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 ブースターの実質的な解禁がされた場合、選手や卓球メーカーの反応はどうなるのだろうか。
 今までも選手からは「ある選手は違法を知りつつブースターを塗り、違法だから塗らないでプレーする人もいる。この不平等を何とかしてほしい」という声は多くあがっていた。
 そういう意味では、ブースター解禁は「選手間の公平性」のためには良いことのように思える。今まで隠れて塗っていた人は正々堂々とブースティングをするようになるかもしれない。
 もちろん、みんながブースターを塗ってプレーしても技術、体力、戦術に優れた人が勝つことに変わりはない。

 なぜ声高にブースター解禁に反対するのか。それは振り返った時に「スピードグルー自由化の時代」の異常な光景を思い出すからだ。子どもから大人までが部室や会場などの様々な場所でグルーを塗り、卓球そのものへの集中とは別の部分で時間を割いていた時代。そういうことも記事にしていた私も贖罪の気持ちを持っている。グルーの普及に加担していたのだ。

 解禁になった時には中国製を含め、様々なブースターが日本に入り込み、各メーカーも発売するだろう。正直に言えば、卓球メーカーは「無害でルールで認められているんだから・・・」という理由で製造する。彼らに「スポーツとしての卓球はどうあるべきか」などという倫理観は働かない。言い方は悪いが「他のメーカーが儲けているんだから、うちも作るのが何が悪い」と開き直るだろう。

 現状でも出口の見えないブースター問題。全日本選手権の時でも「相手の打球音は明らかにブースターを塗った音だ」と選手間で言い合う光景を見た。特にジュニア選手を指導する高校や中学の指導者にしても、「絶対ダメだ」と注意している人もいれば、「勝つためには・・」と黙認している人もいる。
 一方で、「卓球というスポーツは人間教育だから」と言いながら、勝利のために違法行為に目をつぶる指導者たち。

 選手間の不公平を解消する解決方法として、ブースターがある種合法化された時に、塗る行為が正当化される。「無害であれば塗ってもいいだろう」という行動の先で、地方大会で選手たちが、リグロインやシンナー系のグルー行為を同時にするようになったら、卓球協会はそれをどう収拾してくつもりなのだろうか。
 抜け道があっても、違法行為と言われるから現在「ブースター」を使わないことが正常な行為なのに、そこに違法性がなくなったら、選手たちは「塗る行為」になだれ込む。

 国際卓球連盟(ITTF)はパンドラの箱を開けようとしている。
 出口の見えないブースター問題とは言え、いきなり「解禁」という扉を開けようとするITTF。解決策を放棄して、安易な方向に逃げていく国際卓球連盟の役員たちに、「絶望」という言葉以外の投げかける言葉が見つからない。 (今野)