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 オフィシャルサプライヤーになったとは言え、当初「ヤマト卓球は男子の公式ウエアサプライヤーが務まるのか? デザインは大丈夫だろうか?」と不安視する声もあったのは事実だ。落札すること以上に、代表チームをケアすることが難しいからだ。
 さらに4月に設立した「一般社団法人Tリーグ」に専念するために松下浩二氏はヤマト卓球の社長を3月いっぱいで降り、会長職になった。
 誰が引き継ぐのかという疑問が湧き起こる中で、スヴェンソングループが出した結論・・・それは2015年に兒玉圭司氏から社長を引き継いだ兒玉義則氏が、ヤマト卓球の社長を兼任するという決断だった。

 明治大卓球部では松下氏と同期で、名門・熊谷商高から明治大、日産自動車と進んだ一流卓球選手だった兒玉義則氏。スヴェンソンでのビジネス経験を生かしつつ、卓球メーカーだけの知見だけでなく、グループとしてのアイデア、知識、そして資金を使いながら改革を進めようとしている。

 日本代表ウエアも従来のプリント柄とは違うシンプルで男性的なデザインを披露し、これからさらにVICTASブランドのイメージや商品を変えていこうとしている。
 そして吉村和弘、松平賢二のトップ選手との契約も卓球関係者を驚かせた。しかも、名前だけでない、これらの選手がVICTASの用具を使えると判断してからの契約だと聞いている。獲得できるトップ選手に対しては好条件のオファーで一気に取り込む作戦だろう。
 また、4月1日のウエア発表会で「男子金メダルへの1億円の報奨金」をサプライズで公表するなど、従来の卓球メーカーにない動きを見せている。
 日本代表公式ウエア発表という記事になりにくい会見で、いきなり「1億円の報奨金」と発表し、メディアの驚きと注目を誘った。狙いどおり、翌日の各紙はこぞってこの話題を記事にした。「広告効果」抜群の発表であった。

 卓球メーカーとして超優良企業であるタマスがオフィシャルサプライヤー(日本代表ウエア)の入札で敗れ、トップ選手がアドバイザリー契約から離れている現状を考えると、手堅い経営ではあるが、ブランディングという意味においては、バタフライという「絶対的ブランド」を 追いかけているのは、「過激なVICTAS」だ。
 特にオフィシャルサプライヤーになってからは、卓球以外の人からの知恵を入れ、新しいイメージ作りを図ると同時に卓球市場やメディアにサプライズを提供し続けている。

 今後、ヤマト卓球が視野に置くのは世界戦略だろう。
 国内売上げでタマスと肩を並べたとは言え、世界市場では圧倒的な差をつけられている。ヨーロッパや他のアジアではVICTASブランドは浸透していないし、ヤマト卓球の売上げも微々たるもの。タマスが時間をかけて築いてきた世界市場でのイメージと市場を崩すのは並大抵の努力ではできない。
 ヤマト卓球が国内市場での戦略を海外でどう転換できるのかに注目が集まる。そこにはお金だけでは解決できない、「人材」と「商品力」という大きな壁が立ちはだかっている。 (今野)

  • 全日本2位の大物・吉村和弘と契約したヤマト卓球(写真は兒玉社長)