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世界選手権横浜大会(世界卓球 ブルーライト横浜速報 伊藤条太の机上の空論 web express)

丹羽が2試合目、逆転で勝ったようだ。ともかくよかった。

速報を見てとくに嬉しかったのは、「日本の応援がすごかった」ことだ。
観客が全国から集まって応援してくれているのだ。もっともっと応援してほしい。

1956年の東京大会を思い出して欲しい。私も生まれてないので思い出しようもないが、小さい頃からそのときの描写を何度も読んでいるので経験したような気になっているのだ。

会場の東京体育館は連日の超満員。グループリーグで、全勝どうしの日本とルーマニアが決勝進出をかけて戦った。試合は一進一退。7番で田中利明がガントナーと激突した。ガントナーはこの日絶好調で、すでに前半で荻村と富田を破っている。8番以降の組み合わせを見ても、ここで田中が勝たないと日本は負けるという状況だ(当時は9シングルス制)。

その大事な試合で、田中はガントナーに最終ゲームの14-20とマッチポイントの絶体絶命のピンチに追いつめられた。
ここから開き直った田中は、フェンスを越えるスマッシュを連発して1本づつ挽回し、23-21で逆転勝ちしたのだ。追い上げている最中、観客は総立ちになり、ものすごい歓声。勝ったときには他のコートで試合をしていた選手が耳をおさえてプレーを中断したほどだった。

この大逆転のおかげで日本は5-4でルーマニアに辛勝し、決勝でもチェコをやぶって3連勝を決めたのだった。「いちばん怖かったのは18-20、19-20のとき。今思い出してもゾッとする。これほど恐ろしかったことはない。卓球なんかやめたいと思ったほどだ。」と田中は試合後に語った。

文化大革命前夜の61年北京大会の中国の観客もすごかった。なにしろ、中国選手が負けてくると、挽回しようと観客が一斉に毛沢東語録だかを暗唱するらしい。当然、プレーは中断される。まあ、ここまでやらなくてもいいが、やっても退場させられるわけではないので、やっていいのだ。卓球はそういう歴史をもった競技なのだ。

写真は56年東京大会で香港戦の田中利明。右は、富田と戦う”問題の”ガントナー。