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 卓球レポート休刊(来年3月)のニュースはヤフーニュースまで広がった。これは「卓球ブーム」と言われる中で、60年の歴史を持つメディアの消滅が、意外な出来事として捉えられたからだろう。

 しかし、勘違いしてもらいたくないのでその背景を探ってみようと思う。
 休刊の理由が、インターネットによる情報配信の普及や卓球情報の多様化のため、として捉えられている。
 そこで考えてほしい。それだけの理由ならば、小誌卓球王国もその犠牲になっているはずだ。そのニュースを見た人も、「紙メディアの衰退だから仕方ない」「ネットでこれだけの情報が得られるのだから月刊誌の役割も終わった」と書き込んでいる。それはそうかもしれない。でも、それは正しくない。
 もし紙メディアがダメなら卓球王国も休刊になるはずだ。
 しかも小誌は、昨年のリオ五輪の時に出した号が、過去20年間の中で最高実売数を記録した。その後も高止まりの状態なのだ。

 つまり卓レポ休刊は紙メディアの衰退が理由ではなく、卓球メーカーのコマーシャル誌の限界だったのだ。
 日本の卓球メーカーや専門メディアの状況は非常に特殊だった。かつては書店売りの卓球出版社がなく、大手のスポーツ専門の出版社も卓球の雑誌から手を引いてきた。

 スポーツメーカーが専門誌を出す競技など、どこを探してもない。ヨネックスがバドミントンの専門誌を出版しているだろうか。もちろんNoだ。
 日本の卓球界では、古くはメーカーによる専門誌以外に、卓球雑誌があったがことごとく失敗。残ったのは、メーカー誌の卓球レポートやニッタクニュースだった。本来メーカーが出すのはメーカーのコマーシャルになるのだが、両誌(かつてはTSPトピックスもあった)は技術情報や報道ページにも力を入れていた。そのアプローチも特殊だ。

 しかし、読者も多様化して、1メーカーの情報よりは中立性のある記事や商品情報を求める。その結果、卓球王国が創刊したのだ。多くの卓球メーカーに支援、協力してもらいながら、中立的な記事も書けて、多くの商品情報がある専門誌なら生き残っていける。
 一過性の情報しか持たないがとにかく早い、スマホやパソコンのネット情報は有益だ。しかし、記憶や記録として残る紙メディアの情報、またじっくりと読んでもらうインタビューや技術ページ、きれいな写真を使ったレイアウト。そして、視覚的にインプットされる報道ページやメーカーの広告なども、紙メディアしかできない仕事だと思っている。

 だから、「紙はネットの前に敗れた」などという短絡的なコメントには納得いかない。紙の影響力は、記憶に残り、現物として手にして、多くの人が触れることを考えれば、役割は重いし、信頼性があるはずだ。紙メディアの同志として卓レポを来年に失うが、もし電子メディアの世界で彼らが奮闘するならば、それは新たなライバル出現で、こちらもモチベーションが上がる。
 そして、スクロールされながら画面の向こうに消えていく情報ではなく、選手や卓球ファンの人たちの脳裏に刻まれる素晴らしいビジュアルページや、感動する記事を卓球王国は送り続ける。
 決してインターネットに屈しない、卓球人が誇れる紙メディアを目指す。それが卓レポ休刊後の我々の新たなミッションとなるだろう。 (今野)