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伊藤条太のそんなバナナに私はなりたい速報

今日の第一試合が始まったが、平日であることと、日本の試合がまだであることで、観客の入りはまばらだ。その中で、3階席の片側半分を赤いスティックをもった集団が陣取っていて、ラリーが終わるごとに大合唱で応援をしている。

近くに寄ってみると赤いスティックにはハングルが書いてあるから、朝鮮関係の人たちだとわかった。その多くが子供たちだが、中には数少ない大人もいる。そこで、その中の一人にお話を聞いてみた。

この集団は関東近郊の北朝鮮関係の学校の人たちで、日本で生まれて日本に住んでいる人たちだという。卓球に限らず、北朝鮮の選手が日本に来ること自体が希なので、北朝鮮の試合がある時間をしめし合わせてチケットを買い、指定席ではないが自然に会場の一角に集まったのだという。こういう機会でもなければ集まることもないので、良い機会なのだという。東京で郷土の県人会を開くようなものだろう。もっともこの方は卓球にはさほど興味がなく、残念ながら卓球王国もご存じではなかった。

こういう方々でもいなければ会場は閑散としているわけだから、卓球に興味がないとはいえ、世界大会を盛り上げるのに非常に有益だと思う。「自分の祖国ばかり応援してちょっと感じ悪いと思われるかもしれませんが」と言っていたが、それはどこの国でも当たり前ですから問題ないですと答えた。意外にも韓国も応援するという。1991年に統一コリアが優勝した幕張大会も良い思い出だと語ってくれた。

ちなみに、彼らは日常生活は家の中も含めて日本語で、朝鮮語を話すのは学校でだけだという。そうでもなければ忘れてしまうのだろう。

思い切って、核開発をしているとか独裁体制とか国際的に批判されている北朝鮮のことをどう思っているのか聞いてみると、それはもちろん居心地の悪さを感じて困った気持ちだという。しかし報道は悪いことばかり取り上げるので、鵜呑みにはできないが、鵜呑みにする人もいるし、それはこの集団の中でもいろいろなのだという。どこの何の集団でも人はそれぞれなのだからこれも当然だろう。

私が彼にインタビューをしようと間合いをうかがっているときに、通りかかった日本人が「これどこの人たち?こういうことをするのは北でしょ?」と言外に敵意を込めて語った。まるで悪事を働いてでもいるかのようである。北でも西でも、少なくともこの場では大会を盛り上げてくれているのだから良いではないか。「こういうこと」など日本人でもプロ野球やJリーグで散々やっているではないか。これで日本と対戦して1983にも世界選手権を開催したこの建物が崩れるかと思うほどの応援合戦になれば、卓球人にとって感動的な大会になるだろう。もちろんそのときには日本に勝ってもらいたいが。ガタガタ言っていないで日本人も声を枯らして足踏みをして応援をするべきなのだ。

卓球の応援にしてはうるさすぎると思う人もいるかもしれないが、海外での世界選手権ではいつものことだ。ヘタすると、アナウンサーがマイクを使って自国の応援をすることまであるのだ。そういう、ボールの音も聞こえないような騒然とした中で試合をし、勝たなくてはならない。それが卓球の世界選手権なのだ。日本の観客は彼らに負けないように喉をからして応援して欲しい。どうしても恥ずかしい大人の人は、会場に来る前に歩けなくなるほどしたたかに酒を飲んでから来場してみるのも一興だろう(寝るなよ)。そういう観戦態度を私は歓迎する。
  • お話を聞かせてくれた方