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 五輪メダリストの水谷隼(木下グループ)は世界的なサウスポー選手として有名だが、もともとは右利きなのである。卓球を始めた頃、卓球のラケットを左手に持つようになった。本人曰く「親は左に直したと言っているが、自分としてはよくわからない」。実際に、彼は字を書く時でも右手にペンを持つ。
 その水谷自身が監修した技術上達、練習方法を紹介するDVD「水谷は無駄な練習をしない」が発売されているのだが、その映像の中で「右利きの水谷」が登場している。
 実は、それは反転映像で、彼が右手にラケットを持ち替えたわけではない。
 一般的に日本では左利きは全体の10%強の割合でいると言われている。ヨーロッパではサウスポーは日本よりも多いし、珍しくもない。また、卓球のダブルスでは左利きのほうがレシーブでは有利で、歴代の世界チャンピオンペアでも左利きと右利きの組み合わせが圧倒的に多い。

 サウスポーの水谷には「クセ球」が多い。フォアサイドからクロスにドライブを打つ時には思い切り曲げる。いわゆるカーブドライブだ。何回か対戦したことのある選手でも試合後に「相当に回転がかかっている」とコメントする。
 一方、バックサイドに回り込んでフォアハンドドライブをクロスに打つ時には,ボールは相手(右利き)から逃げていくようにシュートしていく。また、強烈な回転ボールと対照的に、ラケット角度だけで相手の回転を利用して返球する「ナックルボール」も水谷の得意な技だ。しかし、このボールは直線的に飛んでいくために繊細なボールタッチがないとできないテクニックで、世界中を見渡しても水谷以外で,このボールを使いこなす選手は見あたらない。

「他の選手はぼくが考えていることをできませんから」と水谷は言う

 そんな「クセ球・水谷」だが、右利きの反転映像を見ると意外な事実がわかった。サウスポーでは独特なフォームのように見えた水谷の振り方が、右利き映像で見ると「意外と普通のスイング」に見えることだ。そういう「右利きの水谷」を見て、右利きの選手は多くのことを学ぶことができる。
 右利きの水谷は左利きの水谷よりも「クセ」がない、ように見えてしまう。仮定の話だが、もし水谷が右利きだったら、左利きの水谷のような成績を残せただろうか。そんな意地悪な質問を本人にメールでぶつけてみた。返信は「(同じ成績は)残せますよ」と短かった。左利きだから勝ってるわけではない、バカな質問しないでくれと言わんばかりの返信だった。

 水谷自身はすでに卓球専門メディアの「卓球王国」から、2冊の書籍(「勝利の法則」「負ける人は無駄な練習をする」)を上梓し、さらに今回DVDをリリースした。しかし、通常、卓球選手は現役時代にその手のものをリリースはしない。自分の手の内を見せるようで嫌がるのが常だから。
 ところが、水谷は違う。自分の卓球の真髄の部分をさらけ出すことをいとわない。2冊目の書籍を刊行する時に「ここまで本音の部分や真実の部分を出しても大丈夫なの?」と聞いたら、「全然大丈夫ですよ。これって、まだぼくの考えている50%くらいしか書いてないから。それに他の選手はぼくが考えていることをそのままできませんから」とチャンピオンならではの物言いをしていた。

 DVDを製作する時に多忙な水谷を「なるべく全盛に近い時期で、身体が動く時に映像を残しておこう」と説得した。実際には、撮影する時の水谷はほとんどノーミスだから、ラリーも続くし、相当にハードなセッションとなった。
 反転映像での右利きの水谷が強いのはもちろんだが、遊びで右手にラケットを握る水谷も実は相当に強いことを付け加えておく。
 (今野)

*9月23日に水谷隼選手は東京都内でDVD発売記念のサイン会を行う
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  • 水谷の右利きの反転映像も収録されているDVD

  • Tリーグでのプレーにも注目が集まる水谷