速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

平成24年度全日本選手権大会

 この18歳の新チャンピオンの思考回路は、一体どうなっているのか。
 水谷が勝負師の本領を発揮して、第4ゲーム終盤に一気にたたみかけ、ゲームカウント1−3とリードを許した丹羽孝希。多くの観客が「やはり水谷強し」と感じたに違いないこの場面。しかし、優勝者インタビューで「逆に開き直って、良いプレーができた」と語ったとおり、ここから丹羽の両ハンドのスイングはさらに速さと強さを増していった。

 水谷のフォアクロスへ大きく曲がるフォアドライブに台から下げられても、最後は必ず前陣に戻ってカウンターの強打。入っても入らなくてもカウンター。水谷にしてみれば、ゲームをリードしているのに試合の主導権を奪えない感覚だったのではないか。
 第6ゲーム、7−5から見せた2本のカウンターは圧巻。バック対バックから電光石火の回り込みでバックストレートに、しかもサイドライン上にカウンタードライブを打ち込み、次の一球では深く切れたツッツキからの回り込みシュートドライブ。コーナーどころか、サイドラインの真ん中くらいを切って入った。さすがの水谷もこれは取れない。

 速攻選手のプレーを評して「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるが、それはあくまで客観的なもの。自分のカウンターにリスクを感じながらプレーしている選手には、丹羽のようなプレーはとてもできないだろう。
 昨年8月のロンドン五輪・男子団体準々決勝の香港戦では、さすがに緊張している様子が見えた丹羽だったが、今回の決勝後に「ロンドン五輪を経験したので、今日は特に緊張することもなく、自分のプレーを伸び伸びできた」と語った。思うような結果が残せなかったが、五輪での経験は決して無駄ではなかった。

 打球点の早さはすでに中国と互角か、それ以上。「今回の優勝だけでは満足できないです」とまだまだどん欲なところを見せる丹羽。5月の世界選手権パリ大会では、クールな表情ですごいことをやってのけるかもしれない。