スマホ版に
戻る

速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

世界選手権モスクワ大会(団体戦)

〈中国 1-3 シンガポール〉
 丁寧 8、3、-8、-9、-9 馮天薇○
 劉詩ウェン -7、-8、2、-10 王越古○
○郭炎 -6、6、4、6 スン・ベイベイ
 劉詩ウェン -7、14、-7、9、-7 馮天薇○

 最後は馮天薇の台上バック強打に、劉詩ウェンのボールがオーバー!
 あの中国が敗れた! シンガポール3-1中国!

 08年北京五輪で銀メダルを獲得したことで、シンガポールのスポーツ強化の主人公となったシンガポール女子卓球チーム。
 09年シンガポール女子最優秀スポーツ選手に選ばれたエース馮天薇。彼女をシンガポールへ連れてきた劉国棟・元シンガポール女子監督がチームを去り、インドネシアチーム総監督に就任したことで、彼女の成長にストップがかかるのではと思われたが、決勝で見せたプレーはすばらしかった。競り合った場面でも臆せずに両ハンドドライブを打ち込む姿は、丁寧や劉詩ウェンが勝利を意識して、フォアの手数が減ったのとは対照的だった。中国ジュニアチャンピオンになりながら、中国では不遇の時代を送り、日本リーグのサンリツを経てシンガポールに渡った苦労人。父親はすでに亡く、母親をひとり故郷の黒龍江省ハルピン市に残して練習に励んでいる。優勝後のインタビューで「お母さんには何と伝えたい?」と中国のマスコミに質問され、「お母さんには…」とその先は言葉にならなかった。

 2番で勝利した王越古のプレーも見事。こちらも馮天薇と同じく、日本リーグの十六銀行や池田銀行で圧倒的な勝率を残し、シンガポールに渡った。バック表ソフトのバックハンドの安定感は非常に高く、またフラットに飛んでくるために劉詩ウェンは強打で狙っていけなかった。ガッツあふれるプレーが印象的な彼女だが、最後まで闘志を前面には出さず。しかし、要所で見せた静かなガッツポーズは、内に燃える青白い炎を感じさせた。劉詩ウェン戦で勝利を決めたフォアストレートへの飛びつきスマッシュは、言い方は失礼だが根性でねじ込んだという一本だった。

 91年世界選手権千葉大会で統一コリアに敗れ、73年サラエボ大会からの連覇が「8」でストップした中国女子。その後、再び93年イエテボリ大会からスタートした連覇が、今回またも「8」でストップした。これは卓球史に残る事件だ。