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トップニューストピックス
 卓球の世界のトップ選手たちは、ある種の苛立ちを持って毎週のようにある国際大会を戦っている。
 10月以降、ワールドツアーのスウェーデンオープン、ドイツオープン(プラチナ)、11月に入ってチームワールドカップ、オーストリアオープン(プラチナ)、T2ダイアモンド(シンガポール)、男子ワールドカップ(中国)。トップ選手たちは毎週のように遠征を続け、戦う。プラチナ大会とは獲得できるランキングポイントが高い大会で、年間6大会ある。
 選手たちはアジアとヨーロッパを往復しながら、時にはホテルのベッドで目が覚めた時に「ここはどこだろう?」と一瞬わからなくなると言う。

 各国を代表する選手たち、トップを目指すジュニア選手たちは自分の位置を世界ランキングによって確認する。言い方を変えれば、選手たちは世界ランキングによって支配されている。
 日本でも世界選手権や五輪の選手選考は世界ランキングが基準となり、選手たちは世界ランキングを上げるためにせっせと国際大会に出場する。特に、昨年2018年1月から世界ランキングの計算方式が変わってからは選手へのプレッシャーは大きい。
 それまでは選手には持ち点であるレイティングポイントがあり、大会にある時期出場できなくても持ち点は変化しなかった。しかし、現在は、過去1年間の大会での上位8大会の獲得ポイントの合算がその選手のランキングポイントになっているため、選手は試合に出続けないとランキングが下がっていく。これはいわゆるテニスのATPツアーのランキングとほぼ同じと言われている。
 つまりツアー主催者としてはトップ選手に試合に出てほしい。そのためにはランキングがすべてを支配するシステムを作りたいのだ。それはそれぞれのツアーにはスポンサーがつき、トップ選手が出場することによってスポンサーもその大会に価値を見いだし、お金をだすためだ。

 選手サイドからの視点はこうだ。ワールドツアーやワールドイベント、T2ダイヤモンドのイベントのカレンダーが無茶すぎる。アジアとヨーロッパの移動が選手への身体に負担がかかり、毎週のように行われるツアーへの参加では強化もできない。しかも、賞金が少なく、選手だけで行くのも大変なのに、コーチなどを帯同すると完全に赤字となる。
 プラチナ大会と言われるツアーでも卓球では賞金総額が2億円ほどで、すべての大会で優勝しても2千万円ほどだから、ほかのツアーに参加したとしても賞金だけで生活できる選手はいない。トップ選手たち(もしくは協会)はランキングのためだけに経費をかけてツアーに参加する。
 獲得賞金で生活できないツアーへの参加。しかし、参加せざるを得ない世界ランキングの縛りと支配が選手たちを苦しめている。