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世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)

 男子シングルス決勝は、経験豊富な王皓が有利という大方の予想を覆し、張継科が初優勝を決めた。

 2003年の第1回世界ジュニア選手権に15歳で出場した張継科。しかし、それから中国代表入りを果たすまでは5年近くかかった。2008年頃からようやく国際大会に出場するようになり、徐々に頭角を現していったが、メンタルのもろさが目立つ選手だった。

 その張継科にとって、大きなターニングポイントになった試合が2試合あるように思う。ひとつは09年全中国運動会・団体決勝ラストの馬琳戦。序盤、馬琳にリードを許しながら、最後に強気の両ハンドドライブで逆転勝ちした。もうひと試合は昨年5月の世界団体選手権・決勝3番のズース戦。1ゲームは落としたが、確実に勝利して4番につなぎ、チームの優勝に貢献した。徐々に、弱気の虫が顔を出さなくなっていった。
 それでも、世界ランキングを4位まで上げていた今年1月のイングランドオープンでさえ、当時世界ランキング138位のコネツニー(チェコ)に金星を献上している。張継科にも勢いはあるが、優勝候補の本命はやはり王皓、対抗馬は馬龍。馬龍との相性の悪さを考えても、張が今大会優勝するとは考えにくかった。

 しかし、コートに現れた張継科は、体つきからして昨年のモスクワ大会とは全く違うものになっていた。もともと細身の体つきだが、体幹ががっしりと太くなり、太ももの筋肉はまるで競輪選手。一方で、上半身の筋肉には無駄がなく、必要最低限。しなやかなムチのようなスイングから、鋭いフォアドライブを連発した。動きの速さもすごいが、スイングスピードの速さが尋常ではない。男子シングルス4回戦では、男子のカットマンでは世界最強を誇る朱世赫(韓国)に対し、ストップはあまり使わずにひたすらフォアドライブの連打で完勝した。
 バックハンドも、台上のチキータから前陣でのバックドライブ、対ツッツキのパワードライブと完成度は非常に高い。フォア前をバックフリックでレシーブして、次に前陣でのバックドライブで押し込み、回り込みフォアドライブで決める。対戦相手はなす術もない。

 ロッテルダム大会閉幕後に発表された2011年6月の世界ランキングで、王皓とともにロンドン五輪の男子シングルスへの推薦出場が決まった張継科。ロッテルダムの勢いをロンドンにつなげ、ビッグタイトルを総なめにするのか。…ただし、優勝を決めた直後に代表チームのウェアを引き裂いたことだけは、後できついお叱りを受けたに違いない。