なやり方で、スリリングで常に接戦になる試合、そして何より選手全員が緊張感を持った好ゲームを連発した。
日本のトップ選手がほとんど参戦し、それまでドイツのプロリーグに参戦する選手もいた日本で、プロ選手が増えていく土壌を作った。
Tリーグは松下氏が「日本にプロリーグを」という現役時代から描いていた夢の実現であり、松下なくしては実現はできなかった。
プロ的興行を優先するあまり、1年目から採算度外視の試合運営への懸念は指摘されていたが、それは「将来への投資」と見ることもできたし、3シーズン目から試合運営は各チームにゆだねられるので、リーグ自体の負担は減り、安定期に入るという見方もあった。
退任の理由は、今後正式な会見でのコメントを待つことになるが、「Tリーグ・イコール・松下浩二チェアマン」という象徴的な存在だっただけに卓球界に大きな衝撃が走るのは間違いない。「松下の情熱にほだされて」チームを作り、スポンサーになった企業も多い。スポンサーへの影響を考えると、今後のリーグ運営も厳しいものになるだろう。
Tリーグは卓球ファンはもちろん、卓球を初めて観戦する多くの人たちを魅了してきた。象徴的なチェアマンが去ろうとも、日本卓球協会、そして日本の卓球界はTリーグの火を消してはならない。
新型コロナウイルスによって、卓球界も全国大会が次々と中止となり、重苦しい空気が流れている。多くのスター選手を抱える卓球がスポーツ界で果たす役割は決して小さくない。松下浩二氏がゼロから作り上げた世界に誇るTリーグ。その「松下レガシー」を守り続けることが、このリーグと日本卓球協会に課せられる使命と言えるだろう。(今野)