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 本日1月6日に卓球の日本代表が男女3名ずつ発表される。
 過去に例がないほどの激しい代表選考で、2名のシングルス枠は男子の張本智和(木下グループ)と丹羽孝希(スヴェンソン)、女子の伊藤美誠(スターツ)と石川佳純(全農)が代表内定を確実にして、協会推薦の3番手は2番手を激しく争った水谷隼(木下グループ)と平野美宇(日本生命)になるだろうというのが大方の予想だ。

 3番手の選手は団体戦に出場し、個人戦の混合ダブルスに出る可能性もある。
 仮に水谷と平野が3番手となった場合、東京五輪を目指す日本の3選手は「史上最強」の代表チームになる可能性が高い。日本女子は、現在個人の世界ランキングをもとにした「世界チームランキング」で2位を維持。男子は2020年1月発表のランキングで2位から3位に落ちたが、東京五輪までに2位に戻すことができれば、東京五輪の団体戦では中国が第1シード、日本が第2シードとなるために、日本は中国とは決勝でしか対戦しない。 もちろん、男子のドイツ、韓国のように日本を脅かす強豪国はあるにせよ東京五輪のセンターコートでは「日中対決」で金メダルを争う可能性は高い。

参考までにロンドン、リオ、そして予想される東京五輪での卓球のメンバーの世界ランキングを書き出してみよう。
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2012年ロンドン五輪(大会時のランキング)
[男子]
水谷隼 WR5
丹羽孝希 WR18
岸川聖也 WR21

[女子]
石川佳純 WR5
福原愛 WR6
平野早矢香 WR23
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2016年リオ五輪(大会時のランキング)
[男子]
水谷隼 WR6
吉村真晴 WR21
丹羽孝希 WR22

[女子]
石川佳純 WR6
福原愛 WR8
伊藤美誠 WR9
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仮に3番手を水谷と平野と仮定した場合・・・
[男子]1月現在のランキング
張本智和 WR5
丹羽孝希 WR15
水谷隼 WR16

[女子]
伊藤美誠 WR3
石川佳純 WR9
平野美宇 WR11
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史上最強チームの卓球ニッポンになったのは偶然ではない。
東京五輪前の補助金を使えたことも重要ではあるが、それがすべてではない。1950年代から60年代にかけて、「卓球王国」と呼ばれ、黄金時代を迎えていた日本は、中国の台頭によって王座を奪われ、フットワークとフォアハンドに固執するプレースタイルは「時代遅れのステレオタイプ」と言われていた。男女ともに1990年代から2000年くらいまではメダルを獲得するのにも相当な苦労が必要で、中国からの帰化選手も助っ人として活躍した。

2002年に男子の中・高校生をドイツに送り込み、卓球留学をさせ、まず男子の卓球は変わった。そこで「世界で勝てるプレースタイル」を学んだ日本の若手が日本の卓球スタイルを急激に変革させた。そこから飛び出してきたのが水谷隼だった。この背景には、母体チーム(学校)、日本卓球協会、卓球メーカーによる三位一体のサポートがあった。
一方の女子は、まさに「福原愛効果」が牽引した。福原が卓球界のイメージキャラクターとしてマスコミやスポンサーの注目を浴び、実力を伴いながら、「福原チーム」というプライベートな強化チームを作り、協会とも摩擦を起こさずに、強化に努めた。福原に憧れた石川佳純や平野美宇、伊藤美誠が同じ手法でそれに続いた。

つまり、日本の卓球界は男女が異なるプロセスで強くなった。それに加え、ナショナルトレーニングセンターの設立によって、いつでもナショナルチームやトップ選手たちが集まって訓練する場所を得たことも重要であり、JOCエリートアカデミーによって、張本智和や平野美宇がそこから育っていった。つまり、日本が史上最強チームを作れた理由は、この20年間の中にあったのだ。

 史上最強の卓球ニッポンと言えども、中国の壁は厚い。ほかの競技を見ても、卓球の中国のような絶対的な強さを持った国はないだろう。
まさに1950年代、時の毛沢東主席が国威発揚として、同じアジアの日本が世界で勝てている卓球なら中国も勝てるはずだ、と卓球に力を入れ、その後、文化大革命の最中に、周恩来首相の計らいで国際舞台に卓球を復帰させ、1971年の「ピンポン外交」につなげた。まさに中国にとっての卓球は「国球」と呼ばれる、政治的なスポーツとなっていった。
 今の時代でもその根底には、卓球が世界で負けるわけにはいかないという日本人が想像できないほどの重責を中国の協会や選手たちは感じているはずだ。

 全日本男子の倉嶋洋介監督は12月の月刊「卓球王国」へのインタビュー(1月21日発売号に掲載)に、こう答えている。
「中国には隙がない。隙のあるようなチームだったら今までも勝っている。日本がこじ開けていくしかない。中国はリオ五輪の時よりもさらに強くなっている。でも、彼らを倒して金メダルを獲りたい、このまま負けて終わりたくない」
 王者・中国も「五輪史上、今回の日本は最強の相手となるだろう」と警戒している。
 日本は中国のとてつもない厚い壁にどんな穴を開けていくのか。史上最強の卓球チームはこれから7カ月間、こじ開ける穴を見つけ、勝機を見つけるための訓練に入る。