スマホ版に
戻る

トピックス

トップニューストピックス
 昨日、1月19日に日本卓球協会は世界選手権蘇州大会(個人戦)の日本代表を発表した。強化本部で選出し、協会の理事会で承認を得るという手順を踏む。

 世界選手権の代表選手選出というものは、いつの時でも喜びもあれば、驚きもあり、悲哀も漂うものだ。直前の全日本選手権の準優勝者でも代表に選ばれない。今回もそうだったし、昔からそういうケースは数多くある。
 昔は選考会議となると大もめにもめ、夜を徹して議論を重ねたという歴史もある。また、その当時の派閥争いや強権が発動され、よもやの代表が選ばれるということも過去にはあった。

 代表選手への見方は二つある。
 ひとつは、協会サイド(強化サイド)からの見方。
 1 全日本選手権は、選考基準の一大会でしかない。
 シングルス優勝者は代表になる資格を得ることを発表している。しかし、国内最高峰の大会であっても一つの参考にする大会でしかない。要は国内での強さは、イコール国際競争力ではないという考え方が昔からある。これは正しい。国内で好成績を上げる選手が国際大会に出ると成績が出せないというケースは山ほどあるからだ。

 2 国内よりも国際競争力を重視する。
 協会(強化本部)が目指すのは、世界選手権や五輪でメダルを獲ること。この1点なのだ。だから、国内での成績よりも国際大会での成績を重視する。今の時代、ワールドツアーが頻繁にあるので、強化本部や全日本監督は成績を見極める尺度が多くある。以前とは選考の仕方も違うと言えるだろう。

 もうひとつは、選手サイドからの見方。
1 全日本選手権で成績を上げている人がなぜ・・
 優勝者のみとは言え、日本代表の発表直前に全日本選手権があるから、選手としては優勝者以外でも、その成績が選考に影響を与えると考える。前述したように、最近の選考には大きな影響は与えないことは薄々わかっていても、大会直後の代表発表なのだから、そう感じてしまうだろう。

2 選ばれる側と選ぶ側のずれ
 ある程度の成績を上げた選手からすれば、自分は選ばれるだろうという自信と期待を持つ。選手であれば当然だろう。また『国際競争力」という目に見えない基準を判断するのも難しい。確かに細かな選考基準は発表されていても、そこに該当しない選手が選ばれたり、該当しながら外れたりすることがあるのも事実だ。圧倒的に勝っていれば文句なしの選出になるだろうが、そういう選手は数少ない。

 過去に、1987年世界選手権で直前の全日本選手権でベスト32にしか入っていない松下浩二、渋谷浩が選出され、選考会議がもめ、当時は日本リーグでプレーする選手が上位に多くいて、「なぜ日本リーグの選手が選ばれないのだ」と批判が集まったことがあった。しかし、その後、その二人は世界で活躍した。協会の英断だった。ただし、これは結果論になるが……。
 また2006年の世界選手権に大抜擢され、日本のメダル獲得に貢献した福岡春菜も国内では成績が残せなかった。国内と国際の狭間には「戦型」という複雑な面もからんでくる例だ。

 今回の代表選考のシングルス枠で言えば、強化本部の狙いはわかりやすい。過去の実績と将来への布石というテーマが見える。ただし、ダブルスにおいては、全日本優勝ペアの石川佳純・平野早矢香ペアが外れ、森薗政崇・三部航平ではなく、森薗・大島祐哉が選ばれ、09年横浜大会以来、ダブルスのメダルを獲得し続けた岸川聖也がダブルスのエントリーから外れた。
 もちろん強化本部が過去の世界選手権や全日本選手権の実績だけではなく、最近のワールドツアーでの成績を分析し、弾き出した答えであると推察できる。

 全日本直後の代表発表は何とも微妙だ(理事会を簡単に招集できない協会事情も理解できるが……)。
 代表発表の手順を変えることはできないのだろうか。全日本選手権直後に発表となると、選手は全日本選手権が選考基準(シングルス以外でも)の大きな物差しになると考える。大会前に決まっているのであればもっと前に発表することも可能だろう。
 実際に、ダブルスで日本代表に選ばれたペアなどは全日本選手権の結果と関係ないペア(もしくは全日本で組んでないペア)も選ばれている。国際競争力の考慮はもちろん理解できる。ならば、事前に、もしくは世界選手権へのエントリーギリギリ(通常は2月末)に発表するタイミングもあるのだろう。
 
 日本のレベルが男女とも急激に上がっているだけに、回を追うごとに代表選考は難しくなる。
 代表選出には答えはない。そして、選ばれる人の喜びと選ばれなかった人の悲しみは、世界選手権のたびに交錯する。
 代表選びは卓球選手の人生を変えることもある重大な決定事項でもあり、100点満点のない試験であり、かつ候補者全員が納得することのない大いに悩ましい選択なのである。 
 外れた選手の気持ちを考えると胸が痛む思いだ。一方で、強化本部も苦渋の選択を強いられたことも理解できる。
 代表選出からもれた選手がその後奮起してチャンピオンになったり、世界で活躍した例は過去にも多くある。代表に選ばれた人はその後ろに選ばれなかった人の悔し涙と卓球人の大きな期待を背負って戦うことになる。喜びと重圧は紙一重で存在する。  (今野)