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国際卓球連盟から8月の世界ランキングが発表され、7月に日本人最高位に付けた15歳の張本智和(JOCエリートアカデミー)が、ランキングを8位から6位に上げた。7月末のオーストラリアンオープンで中国の周雨を下し、準決勝に進み、許シン(日+斤・中国)に敗れたものの入賞を果たし、ランキングを上げた。
 頂点に立つまで満足しない少年。卓球界の張本智和はすべてに規格外だ。

 張本は小学生時代から「五輪に出て、金メダルを獲る」ことを繰り返し言ってきた。しかし、これは驚くことではない。有望な少年少女たちは誰でも言う言葉だ。 それはマスコミから注目されている子どもたちの「あいさつ」のようなものだ。
 実際に、子どもから大人になる過程で、ほとんどの選手たちはそれがどれほど苦難の末の産物で、不可能に近い夢物語であるかに気づいていく。日本で五輪の舞台に立てるのは、競技人口120万人と言われる卓球選手の中で、男女で6名のみ。異常なまでの努力をした、特別な才能を持つ人だけに与えられる特権だ。

 小さい頃から「怪物」と言われた張本だけは「五輪のメダル」という言葉の意味が違う。一つひとつその言葉を実行に移し、世界の頂点に近づいているからだ。4月のアジアカップで世界ランキング1位の樊振東(中国)に勝った時には「これで五輪のメダルが見えてきた」と言い、6月のジャパンオープンで張継科と馬龍という二人の五輪金メダリストを破り、優勝した時も、「早く世界ランキングで1位になって、五輪で優勝する」と公言した。

 その張本が8月3日に発表された国際卓球連盟(ITTF)の世界ランキングで6位に上がった。だが、彼の「日本人1位」のランキングはある種の意味を持っている。
 彼のこれまでの成長曲線を考えれば、これは彼の通過点でしかない。維持するだけでも大変なポジションだが、この後に故障でもしない限り世界ランキングが上がることしか想像できない。とは言え、彼の上には1位樊振東(中国)、2位許シン(日+斤・中国)、3位ボル(ドイツ)、4位林高遠(中国)、5位オフチャロフ(ドイツ)しかいない。
 世界ランキングによる五輪出場が決まるのは、2020年1月。日本は男女とも、その時に2名ずつのシングルス枠が決まる。3人目はおそらく日本卓球協会強化本部推薦(現時点でまだ選考基準が未発表)で決まるが、その時点での世界ランキングの3番手が団体戦のみの出場となる可能性は高いが、ダブルスのペアリングも関係するのでは予断はできない。

張本智和が五輪代表に近づいたのは事実だが、まだ最終決定までは1年以上ある。丹羽孝希(同11位)水谷隼(12位)、松平健太(19位)、吉村真晴(27位)、上田仁(28位) が後に続き、虎視眈々と五輪枠を狙っている。

 4月のアジアカップでは世界ランキング1位に樊振東(中国)を破り、「信じられないです。素晴らしい選手に勝ったら声も出ないですね。 東京オリンピックまでは一回は超えたい壁だった。今日の自分はバックしか良くなかった。フォアももっと強くなれば自分も楽しみ。東京オリンピックで金メダルを獲れる自信が少しついた」と試合後に語った張本。
 そして6月のジャパンオープンではまず現五輪チャンピオン、世界チャンピオンの馬龍(中国)に勝ち、「世界で一番の選手にこんなに早く勝ててビックリしています。勝てたから言うわけじゃないですけど、(馬龍は)やりやすい相手でした」とコメントして、さらに決勝で12年五輪チャンピオンの張継科(中国)に勝ったあとは、「中国選手にはいつでも、誰にでも勝てるようになりたい」と力強く語った張本。

 15歳とはいえ、張本智和の言語能力は高い。コメントした彼の言葉を文字として読むと、一見不遜な言葉のようにも感じるのだが、本人はいたって冷静で、視線はまっすぐ前を向いている。口にする言葉の選び方も適切なものだ。
 彼自身が口にしてきた目標を一つひとつ実現させてきている。だからこそ「東京オリンピックで金メダルを獲れる自信が少しついた」と彼が言うと、それさえも2年後に実現するように感じてしまう。 
 小誌卓球王国の最新号インタビュー(9月号)では「(ジャパンオープン決勝の)張継科とゲームオール10-10になった時、少し楽しみな気持ちはありました。自分がどれだけやれるのかな」と語った。
 怪物・張本智和の大きさが測れないでいる。この15歳がどのように成長していくのか。それは我々の想像を超えた領域であることに間違いない。 (今野)
  • またも世界ランキング最高位を更新した張本