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世界選手権広州大会(条太の広州ぶるるん日記)

 91年の幕張大会を見に行ったときに、会場でデモをしていたリフレックス・スポーツ社の『スーパー・プレイ集』ビデオは素晴らしかった。編集も素晴らしかったのだが、映像自体が素晴らしい。なぜこんなにも面白いのかを考えてみると、いろいろなことがわかった。そのあたりのことをまとめて2001年のスポーツ科学会議で発表した。HPにもまとめてある。http://www.geocities.jp/japan_para_table_tennis/c_position.html

 それまで見たことがあった卓球の映像は大きく分けて2種類あった。ひとつは、テレビ局の放送、もうひとつは卓球用具メーカーが売っている試合のビデオだ。テレビ放送の場合、必ず二階席の遠くから撮影するので、全然遠近感のない映像になる。卓球台の両側の線が平行に映っているので、ボールが遅く見えるのだ。また、往々にしてカメラ位置がかなり高いため(二階席なので)、卓球台に対してかなり上のほうから見下ろす形になる。これがまたよくない。卓球台が縦に長く映るので、テレビ画面上のボールの動きが速くて、目で追うことが難しいのだ。にもかかわらず、遠近感がないのでボールは「遅く」感じるというこの矛盾。さらに大きな問題がある。上からの撮影だと、選手を大きく映せないのだ。卓球台の左右よりも上下が先につかえるため、全体を画面に入れるためには、どうしてもズームアウトせざるをえない。その結果、もともと小さい体の動きがますます小さく迫力のない映像になるのだ。

 一方、メーカーの出しているビデオは、会場のフロアで近くから撮影しているので、卓球台の両サイドは放射状に映って、遠近感はばっちりだ。ところが経費の都合でひとりで複数のカメラを撮影しているので、三脚で固定され、ズームもボールを追うこともしない。これでは当然、鑑賞に堪えない。手間をかけなくては良い映像など撮れない。

 リフレックス・スポーツの映像は上の問題をはっきりと意識的にクリアしている。まず、卓球台の近くの低い位置から撮影して遠近感を出し、カメラは常に操作されて、選手の動きや表情を可能な限り大きく撮影することに注意を払っている。カメラの位置が十分に低く卓球台が薄く映るので、画面上のボールの速度は遅くて目で追いやすい。にもかかわらず、ものすごい迫力だ。なぜ卓球選手があんなに小さいボールを打つのに全身を使ってドタバタしているか、その動きに説得力がでるのだ。しかも、卓球の特徴であるドライブやカットの上下方向の軌道の曲がりなどがとてもよくわかる。さらに、手前の選手が右利きの場合と左利きの場合では、ちゃんとカメラ位置を変えて、選手と卓球台がうまく映ることまで気をつけているのだ。あまりに感激してリフレックス・スポーツのGary Rudermanにメールを出したところ、すぐに返事がきた。彼らは彼らのやり方が卓球の撮影にとってベストであることに確信をもっているのだという。それで、何度もテレビ局にカメラ位置を変えるようアドバイスしたのだが、聞き入れてもらえないのだという。そのための説明ビデオまで作って送ったのだが、ダメだと言う(そのビデオも後日私に送ってくれた)。しかし最近では、世界選手権での撮影はすべて契約したテレビ局だけに限定されているとかで、リフレックス・スポーツ独自の撮影はされなくなってしまった。リフレックス・スポーツから出ている作品も、テレビ局が撮影した映像を彼らが編集しているだけなのだ。

 一度彼らの映像を見れば、テレビ放送との違いは明らかだ。女子の試合などテレビでは全然迫力がないように見えるが、コートサイドから撮影すれば、まったく違った卓球競技の表情が姿を現すのに、もったいないことだ。広州でテレビ東京を説得してみる。